日本の財政―破綻回避への5つの提言
佐藤主光(著)
/中公新書
作品情報
コロナ禍、ウクライナ危機を経てインフレ転換した世界経済。有事対応で財政出動を繰り返した日本は、債務残高対GDP比で先進国最悪である。デフレ下でこそ持ちこたえられた財政には新たな破綻シナリオもよぎる。日本の危機的状況を再確認するとともに、立て直しの方策として、税制と財政ルールの改革、成長戦略、セーフティネット構築、ワイズスペンディングなど5つを提言。未来につなぐ財政民主主義のあり方を問う。
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商品情報
- シリーズ
- 日本の財政―破綻回避への5つの提言
- 著者
- 佐藤主光
- 出版社
- 中央公論新社
- 掲載誌・レーベル
- 中公新書
- 書籍発売日
- 2024.05.25
- Reader Store発売日
- 2024.05.22
- ファイルサイズ
- 4.7MB
- ページ数
- 256ページ
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この作品のレビュー
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https://www.cku.ac.jp/CARIN/CARINOPACLINK.HTM?AL=01428887投稿日:2024.06.05
本書は、一橋大学の佐藤主光教授によって執筆された書であり、日本の財政状況を概観するとともに、それを取り巻く議論を踏まえ、採取的には具体的な財政再建政策を示すものである。執筆者の教授をネットで調べる限り…と御用学者と呼ばれるほどの財政均衡主義者であり、その思想は本書にも色濃く見て取れた。そのことは多分に踏まえて読むべきであろうが、それでもMMT等への不信感については多分に説得的で、財政赤字は向き合うべき問題であることを再認識した。
以下、本書の記述や主張を概括する。(うまく再構成できないので箇条書き)
・財政出動は一度始めたら止められないーそもそも政治に止める気が内容に思われる。
・リーマンショック以降の規模ありきの財政出動の文脈を引き継いだ転位効果によって、財源意識のない大型予算が続いており、もうダメ。
・防衛費が必要な状況であることは明らかだが、持続可能な国防を維持するためにも、堅調な財政が必要。
・地方自治体にも交付金や補助金をあてにする空気が広がっており、財源意識が希薄である(所詮他人の財布だからか?)=財政錯覚
⇒財政規律の弛緩はなはだしい。(主張:限界的財政責任を導入すべき)
・日本の現状は財政健全化の「入口に踏みとどまっている」状況であり、将来の不利益を次世代に積み残すことが避けられない。
・アンケート調査では、経済学者の86%が財政健全化が必要だと言っており、その総論としても問題意識は国民アンケートでも共有されている。
・しかし、国民は財政赤字の原因としては「政治の無駄遣い(これが原因とは言い切れない)」や、「公務員の高い人件費(明らかな誤り)」を挙げており、現実の主たる要因である社会保障費の大幅な増額から目を背けている。
・財政健全化がいまだに入口で踏みとどまっているのは、MMT等の理論を方便として、政治的に都合よく利用されているから。
・とくにMMT理論などは、財政赤字を見なくていいとする理論は画期的で、耳障りがよいからこそ、財政赤字に向かいたくない人々が飛びついている。しかし、表券主義的で、市場経済や財政の結果としての「貨幣に対する信用」が無条件に行われていることから、画餅と言わざるをえない。ただし、日本の場合は現在日銀が国債を大量に買い入れていることからすでにこれを部分的に行っているという見方もできる(=異次元の金融緩和)
・なんとかなるさ!という幻想が、理論の引用によってもたらされている。しかし、国債の信認が揺らぐ危険は依然としてある。
・しかし、それによって民主主義<権威主義と思われてしまうことは避けるべき、指導者が強権を発動せざるを得なくなる前に財政再建をしなければならない。
・現状、日銀が国債を大量に買い入れているために、金利上昇は国際負担増となり、踏み切れない。その結果としての円安が進行している。
・国債の下落=売れ残りに始まる財政危機は、容易に起こり得るため、これ以上国債の信認を損なうべきではない。
・財政均衡主義者はオオカミ少年にたとえられがちだが、オオカミ少年を信じなかった村人はついに羊をたべられてしまう。
・財政赤字を生むものとしては、官僚の無謬性(一度走り出すと間違っていても止まれない)、メディアの近視眼的報道(現在の受益は将来の負担となることを無視し、俯瞰的視線が無い)、ゾンビ企業(補助金で生かされる競争力のない企業)の存在が挙げられる。
・租税は文明社会の対価であり、なくてはならないもの。やはりメディアの報じ方がよろしくない。
・消費税はたしかにミクロ経済に与える影響は甚大だが、企業の成長を阻害しないという意味で、市場の成長にマイナス影響をもたらしにくい租税である。
・社会保険料は所得の壁があるなど改善の余地の大きい制度。財務省—厚労省と縦割りになっていることが制度の硬直性をもたらしている。
・これについては財務省において給付付きの税控除制度をまとめあげて、受益と負担を一体化させるとよい
・財政規律も整えるべきであり、第三者的な(システム的な)歯止めがあることが望ましい。その際に重要なのは財源・財政の自分事化である。
・財政赤字の垂れ流しには歴史による審判が厳しい評価を下す。民主主義には財政赤字を容認するバイアスがあるが、それによって権威主義的体制がよしとされることがあってはならない。
・いずれにしても、財政民主主義的な、国民から発露される規律が必要。
⇒受益と負担は同世代で均衡するべき。財政民主主義の精神に照らして、近視眼的な先送りを容認するのではなく、未来を見据えるべき。
これらの論を受けて、個人的にはおおむね同意するところだった。MMTの理論についての筆者の批判も妥当で、やはりそれは危険な空論であるように思う。なぜならば、MMTの理論が完全に国民に浸透するということはないからだ。そうである限り、大幅な財政赤字にともなう国債信認の失墜は常につきまとうことから、ハイパーインフレーションの危機は免れえない。かつて共産主義がそうであったように、MMT理論は人々のそうであってほしいという願望に過ぎないだろう、というのが現在の理解だ。
しかし、一方で頷けない部分もある。まず、財政意識アンケートの調査対象から、上記MMT理論者を意図的に排除していることである。個人的には些事であるとも思うが、やはり結果の操作が目論まれているという批判はぬぐえない。
また、筆者は現実的な財政再建への方策をいくつも示しているが、果たしてそれが規模的に充分であるかというとやはり疑問だ。
筆者もそれを思ってか、結論を我々市民の財政意識に求めているが、社会を扱うテーマの結論を市民の心持ちに求めるのは少し肩透かし感がある。(もっとも新書という媒体である以上、それがむしろ望まれた結論なのかもしれないが。)
とはいえ、財政再建という本当に途方もない話をするにあたり、結論がいまひとつクリティカルに作れないことは、逆に筆者の誠実さでもあると思う。このどうしようもない状況を打破するには政治が動くしかなく、政治を動かすのは(少なくとも理念上は)国民なのだから、と、やはり自分個人としても筆者と同じ結論に至ってしまう。
具体的に言うとやや辛辣にならざるを得ないが、やはり我々のような若い世代としては、もっと高齢者の受益に対してモノ申す必要があるように思った。続きを読む投稿日:2024.06.14
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