この作品のレビュー
平均 3.6 (13件のレビュー)
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数学者森毅(1928-2010)による受験数学にまつわるエッセイ、1981年。
この本に最初に出会ったのは浪人時代、その頃通っていた予備校の数学講師が「京大受験生の必読書」と言っており手に取った。当…時は中公新書に入っており、こんな説教臭い副題はついていなかったように思うが、新書版がどこへ紛失してしまったのかいま手元にないので確認はできない。
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当時の読後感がやや苦いものであったことを、この度読み返しながら思い出した。森が称揚する「反‐秀才・反-完全主義・反-強迫・反-画一」などの姿勢が自分の気質とは正反対であって、まるで自分は頭が固いだけのつまらぬ人間だと否定されたような気持ちになって、いじけてしまったのだと思う。
森の主張の基本線は、ちょうど本書が執筆された80年代、ニューアカデミズムの流行の中で盛んに喧伝された反-パラノ・親-スキゾの風潮と、並行するものだろう。その頃、浅田彰も森を持ち上げていた文章を、あとになって読んだことがある。一つのことに強迫的に拘らずにはおれず、その拘りそれ自体に呪縛されるかのようにその場から動けずに踠いていた私は、"軽やかに領域を横断するフットワークの軽さ"が称揚されるのを目にするたびに、「自分はどうしたらいいのだ、これはもうどうしようもないのじゃないか」とますます煩悶を募らせる、そんな暗鬱な学生時代を送っていたことが、そういえばそうだったなといった具合に思い出された。
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そしていま読んでみても、やはり同様の苦味を全く感じぬではない。20年経っても、自分はあまり大きく変わっていない。それでも、年を経てみて、森が言うことも、今になってなるほどなと得心するところがたくさんあったから、読んでよかったと思う。
「受験数学から大学数学へ、というのを端的に表現すれば、「問題の解き方」をいくら知っていても、大学へ入ってからはほとんど役にたたず、「解き方の分からない問題へのとりくみ方」のほうだけが、大学へ入ってから役にたつ、ということである。こうした視点からだけ、受験数学が大学数学につながる」
このあたりの受験数学の捉え方については全く同感で、ポリア『いかにして問題をとくか』を読んだときにも同じようなことを考えた。
「人間がときに暴力的になるということは、ぼくのような弱虫にはしごく迷惑なことだが、それが現実であると思って辛抱もできる。しかしせめて、その暴力が正義の名のもとに行われるのだけは、ごめんこうむりたい。せめて、暴力を使うのは、大義名分のないときだけにしてほしいのだ」
国家主義的・排外主義的な風潮がますます強まっていく昨今、「暴力に正義はいらない」(≠「正義に暴力はいらない」)と題された森のこの逆説をしっかり味わわねばならぬと思う。
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浪人時代に読んだときには、努力だとか真面目さだとかを突き放す冷たさのようなものを感じていたのだが、改めて読み返してみると、森の人間的な「やさしさ」や奥行きの深さというものが感じられた。
「そして、自分を大事にするというのは、けっこう人生の大事業なのだ」続きを読む投稿日:2018.08.25
これも教養文庫コラボから。別に数学に特化したものでなし、最終章のコラムから窺い知れるように、受験を題材にした人生論。ガチの数学論だと付いていけなかった可能性が高いから、そういう意味では読み易かったんだ…けど、内容的には正直得るもの少なし。続きを読む
投稿日:2024.04.04
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