中流危機
NHKスペシャル取材班(著)
/講談社現代新書
作品情報
かつて「一億総中流社会」と言われた日本。戦後、日本の経済成長を支えたのは、企業で猛烈に働き、消費意欲も旺盛な中間層の人たちだった。しかし、バブル崩壊から30年が経ったいま、その形は大きく崩れている。
2022年7月内閣府が発表したデータでは、1994年に日本の所得中間層の505万円だった中央値が2019年には374万円と、25年間で実に約130万円も減少した。もはや日本はかつてのような「豊かな国」ではなく先進国の平均以下の国になってしまった。なぜ日本の中流階層は急激に貧しくなってしまったのか。「中流危機」ともいえる閉塞環境を打ち破るために、国、企業、労働者は何ができるのか。その処方箋を探った。
【プロローグ】稼げなくなった中間層
第1部 中流危機の衝撃
第1章 幻想だった中流の生活
第2章 夢を失い始めた若者たち
第3章 追い詰められる日本企業
第4章 非正規雇用 負のスパイラルはなぜ始まったのか
第2部 中流再生のための処方箋
第5章 デジタルイノベーションを生み出せ
第6章 リスキリングのすすめ
第7章 リスキリング先進国ドイツに学ぶ
第8章 試行錯誤 日本のリスキリング最新事情
第9章 同一労働同一賃金 オランダパートタイム経済に学ぶ
【エピローグ】ミドルクラス 150年の課題
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商品情報
- シリーズ
- 中流危機
- 著者
- NHKスペシャル取材班
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社現代新書
- 書籍発売日
- 2023.08.23
- Reader Store発売日
- 2023.08.22
- ファイルサイズ
- 10.7MB
- ページ数
- 240ページ
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この作品のレビュー
平均 3.3 (15件のレビュー)
-
日本の全世帯の所得分布の中央値は、1994年には505万円だったものが、25年後の2019年には374万円に約130万円減っている。所得の比較的低い非正規労働者の増加や、高齢世帯の増加が一因とも言われ…ているが、「正社員」の推定生涯所得そのものも、1993年には男性3.24億円だったものが、2019年には2.88億円に、また女性の場合、1997年に2.78億円だったものが2019年には2.4億円に減っている。日本の1人当たりGDPはかつては世界最高レベルであったものが、今では先進国中で最低レベルと言われている。また、現代の若者たちは親の世代よりも豊かではなくなりつつある、それが現在の「中流危機」である。
本書では、その一因を、バブル崩壊以降のデフレスパイラル、【消費者がお金を使わなくなる】→【値下げ競争が激化】→【企業が稼げなくなる】→【給与が減る】→【消費者がお金を使わなくなる】に求めている。それは、直感的にはその通りだと思う。バブル崩壊後、「過剰設備」「過剰負債」「過剰雇用」といったことが言われ、企業はスリム化・コスト削減に生き残りの道を求めた。雇用について言えば、1990年代の半ば以降、非正規雇用を増やすことにより労務費の削減を図っただけではなく、「成果主義賃金」や「ベアゼロ」等により、正社員の賃金水準も上がらない仕組みをつくってきた。また、投資を控えることによりコストダウンを実現できたのは良いが、企業の稼ぐ力自体も削ぐこととなってしまった。
本書では、日本企業が競争力を失った原因のもう一つのものとして、日本的な雇用慣行を挙げている。終身雇用的な日本的雇用慣行により、企業は雇用を守ることにプライオリティを置き、そのためにコストダウンに走った。また、欧米のように、レイオフで一つの企業で雇用を失った人たちが結果的に、成長率の高い産業や企業に吸収されていくというようなダイナミズムが日本では生まれなかったとしている。
本書では、こういった状況を反転させるために、コストダウンばかりを繰り返し、すっかりと稼ぐ力を失った企業の、グローバルな競争力を取り戻すこと、すなわち、中流の所得の源泉を増やすことが大事であるとしている。そして、そのための方策を示すキーワードとして、①デジタルイノベーション②リスキリング③同一労働同一賃金、の3つを挙げている。企業の稼ぐ力を取り戻すことが重要というのは、その通りだと思う。そのための方策としての3つのキーワードについては、それが切り札になり得るかどうかは、正直なところよく分からなかった。
バブルの時代、日本企業は世界の時価総額企業ランキングで上位を独占していたが、現在は上位に入っている企業はない。日本企業がバブルの後始末でコストダウンに奔走している間に、例えばGAFAと呼ばれるデジタルプラットフォーマーたちは、巨額の時価総額を誇る企業に育っていった。彼らは、それまで存在しなかった革新的なビジネスモデルを創造し、文字通りグローバルにビジネスを展開することにより、巨大企業となっていった。それらの企業と競争するには、日本企業に①革新的なビジネスモデルを創造する力②それをグローバルに、地球規模でマーケティングする力、が必要である。本書が解決の手段として挙げている①デジタルイノベーション②リスキリング③同一労働同一賃金は重要なこととは思うが、どちらかと言えば、企業を「運営するスキル」を上げていくものであり、今までにない創造的な何かを生み出すための方策としては弱いかな、と感じた。
全体としては説得力のある、とても面白い本だった。続きを読む投稿日:2023.12.31
「一億総中流社会」と呼ばれた日本が現在どのようになっているのか。
また、よりより未来を目指すためにどのようにするべきかをまとめた本。
日本の現状、他国での取り組み事例、将来に向けての3つの解決策で構成…されている。
所得分布の中央値が25年間で505万/年→374万/年と130万も減少。
思っていた以上に危険な状態になっていた。
内容は具体的な数値等はあったものの、新聞や書籍等から得られる情報と大きく乖離はなく、特別に目新しいものではありませんでした。
”正論よりもまず目の前の現実に向き合う”
企業の存続を前提としたある中小企業の社長の取組がとても重く感じられました。
企業存続のためには粗利が0でも、大手の仕事を取ってくる必要がある。
また、正規雇用を守るためにも年功序列から成果報酬への給与体系の変換や非正規雇用の採用も行う。
下請けの企業は、大企業からの値下げ圧力に対してなかなか対抗できず、値下げ受注をすれば社員の給与を上げられない。
今回の事例では粗利0での値下げをしても、受注とはなっていませんでした。
難しい問題だと思います。
中流復活のための3つの方策
1・デジタルイノベーション
2・リスキニング
3・同一労働同一賃金
デジタル化成功の秘訣
まずはスモールステップ、「一人の業務を楽にする」ことから始める。
実戦経験はリスキニング成功の8割を占める。
他に影響の少ない、まずは個人の小さな業務でデジタル化を進める。
そのことによりデジタル化の手法が身につき、また「次はこれもできそう」というアイデアにもつながる。続きを読む投稿日:2024.03.30
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