1973年に生まれて 団塊ジュニア世代の半世紀
速水健朗(著)
/東京書籍
作品情報
《この世代の世代論は、ノスタルジーか残酷物語のどちらかである。そうではない本を書くことが本書の目的だが、そうなっただろうか。》――速水健朗(本書「あとがき」より)
ロスジェネ、超氷河期、お荷物と言われ続けた団塊ジュニア世代のど真ん中ゾーンも、ついに天命を知る50代に突入。
そんな世代が生きてきた1970年代から2020年代にわたる、日本社会、メディア、生活の変遷を、あるいはこの時代に何が生まれ、何が失われたのか――を、73年生まれの著者が、圧巻の構想力と詳細なディテールで描くノンフィクション年代記。
既存の世代観を上書きする、反「ロスジェネ」史観の誕生!
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この作品のレビュー
平均 3.8 (18件のレビュー)
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«「当たり前」の前を考える»
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バブル世代を扱った物語やエッセイは今まで何冊か読みましたが、団塊ジュニア世代について書かれた本は読んだことがなかったため、興味を惹かれて手に取りまし…た。
世代論なのかなと思いきや、1973年前後からの出来事や文明の進化を団塊ジュニア世代の筆者の目から冷静に綴るという内容だったのが新鮮でした。
(世代に関する言及では、筆者の速水さんが自身の価値観や置かれてきた状況を「団塊ジュニア世代のサンプル」と位置づけた上で、(テレビの放映内容の話など)「住んでいた地域が違えば見える景色も違うよね」というスタンスで書かれてていたのが、視野が広くて好ましいなと思いました。
実際、自身の無知を晒しだすようでお恥ずかしい話ですが、田舎で滅多に電車を使わない私はIT化が進んだ近年になってもなお、切符は駅員さんが穴を開けるものだと思っていたので、数年前に初めて自動改札を見て当惑したのを覚えています(笑)同世代の都会っ子の方にはありえない話なんだろうと思います。)
「テクノロジーを使った道具が一度普及してしまうと、それ以前の生活の細部を人は思い出せなくなる。そこに今一度、想像力を持って挑む。本書はその試みである。」
(P266)
とあるように、1973年以降の出来事や時代の変化を思い出して振り返るという目的で書かれた本書ですが、特に興味深かったのはコンビニの話とパソコンの話でした。
コンビニについては、85年には夜中にいなり寿司を買いに行こうとする女性のCMが流れ、当時評論家の浅羽さんはコンビニに立ち寄ることを「精神の揺らぎ」と表現し、コンビニを「欲望を叶える場」と捉えたとのこと。
これを基に今のコンビニを考えると、当時はおそらく、おにぎりやお弁当、飲み物類を買う場だったところから、今はほんの数年前まで(チェーン店では)ミスタードーナツくらいでしか買えなかったドーナツ類が平然と並び、「コンビニスイーツ」の種類が格段に増え、スイーツやお菓子、ラーメン等で有名店とのコラボがなされ、ついには出来たてを販売する店ができ始めと、当時の比では無いくらい「欲望」が拡充しているのが面白いなと思いました。
「便利になった」と一言で片付けてしまうこともできますが、これだけ欲望に塗れた場所が存在することに誰も疑問を持たず、むしろ欲望の拡充が奨励されているのかと思うと、コンビニってものすごく面白い場所だなと思いました。
今日も今日とて、もはや無意識のうちにコンビニに足を向けている私は、精神が揺らぎまくっています(笑)
パソコンについても、発売当時は遊び目的くらいでしか用途が無かったというのが興味深い話でした。
今では仕事に必須のメールやWord、Excel等も、コンピュータができて進化した後から生まれてきたものなのだと思うと、今は当然のようにセットで使っているものも、ひとつひとつが凄い発明品なんだなと感じました。
バブル世代からはひとくくりに「草食」という見方をされてきた団塊ジュニア世代の
ひとりの視点から見てきた歴史を見るとどうなるのかというのを垣間見られたのは興味深かったですし、何よりも、今当たり前だと思っているモノや事の裏側にどのような歴史があったのかを学べたのが面白かったです。
【ひとりごと】
半沢直樹シリーズに触れる中で、『ロスジェネの逆襲』で出てきた森山や瀬名といったロスジェネ世代のキャラクターが速水さんの目にどう映ったのかがとても気になるところ。この世代の方が外からの評価をどのように受け取っているのかを、もっと聞いてみたいなと思います。続きを読む投稿日:2024.01.18
このレビューはネタバレを含みます
難しいのは、現在に近い現代史を論じる時には、どうしても既視感を覚えることがあるということ。その人ならではの切り口というのが、なかなか見つからない。
レビューの続きを読む
だから、どうしても1973年生まれの人たちの独自性…というものが、それほどクッキリとは浮かび上がってこない。
楽しい世俗的な読物になって、そこで終わったしまう。
続きを読む投稿日:2024.04.24
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