この作品のレビュー
平均 3.7 (31件のレビュー)
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Audibleでランニングしながら聴取。学生の頃読んで以来30年ぶりの再読(というか再聴)。当時は四苦八苦して読んだ記憶があるが、今聴くと重要部分の繰り返しが多く、聞き逃しても筋が追えるため「ながら…聴き」には意外に適している(書き下ろしでなく「批評空間」への連載だったことが影響していると推察)。
なんといっても本書の肝は、マルクス「資本論」他における価値形態論・労働価値論に潜む矛盾を「論理循環」の形で可視化させたことにあるだろう。価値形態論を突き詰めてゆくと実は論理循環が含まれており、そこではマルクス自身が信奉して止まなかった労働価値論の項が消去されてしまうことが示される。そしてこの論理循環は他に依拠するところのない、著者自身の言葉を借りれば「宙吊り」の構造を持っており、さればこそ、自律的に存立する強固さと、いったんその根拠を疑い出せば霧散してしまう脆弱さを併せ持っている。本書では著者一流のレトリックを用いて、資本主義における貨幣経済がこの「奇跡」の上に成立していることが明快に記述されている。「本物」と「代用物」という記号論的二項対立を、この連環構造の中に解消させてゆく著者の鮮やかな技量は今でも色褪せておらず、見事というしかない。
そしてもちろん、「恐慌ではなくハイパーインフレーションこそが、貨幣の存立基盤を突き崩し商品世界を解体する実存的危機である」という主張を含む本書は、実際に世界的インフレが進展しつつあるこの2022年にこそ特段の関心を持って読み返されなければならないと思う。続きを読む投稿日:2022.04.10
貨幣とは何か?
この問いの深淵さ、「意地の悪さ」に初めて気がついたのはマルクスだ。
マルクスは貨幣を「形而上学的な奇妙さに満ち満ちたもの」と呼んでいる。
貨幣を当たり前だと思わずに、そこに形而上学を見…出したことこそマルクスの天才だ。
貨幣を形而上学的謎として解くためには、マルクスの「資本論」、特にその「価値形態論」を抜きにしては、アプローチする出来ない。
と、言うことで、岩井克人は、マルクスの「資本論」を自家薬籠中のものとして、縦横に活用する。
本書は、岩井克人によるマルクス「資本論」の独創的読解だ。
さわりの一章だけをざっと見るとこんな感じだ。
第一章 価値形態論
資本論の要である「価値形態論」と「交換過程論」から貨幣登場のメカニズムを炙り出す。
貨幣は貨幣として流通してしているから貨幣なのだ。
このトートロジーこそが謎の根源だ。
神の成立と同じメカニズムに基づく社会現象だ。
したがって、マルクスの「価値形態論」は、貨幣論に留まらず、神の発生論でもあり、更には、言語の発生論、国家の発生論でもあるのだ。
経済学、宗教岳、言語学、政治学の根幹に存在する形而上学的謎を、トートロジーとして「価値形態論」として抉り出して見せたのだ。
そして、価値形態が生まれてくる(つまり、貨幣が、神が、言語が、国家が生まれてくる)メカニズムを「交換過程」と言う動的な相で捉えてみせるのだ。
そして、貨幣が神となった特殊な資本主義社会的は、トートロジーの行き着く先、ハイパー•インフレーションという危機を招くと予言する。
トートロジーには実体はない。
実体の無い虚空から生じた「剰余価値」は、実体のなかった虚空の宇宙に生じた物質のようだ。
この「奇跡」が、実体があるかのように振る舞う貨幣を生み出した。
他人が貨幣として受け取るから、他人が貨幣として信ずるから、貨幣として機能するのだ。
そして、剰余価値は剰余価値を生み出し続けて、巨大な価値のハイパー•インフレーションを作り出すのだ。
こうして、貨幣商品説も貨幣法制説も葬り去る。
本書を十分に理解するためには、難しいマルクス「資本論」を理解しておくことが望ましい。
そのための最良のガイドが、柄谷行人の「マルクスその可能性の中心」だ。
第二章 交換過程論
第三章 貨幣系譜論
第四章 恐慌論
第五章 危機論
と続く。続きを読む投稿日:2024.06.07
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