スティーブ&ボニー
安東量子(著)
/晶文社
作品情報
誰も読んだことのない、真面目で、おかしくて、ハートウォーミングな、ゲンシリョク・ロードムービー・エッセイ!
福島県で夫と植木屋を営む著者のもとへ、アメリカで開かれる原子力に関する会議に出席しないかというメールが舞い込む。
引き受けたはよいものの、言語や相互理解の壁に、どうしたものかと途方に暮れる著者。
現地に飛び込み、原子力や放射線防護について意見を異とする人びとと交わるうちに、
歴史・民族・国家・戦争・テクノロジーと人間のさまざまな関係性が浮かび上がる。
その旅路を等身大の視点から描いた連作エッセイ集。
衝撃のデビュー作『海を撃つ――福島・広島・ベラルーシにて』(みすず書房)に続く第二作!
山本貴光さん推薦!「原子力を語ると、どうして話が通じなくなるのか。それでも分かりあえるとき、何が起きているのか。これは、そんな絶望と奇跡をめぐる旅の記録である」
目次
1 奇妙なはじまり
2 本場・原子力ムラとの出会い
3 安請け合いのゆくえ
4 スティーブとの対面
5 裸足の数学者
6 ハンフォードからヒロシマへ
7 ダンとのドライブ
8 砂漠のピクニック
9 強制収容キャンプの記憶
10 キャラバンは砂漠をゆく
11 「BUY U.S. SAVINGS BOND」
12 砂漠に夕日は落ちる
13 いまは、いい友達
14 会議がはじまる
15 「オルマニーへのまなざし」
16 風邪のスープ
17 ソドムとゴモラのケーキ
18 「恐ろしいのは人間です」
19 初恋のようなハグ
20 絶望のような希望
21 宇宙語で話す
22 ゲニウス・ロキの生まれるところ
23 愛を込めて
あとがき
参考資料
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商品情報
- シリーズ
- スティーブ&ボニー
- 著者
- 安東量子
- 出版社
- 晶文社
- 書籍発売日
- 2022.12.20
- Reader Store発売日
- 2022.12.20
- ファイルサイズ
- 7.3MB
- ページ数
- 288ページ
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この作品のレビュー
平均 5.0 (1件のレビュー)
-
官公庁が相手の打ち合わせで、技術畑でない方としばしば同席する。そのなかで彼ら彼女達が求める立場的な「事情」に、建築の技術者である私は工学的な「正しさ」をぶつけてしまったことがある。もちろん反応は鈍く、…その後の気まずさは言葉にし難い。この本に沿って言えば、砂漠の強風で舞った砂をジャリっとやってしまう感じだろうか。
“けれど、「わかりあう」ことは、見解を一致させることを意味するものではない。人と自分は違う。違いにはそれぞれの理由も事情も考えもあって、かんたんにどちらかがまちがっているといえるものでもない。誰だって人間は、他人には測ることのできない側面を抱えているものだ。
「わかりあう」とは、その違いを理解することなのではないだろうか。見解が一致するかしないかは、そんなに大きな問題ではない。私がダイアログを通じて学んだのはそういうことだった。” p.205
本書の後半、著者が参加する原子力に関する会議で、ある人物から被ばく線量の基準についての発表があった後の質疑応答で「カラオケ大会」のようにマイクを奪い合い、一方的にその基準値について工学的な正しさを主張する原子力関係者たちの描写がある。それについて、著者のコミュニケーションについての考えの本質ともいえる部分がついに出たのが上の引用部。ついに、というのはこの本にはそれまでも端々に「わかりあえなさ」についての記述が少ないながらも現れていたから。
マイクを持って早口でまくし立てているのが、打ち合わせ時の自分の姿ではないかと感じた。ダイアログとは「原発事故後の福島について互いの言い分に耳を傾けあい、それぞれの考えを交わす活動」とホームページに福島ダイアログのホームページにあった。
私もロスアンゼルスにある期間(音楽のサーキットフェス的なもの)いたことがあり、乾燥した空気とnot for meな食事、ライブハウスで会う同好の士が段々と増えていく感じ、中にはいけ好かないやつもいたり…という経験がありとても共感した。モーテルでピックアップしてもらい、毎晩ライブ会場まで車で送ってもらうのも同じだ。
最初はドタバタ珍道中のようなアッパーな旅行記だと思っていたのだが違った。自分の対話の姿勢、話す相手のことをそのまま受け止めることについて考えるところが多い本でした。うまくいかないコミュニケーションについて、よく考えてしまう方にぜひおすすめしたい本だなと思った。続きを読む投稿日:2023.01.21
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