【感想】スティーブ&ボニー

安東量子 / 晶文社
(1件のレビュー)

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ブクログレビュー

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  • 水楢くん

    水楢くん

    官公庁が相手の打ち合わせで、技術畑でない方としばしば同席する。そのなかで彼ら彼女達が求める立場的な「事情」に、建築の技術者である私は工学的な「正しさ」をぶつけてしまったことがある。もちろん反応は鈍く、その後の気まずさは言葉にし難い。この本に沿って言えば、砂漠の強風で舞った砂をジャリっとやってしまう感じだろうか。

    “けれど、「わかりあう」ことは、見解を一致させることを意味するものではない。人と自分は違う。違いにはそれぞれの理由も事情も考えもあって、かんたんにどちらかがまちがっているといえるものでもない。誰だって人間は、他人には測ることのできない側面を抱えているものだ。
    「わかりあう」とは、その違いを理解することなのではないだろうか。見解が一致するかしないかは、そんなに大きな問題ではない。私がダイアログを通じて学んだのはそういうことだった。” p.205

    本書の後半、著者が参加する原子力に関する会議で、ある人物から被ばく線量の基準についての発表があった後の質疑応答で「カラオケ大会」のようにマイクを奪い合い、一方的にその基準値について工学的な正しさを主張する原子力関係者たちの描写がある。それについて、著者のコミュニケーションについての考えの本質ともいえる部分がついに出たのが上の引用部。ついに、というのはこの本にはそれまでも端々に「わかりあえなさ」についての記述が少ないながらも現れていたから。

    マイクを持って早口でまくし立てているのが、打ち合わせ時の自分の姿ではないかと感じた。ダイアログとは「原発事故後の福島について互いの言い分に耳を傾けあい、それぞれの考えを交わす活動」と福島ダイアログのホームページにあった。

    私もロスアンゼルスにある期間(音楽のサーキットフェス的なもの)いたことがあり、乾燥した空気とnot for meな食事、ライブハウスで会う同好の士が段々と増えていく感じ、中にはいけ好かないやつもいたり…という経験がありとても共感した。モーテルでピックアップしてもらい、毎晩ライブ会場まで車で送ってもらうのも同じだ。

    最初はドタバタ珍道中のようなアッパーな旅行記だと思っていたのだが違った。自分の対話の姿勢、話す相手のことをそのまま受け止めることについて考えるところが多い本でした。うまくいかないコミュニケーションについて、よく考えてしまう方にぜひおすすめしたい本だなと思った。
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    投稿日:2023.01.21

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