魚は数をかぞえられるか? 生きものたちが教えてくれる「数学脳」の仕組みと進化
ブライアン・バターワース(著)
,長澤あかね(訳)
/講談社
作品情報
すべての生きものは数をかぞえている。チンパンジーや犬だけじゃない。鳥も魚もネズミもライオンもイルカも数をかぞえ、アリもハチも計算し、セミは素数の周期を把握していた!
「人間特有のもの」と一般に考えられている数的能力は、進化の過程で発達してきた。つまり言語をもたない生きものも、食べて繁殖して生存するために、数を認識し、かぞえている。いや、計算すらしているのだ――この大胆な仮説を、認知神経心理学の第一人者にして数的能力の遺伝について研究を続けてきたロンドン大学名誉教授が検証。数学を中心に神経科学、社会人類学、進化生物学と、学問分野を縦横につなげて、「生きものは数をかぞえているのか」というユニークなテーマに迫る。
本書では、京都大学霊長学研究所の計算できるチンパンジー・アイや、後者関数を理解し数学の自習までした伝説のヨウム・アレックスといった”天才動物”にとどまらず、さまざまな生きものをとりあげる。
・「サルと大学生の基礎数学」
・ヒヒは脳で計算し、足で投票する
・敵の数をかぞえて戦略を立てるライオン
・数を多めに見積もるネズミ
・クジラとイルカの高度な数的能力
・猫の脳で観測された「計数」細胞
・「名前のない数」を考えていたカラス
・ハトの記憶容量はグーグルマップを超える?
・さえずりで数的能力を鍛える
・鳥のちっぽけな脳内はニューロンでいっぱい
・5回鳴いて婚活に勝つオスガエル
・オタマジャクシの数的能力は魚に劣る?
・生後1日のグッピーも大きな群れを選ぶ
・数の変化で魚の脳も変化する
・7時間訓練すればアリは「数」を学べる?
・クモは獲物の数をかぞえる
・イカの数の感覚は感覚は人間の子どもと同程度?
・シャコは経路積分で巣穴に隠れる
・カタツムリはチンパンジー並みに数に敏感
哺乳類から無脊椎動物まで、動物が「数」をどのように認識しているか、数を使って何をしているかは、私たち人間の進化プロセスをたどることであり、「人間は数をどうとらえ、どうかぞえているか」を発見する旅でもある。
昨今、「生涯年収は計算能力で決まる?」などと問われているが、それも当然かもしれない。ガリレオは「宇宙は数字で書かれている」と言い、ピタゴラスは「万物は数でできている」と述べ、ノーベル物理学賞受賞者のユージン・ウィグナーは「数学は世界を説明する道具だ」と語った。人間を含めたあらゆる生きものの命の目的、つまり「セックスと食物の獲得と生存」に不可欠なサバイバルツールが計数なのだから、数的能力が人生に影響を及ぼしても不思議はない。
さあ、あなたはどうかぞえているか? 知的好奇心をかきたてる話題作。
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商品情報
- 著者
- ブライアン・バターワース, 長澤あかね
- ジャンル
- サイエンス・テクノロジー - 生物・バイオテクノロジー
- 出版社
- 講談社
- 書籍発売日
- 2022.11.10
- Reader Store発売日
- 2022.11.09
- ファイルサイズ
- 13.9MB
- ページ数
- 392ページ
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この作品のレビュー
平均 3.5 (2件のレビュー)
-
一言結論:「動物が数を認知・演算できるか」に関する研究を取りまとめた社会的意義の高い書籍。一般向けと言うより研究者向けの側面が強い印象。
感想:「生物が数を数えるとはどういうことか」「どういう実験に…よりそれを証明するのか」という、生物学の中でもより限定的な分野に対して著者は体系的な説明を試み、まとめています。まだまだ分からない部分が多いものの、これからこの分野を志す人は本書籍を大いに参考とすることでしょう。実験結果分かったことも大変興味深く、動物の脳をより深く知れる本でした。
ただ私のような一般ユーザーは本当に「魚は数を数えるのかどうかが知りたい」と思い読み始めたのですが、その話になるまでには247ページかかります。しかも、明らかになった事実よりも実験手法の話が熱量高めに書いてあり、正直なところ「いや、実験はしないしな~」と思ってしまいます。そういった意味でも研究者向けの側面が強いのが少し残念でした。
せっかく面白い内容なのにすこぶる読みづらいです。誰かにエッセンスを抽出した簡易版を出して欲しい。
あと、これは完全な個人的な感想ですが数を数えることに関してやはり人間と他の動物を同列に語るのは暴論すぎませんかね?数を数え演算処理ができる脳の仕組み(本著によればアキュムレータ)が備わっているのは同じだとしても、人間のように「数を数えることを恣意的に選択できる」ことと「必要が生じた時に本能的に脳の機能を用いて数える」こととは行動理由として本質的に違う気がします。簡単に言えば、「数を数えないことを選択できるか」と考えた時それは人間のみに生じる現象であり、行動と言うよりむしろ感情の動きにその本質は宿っているように思うので、ひとまずこの本では人間の話は置いといて欲しかったなと思いました。続きを読む投稿日:2022.12.13
動物は数を数えられるか?
そう言われると、思い出すのはオウムのアレックスや、算数馬のハンスだろうか。
本書には、彼らももちろん登場する。
数に関わる能力というと、数えたり、計算すること、と思う。
そ…して、ことばがない動物には数えられない。
―というのはどうやら早計のようだ。
生き物たちは、生物種により違いはあるが、数を認識する能力があり、数えて集合の大きさを区別することができるようなのだ。
タイトルの「数学脳(原著ではMathematical Mind)」からのイメージで、その能力をすごく限定して想像していたが、「数覚」といったらいいのだろうか?
例えば、一瞬でいくつまで数を把握できるかといったことも、数に関する能力だ。
人間の数的能力に関する研究だけでも面白い。
人間は数えるとき、数詞と記号を用いるが、では四以上の数詞を持たない民族はそれ以上の数を認知できないかというとそうではない。
また、先天的な算数障害(発達性算数障害)や、後天的な障害(脳の損傷によるもの)についても研究が進んでいて、遺伝子や脳のどの部分が数の認識や処理に関わっているのかもわかってきているという。
では、サルは? 魚は? 鳥は? 昆虫は??
それぞれの分野での研究が紹介される。
数的な能力と空間能力でそれぞれの認知地図を作り出している。
餌を取ったり、繁殖相手を探したりするのに、こういった能力が必要なのだそうだ。
例えば、小さな魚にとっては、大きな群れに加わることは圧倒的に生存に有利になる。
一瞬でどちらの群れが大きいかを判別する能力は死活問題となる。
が、群れの大小は数を数えているのか、それとも暈の大きさを見ているのか、区別をしなければならない。
ことばをもたない生き物たちの数の認知をどうやって確かめるのか、研究者たちの実験が興味深い。
脳に電極を差し込む(恐ろしい!)こともできない小さな生き物はどうするのか。
どういう考えで、それぞれの能力を発現させ、記録可能なものにしていけるのだろう。
ただただ、びっくりする。続きを読む投稿日:2023.05.21
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