英語教育論争史
江利川春雄(著)
/講談社選書メチエ
作品情報
中学から高校の6年間で膨大な英単語を覚え、暗号解読のような苦労で英文を訳し、長文の速読練習もこなした。でも、労力の割には使えるようにならない。しかも2020年度からは小学校で外国語が正式教科になった。はたして英語は、どのように教え、学ぶべきか。これは、100年以上前から繰り返された議論である。
小学生の英語教育の是非、必要なのは文法訳読か英会話か、全員が必修の必要があるのか、他の教科にエネルギーを回せばもっと日本人の学力は上がるのではないか、そもそも、外国語は英語だけでいいのか。それは、知的バトルあり、人間臭い感情のぶつかり合いもある、真剣勝負の論争史だった。
漱石の指導で英文学に開眼した藤村作の「英語科廃止論」、戦後の熱狂を生んだラジオ「カムカム英語」への批判、加藤周一の「英語義務教育化反対論」、渡部昇一と平泉渉の大論争、筑紫哲也と中村敬の英語帝国主義論争など、文明開化の時代から、戦時下の「敵性語」時代を経て、グローバル化が進む現代まで、「日本人と英語」の百年余りを振り返り、これからの英語教育・英語学習を展望する。
目次
はじめに―― 一〇〇年越しの「真剣勝負」
第一章 早ければ良いのか? 小学校英語教育論争
1 文明開化と内地雑居
2 高等小学校の発足と論争の本格化
3 誰が、どうやって教えるのか
4 岡倉由三郎の小学校英語教育論
5 文部省が小学校英語教育を縮減
第二章 訳読か? 会話か? 文法訳読vs.話せる英語論争
1 学習英文法はどう根づいたか
2 英文法偏重・擁護論争
3 ナチュラル・メソッド論争
第三章 教養か? 実用か? 中等学校の英語存廃論争
1 「一等国」の英語廃止論
2 ナショナリズムと英語教育
3 「米国語」を追い払え!
4 廃止論の急先鋒・藤村作
5 「帝国日本」の外国語教育
6 戦時体制下の英語教師たち
第四章 英語は全員に必要なのか?「カムカム英語」と英語義務化論争
1 敗戦直後の英語熱
2 米会話ブームと「カムカム英語」への批判
3 「英語義務教育化」反対論
第五章 国際化時代に必要な英語とは? 平泉-渡部「英語教育大論争」
1 国際化と英語コミュニケーション能力
2 「平泉試案」の衝撃
3 「平泉新提案」をめぐる論争
4 「平泉試案」後の英語教育政策
第六章 外国語は「英語だけ」でよいのか? 英語帝国主義論争
1 言語帝国主義への先駆的な批判
2 一九九〇年代の英語帝国主義批判
3 中村敬と二つの英語帝国主義論争
終章 そもそも、なぜ、英語を学ぶのか? 英語教育論争史が問いかけるもの
おわりに
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商品情報
- シリーズ
- 英語教育論争史
- 著者
- 江利川春雄
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社選書メチエ
- 書籍発売日
- 2022.09.12
- Reader Store発売日
- 2022.09.09
- ファイルサイズ
- 24.3MB
- ページ数
- 296ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (3件のレビュー)
-
この年になっても、日々英語に悪戦苦闘しています。血のにじむような努力までやってないと言われるとそれまでですが。
一方、Google の翻訳の近年の進化の凄まじさを目の当たりにすると、本書の末尾に、リ…マインドされている、そもそもなぜ英語を学ぶのか? の目的は、脳トレを除いて、突然違うルートが現れて、Google に頼むことで、それぞれ目的達成が出来る日は近いようにも思ったりしてます。
これからは、英語教育論争史の指摘する繰り返しではなく、大きな転換が起こる、必要である、と思いました。続きを読む投稿日:2023.01.08
明治以来から同じ問題が何度も何度も蒸し返されては、何らの解決にも至っていない様子が丁寧に跡づけられている。数年前に「toeic不要論」がネット上で論議された。これもまた本書で解説されている、結論が出さ…れずに曖昧に終わった論争のひとつであり、明治以来の論争の範疇のささやかな変奏にすぎない。続きを読む
投稿日:2023.05.18
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