街場の平成論
内田樹(編著)
,小田嶋隆(著)
,釈徹宗(著)
,白井聡(著)
,仲野徹(著)
,平川克美(著)
,平田オリザ(著)
,ブレイディみかこ(著)
,鷲田清一(著)
/晶文社
作品情報
どうしてこんな時代になったのか?
「丈夫な頭」を持つ9名の論者による平成30年大総括
平成の30年は、日本の国運が「隆盛」から「衰退」へと切り替わる転換期だった。
なぜ30年前に期待されていた「あのこと」は起こらずに、
起きなくてもよかった「このこと」ばかり現実になったのか?
平成という時代の終わりに向けて、この間に生まれた絶望の面と希望の面を、
政治・社会・宗教・自然科学など9つの観点から回想するアンソロジー。
【目次】
まえがき ――内田樹
戦後史五段階区分説 ――内田樹
紆余曲折の日韓平成史 ――平田オリザ
シスターフッドと原初の怒り ――ブレイディみかこ
ポスト・ヒストリーとしての平成時代 ――白井聡
「消費者」主権国家まで ――平川克美
個人から「群れ」へと進化した日本人 ――小田嶋隆
生命科学の未来は予測できたか? ――仲野徹
平成期の宗教問題 ――釈徹宗
小さな肯定 ――鷲田清一
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この作品のレビュー
平均 3.7 (11件のレビュー)
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平成元年は1989年、「ベルリンの壁」の撤去が始まった年であり、その後の東西ドイツ統一、ソ連を含めた東側陣営の崩壊、東西冷戦の終結へと向かっていく最初の年であった。また、この年の12月29日には、日経…平均株価が38,915円の最高値をつけ、バブル経済の絶頂を迎えている。この年が絶頂であったということは、平成の時代を通じて、日本の経済は停滞あるいは衰退を続けていったということだ。
平成が終わったのは、平成31年、2019年のことだ。昭和が終わり平成が始まったのは、昭和天皇のご崩御によったわけであるが、平成が終わり、令和が始まったのは、平成天皇・明仁天皇が自ら退位の意思を示されたからであった。
平成の30年間というのは、どういう時代だったのか、ということを、内田樹をはじめとする論客たち、白井聡・平田オリザ・鷲田清一・ブレイディみかこ、といった人たちが論じた文章を集めたものが本書である。
内田樹が最初に書いていますが、平成が始まる時にはソ連が崩壊する等とは全く考えていなかったし、その後、プーチンが登場して、再度、強権的な国家に逆戻りする等ということは思いもよらなかった。また、日本の経済の強さが、ここまであっけなく崩壊してしまうとは全く思っていなかったし、それが30年間も現在進行形で続くとは、全く考えていなかった。
読んでみての感想は、ことほどさように、未来を予測することは難しいということである。日本の未来に対しては、今のところ暗い予測しかないが、もしかしたら、それがはずれるかもしれない、という超ネガティブな期待を感じた。続きを読む投稿日:2022.06.11
ブレイディみかこ氏は「シスターフッドと原初の怒り」という一文を寄せている。
1989年:平成元年の日本流行語大賞は「オバタリアン」、新語大賞は「セクシャル・ハラスメント」、そして2018年:平成30…年のそれは「#Me Too」がランクインということで、”セクハラに始まりセクハラに終わる”との小見出し。氏個人的には1989年は24歳で英国とアイルランドにいて、アイルランドは男を追いかけて行った、とありそれはアイルランド人移民の夫のことか?またストーン・ローゼズに夢中になった年であった。また1990年にイギリスでは税制上、既婚女性が初めて配偶者から分離された独立した税務者とみなされるようになった、ともある。
しばらく日本と英国を行ききし、1996年:平成8年に腰をおちつけるべく渡英した時はやっていたのが「スパイス・ガールズ」でスローガンは「ガール・パワー」。当時少女で現在活躍中の英国若手女性ライターたちがフェミニズムに目ざめた原点は子供の頃であった「スパイス・ガールズ」だという。それより上の世代は所詮作られたアイドル、と相手にもしなかったようだが、この「ガール・パワー」は女が女たちの支持を得て(たとえ小学生でも)、女たちをインスパイアして旋風を巻き起こした、のだという。対して日本にも2009年に流行語となった「女子力」はあるが、これは女が男たちの支持を得て男たちに愛されて、ほかの女たちより上に立つことで、「スパースガールズ」旋風は「ソーシャルな力」、「女子力」は「個人的な力」だという。
怒りが社会を変える、という考え方は英国に根強くあり、それはセックス・ピストルズであったり、英国労働党などにみられるという。その怒りをいま日本で一番多く持っているのは女性たちではないか、という。来るべき変化は、どこかから(既成のものから?)犬の餌のごとく与えられるのではなく、女性たちが、女性たちの力で手に入れなくてはならない。「シスターフッドと原初の怒り」を持つ、ガール・パワーがこれからの日本を変え得るという。
2019.3.30初版 図書館続きを読む投稿日:2021.10.01
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