父から子に伝えたい戦争の歴史
半藤一利(著)
/SB新書
作品情報
2021年1月、惜しまれつつもこの世を去った作家・半藤一利。
幕末・明治に始まったこの国の「近代化」への道のりは、「あの戦争」――第二次世界大戦への道のりでもありました。
終戦から77年を迎える今、令和の日本人が、過ちを繰り返さないために歴史から何を学ぶべきなのでしょうか?
数十冊もの著作たちのエッセンスを凝縮した、半藤史観の決定版!
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商品情報
- シリーズ
- 父から子に伝えたい戦争の歴史
- 著者
- 半藤一利
- 出版社
- SBクリエイティブ
- 掲載誌・レーベル
- SB新書
- 書籍発売日
- 2022.06.06
- Reader Store発売日
- 2022.06.06
- ファイルサイズ
- 0.6MB
- ページ数
- 224ページ
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この作品のレビュー
平均 3.3 (4件のレビュー)
-
この手の過去の引用本は一冊の書として流れよく纏まりよく読めないので余り手を出さないのだが、自身の好きな半藤一利氏の亡くなられた後に編纂されたという事で、追悼の意に加え改めて半藤歴史観を振り返るために読…んでみた。
結論としては心に残る言葉の連続に改めて戦争と平和について考える良いきっかけになったと思う。
中でも印象に残ったことばとしては、戦争に突き進む日本をよく表すだけでなく、日常の平和が如何に脆いものかを思い知らされる「思想が後からついていく、熱狂が先にある」という言葉にはマスメディアに加えインターネット動画に溢れる嘘や狂気に改めて恐怖を感じる。その上で「テロの恐怖をテコに策士が画策し、良識や理性が沈黙させられてしまう、これがいつの時代も一番危険な状態」。この状態で自身の考えを世に声高に叫べる人材が今の世に居るだろうか。政治家含め誰もが周りへの同調圧力に溢れている。
そして、歴史を学ぶ上で必ず遭遇する誇張や歴史を捻じ曲げる力。「人間は面白い。小沢治三郎、宮崎繁三郎、栗田健男は無言を通したが、その逆に沢山喋って嘘を並べた人もいた」。これだけは一つの書物から得られる知識に凝り固まってしまう危険性を表している。歴史はあくまで後世の人間が作って行く。其処に隠したい事実も入らなければ、正確な歴史感覚は得られない。だから沢山の書を読むべきであるが、最近はショート動画やまとめサイト、時短といったキーワードに代表される様に、歴史も学ぶから与えられる一方だ。
その様な歴史にも偶然の積み重なりや、各方面の思惑が渦巻いた結果であり、「鈴木貫太郎が海軍の不平等人事に腹を立てて辞めようとしたのを、父が出世するために入ったのか、と叱責して残った事が後の日本の命運を左右した。」からは、あり得ないifとその先の展開をどうしても考えてしまう自分がいる。
そもそも太平洋戦争に突入した背景には各国の思惑・狙い・行動の必然性を考える必要がある。日本が真珠湾を攻撃して始まった太平洋戦争。昭和天皇実録からは「一度始めた戦争を止める難しさを昭和天皇は感じていた」事が伝わってくる。始める前に終わらせ方をしっかり考えておかなければならないが、各国の思惑を正しく理解していなければ終わらせ方は見えてこない。
そうして始まった戦争に対しても、何が正しく何がいけないか、新聞社ですら国家の飼い犬にしかならず国民の思考を停止させる。新聞の態度に対して作家が憤りを感じて日記に記した「国民にいささかの謝罪もなく、詫びるいっぺんの記事も掲げない。手の裏を返す様な記事をのせて、訓戒的に上から目線なあたり、度し難き厚顔無恥。」からは今の私の新聞嫌いと同じである。押し付けは要らない。
日本人の本質をついている「黒塗りの教科書を見て、自国の歴史を尊重しない国民ができた」からは、都合の悪いことは隠して変えて仕舞えばいいという国民性に繋がっており、現代の政治家の態度もほとんど変わらない。これが日本人の国民性だと鋭く突いてくる。
そして敗戦に向かう日本。日本が唯一の被爆国としての責任を果たせているか原発再稼働も近そうな現在において非常に怪しいところではあるが、「ゴジラが東京に上陸した昭和29年8月の少し前、ビキニ環礁の水爆実験で被爆した第五福竜丸が焼津に寄港したのが3月。ゴジラは広島長崎に続いて水爆の脅威に晒されたことに対する日本の静かな抗議だった」という記述にはまだ救いがある様にも思える。然し乍ら、いよいよ食糧事情も苦しく、学生は勉強どころでもなくなり、焼け落ちた東京を見ながら筆者が感じた、「絶対に正義は勝つ、絶対に神風が吹く、絶対に日本は負けない、絶対と信じていたものが全て崩れゆく中、焼け跡で誓った「絶対」はなく、生き延びたのも「偶然」と考えた」中学時代の想いは迫力があり、正に歴史の証人として生きてきた筆者の戦争から学んだ教訓を表す文面だった。
筆者は晩年いよいよ、現代日本人へ強く問いかける。「日本人よ、自身の過去を見る目に厳しくあれ」は戦前・戦中・戦後の日本における選択的行動の結果であり美化せずに厳しい目で見よ、という将来の日本を憂う言葉だ。GHQにより骨抜きにされた国民が、正視してこなかった過去を今一度見つめ直し、将来の判断に活かせなければ、また歴史は繰り返すという警鐘に他ならない。本書を読みつくづく「歴史を学ぶ」大切さを感じると共に、その後に続く「歴史に学ぶ」に辿り着ければならないと思う。
最後に山本五十六の越後人気質からくる黙して語らずの性格が、リーダーに必要な説明責任を果たせていない(わからない奴に話しても意味がない)という点について、今の自分を振り返り大いに反省して書を閉じた。続きを読む投稿日:2023.07.16
今の平和な日本が存在するのは、あの戦争で命を懸けて戦った人たちがいたお陰だ。それは間違いない事実だ。
私自身は戦争を全く知らない世代。
しかし私の父親は1936年生まれのため、辛うじて戦争を実体験とし…て経験している。
語り継ぐべき物語は多数あるだろう。
我々が学ぶべきは戦争の歴史だけに限らない。
起こった事実を知ることは最低限必要であるが、大切なのは「なぜ戦争が起きたのか?」「なぜ止められなかったのか?」などの、「なぜ」の部分なのではないだろうか。
日本人の戦争の歴史を振り返ると、日清戦争まで遡るかもしれない。
国家レベルでの思考回路まで分析するつもりはないが、人間が集団になるとどういう意思決定をするのかは、非常に興味がある。
それは今でも組織の意思決定が、日々繰り返されているからだ。
会社の重要事項の決定がそれに類するが、相変わらず常に正しい判断をしているようには思えない。(もちろん会社による)
今でも企業の不正は起きているし、社長含めた役員の謝罪会見も見慣れた風景となっている。
つまり今でも意思決定というのは、何らか欠陥があるのではないだろうか、とさえ考えてしまう。
これは自分でも経験があることだが、明らかに全体の雰囲気が悪い方向に向かっているのに、それに意義を唱えることができなかったことがある。
会社の取締役会を見ていても、声の大きな、影響力の大きな人の発言は、現実的に一票以上の重みを持ってしまっているとも言える。
そういう中でどのように組織として正しい判断を行い、全体を正しい方向に導けばよいのか。
これは本当に難しいことなのだと改めて感じてしまうのだ。
本書に書かれる一行一行が本当に心に沁みる。
結局我々はあの戦争から何を学んだのだろうか。
今現在の日本が平和なのは素晴らしいことであるが、もしも過去から何も学んでいないとすれば、それではいけない。
おそらく近い将来、日本近隣での緊張は一気に高まるであろう。
もしかすると、本当に戦争が起こるかもしれない。
その時に我々はどういう行動をとるのだろうか。どういう判断を行うのだろうか。
本当に戦争に参加するのだろうか。
敵国から責められても、戦争を回避するために何も抵抗しないのだろうか。
実際には起きてみないと分からないことだらけだ。
だからこそ普段から考えて、過去先人たちはどういう風に考えたのかを学ぶ必要がある。
個人的には戦争は絶対に回避すべきだとは思っている。
しかしこちらの思いだけで成り立たないのが、戦争の不条理さだ。
もし戦争が起きたらどうするのか。
特に巻き込まれた場合に、我々はどういう行動をとるべきか。
常に心に留めておくことが重要なのだと思う。
(2023/3/12)続きを読む投稿日:2023.04.03
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