新しい声を聞くぼくたち
河野真太郎(著)
/講談社
作品情報
変わっていく世界と、ぼくたちのいらだち。
与えられた剣と鎧はどうやって手放したらいい?
映画や漫画など様々なコンテンツから、近年のフェミニズムの興隆の中で男性はどう生きるべきかを読み解く、画期的な文芸批評。
【目次】
はじめに
第一部 僕らは何を憎んでいるのか
第一章 能力と傷──ポストフェミニズム時代の男性性
第二章 やつらと俺たち──階級と男性性
第三章 男性性のいくつかの生き残り戦略──助力者と多文化主義
第二部 男性性、コミュ力、障害、そしてクリップ
第四章 『もののけ姫』と障害者の時代
第五章 コミュ力時代の男たち
第六章 「これは私の吃音だ!」──「個性」としての障害と治癒なき主体というユートピア
第三部 ライフコースのクィア化、ケアする男性
第七章 母の息子のミソジニー、母の息子のフェミニズム
第八章 ぼくら、イクメン
第九章 老害と依存とケア、そしてクィアな老後の奪還
おわりに──ケアする社会へ
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商品情報
- シリーズ
- 新しい声を聞くぼくたち
- 著者
- 河野真太郎
- 出版社
- 講談社
- 書籍発売日
- 2022.05.26
- Reader Store発売日
- 2022.05.25
- ファイルサイズ
- 13MB
- ページ数
- 344ページ
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この作品のレビュー
平均 3.8 (9件のレビュー)
-
前作で、今のポストフェミニズム時代がポピュラー・カルチャーの女性キャラクターにどう投影されたかを、斎藤環さんの「戦闘美少女」という言葉を用いつつ論じた著者(あれ以来、私は巷に溢れるアニメや漫画がその視…点でしか見えなくなってしまった。そのようなキャラを嗜好しているのは男性なのではないかという疑問は拭えないが…)。
では、男性は、男性キャラクターは、どのように描かれるようになったのかを論じたのが本書である。フェミニズムの問題とされていることのほとんどは実は「男性の(が?)問題」としたうえで、男性には、マジョリティである自分たちの加害性を自覚・反省する立場の者たちと、自分たちこそフェミニズムの被害者だと主張する者たちに分かれると指摘する。そして、ミソジニーの問題も取り上げつつ、ポピュラー・カルチャーの男性キャラクターは、マッチョな男性像から助力者としての男性像にシフトしつつあるという。
本書で扱われる主な作品は以下の通り。
『怪獣8号』『ジョーカー』『ヒックとドラゴン』『アナと雪の女王』『もののけ姫』『風の谷のナウシカ』『Beasters』『鬼滅の刃』『恋愛小説家』『英国王のスピーチ』『そして父になる』『わたしは、ダニエル・ブレイク』『家族を想うとき』『クレイマー・クレイマー』『きのう何食べた?』…。
前作同様、表紙と取り上げる作品群とは裏腹に、かなり骨太な論考が展開される。やはり作品の選び方は難しいなと感じる。全てを網羅できない以上、恣意的にらならざるを得ない。障害者と労働に関する記載など、あまり頷けない部分もあった。それでもしかし、大いに学ぶところがあった。続きを読む投稿日:2023.01.22
フェミニズム論の立場から映画、漫画などサブカルチャーを評論する。面白いのは、そこから推測されるような、サブカルチャーに現れるミソジニー的傾向を明らかにする、わけではないことだと思う。むしろ、本書の主眼…は、現代的な価値観の中で望ましいとされるケアする男性、イクメン的男性が、アッパーミドルの価値観=ネオリベラリズムと結びついているのではないかという問題提起にあるのだと思う。もちろんそういったフェミニズム的な価値観を否定するわけではなく、ポストフェミニズム的な状況からこぼれおちるものがミソジニーに結びついてしまう現状があることで議論を一歩進めている。障害者の負う障害が「個性」とみられることで障害者への支援が削減され、働ける障害者と働けない障害者の間での区別がなされるようになるという議論も背景にあるというのもはっとさせられる。ただ、当然ながらフェミニズム以前に戻ればよいという話ではなくその次を見据えてどうしたらという点については、自分の理解不足もあって見通せていないのではないか、とも思ってしまった。続きを読む
投稿日:2023.05.02
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