スタグフレーションの時代
森永康平(著)
/宝島社新書
作品情報
モノの値段は上がっているのに、労働者の給料は減り、購買力が低下する――モノと労働の値段が比例関係で上昇するインフレではなく、モノだけが値上がりする「スタグフレーション」。社会の教科書でさらっと触れただけの経済用語が、日本で現実に起ころうとしています。その理由とメカニズム、これ以上スタグフレーションに陥らないための処方箋を、若手人気経済評論家がわかりやすく説明します。
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商品情報
- シリーズ
- スタグフレーションの時代
- 著者
- 森永康平
- 出版社
- 宝島社
- 掲載誌・レーベル
- 宝島社新書
- 書籍発売日
- 2022.04.08
- Reader Store発売日
- 2022.04.08
- ファイルサイズ
- 16.6MB
- ページ数
- 224ページ
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この作品のレビュー
平均 4.3 (5件のレビュー)
-
普段から「物価おじさん」として、twitterで物価についてtweetをされている著者だけあって、豊富な図表と説明が分かり易いです。本書では日本で現在起きている物価上昇についてのざまざまな原因や対処法…などを著されています。
過去、何十年にも渡って日本政府が国内への投資を怠ってきたために、企業がなるべく安い費用で安い製品を作るために海外依存が強まってしまっていて、インフレが起こっているという説明には納得がいきました。やはり、金融緩和、財政政策を怠ってきたツケは大きく日本経済を毀損してしまっています。
所々で著者が嘆いている、自分の生活が貧しいために、障害を持った人々や弱者への優しさが欠けていってしまっている人がいるという風潮には、私も大いに嘆かわしく思います。続きを読む投稿日:2022.05.07
Japanization(日本化)という言葉が使われるようになったらしい。Japan as No.1とは真逆の意味を持つ言葉で,「アホな経済政策でアホな経済結果になること」だ。世界にとってJapani…zationは反面教師だ。科学的な観点があれば,結果が思わしくないなら方法に誤りがあると考えるはずだから,政策の方針転換が図られてしかるべきなのに,日本の場合,政治家や官僚は自分たちの過ちを認められないのだろう。とはいえ,そういう奴らを与党にしてしまっている国民の不勉強も,他国から見ればJapanizationに含まれているのではないかと思う。
*****
グローバル化に伴い,世界中の安い労働力を活用してコストを抑えるようになっていたため,国内消費量のほとんどを輸入に頼っていたことがわかる。平時はグローバル化の恩恵を享受できていたかもしれないが,非常事態においては供給がストップすることで一気に国内でモノ不足に陥ってしまうことが実証されてしまったのだ。
政府が財政赤字を気にして必要な投資すらもしなかったことで,日本はデフレ経済を脱却できず,その結果として民間企業も国内投資を控え,コストを抑えて売価を下げることでしか消費者を魅了できなくなってしまった。気づけば日本は海外に多くのモノを依存することになってしまった。(p.30)
一事が万事である。多くのモノを外部に依存し,国内での投資を抑制したために,モノづくり大国であったはずの日本は供給能力を大幅に落とした。
コロナ禍ではそれを実感する機会が数多くあった。ワクチンがいい例だろう。国内では作れず,ワクチン外交と称して外国にお願いして調達する始末だ。
ワクチン調達後は日本の国民性を背景に接種率が急速に伸び,先進諸国に比べて遅れが解消されたことで,本件を問題視する声は大きくならなかったが,これは日本経済の先行きを考える上では非常に懸念すべきことだ。(p.32)
日本が緊縮財政により失われた30年を過ごす一方で,中国は巨額の投資を背景に急成長を遂げた。その結果,食料の買い負けという予想もしていなかったインフレ要因が新たに発生したわけだ。経済力の差が物価にも影響を与えている。(p.38)
政府の失政[不景気なのに増税など]により景気が悪化すると,家計は将来を悲観し,これまで消費していた金額の一部を貯金に回すようになる。その結果,企業はモノが売れなくなるため,販売価格を下げてモノを売ろうとする。しかし,コストが下がって販売価格を下げたわけではないから,利益水準を維持するために設備投資や人材採用を控えるので,企業の成長率は低下するし,労働市場は悪化する。
更にコストを抑えるべく非正規雇用を積極的に雇うようになり,正社員の賃金も上げず,賞与も減少させていくだろう。そうなると,家計は可処分所得が減少したり,非正規雇用が増えることで将来不安は加速し,更に消費を抑えて貯金をするようになる。
こうなると再び企業の売り上げは現象するため,更に販売価格を下げてモノを売ろうとする。このように,一度デフレスパイラルに突入してしまうと,経済が縮小均衡していき,結果として失われた20年,30年という本来は絶対に避けなければならない事態を招くことになる。
デフレスパイラルを経験してしまうと,企業はコスト増を価格転嫁することで,物が売れなくなってしまうという恐怖を必要以上に感じるようになる。その結果,前項で確認したように,価格支配力を失っていき,企業努力でなんとかコスト増を吸収しようとする。
しかし,いずれは限界が来る。そこで誕生した苦肉の策が「ステルス値上げ」や「実質値上げ」と呼ばれる手法だ。値段もパッケージの大きさも据え置いており,見た目では何も変わらないようにしているが,パッケージを開けると内容量が減っているというものだ。これはこの数年で多くの方が体感したのではなかろうか。(pp,48-49)
仮に海外でインフレが落ち着き,その結果,日本国内でも物価上昇圧力が減退したとき,コロナ禍において緊縮財政と金融引き締めを推進した日本を待ち受けるのはインフレだろうか。それとも筆者が懸念するデフレだろうか。
なぜ欧米や中国が必死に日本化を避けるのかを考えてほしい。一度デフレスパイラルに突入してしまうと,そこから脱却するのは非常に難しいからだ。これはインフレを抑制するよりもずっと難易度が高いだろう。(pp.119-120)
つまり,解雇されてから最悪の選択をしてしまうまでには数ヶ月の猶予があるのだ。だからこそ,その間に国がしっかりと手厚い補償をして,1人でも多くの命を救うべきなのだ。しかも,本件については国が感染拡大防止のために経済活動を抑止したことが原因での解雇なのだから,そこに粗利補償や現金給付といった支援をすることは何もおかしくはない。SNSでよくみかける「俺たちの税金を弱者救済に使うな」というコメントなど笑止千万である。安全な位置からマウントをとって悦に浸る見にくい発言であり,見当違いも甚だしい。国が解雇の原因を作ったのだから補償すべきだし,そもそも実力不足や勤務態度が悪くて解雇されたわけでもないのだから,弱者呼ばわりするのもおかしな話だ。
失われた30年によって,まともな価値観すら失い,心が荒み切ってしまった人がこんなにも増えてしまったのかと絶望した瞬間でもあった。(pp.128-129)
効果が期待できるトリガー条項の凍結の解除を選ばず,効果が怪しい元売りへの補助金という策を選び,その結果,案の定「効果が出ない」ということで実地調査という無駄な仕事まで発生させた政府。この間も仕事や日常生活でガソリン価格に大きく影響を受ける人たちは苦しむこととなっている。これは明らかな人災というべきだろう。(p.151)
消費税を引き下げると事務作業が大変で現場が混乱するという意見も耳にするが,それなら消費税増税する場合においても同様だ。そもそも,現在は軽減税率が存在しており,軽減税率の対象を全品目とすればいいではないか。コロナ禍という世界的なパンデミック下においても消費税減税しないところをみると,もはや消費税減税という選択肢は現政権にはないのだろう。(p.168)
筆者は主にネット上の動画コンテンツでは何度も述べているが,政府やメディアは国民の「映し鏡」である。不満が高まると「政府が無能だ」,「メディアの質が落ちた」などといってしまいがちだが,それはつまり国民のレベルがそこまで落ちているということと同意で,天に唾するようなものだ。これもまた何度も出てくる卵が先か,鶏が先かの議論になるが,政府が無能なら,国民が頭を使い,監視するしかない。(p.173)続きを読む投稿日:2023.10.20
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