ある日 失わずにすむもの
乙川優三郎(著)
/徳間文庫
作品情報
アフガン、ミャンマー、イラク始め、今現在、世界を襲っている不幸。
そんな状況を予見したかのような作品!
ある日突然、起こりうる近未来の戦争。世界各国に生きる人々の奪われゆく日々や、愛情、未来。誰にでも起こりうる恐ろしい状況。明日には失う、いとおしい生活を、無駄のない研ぎ澄まされた美しい文体で描く。
この小説の主人公は明日の私たちかも知れません。
小説には力があると信じられる12篇!
誰が始めたともわからない近未来の戦争。昨日と同じ日が続くと思っていた日常が、ある日突然奪われる。
北米、ヨーロッパ、アジアの国々の参戦、そして日本。地球規模のパワーゲームが私たちに強いるであろう決断と残懐。
誰が始めたのか、何を争うのか、何もわからない。気付けばそこにあった戦争を、受容していく人々の姿に衝撃を受けた。
本作は、ふと日常にあらわれた戦争の暗い穴を提示する。作中の人々が穴に吸い込まれるように入っていく様子に驚きながら、自分もまたその後を追ってしまうのだろうと思った。
音が消えても心で鳴り響くブルースのごとく美しい文章。読み終えてもまだ心で鳴り続けている。
中江有里(作家・女優) 「Foresight」 2018/10/28
遠からず世界を襲うかもしれない不幸。
そのとき、人々はどのように旅立ち、何を失うことになるのか。
マーキスはNYのスラム育ち。戦争で、ようやく築いた生活とジャズミュージシャンの夢を奪われる。
フィリピンでは、17歳のマルコが銃をとり、人買いの手から娼婦の妹を守る。
グアムのホテルマンとして生活を築いてきたベンは、身重の妻に徴兵の知らせが届いたと告げる…。
ある日とつぜん踏みにじられるかけがえのない日々。夢や、幸せ、明日への希望が砕かれる理不尽な現実を描いた12篇。
「どこか涙のようにひんやりとして」
NYブロンクスで育った少年がジャズと出会う。
「万年筆と学友」
貧しい女子学生の淡い恋……。(カナダ)
「偉大なホセ」
ワイン農家のホセが蓄えたすべては……(スペイン)
「ニキータ」
ホテルマンとして築きあげてきたベンの生活が……。(グアム)
「みごとに丸い月」
中国系アメリカ人家庭。母国が敵になり…。(アメリカ)
「アペーロ」
房総に暮らす男。夢はアワビの養殖とボサノバ…。
「ミスター・パハップス」
恋人は夢想家。がんにきくという調味料を開発すると金を集め…(インド)
「足下に酒瓶」
いい波と酒があれば満足。サーファーたちの夢…。(ポルトガル)
「隔日熱病」
作家を目指して出会った出会ったのは…(パリ)
「十三分」
孤独な男が初めて知ったいとおしい世界。(アメリカ)
「こんな生活」
貧しい農家が豊かな暮らしを手に入れたが…。(中国)
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商品情報
- シリーズ
- ある日 失わずにすむもの
- 著者
- 乙川優三郎
- 出版社
- 徳間書店
- 掲載誌・レーベル
- 徳間文庫
- 書籍発売日
- 2021.12.08
- Reader Store発売日
- 2021.12.08
- ファイルサイズ
- 0.7MB
- ページ数
- 240ページ
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この作品のレビュー
平均 3.3 (3件のレビュー)
-
暗い未来と後に残される人の営み
副題をつけるとすれば「出征前」か。
本書が著者初のSF小説になるのかわからないが、近未来に勃発した第三次世界大戦が舞台となっている。
戦争の詳細は詳しく書かれていないが、察するにアメリカなど西側の…主だった国々は参戦していて、相手は中国であることは間違いない。
どうも北アフリカや東南アジアなどが主戦場なのか?
「向こうには核兵器を使うかもしれない馬鹿が三人いるけど、こっちには十人いるのよ」とあることから、中国・ロシア・北朝鮮か。
兵器も比較にならないほど高度化していて、無人かつステルスで、航続距離も破壊力も桁違い。
兵や都市が数万・数千万単位で一瞬にして消し飛んでいるのに、なぜか戦争は長引き、召集令状は先の大戦と変わらず隅々まで届けられる。
「怖いわ、いったい彼らはなにがほしいの」「地球だよ」という台詞を読んでると、ますますリアリティが乏しくなって、著者はなんでこんな荒唐無稽な設定を選んだんだろうと首を傾げたくなってくる。
ただ、召集前に起こる人間ドラマを、現代に近い形で描いてみたいだけなら、もう少しディテールを詰めてほしかった。
核兵器でも何でもありなのに、これほど長期に大量動員される戦い方など皆目検討がつかないのだが。
それでも相変わらず読ませるし、文章も巧い。
各篇とも極めて短いショートショートながら、とても読み応えのある内容なので、もう少しリアリティのある設定にしてほしかったというのが正直なところ。
「世界が大戦という最悪の事態に向かっていることを多くの人が感じていながら、他国の強欲な権力者たちにいいように振りまわされて、戦争はある日なんの脅威もない風のように起きてしまった」
「ある日なんの脅威もない風のように」という表現が、とてもいまの状況とマッチしていて、背中にうすら寒いものを感じた。
「ベベートはあまりに小さく生きてしまった青春を惜しみながら、婦人の足取りに目をやった。少し不機嫌そうに、しかし小股で歩く姿はしっかりとして、この美しい坂の街にふさわしい人影であった。歩調はこつこつと生きてきた人の強さのようであり、時代を憎む人の地団駄のようでもあった。雨上がりの石畳はひっそりと輝き、婦人の後ろ姿にも雨のあとがあった。その貧弱なようすが今日の彼には美しく見えて、うつろな視野から消えてゆくまで目をあてていた。するうち唇が震えて、思ってもみない寂寥が押し寄せてきた」
何度も口遊みたくなる美しい文。続きを読む投稿日:2023.10.26
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NYのスラムで生まれたマーキスは、弟とともにジャズミュージシャンとして生計を立てていた。そんな中、近々戦争になるという噂を耳にし……
ある日戦争によって失われる日常を描いた短編集。ゆっくりとあるいは突…然に、容赦なく。
続きを読む投稿日:2023.02.25
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