この作品のレビュー
平均 4.1 (10件のレビュー)
-
「読書論」ではなく「読者論」である。小説の読み方は読者の自由であるが、全くの自由ではなくある決まった型があってはじめて成り立つと説く。そして、そのような抽象化された読者が成立したのは高々100〜200…年前のことだそうである。漱石が多く取り上げられているのも、私にとっては面白かった。続きを読む
投稿日:2021.09.25
本著の「はじめに」で述べている「内面の共同体」がどういったものなのか、よくわからなかった。しかし、この本を読んで、断片的に得られたものは多かったように思う。
本文引用
p33「テクスト論は作者にだけ…は分析のベクトルを閉じておくが、それ以外のいかなる要因にも開かれている。つまり、テクスト論は立場であって、固有の方法は持たないのである。テクスト論の立場に立つ研究者はたとえてみればテストパイロットのようなもので、たとえばそのテクストについては一般の読者が採用しないような枠組から読んで、テクストの可能性を限界まで引き出すのが仕事なのだ。」
p40「ワインのボトルにワインが半分入っている状態があるとしよう。これが『事実』(=物語内容)だ。この『事実』をどう語るのか(=物語言説)を研究の対象にするのがナラトロジーなのである。」
p56「私たち大衆が読者になったのはそんなに昔のことではない。」
「第一は、印刷技術による書物の大量生産が可能になること。第二は、多くの人々が読み書きの能力。持つこと。第三は、学校教育によって知的な能力が平準化されること。第四は、特に国語教育と、隠れたカリキュラムと呼ばれる児童や生徒や学生の自主的な学習によって、感性が平準化されること。第五は、黙読ができる能力と空間(個室)を持つこと。第六は、これらの条件を備えた階層が大衆として成立すること。第七は、マスメディアの影響も受けて、特にその階層内では共同体意識が持てること。第八は、それでいて自分が独立した個人であるという意識を持てることである。少なくともこれら八つの条件があってはじめて私たちは近代的な読者となったのだ。」
p58「先の八つの条件は中産階級。成立させる条件そのものだと言える。」
p87「私たちは本を読むとき、さまざまなことを期待している。なぜ期待するのかと言えば、事前に多くの知識があるからだ。作者名、タイトル、本の装幀、本の判型、帯の惹句、広告の惹句、書評などなど、本をめぐるさまざまな知識を、文学理論では『パラテクスト』と呼ぶ。」
p90
「内」、「境界領域」、「外」という三つの位置。そして、それらの領域間の移動によって、物語は四つに分類できる。
①浦島太郎型〈内→外→内〉
②かぐや姫型〈外→内→外〉
③成長型〈外→内〉
④退行型〈内→外〉
p124「『異化』とは、物事を生き生きと表現し、生き生きと読まれるために、物事がふだんそう呼ばれている呼び方を用いず、過度の描写をするように書くことを言う。」
「たとえば、『目の下の隈』と書けばすむところを、『大きな落ち込んだ彼女の眼の下を薄暗い半円形の暈が、怠そうな皮で物憂げに染めていた』と書くのだ。(夏目漱石『道草』)」
p139「感情はその具体的な対象がなくなれば、解消する。」
「しかし、気分はそうではない。具体的な対象を名指すことができないから、解消することはない。いつまでも人を捉えてはなさない。」
p140「芥川龍之介に関する情報、憂鬱の伝染という文学的な気分の系列、横須賀という固有名詞がもつコノテーション(暗示的な意味)。これらのいずれによっても『蜜柑』を支配する気分を説明することができるのである。そのどれを選ぶかは、読者がどういう枠組で『蜜柑』を説明しようとするかによって決めればいい。私は二番目を、ベースとしながら、小品の言葉から引き出せる三番目の説明の仕方を最も重視したい。」
p164小森陽一による「主人公」の定義
→「意味論的場の境界線」を超える者
p168「フェミニズム批評が主人公という制度と関わるとすれば、多くの場合、現実の性別を離れて女性として読むことで『意味論的場の境界線を超える主人公』を新たに『発見』することによってだろう。」続きを読む投稿日:2023.08.26
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。