成熟と喪失 ―“母”の崩壊―
江藤淳(著)
/講談社文芸文庫
作品情報
「成熟」するとは、喪失感の空洞のなかに湧いて来るこの「悪」をひきうけることである(本文より)――「海辺の光景」「抱擁家族」「沈黙」「星と月は天の穴」「夕べの雲」など、戦後日本の小説をとおし、母と子のかかわりを分析。母子密着の日本型文化の中では、「母」の崩壊なしに「成熟」はありえない、と論じ、真の近代思想と日本社会の近代化の実相のずれを指摘した、先駆的評論。
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商品情報
- シリーズ
- 成熟と喪失 ―“母”の崩壊―
- 著者
- 江藤淳
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社文芸文庫
- 書籍発売日
- 1993.10.04
- Reader Store発売日
- 2021.05.21
- ファイルサイズ
- 1MB
- ページ数
- 302ページ
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この作品のレビュー
平均 4.3 (12件のレビュー)
-
1967年に発表された、戦後評論における屈指の名著と言っても差し支えのない一冊。エリクソン『幼年期と社会』で語られている米国の母子関係というものを日本のそれと対峙させ、日本の戦後文学で家族というもの…がどの様に描かれているかを分析することで、その社会構造が持つ問題点を炙り出す。
本書では、日本の家族というものが農耕的・定住的な土壌による母子関係にあるものだと捉え、キリスト教のような絶対神というものが不在な故に父というものの象徴は欠けてきたのだと説く。そして、敗戦という経験が完全なる西欧化=母性の世界の崩壊をもたらしたにも関わらず、父というものは「恥ずかしいもの」として象徴されたままであり、人工的な環境だけが日に日に拡大していった結果、家族というものから様々な問題が生じてきていると喝破する。
僕らは戦後日本の歴史というものについてほとんど知らない。それは幾つもの断絶を抱えたまま、放棄されている。そんな中で、戦後という枠組で一つ言える事があるとすれば、それは絶えず「家族」というものが問題を抱え続けたままでいるという事だろう。そう、一人の人が同時に父であること、夫であること、男である事というのは等号が成り立つけれども、母である事、妻であること、女であることというものには決して等号は成り立たない。そして、この不均衡な構造こそが、今も多くの問題を生み出している。そう、決して等号が成り立たないものを相手に求めようとするのは、やっぱり無理なんだよ。
著者は本書で述べる。成熟するというのはなにかを獲得するのではなく、喪失を確認することであり、その空洞のなかに沸いてくる「悪」を引き受ける事であると。僕らはこのような問題を乗り越えて、成熟に辿り着くべきだろうか。それとも、その成熟が西欧的価値観である事を考え、成熟するのではなく別の道を考えるべきだろうか。いずれにせよ、戦後論から現代の家族論、果てはオタク論にまで射程を捉えた、読まれるべき一冊。続きを読む投稿日:2011.12.18
このレビューはネタバレを含みます
母子密着の日本型文化(概念と素朴実在論)から近代化への思想と実相のずれを戦後日本の小説を通し、分析したもの。
レビューの続きを読む
・実在と幻覚と不審者(他者)の存在。みずからの存在の歴史的確認。
・母の崩壊なしに成熟はあ…りえない。「成熟」するとは、喪失感の空洞のなかに湧いてくるこの「悪」をひきうけること。決定的な喪失、そして自由と解放。フロンティアへ。問答を繰り返すこと。人はイメージによって生きる 現実によって生きはしない。
・個人であり、お互いは他者。stranger との倫理的な関係、それは近代であり歴代の家庭のイメージを粉砕されるもの。断片的な「静物」それより複雑かつ有機的なものへ。心理的象徴が自然を多様なものへ。
一読ではなかなか読みにくく難解なものだったが、戦後日本の小説をとおし、日本の近代化へおける母と子の分析から成熟と喪失を謳った本であり興味深かった。続きを読む投稿日:2022.03.27
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