この作品のレビュー
平均 3.6 (8件のレビュー)
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中世やルネサンスの宗教画や彫刻に黒人、ユダヤ人、ジプシー(ロマ)として描かれているのはどのような場合にどのような意図であるものなのか、多くの作品を見ながら解説したもの。逆に「本来は黒い肌であった人を…ことさら白い肌に描くことで、黒い肌に聖性を与えることを拒むかのように」(p.173)描かれた作品、というのもある。
キーワードはロマン主義、オリエンタリズム、「神と黄金」(西洋の植民地主義)、世界宗教的(エキュメニカル)といった感じだろうか。「下心」、「脚色」、あるいは暗黙のうちに、あるいは無意識的に不当な他者化する例というのを色々見ることになる。読み終わっても強烈な印象を残しているのは、「静物」として描かれる黒人(p.50)、「まだらの黒人」(p.51)、そして最後の「黒い脚の奇蹟」(pp.182-3)だろうか。最後の「黒い脚」の主題は、「このテーマ自体が残酷にしてレイシズム的なのだが、最初に見たビロルドの彩色浮彫は、エチオピア人の脚が生きたまま切りとられ移植されるという点で、特異かつ冷酷この上ないもので、もともとバリャドリードの修道院に飾られていたというから、当時の修道士たちはどのような目で眺めていたのかと、その感性を疑いたくなるほどである。」(p.184)というのは全くその通りで、悪趣味というか犯罪的かつ悪魔的な感じがする。後の時代によってナチによって利用される「頭蓋計測学」というのは、18世紀末に唱えられ、さらに「ルネサンスの画家たちが解剖学に並々ならぬ関心を示した」(p.59)ことからも、美術に「ひとつの着想源があったと考えることもできる」(同)というのは意外なつながりだけど納得した。そして、「置換神学」と呼ばれる、「キリスト教のルーツがユダヤ教にあることを軽視したり隠蔽したりするような言説が幅を利かせるようになる」(p.117)という、そういうことまであるのかと呆れてしまった。あとはもっと具体的なことで印象的だったことのメモ。ハウステンボスっていうテーマパークがあるけど、オランダのデン・ハーグにハウステンボス宮殿というのがあるらしい。そしてそこには日本の鎧兜が頂点に描かれた、搾取した品々(黒人の女性も)を誇示?する作品というのがあるらしい(p.50)。あとはジプシー(ロマ)について、「インドの北部からおそらく十一世紀ころに西方に移動をはじめたとされるジプシーが、はるばるヨーロッパ各地に出現するのは十五世紀のこと。それ以来、彼ら流浪の民は、基本的に定住を当たり前としてきた社会にとって、ひとつの驚異にして脅威とみなされることになる。そのジプシーの代表的な仕事のひとつが占いで、そのすきを見て、何も知らない無垢な客たちからまんまと金や宝石をくすねるという手口が、十七世紀には人気の絵画のテーマになっていたのである。」(p.93)という、そんなものが人気の絵画のテーマって、本当に何が主題として選ばれるのかよく分からないなあと思った。そんな中で、ハガルとイシュマルを描いた絵画で、p.106のマッティア・プレーティという人の描いた「ハガル母子の追放」の「毅然とアブラハムを見つめる彼女の顔」(p.107)や、「みずからの運命を自分の意志でしっかり受け止めようとしているようにさえ見える」(同)イシュマルの表情は、「まさしく救いにして恵みのように見える」(p.109)と著者は言うが、本当に暗い絵が並ぶ中で救われた気になった。
テーマはとても興味深い。日本美術とレイシズム、というテーマでは本が出来ないのかなあと思う。(21/09/19)続きを読む投稿日:2021.09.19
宗教画に描かれた人物像に人種差別の萌芽を見出す。
ここでは「ロトの子どもたち」や「東方三博士」などの画を例にとる。
虐げられるものや、やっちまった人物がカラードで描かれるのは何故なのか。偏見はどこにで…もいつでも存在するんだということに気づかされるよね。続きを読む投稿日:2023.09.23
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