北朝の天皇 「室町幕府に翻弄された皇統」の実像
石原比伊呂(著)
/中公新書
作品情報
建武三年(一三三六)、京都を制圧した足利尊氏は新天皇を擁して幕府を開いた。後醍醐天皇は吉野に逃れ、二帝が並び立つ時代が始まる。北朝の天皇や院は幕府の傀儡だったと思われがちだが、歴代将軍は概して手厚く遇した。三代義満による南北朝の合一以降、皇統は北朝系が占めた。一見無力な北朝は、いかに将軍の庇護を受け、生き残りに成功したか。両者の交わりをエピソード豊かに描き、室町時代の政治力学を解き明かす。
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商品情報
- 著者
- 石原比伊呂
- 出版社
- 中央公論新社
- 掲載誌・レーベル
- 中公新書
- 書籍発売日
- 2020.07.25
- Reader Store発売日
- 2020.09.30
- ファイルサイズ
- 3.6MB
- ページ数
- 272ページ
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この作品のレビュー
平均 4.2 (13件のレビュー)
-
日本史に「南北朝時代」というモノが在って、「南朝」と「北朝」とが在ったということは何度も聞いていて、記憶にも残っている。では、その「南朝」や「北朝」は如何いうような経過を辿ったのか?歴史の教科書に登場…する「〇〇天皇」という名の中では何となく目立つ存在である後醍醐天皇が関わる「南朝」は話題に上ることが少し多目なような気もするのだが、「北朝」というモノの経過に関しては承知している事柄が、何やら酷く少ないような気もする。
或いは本書は、「北朝」という切口で「所謂“室町時代”そのものの変遷」の概要を判り易いモノにしてくれているかもしれないというようなことも思った。
“皇位”というモノは、継承権が在ると見受けられる何人かの中から選ばれた継承者が受継ぐ訳だが、概して「天皇の子や孫」か「天皇の兄弟」か「天皇の兄弟の子」ということで受継がれて行った。そういうことになると、「A皇子の系統」、「B皇子の系統」と皇位継承権を有する人達の系譜に分裂が生じる。
こうした皇位継承権者の系譜に分裂が生じるような事象は古くから何度も見受けられるのだが、「南北朝時代」という状況に入って行く前段の鎌倉時代後半には「大覚寺統」と「持明院統」との分裂が少し「拗れて」しまったような感になっていた。そして所謂「建武新政」の起こりと挫折、室町幕府発足から日が浅かった頃の混乱というような状況の中、後世に「南北朝時代」と呼ばれる状況が生じるのである。
皇位継承権者の系譜に分裂が生じるような事象は「大覚寺統」(南朝)と「持明院統」(北朝)ということに留まらず、実は「持明院統」(北朝)の中でも生じてしまったという経過も在る。
「南朝」は「飽くまでも理想を追う」というような在り方を目指したのに対して、「北朝」は「飽くまでも生き残る」というような在り方を目指したのかもしれない。その「北朝」が如何にして生き残り続けたのか?それが本書のテーマになる。
「北朝」というモノは、「室町幕府」が統治者として君臨する“権威”を獲得するために「丸抱え」を図ったモノであり、「北朝」の側でも生き残りのために「抱えられることにした」という、独特な「共存体制」なのだった。それが何代にも亘って継続し、やがてその「室町幕府」と「北朝」との「共存体制」が維持し悪くなって行く。
本書ではこういう事柄に関して、様々な史料から判る多彩な挿話を織り込みながら判り易く説いている。全体として、深い思惑が一致して共謀的な関係に在りながら、関係者個々人の性格や相性で色々と揺れる経過も交えて、長く続いた両機関の数奇な物語という感じに纏まっているかもしれない。少し夢中になってしまった…ハッキリ言えば、「小説やテレビドラマの主人公のモデル」というような人物達が多く居る訳でもない、室町時代の将軍や天皇というような人達に関して、「何となく動き回る様子、交わしている会話の感じ」が思い浮かぶような内容が綴られた本書は、単純に酷く面白かったのだ…
本書の“あとがき”の部分等に「クロ以外はクロではない」と「シロ以外はシロではない」という表現が対で登場する。
「クロ以外はクロではない」?「これだけは絶対にダメ」ということでもない限り、或る程度は何でも容認してしまうような余地を残す在り方…「シロ以外はシロではない」?「こうでなければならない」というモノ以外は容赦しないというような感の在り方…というような感ではないかと思う。
「クロ以外はクロではない」は「北朝」の経過で、「シロ以外はシロではない」は「南朝」の経過であったかもしれない。が、そういう古い時代のことに留まらず、“時代の精神”とか“傾向”というようなモノは「クロ以外はクロではない」と「シロ以外はシロではない」との間を揺れていて、現在でもそういう“揺れ”が在るのかもしれない。
なかなかに興味深く読了した一冊であった!続きを読む投稿日:2021.01.25
南北朝の合一で後亀山天皇は上皇となり、京で暮らすことになった。足利義満は後亀山院に自分が注いだ酒を飲ませることで、自分が格上と印象付けた。この種の醜い宴会文化は現代日本にも残っている。
後亀山院は両…統迭立が反故にされたことに反発した。
「持明院統と室町幕府は、三種の神器と皇位を掠め取った。その罪は万死に値する」
後亀山院は京を出奔して再び大和国の吉野に潜伏する。南朝の遺臣達が集まり、後南朝の活動が続いた。後亀山院には義満のアルハラへの反発もあっただろう。
室町時代は将軍家と朝廷の宴会が多かった。応仁の乱の最中も宴会三昧であった。室町幕府は将軍の権威を高めるために朝廷の権威を利用した。朝廷も幕府が必要であった。このために将軍と朝廷は近しい関係であると演出する必要があった。実際に仲が良くなくても、本音は嫌でも付き合わなければならかなった。現代日本の飲みニケーションと重なる。
これに対して室町幕府第九代将軍の足利義尚は朝廷関係者との酒宴や公的な儀礼を嫌った。遅刻、早退、欠席が多い(石原比伊呂『北朝の天皇 「室町幕府に翻弄された皇統」の実像』中公新書、2020年、216頁)。蚊に刺されてかぶれたという欠席理由がある。仮病によるサボりも多かっただろう。酒が飲めない訳ではない。むしろ義尚は大酒飲みであり、それが死因になった。
趣味の和歌では公家とやり取りしており、興味のある分野では積極的にコミュニケーションをしている。義尚が嫌ったものは儀礼的な付き合いである。儀礼的な付き合いを無駄と考える現代人的な合理主義精神を持っていた。
これには歴史的な必然性がある。応仁の乱後は守護在京制が崩壊し、将軍と朝廷の儀礼的昵懇関係を守護大名達に見せつける必要性が低下した(『北朝の天皇』225頁)。義尚が儀礼的な宴会を嫌ったことは歴史の流れに沿っている。
これは現代の忘年会スルーにも重なる。昭和には飲み会は仕事という感覚があった。
「今も昔も日本社会における酒宴は、ただの遊興ではない。社交の場であり、“政治”の場でもある(ゆえに特に若手にとって忘年会などはストレスを感じる場となるのだが、それでも参加しておいた方が何かと合理的なのである)」(『北朝の天皇』210頁)。
しかし、人間関係だけで仕事するような無能公務員は別として、アウトプットで評価するならば宴会参加の意味はなくなっていく。宴会参加強要はアルハラでしかなくなる。続きを読む投稿日:2022.11.24
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