悩ましい国語辞典 ー辞書編集者だけが知っていることばの深層
神永曉(著)
/時事通信社
作品情報
日本最大の辞書「日本国語大辞典」編集者はまだまだ悩んでいる!
言葉の謎はさらに深まる!
齋藤孝さん推薦!
そんたく【忖度】[名]
「忖」も「度」もはかるという意味。他人の心を推し量ることで「なにか配慮をする」の意味はない。
しんしゃく【斟酌】
配慮までする意味なら「忖度」でなく、「斟酌」の方がしっくりする。この語「手加減する」と意味は変化し続け、今、忖度で起きている現象が斟酌でも起きている。
うんぬん【云々】[名]
「でんでん」と読んだ首相はかなり高度な誤読をしている。
ちちくる【乳繰る】[名]
「乳繰る」と書くのは当て字、本当の語源は…。
けいたいでんわ【携帯電話】[名]
なんと明治18年の新聞記事に登場している。「海軍省にて携帯電話数十個を製造になる由にて…」。
じくじ【忸怩】[形動タリ]
恥じる意だが、自らを恥じる意だが、国会議事録検索システムでみると恥じてない議員が多い。
めど【目処・目途】
「めどが立つ」の「メド」はマメ科の植物。
だらしない[形][文]だらしな・し[ク]
「しだらない」の言い違えから生まれた。「あらたし」→「あたらしい(新しい)」「さんざか」→「さざんか(山茶花)も…。
ごねる[動ナ下一]
意味は江戸時代には「死ぬ」だった。「不平を言う」は昭和以降。
まけずぎらい【負けず嫌い】 [名・形動]
「負けないのが嫌い」=「勝ち嫌い」なの?
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この作品のレビュー
平均 3.7 (6件のレビュー)
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いやあ、これは読みごたえがあった。新聞広告にあった「人一倍って何倍?」というコピーが面白かったので、言葉についての軽い読み物かと思って読み出したのだが、著者はあの「日本国語大辞典」の編集者、実にみっち…り濃い内容であった。
言葉の誤用や揺れについて書かれた本はよくあるが、ここまで多くの語や成句が挙げてあるものはあまりないだろう。また、「これこれしかじかの理由でこれは誤用です」と指摘するだけでなく、どの程度そうした使われ方が一般的になっているか、なぜそのように使われるかなどについても考察されていて、そこが面白かった。
著者は仕事柄か、「言葉は変化していくもの」といたって柔軟な考え方をされているが、一方で、明らかな誤用についてはきちんと対処すべきだとしている。世の中で使われている言葉はできるだけ載せていくのが辞書の務めではあるが、辞書は言葉の「鏡」であると同時に「鑑」でもある(このあたりのことは、本書でも言及されている「辞書になった男」に詳しい。あれは本当に面白かった)。節操なく現実の後追いばかりすべきではないという考えが繰り返し述べられている。同感だ。
引用するとキリがないのでやめておくが、そうだったのか!ということの連続。自分自身間違って使っていたり、誤用だとばかり思っていたのがそんなに単純な話ではなかったり。特に、従来はなかった意味で使われている語がいろいろあることに驚いた。自分も何の抵抗もなく口にしていた言葉もあって、ついエラソーに「その言葉遣い間違ってるよ!」と言いがちな身としては、反省しきりでありました。
・「人一倍」の説明はとてもわかりやすく、「人よりちょっとだけ頑張る1.1倍くらいでいい」そうだ。二倍じゃないんだなあ。
・辞書みたいに、「あいうえお順」に語句が挙げられている。あれどうだったかなあ、と探すときにとても便利。ナイスです。
・巻末にある「辞書編集者の仕事」という文章も興味深い。三浦しをん「舟を編む」などにもふれながら、実際の仕事内容について述べられている。「舟を編む」はやはり傑作だなあとあらためて思った。続きを読む投稿日:2016.01.25
日本を代表する国語辞典の編集者である神永さんが、現代に見られる日本語のさまざまな誤用・変容の実態を取り上げ解説してくれます。
予想どおり、私もたくさんの間違った理解や誤った使い方をしていました。例…えば、「君子豹変」「姑息」「にやける(若気る)」「憮然」「谷」「松竹梅」・・・。
言葉も未来永劫不変というわけではなく、その使い方が変化していくことは当然ではありますが、できればその変化には“確信犯”で追随していければと思いますね。(ちなみに、この“確信犯”の使い方も「確信犯」です)続きを読む投稿日:2020.12.04
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