若い読者のための宗教史
リチャード・ホロウェイ(著)
,上杉隼人(著)
,片桐恵里(著)
/すばる舎
作品情報
13万年前、ヒトはすでに死後の世界に関心をもっていたヒンドゥー教 、仏教、ユダヤ教、キリスト教、イスラーム教──。世界の名だたる宗教が、どのように生まれ、広がってきたのかには、政治、人の移動、階級や奴隷制度など、歴史的事情との深い関わりがある。5大宗教の紆余曲折をはじめ、古代の宗教、ジャイナ教やゾロアスター教、中国の儒教や道教、日本の神道、そして現代の新しい宗教などについても論理的に解説する本書は、世界を理解するための礎となる。
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商品情報
- シリーズ
- 若い読者のための宗教史
- 著者
- リチャード・ホロウェイ, 上杉隼人, 片桐恵里
- 出版社
- すばる舎
- 書籍発売日
- 2019.04.13
- Reader Store発売日
- 2019.05.10
- ファイルサイズ
- 11.2MB
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この作品のレビュー
平均 4.0 (11件のレビュー)
-
イェール大学出版局 リトル・ヒストリーシリーズの「宗教史」。「宗教史」の他に「考古学史」「経済学史」「アメリカ史」「哲学史」が日本語でも出版されている。各テーマで厳選された人がたぶん著者になっているの…で、系統立てて学びなおすのにやはりちょうどよい。
「宗教史」の担当は、スコットランド聖公会の主教であるリチャード・ホロウェイが務める。特定の宗教の宗教家が、第三者的に他の宗教についても公平に記述しなくてはならない上に、宗教自体についても時に批判的な視点が必要となるような本の著者として適切なものかわからない。だがおそらくは、著者自身も人格神や死後の世界の存在を信じているわけではなさそうだ。それでも主教となりうるのかはわからないが、少なくとも宗教が人生に与える影響については、おおむね肯定的である。宗教が必ずしも良い部分だけではなく、時に狭量な部分が多くあることを認識しながらも、良い影響を与えているべきであると想い、多くの人々がそう同意してくれることを願っている。
いずれにせよ、歴史の事実として、宗教の影響は甚大であった。宗教を信じることはなかったとしても、宗教史についてはよく知っておくべきであろう。本書では西洋のキリスト教だけではなく、古代宗教、ヒンドゥー教、ジャイナ教、仏教など輪廻転生を基本とした宗教や、儒教、道教、などの中国の思想にも触れている。
中でもやはり、世界宗教としての一神教の誕生とその欧州・中東での歴史はやはり重要であり、ユダヤ教、キリスト教については当然詳しい。中世の西洋における宗教改革が持つ意義に関してもしっかりとした認識が必要であろう。ただ、同じ一神教であるイスラム教については近年の影響力からもう少し紙幅を割いてもよかったように思う。
エホバの証人や統一教会などの新興宗教にも目配せがあるが、一概に否定的ではなくその出自の記述に徹して評価を読者の方に委ねているようにも感じ取れる。
さらに著者は、世俗的ヒューマニズムも宗教の系譜に含めて語る。ユヴァル・ノア・ハラリの『ホモ・デウス』でヒューマニズムが一種の宗教として扱われていたのと同様だ。ヒューマニズムを現代社会最大の教義として見る観点は、やはり非常に重要である。神が死んだ後にも、何かその代わりとなるものを人類は必要としたのである。そして、著者はそのことを次のように書く。
「人間の本質は真空を嫌う。そのため、西洋ではキリスト教の衰退によって残された隙間を埋めるかのように、世俗的ヒューマニズムと呼ばれる運動が生まれた」
宗教に関して、何より次の最後の言葉が著者の気持ちをよく示していると思う。
「宗教は多くの鉄槌をすり減らす鉄床だ。世俗的ヒューマニズムよりも生き延びるかもしれない。現在宗教は多くの地域で凋落傾向にあるが、まだ地上で最大のショーであり、あなたの近くでも礼拝が行われている。だが、そのチケットを買うかどうかはすべてあなた次第だ」
宗教を、その宗教を信じている人のように信じることをもはやできないが、それを「ショー」と呼ぶことで、ぎりぎりの肯定を表現している。しかしながら、その肯定は個々の宗教の多くの信者にとってはおそらく受け入れがたいものである。それらの人にとって、信仰はチケットを買うような行為とは質的に違う。しかし、著者は自らの思想を最後に表明するにあたり、このような表現をすることを選択したのである。
この譬えは実は根深い。チケットを買ってショーを見る人は、チケットの代金とそこに来るまでにかかった時間と手間を思い、「ああ、やっぱりいいショーだったよね」とその内容の正当な評価によらずに自らに言い聞かせることになる。
どのチケットを買うのかも含めて、本当にあなた次第なのだろうか。そして、世俗的ヒューマニズムのショーのチケットを知らず握りしめている人は何を見たがっているのだろうか。
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『ホモ・デウス 上: テクノロジーとサピエンスの未来』(ユヴァル・ノア・ハラリ)のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4309227368
『神は妄想である―宗教との決別』(リチャード・ドーキンス)のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4152088265
『まんが パレスチナ問題』のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4061497693
『イスラエル・パレスチナ問題の根源を知る 聖地・エルサレムから』のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/B00HD0BOV4
『神は、脳がつくった 200万年の人類史と脳科学で解読する神と宗教の起源』のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4478102953
『若い読者のための経済学史』のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4799106848
『宗教を生みだす本能 ―進化論からみたヒトと信仰』(ニコラス・ウェイド)のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4757142587続きを読む投稿日:2019.12.21
途中までしか読めぬまま期限が来てしまった。読みやすくて面白かったけど、やはり何度も中断すると集中力が切れてしまうなあ。名前は聞いたことあるけど……という宗教について、あーそんな成り立ちだったのか!と広…く知れる感じ。まあなんかみんな宗教を都合よく解釈するし、何より預言者って本当に神の声を聞いたのか?でっち上げたのか?精神疾患だったのか?と思ったりもする。でもみんな同じような行動をとるんだから本当に神の声が聞こえているのかも。それにしては、日本人神の声聞こえてなさすぎる気がするけどなあ。
最後まで読み終えたので改めて書く。人は自分を正当化するための巨大な後ろ盾を求めていて、その点で神ってのは非常に便利で有力な存在なんだなあって思った。自分も教会関係者?なのに、「神は道徳的なのになぜ他者を攻撃させたがるのか」という矛盾を解決するために「神を信じないのも一つの手段」ってスッと出てくるのがすごいなと思った。まあ神を信じてるからお前も信じろ、信じるべきだってのはまた別の話だけど。自分は神はいないと思ってるから、宗教での対立ってなんか不思議だなと思うし、なんで信じるんだろうなって思うけど、でもたまたまだとしても苦しい時に救われたら信じるだろうし、小さい頃から神はいるんだよって教えられたら信じるんだと思う。あ、それといわゆる「エホバの証人」が新興宗教なのも初めて知った。キリスト教を布教する人のことを「エホバの証人」と呼ぶのだと思ってた。色々あるね、世の中。続きを読む投稿日:2023.03.16
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