この作品のレビュー
平均 3.7 (37件のレビュー)
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【もっと自由に生きていいのではと勇気をもらえる】
著者の柳川範之さんは、この本を書かれた当時は東京大学大学院経済学研究科の准教授をされていたそうです。そんなすごい肩書きの方は、いわゆるいい高校、大学…を卒業されたのかと思うと、大検を受け、通信課程で大学に通い、学者になったそうです。
そういう経緯で、学者にもなれるのだなあと思いました。私は、若い頃にもっと勉強しておけばよかったなぁとしみじみ思っているのですが、この本を読んで「今からでもまだ間に合うかな?」と勇気がでました。
本の中に
“窮屈なレールは実は誰も矯正していない”
とあります。周りを気にしていなければ、自分がこうしたいというものがあれば、その先へ行く道はいくつもあります。
日本の当たり前は、他の国からみると当たり前ではない。それがいいことか悪いことかはわかりませんが、大人も子どもももっと自由に勉強して、仕事を楽しめるようになったらいいですね。続きを読む投稿日:2018.07.23
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柳川範之
1963年生まれ。慶應義塾大学経済学部通信教育課程卒業。東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士(東京大学)。現在、東京大学大学院経済学研究科准教授。契約理論や金融関連の…研究を行いつつ、自身の体験をもとに、おもに若い人たちに向けて学問の面白さを伝えている。著書に『法と企業行動の経済分析』(第50回日経・経済図書文化賞受賞、日本経済新聞社)など
たとえば、なぜ日本では高校を卒業したらすぐに大学に行かなくてはならないんだろうと、ときどき考えたのですが、そんな疑問や感覚は、ただ日本にずっといたので は、まったく持たなかったと思います。そういうふうに考えることすらしないと思う んです。そういう違う考え方がいっぱいあるんだということを実感できたというの が、一番大きかったのかなと思います。それぞれの国、ブラジルならブラジルの人た ちの考え方があり、中国なら中国の人の感じ方があり、それらは日本人の感じ方、考 え方とはかなり違う、ということを知りました。
どういうふうに役に立ったかというと、たとえば先の独学のやり方ですけど、それはけっこう学者にとって重要なことだったんですね。学者の世界というのは、ほとんど実は独学のようなものです。つねに新しいことを考えていかなくてはいけないので、そこは誰かが教えてくれるわけではないんですね。自分で何かを考えて、何か結果を出して論文を書いていかなくてはいけない。
どうしても学校へ行かなければならない、となると、ずいぶん幅が狭くなってしまうので、少しその点は自由に考えてもいいんじゃないかと。あまり「日本は」という言い方は好きではないのですが、海外でいろいろなものを見てくると、日本での、「きちんと型にはまった学校へ行き、卒業証書をもらって、一通りの知識を身につけないと希望している職業には進めない、考えている進路には進めない」というものの見方は、ずいぶん窮屈なように思えます。そんなふうに考えてしまうと行き詰ってしまう気がします。
ちょっと自分のやりたいこと、関心のあることがあったら、本を買ってきて勉強してみるとか、最初はそんな簡単なステップでもいいと思うんです。そういうことで、学んでいくきっかけになれば、ずいぶん自分の選択肢が広がりますし、いろんなことをやるチャンスが広がってくるでしょう。独学だけが唯一ベストの道だとは思わないのですけれど、そういうきっかけは作りやすいんじゃないのかなと思います。
そこがたぶん、今の日本の教育制度の窮屈さにつながっている気がします。日本だとどうしても中学校を普通に出たら、高校に行って、高校を出たらすぐに大学に行く。そして、大学を出たらすぐに就職をする。それも、できるだけ偏差値の高い中学に、偏差値の高い高校に、偏差値の高い大学に行く、というルートができあがっていて、そのルートを走らなければいけない。この階段を上がっていかなければいけない、というふうになっています。少なくとも皆そう思っていますよね。そうなってしまうと、やっぱりさっきの強制的に道を歩かされているとか、強制的に階段を上がらされているという話に限りなく近くなっていると思うんですよね。そこは非常に窮屈だし、大変だろうなというふうに思うわけです。
たぶん、この本を読まれる方も、高校へ行かないで独学などときくと、なぜそんな道を選ぶんだろうとか、そんな道を選んで本当に大丈夫なの?というふうに思われると思うのです。それは今の敷かれているレールの上を走っていると、そんな気分になるんですけれど、ちょっとずれて見るとですね、ぜんぜん何でもないというか、むしろそっちのほうが普通で、何でわざわざそんな狭い道を皆がきゅうきゅうしながら歩いているのかわからない。こっち側はいくらでも広い道が広がっていて、こっちのほうがずっとのびのびといろんなことをやって歩いて行けるのに、という感じだと思うんです。 そこは、なかなか普通の道を歩いていると気がつかない。だから最初の話に戻る と、別にだから高校に行かないほうがいいとか、独学したほうがいいとはぼくはまっ たく思わないんです。でも、高校に行かなくたって、大学に行かなくたって、それな りに道はいっぱいあって、それなりに楽しいこともいっぱいあって、それなりに生き ていけるということは知っていてほしいなというふうに思います。
逆に皆が通るような同じ道のほうに適性があるというか、その道が合っている人のほうが、むしろ少ないはずなんです。中にはそういう人もいて、そういう受験勉強が好きで、試験勉強が得意で、そういうところだとやる気が出て、能力を発揮できるという人がいますから、そういう人は向いているんですね。東京大学などには、意外にそういう人が多いんですけどね、やたら試験があるといい点を取るという人がいる。 でも、実はほとんどの人にとって、その道がベストじゃないはずなんです。現在の教育システムというのは、大勢の人たちに、それなりの教育を一通り学ばせるために便利なようにできただけなので、それが、それぞれの人に本当に向いている勉強の仕方だとか教育のシステムとは限らないからです。この点は、ぜひ多くの人に気づいて欲しい点ですね。
多少、日本文化論のようになりますが、日本人は高校生でも大学生でも、あるいは研究者でもそうですが、何でもよく知っているということが偉いという、博学祝聲傾向がとても強いと思うんです。何か大事なことを知らないと、知らないということばか で周りから「そんなことも知らないのか」と言われて馬鹿にされてしまう。入試もそ の傾向が表れていると思います。広くきちんと知識が身についているかどうかという 評価がある。学者の世界でもある程度そういう傾向があります。
受験は、ある種のい分けなので、そのように時間を区切らなければいけないというのは、試験をする側からすると、やむを得ない理屈なんでしょうけど、そのような 試験では、やはり本当の能力を一〇〇パーセント判断することはできないということです。それから、その試験にあった能力、試験向きの能力を持っている人はとても評価をされて、試験向きではない能力を持っている人は評価されない。 でも、試験向きではない能力が、そのまま能力がないのかというと、それは大間違いです。学者の世界では、試験向きの能力は全然ないけれども、すごくいい論文を書ける人、いい業績を上げられる学者というのも、実はいっぱいいるんです。いまの日本では、そういう能力を見過ごしがちだし、なにより悲しいのは、日本の受験の仕組みの中で発揮できる能力がないと、本人が自分には能力自体がないと思いこんでしまうことです。これはすごくもったいないことだと思います。
ひとつの提案は、もう少し進学のプロセスを変えてはどうか、少し大胆にいうと高校からダイレクトに大学へ進学するのを原則禁止して、いったん社会に出て働くことにしてはどうか、ということを考えています。
その学問内容がよくわからないだけではなくて、本当の必要性もよくわからないのだと思います。アメリカの大学院に仕事を辞めて入り直してくる人たちの話をしましたが、彼らは、自分に何か欠けていて、何を学んで卒業していく必要があるかを十分に認識したうえで勉強をしています。ですから、とても真剣ですし、学ぶべき内容もよくわかっています。それに比べて、高校を出てすぐ大学に入ってきた学生は、そのような知識というか基本的認識がありません。もちろん、なくて当然です。実際に仕事をしたことがないのですから。続きを読む投稿日:2023.11.13
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