アジア主義 西郷隆盛から石原莞爾へ
中島岳志(著)
/潮文庫
作品情報
戦後、侵略主義の別名として否定された「アジア主義」。しかしそこには本来、「アジアの連帯」や「近代の超克」といった思想が込められていたはずだ。アジア主義はどこで変節したのか。気鋭の論客が、宮崎滔天、岡倉天心、西田幾多郎、鈴木大拙、柳宗悦、竹内好らを通して、「思想としてのアジア主義」の可能性を掬い出そうと試みた大著。
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商品情報
- シリーズ
- アジア主義 西郷隆盛から石原莞爾へ
- 著者
- 中島岳志
- 出版社
- 潮出版社
- 掲載誌・レーベル
- 潮文庫
- 書籍発売日
- 2017.07.05
- Reader Store発売日
- 2018.12.14
- ファイルサイズ
- 1.1MB
- ページ数
- 603ページ
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この作品のレビュー
平均 3.8 (6件のレビュー)
-
戦争に負けてからこの方、右翼思想はあまり省みられなくなった。大川周明とか北一輝とか、何を言っていたのか現代教育だけでは殆ど知り得ない。だからこそ、近代右翼思想史を「アジア主義」と銘打ってまとめあげたこ…の本は価値がある。しかし、「アジア主義」という思想体系は実在せず、筆者の中島の頭の中にしかないものだろうと私は思う。
左翼思想の背景にはマルクスという聖典があるが、右翼思想に聖典はなく、あるのはナショナリズムという沸々たる思いである。近代日本のナショナリズムの発現について語るならば、西郷隆盛だけでなくまず尊王攘夷運動から見た方が良いだろう。黒船、開国という出来事が世界と日本という国意識の発見となり、熱い論争と血なまぐさい闘争を経て明治維新に結実すると、驚いたことに革命政府は西洋型の近代国家を志向する。やがて明治政府内の政争に敗れた側が士族反乱を起こし、これが鎮圧されると今度は自由民権運動が起こる。板垣が民主的だから自由民権運動の旗手になったのではない。西郷・板垣が政争に勝利していれば、伊藤・山縣が自由民権運動を担っていたのだろう。
自由民権運動が憲法・議会という形で結実すると、目端の効く者は議員・政治家に収まり、まだなお胸の炎消し切れぬ者が今度は朝鮮・中国眼を向ける。李氏朝鮮と清朝は古色蒼然とした専制政治を続けており、近代化を目指す現地の志士達を支援しアジアの連帯を構築しようという訳だ。
ここに至り、近代日本ナショナリズムが汎アジア主義に転化する兆しを見せる。しかしそれは、兆しに過ぎない。アジア主義という思想とか理論的バックボーンがある訳ではなく、熱き者達の思いは政治家に利用されるだけだ。日東合邦論を利用した初代朝鮮統監の伊藤博文しかり、中国革命の支援者に満州というエサをぶら下げた孫文しかり。
そして中島はアジア主義を帝国主義に悪用したとして石原完爾を批判する。中島のいうアジア主義の源流はナショナリズムとなるが、そもそも19~20世紀初頭の世界においてナショナリズムと帝国主義を区別できない。ドイツ帝国の版図はどこまで?とかスコットランドは独立すべき?という問いに正解は無い。国は勝利や繁栄により正当化される、とは言えそうだけれども。
石原完爾はアジア主義という夢想家ではなく、日本が列強に対抗するには中国の資源を取り込むしかないと考えていた帝国主義者てリアリストである。昭和陸軍を作った一人ではあるが、東京や京都に居座って大東亜共栄圏を正当化する言辞を吐いていた連中に比べればかなりまともだ。日本の支配に対する反応は国により様々だったのだろうけど、少なくとも彼らがアジア主義という思想や感情を共有していた事実はない。
そして現代、欧州には欧州イズムのようなものがある。中華主義のようなものも存在するが、覇権主義と表裏一体であることは皆がわかっている。パクスアメリカーナとて、批判と変容を繰り返しながら今日に至っている。こうして並べてみると、戦前日本のアジア主義とは支配される側を省みない中華主義に近いもの、と考えれば良いだろう。続きを読む投稿日:2019.09.08
近代日本思想史のうち、いわゆる「アジア主義」と言われる系譜の概観を理解するのに大変便利です。人物誌的に書かれているので、読み物的興味もそそられるようになっています。そういう意味で大変良い本だと思います…。
ただし、批判的視点がやや弱いので、そこを注意しながら読み進めていく必要があるでしょう。同時代の、社会主義、共産主義、アナキズム、また、白樺派やモダニズムとの比較検討も、読者各自が自分なりに留意すべきです。
ここで取り上げられたアジア主義者達についての私の感想は、彼らの発想が近代国民国家を前提とした国権主義的なものでしかなく、権力の奪取までしか考えておらず、その先に構築する新たな社会をどのようなものとするのか、ほとんど考慮されていない、と思えることです。もっと、近代(当時でいえば現代)経済、社会についての考察をすべきであったろうと痛感します。
なお、著者が力説する、「思想としてのアジア主義」というものが、本当にアジア的、アジア独自のものかどうか、は疑わしいと感じます。続きを読む投稿日:2024.06.05
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