悪の哲学 ──中国哲学の想像力
中島隆博(著)
/筑摩選書
作品情報
この世の悪は、一人ひとりがその行いを改めれば払拭できるものだろうか? 自然災害に見舞われ、多くの人が苦しめられているとき、そこに悪の問題はないのだろうか? 孔子や孟子、荘子、荀子などの中国古代の思想家たちも、悪という問題に直面し、格闘してきた。清代にいたるまでの、そうした悪をめぐる哲学的思考を辿りなおし、その可能性と限界を描き出す。悪にあらがい、その残酷さを引き受け、乗り越えるための方途を探る哲学の書である。
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商品情報
- シリーズ
- 悪の哲学 ──中国哲学の想像力
- 著者
- 中島隆博
- 出版社
- 筑摩書房
- 掲載誌・レーベル
- 筑摩選書
- 書籍発売日
- 2012.05.15
- Reader Store発売日
- 2018.09.07
- ファイルサイズ
- 0.2MB
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この作品のレビュー
平均 4.0 (5件のレビュー)
-
近年、性善説、性悪説というのが気になっていた。
そもそも人間の本性は善か、悪かという議論は、なんだか、古いテーマな感じで、利己的か、利他的かというのと概ね同じ議論ではあるんだけど、多分、利己、利他と…いう表現を使うと、進化論とか、脳科学とか、心理学とか、ゲーム理論とか、その辺を読めば、もう結論はでちゃっている感じがしているし、興味はあるのだけど、どっちかというと知的な理解の問題になるんだと思う。
わたしの感覚では、やっぱ善か、悪か、というのがやっぱふさわしい感じがしている。だけど、このテーマに付き合ってくれる人がいなくて寂しかった。
そういうなか、やっとわたしの問題にしっかりフォーカスしてくれた本に巡り合った。
人間のあらそいごとって、一種の「正しさ」からくると思う。自分がなにかを正しい、正義だ、つまり、善であるということからくる。
自分が善だと考えるので他者が認められない。
だったら、どうすべきかというと、正義とか、善とか、悪だとか、固定的に考えるんじゃなくて、もっといろいろな意見の多様性を共感をもって認めていこうという話しになる。
ところが、なにが正義かという基準がなくなると、なんでもいいことになって、これはこれで困ってしまう。なにか共通のルールなり、価値観がないと社会はなりたたない。
極端な話し「人を殺してはいけない」というのはかなり世界共通のルールだと思うが、これすら「戦争」とか、「正当防衛」とか、「死刑」とか、「中絶」とか、結構な幅がある。
時代を遡れば、「他の部族だったら」とか、「神への生贄」とか、「王が死んだから従者も」とか、「夫が死んだら妻も」とかあったわけだし、さらには「御婆捨」とか、子供の「間引き」とか、さまざまなものがあった。
「人殺し」というかなり人類共通に思える規範についても、社会とか、歴史的に結構な多様性があることがわかる。
そこで、「科学的」になにか基礎付けるものがないかという議論になるかもだけど、これも怪しい。たとえ、ある程度、科学的になんらかの共通のものが「人類のDNA」とかから見出せたとしても、それが社会的に正しいという価値判断の根拠にはならない。
というわけで、どう考えればいいのか〜と思っていて、性善説とか、性悪説とか、中国の古典が気になっていた。
それは、中国はあんまり超越的な神様、人格神的な一神教から遠くて、人間の現実の社会ということを考える傾向があるから。神なき世界でどう人間は善な社会をつくることができるか?という話。
そういう問題意識にぴったり合った本。かなり納得しました。(答えはないんだけど)
この本がどういう議論なのかは自分のなかでもうちょっと熟成したい。中島先生の本をもう少し読んでみることにする。続きを読む投稿日:2020.08.28
中国の思想哲学では悪に関しての考察が薄いという批判があるがそんなことはないという話。
朱子学や陽明学、遡って老子や孔子、荘子、孟子、荀子がいかに人間の善悪を扱ってきたか。善悪という観点から読み返すとそ…れぞれの哲学の展開の仕方の違いがまたわかって勉強になる。続きを読む投稿日:2018.08.19
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