この作品のレビュー
平均 4.0 (1件のレビュー)
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著者が本の形でもっとも書きたかったことは、1989年の日経平均の上昇の原因となった事象で、それは著者が野村総研在籍時に発表した1990年の下落の原因についての論考と対となっている。
ただ、それだけでは…一冊の本たり得ないので、著者の自伝的な話やビットコインの暴騰と暴落についての考察などでページを埋めている。
埋めている、というと言葉が悪くなるが、個人的にはこの「自伝」、ファンドマネージャーとして当時感じたことなどの記述が興味深かった。
なお、この本でいうところのバブルとは、あくまでも89年を中心とした日経平均の加速度をつけての急上昇のことであり、その崩壊とは90年に入り打って変わって暴落した様を指している。
このように定義して論を進めている以上、不動産についての話がないとか、その後の失われた数十年についての説明がないとかいった批判は的外れになるし、また読者もそれを期待して読むべきではなかろう。
自伝部分で面白いのは、他業種からの転職組である著者が、ファンドマネジメントの世界に入りながらも一歩引いた目で業界を見ていることだが、証券の営業マンが投信のファンマネを下に見ていたことなど、なかなか今では知ることの出来ない当時の空気感が伺える。
日本でファンドマネージャーという職業がそれなりの地位をしめるまでには、こういった意識が払拭されるそれなりの年月が必要だったのだろう。
払拭というか、そういう意識を持つ営業マンが引退し、生え抜きのファンドマネージャーがファンドを受け持つのが主流になるだけの一世代分の時間ということか。
無論、証券系の運用会社と、他の生保系・銀行系それに独立系の運用会社とでは、事情も異なるだろうとは思う。
ただ、運用会社がそれぞれに親会社を持ち、そこが小会社である運用会社の人事権まで持つ限り、証券系・生保系・銀行系とさほど差はなかっただろうことは想像に難くない。
個人的な話をすれば、自分は運用会社に新卒でプロパーとして入ったほぼ第1世代だ。
運用会社が運用をする人間を育てることを企図して採用を始めた極々初期に就職した口で、周りにも何故採用されたのかよくわからない人間は多々居たし、実際その後の育ち方を見ても当たり外れは大いにあった。
人事の側も試行錯誤で採用していたのだろうことは新入社員の学歴のばらつきを見てもよくわかったが、次第に旧帝・早慶がほとんどになり、またそれに従い面白い人間が採用される率も減っていったように感じる。
採用担当者の間に、学生時代の突飛な経験が生み出す面白い投資アイデア云々に期待するより前に、まずは事務処理能力が大事、というコンセンサスでも出来たものか。
自分が当たりの方だったのかハズレの方だったのかの判断は難しいところだが、現在、資産運用で生計を立てられるようになっている以上、自分にとっては向いていた仕事だったと思うが、さっさとリタイアしてしまったわけで、会社として、また社会としてどうだったかというと正直よくわからない。
ただ、自分としては、ファンドマネージャーとして調査もして運用もしてレポーティングもして営業もして、という完全無欠の仕事ができるのは35歳くらいが限界と考えていたので、心身ともに疲弊した挙げ句に会社に肩を叩かれる、という事態を迎える前に自身で幕を閉じた。
もちろん、日系の会社だったので肩たたきがあっても配置転換がせいぜいだっただろうが、当時社内で接する限りでも、元ファンドマネージャーの営業担当者とかバックオフィスの偉い人とか、うざいだけだったので、自分はそういう「老後」を送りたくなかったというのもある。
こういった事情もあり、どこの会社でも大きな資産を預かって運用を行う人間は10年もあれば結構入れ替わる。
この道何十年の運用担当者、というのはごく一部のスタープレイヤーに限られるし、そうであっても独立系運用会社の代表でもなければ定年を迎える。
その意味で、過去を知る人間はすぐにいなくなるし、その教訓が伝わっていなければバブルは何度でも起こる。
著者にとって89年と90年の日本株の動きは、人々の欲望とは無縁の、制度変更と外部環境がもたらしたもので、それは他のバブルとは違うのだという論点は、一生をかけて後世に伝えたい大切なことなのだが、それさえ現場レベルでは伝承され得ない。
なんとも歯がゆさは残るが、だからこそ学びを怠らない一般投資家が付け入る隙はいくらでもあるということだ。続きを読む投稿日:2019.12.16
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