先生も知らない経済の世界史
玉木俊明(著)
/日本経済新聞出版
作品情報
「アジアは後進地域で、産業革命でヨーロッパにさらに差をつけられた」――。日本で教えられている経済史の多くはこのマルクスの考えに基づいています。しかし真実は、かなり長い間、アジアの方が経済的に有利だったのです。ヨーロッパがアジアに売れるものはほとんどなく、アジアから大量の香辛料を輸入することを余儀なくされていました。本書は、世界では通用しなくなった経済の歴史のとらえ方をただし、なぜアジアがヨーロッパに取って代わられ、現在なぜアジアが台頭しているのかを、教科書の古い常識を覆しながら解明します。
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商品情報
- シリーズ
- 先生も知らない経済の世界史
- 著者
- 玉木俊明
- 出版社
- 日経BP
- 掲載誌・レーベル
- 日本経済新聞出版
- 書籍発売日
- 2017.09.01
- Reader Store発売日
- 2017.10.20
- ファイルサイズ
- 1.5MB
- ページ数
- 208ページ
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この作品のレビュー
平均 2.0 (2件のレビュー)
-
昨日(2017.11.17)、一日遅れですが大学生の頃から通っているレストランで恒例のボジョレーのお祝いをしました。マスターの選ぶワインとそれに合わせた料理は30年を経たいまでも同じ味がして嬉しい限り…ですが、この30年間で歴史に対する見方が随分変わってきたようですね。
少なくとも私が授業で高校生だったころに学んだ世界史の内容と今はかなり異なってきた感じがします。この30年間で歴史に刻まれるような事件・戦争・紛争も数多くありました。
歴史という文字が本のタイトルについていたら、まず触って中身を見てみようと思う私が、二か月ほど前に品川駅の本屋さんで見つけた本です。歴史を単なる政治事件の連続として見るのでなく、経済(お金)の観点から見てみると、また面白い見方ができると思い、楽しい読書となりました。
以下は気になったポイントです。
・人間はGDPの数値から豊かさを実感するわけではなく、消費財が増えれば自分は豊かだと感じる(p25)
・1200年頃には農奴が請け負っていた労働賦役が金納化され、年々の紙幣支払いに代わっていった、これにより常備軍の支払いも貨幣支払いとなった(p40)
・オランダでは政府が所有権を保証した、預金は政府によって保障された、イングランドも1651年の航海法により、全植民地市場からオランダ人を排除しイングランド人の手に入った、同様に所有権が強く確保された(p43)
・アルメニア王国は、301年に世界ではじめてキリスト教を国教とした、現在のアルメニア正教徒は500万人と推定される、この地はアジアから欧州への交通の要衝(p55)
・スペインとポルトガルから追放されたセファラディム系ユダヤ人は、アムステルダムとロッテルダムに避難先を見つけた、サトウキビの製造方法を知っているセファルディムの一部が、ブラジルから、オランダ・イギリス・フランスの植民地に移住した、これが砂糖革命(p58)
・秦の王は政(前247-221)といい、法家思想にもとづき中国を統一、度量衡・文字・貨幣を統一、中央集権的な郡県制を採用、単なる王ではない「皇帝」という地位につき、始皇帝と名乗った(p67)
・漢王朝の劉邦(高祖)は、直轄地には郡県制、それ以外の地には封建制を採用、このような政治システムを、郡国制と呼ぶ。皇帝の力は、秦と比べると随分と弱い(p70)
・EUができるはるか以前に、中国に単一市場ができた、その影響はアジアの多くの地域に及んだ、ここにアジアの経済成長のカギがあった(p73)
・鄭和の遠征は、イスラームのネットワークの拡大があったからこそ可能であった、鄭和もムスリムであったことが遠征を可能にした(p78)
・モンゴル帝国は、キプチャク、チャガタイ、イルの三ハン国に分割され、大ハーン(元の皇帝)の権威下に緩やかに連合した、各々のハンの独立性は強かったが、宗主権は元の皇帝が持っていて、モンゴル帝国としての一体性は維持されていた(p84)
・朝貢貿易は、中国が隣国よりも圧倒的に経済力があったからこそ成り立っていた制度である、朝貢品よりも中国が下賜する品々の方がはるかに価値があったから、朝貢貿易では朝貢国の船によって運ばれるので、中国の海運業が衰退した(p94)
・インドからイギリス東インド会社が中国に輸送するベンガル・アヘンだけでなく、同社の支配下に組み込まれていない、マルワ・アヘン(中央インド)が主として、ポルトガル人によって、ボンベイやポルトガル領の港から積み出されていた、こちらのほうが輸入量は多かった(p97,99)
・戦争がなくなると、軍人としての武士は不要、現実としては官僚となった、給料となる石高は固定されていたので所得は増えない、農民・商人の所得は増えたので生活は豊かになった(p103)
・戦国時代の日本はアジアに積極的に出かけて行ったが、鎖国すると、海外との公式ルートを、長崎出島・対馬・琉球・蝦夷の松前藩の4つに限定した、鎖国というよりは、国家による管理貿易である(p104)
・日本は中国から、綿・砂糖・生糸・茶を輸入していた、その代わりは銀のみでありどんどん流出した。荻原重秀は1695年、貨幣に含まれる貴金属の量を減らして通貨供給量を増やした、これは生産量が増大していた江戸の経済にはプラスとなったが、アジアでの評判は落ちた。そして新井白石は質を良くしたが、通貨供給量が下がってデフレとなったが、海外での評価は上がった(p106)
・江戸時代には3大改革があったが、成功したのは享保の改革のみ、この改革は殖産興業政策を行ったが、ほかは質素倹約を押し付けたのみだった(p108)
・国家と商人との共棲関係こおが、近代世界システムの特徴であった、競争があったので経済コストが下がり他地域の商人を欧州世界経済に吸収した、欧州の拡大のカギ(p122)
・イングランドにおいてさえ、新世界との貿易額が、北海・バルト海の貿易額を上回るのは、18世紀後半である(p132)
・1640年代になるまでオランダは一時的とはあれ、ブラジル北東部のペルナンブーコを占領した、再度ポルトガルの手に落ちた1654年には、カリブ海のオランダ領植民地で、サトウキビが生産されるようになっていた(p133)
・ジャマイカ、ハイチでは1700‐1789年にかけて黒人が増えた、砂糖の生産は厳しく奴隷が短命に終わることが多かったのも原因、なので奴隷を絶えず輸入しなければならなかった(p135)
・大西洋貿易は、ほぼ全ての商品輸送が欧州人の手によって担われたので、欧州に対する従属度は、アジアよりもはるかに大きくなった。(p139)
・イギリスの税制は間接税である消費税を中心、フランスは土地税、イギリスは経済成長率以上のスピードで税収が伸びたが、フランスの場合は経済成長があっても伸びなかった、これがフランス革命につながった(p157)
・20世紀初頭、世界の船舶のトン数の半分がイギリス船であった、イギリスは海上保険、それに対する再保険の世界的中心であった(p162)
・1820年から50年間で、ロンドンから世界各地へ送られるスピードは3倍から、インドの場合は25倍にもなった(p164)
・電信によってはじめて、人類は動くよりも速く情報が伝達されるようになった(p165)
・世界の国々が、イギリスの船、電信、保険を使わざるを得ないシステムをイギリスは作り上げた、これはイギリスが世界経済の中心でありイギリスに大きな利益を与えた。イギリスの「手数料資本主義」を、イギリスの大艦隊は保護した(p169)
2017年11月19日作成続きを読む投稿日:2017.11.18
このレビューはネタバレを含みます
ところどころ?なところがある。前後の話がつながっていないのではと思うところがある。
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石油ショックの時に東欧では、ソ連 ルーマニア ポーランドは石油の輸出国だったのに、と書いて、いきなりシベリアの石炭は…コストにあわないと。石油はどうなった?続きを読む投稿日:2017.10.23
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