孔子を捨てた国――現代中国残酷物語
福島香織(著者)
/飛鳥新社
作品情報
ともに儒教を文化の基盤にしているから「中国人とは理解しあえる」と信じる日本人はいまだに多い。
だが、習近平政権下の空前の儒教ブームは、政治に敏感な彼らの保身のための口パクにすぎず、中国人はとうに孔子を捨てていたのだ。
「つらの皮厚く、腹黒く、常に人を疑い、出し抜くことを考え、弱いものを虐げ、強いものにおもねりながら生きていかねばならない」中国人の苛烈すぎる現実を、当代一のチャイナウォッチャーが取材。
共産党独裁下で想像を絶する生き地獄に苦しむ人々。厳しい社会階層のヒエラルキーの中で管理、コントロールされ、言論や思想の自由も許されない大多数の国民が直面する、冷酷無比の支配システム、過酷すぎる政治権力闘争、血で血を洗う近代史をできるだけ具体的に描写。
「実際の中国社会は儒教を建前とした残酷な世界なのだ。日本人的な甘ったるい善意や真心が中国人に通用すると期待してはいけない」
2017年、トランプ政権とともに米中は新たな緊張関係を迎え、日本も必ず巻き込まれる。
「日中の関係改善を期待するよりは、この残酷で腹黒い国と対峙していかねばならないことの大変さ」を覚悟する全5章。
弱者の人権はとことん踏みにじられ、知識人への政治的迫害と拷問、臓器売買犯罪、カルト宗教がまん延する社会……凶悪事件や大事故、人民蜂起が相次ぐ中国の闇。月刊誌の名物連載、待望の書籍化!
もっとみる
商品情報
- シリーズ
- 孔子を捨てた国――現代中国残酷物語
- 著者
- 福島香織
- 出版社
- 飛鳥新社
- 書籍発売日
- 2017.02.14
- Reader Store発売日
- 2017.03.17
- ファイルサイズ
- 1.1MB
- ページ数
- 288ページ
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 3.0 (2件のレビュー)
-
本書に書かれた事例がすべてではなく、一般庶民の生活が本書に書かれたほど悲惨ではないとは思うものの、かの国で生き残るのは並大抵ではないだろう。
投稿日:2017.10.29
孔子を捨てた国というタイトルではあるが、どちらかというと副題の現代中国残酷物語か。気がつくと内容が政治家がからんだ経営者等のどろどろの足の引っ張り合いとその犠牲になる末端の庶民たちという話になっていく…。人がある一定数以上いれば、残酷な事件は起こるものだと思うが、中国は分母が多いことを差し引いても残虐性と頻度が他国と比べて高いように思えてならない。一方、魑魅魍魎が跋扈する世の中において自衛のために他者を攻撃・排斥といった方向に流れるのは、仕方ない部分がなきにしもあらず・・ということは彼らも社会の犠牲者とも言えるのか。。そんなことを思いながら一気に読み終えた。前書きの最初の1、2ページに全てが要約されている。
P.6
中国は儒教発祥の国だとだれモンが思っている。だが、今の中国社会に仁義礼智信といった五常の徳はほとんど失われている。その理由を端的にいえば、文化大革命時代の批林批孔(儒教と、それを復活させようとした林彪を批判する運動、実際は権力闘争)の後遺症といっていいだろう。だが、それ以前からも、中国社会の本質に仁義礼智信はなかった。清朝末期には李宗吾の著した思想書「厚黒学」が大流行した。儒教を、中国の栄光とともに停滞と閉塞をもたらした元凶と批判し、「つらの皮は城壁より厚く、腹の底は炭よりも黒く」生きることが、成功者、英雄となる秘訣だという主張は、欧米列強の脅威にさらされていた中国人の深層に深くひびいた。これは単なる時代の要因ではなかったと思う。
儒教は、五徳を備えた裙子によって無知蒙昧、野蛮な小人を教え導くことで秩序を保という考え方だ。その前提として、普通の中国人は度し難い小人であるこということがある。中国の神話上における人類の創造主・女媧が、泥と縄で人間を作るとき、泥を捏ねあげて丁寧に作った人間と、泥を縄に浸したしずくで大量生産した人間の二種類があったように、人は生まれながらに支配する少数エリートと、支配される多数に分けられているというのが、中国の根本的な価値観にある。だが、その支配者側になったものは、建前に五徳を装いながらも、ことごとく「厚黒」な”英雄”たちだった。
そう考えると、中国にとって孔子と儒教は支配層側が大衆を支配するための思想であるが、その思想に染まって仕舞えば決して支配層側にいくことはできず、永遠に支配され、搾取されつづけるという大きな矛盾がある。だから、近代に入り、革命による支配層の入れ替えが中国で起きたとき、ある者は孔子を否定し、ある者は孔子を持ち上げた。その本質は支配者になるための争い、権力闘争だ。
康有為(清末の政治家・学者)は儒教を国境にしようとし、共産党初代総書記の陳独秀は孔子批判を展開した。蒋介石は孔子・儒教を持ち上げて、国家の求心力に利用しようとしたが、毛沢東は孔子を反革命の元祖として完全否定した。だが中国共産党が改革開放を進め、グローバルデビューすると、中国の共産主義思想が国家の根本思想としてなんの共感力もないことが露呈する。宗教や思想が空白のままでは、国家おしての求心力は維持できず、国際社会でも他国と渡り合えない。そこで、今の共産党中国も孔子・儒教を中国の国学・伝統思想として利用しだすのである。
P.43
華人社会はかつて、お上がつくった法に頼らず、一族や地域社会(村や杜区)のなかでトラブルを解消する機能をもっていた。中国で法治化が遅れる一つの背景は、法より一族や地域内での秩序が優先されがちだからだ。
だが、中国では各地の都市化が進み、経済発展とともに西側社会的なプライバシー重視の社会に変容してきた。さらに一人っ子政策の浸透で親戚、血縁関係も希薄になっていく。なのに法治国家として当然、備えるべきシステムが備わっていない。
P.50
もともと、教育や指導という名目で大人が児童に体罰や屈辱を与えることをさほど罪悪としない中国で、児童虐待は普遍的に存在してきた。子供は一族の「宝」として大事にされる半面、一個の人間というよりは労働力に換算もできる財産という感覚がある。だから、いまだモノのように児童が売買される闇市場は存在する。
P.97
二月、労働教養制度廃止のために、文字通り、命を張って当局と戦ってきた功労者の一人である浦志強弁護士が来日し、講演会を開いた。
この時の発言が興味深い。聴衆から「あなたは労教廃止をもって中国社会が多少進歩したと言ったが、代替施設などが登場して進歩とは言えないのではないか」という質問に対し、浦志強はこう答えた。「中国の進歩とは、一歩進んで二歩下がるようなものなのです」。
それでも前に進む努力を放棄できない、と目が語っていた。社会の不条理を僅かに正すために、賽の河原で石を積むかのように思えても、続ける忍耐が必要。それが中国の残酷さなのだ。
P.97
二〇一五年一月、IS(イスラム国)で人質になった後藤健二さんが無残に殺害された事件は、中国でも関心を呼んだ。意外なことに、殺害直前も取り乱すこともなく、毅然とした態度を貫いた後藤さんに対して、賞讃を送る中国人が多い。(中略)北京の記者の友人から、「後藤さんは安倍政権が憲法改正をしやすいように、自ら志願してイスラム国に赴いたのではないか。と中国の元官僚が話していた」とも聞いた。なるほど、それが中国人の発想か。
中国では「命がけのジャーナリズム」など滅多に見ないし、命を賭けるほどの仕事とは国家レベルの任務であってしかるべきというわけだ。続きを読む投稿日:2020.06.17
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。