鉄道をつくる人たち
川辺謙一(著)
/交通新聞社新書
作品情報
日本人にとって「電車」は、定刻どおりかつ安全な乗り物であるのが当然至極。しかし、日本の鉄道を支えているものはじつに膨大であり、どれ一つ欠けても、連携が崩れてダイヤはたちまち乱れる。本書では、一般の人が日ごろ意識せず、またあまり情報公開されることのない鉄道関連の4つのジャンル――「分岐器」「地下鉄トンネル」「窓ガラス」「パンタグラフ」にスポットを当て、その製造開発秘話や現場の苦闘を紹介。鉄道を日々「つくる」技術者たちの英知を知ることで、日本の新たな側面をかいま見る。川辺謙一(かわべけんいち)鉄道技術ライター。1970年三重県生まれ。東北大学工学部卒、東北大学大学院工学研究科修了。化学メーカーに入社、半導体材料などの開発に従事。2004年に独立し、雑誌・書籍に数多く寄稿。鉄道関連のさまざまな職場や当事者を取材・紹介したり、高度化した技術を一般向けに翻訳・解説している。近著に『鉄道のひみつ』(学研パブリッシング)、『図解・地下鉄の科学』(講談社)、『電車のしくみ』(ちくま新書)、『くらべる鉄道』(東京書籍)、『鐵路大比較』(台湾東販・中国語版)、『図解・新幹線運行のメカニズム』(講談社)がある。本書では図版も担当。
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商品情報
- シリーズ
- 鉄道をつくる人たち
- 著者
- 川辺謙一
- 出版社
- 交通新聞社
- 掲載誌・レーベル
- 交通新聞社新書
- 書籍発売日
- 2013.02.15
- Reader Store発売日
- 2016.09.23
- ファイルサイズ
- 29.3MB
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この作品のレビュー
平均 4.5 (3件のレビュー)
-
今まで読んできた鉄道関連書籍の中でも異色の内容。しかも旅先の列車の中で読み始め、読了できたのが良かった。時速160㎞で走り抜けることのできる転轍機。部材の搬入から加工・組立・運搬までの全てが興味深い。…転轍機(ポイント)を通過するたびに、在来線と新幹線の違いが列車に乗りながら実感できた。窓ガラスやパンタグラフもなかなかお目にかかれない話題だ。続きを読む
投稿日:2017.08.20
鉄道の安全を支へる「縁の下の力持ち」的な仕事をする人たちの存在も、最近漸く知られてきた感があります。その中でも本書は、普段意識される事もないやうな分野、即ちややメイニアックなジャンルに特化して取材を…したルポルタージュであります。
著者は理系出身の鉄道「技術」ライターで、従来のテツどもが敬遠する分野を専門にしてゐるやうです。
まづ一つ目は「分岐器」。線路が分岐するポイント部分ですな。只の分岐器ではなく、「日本最大の分岐器」であります。これは38番分岐器と呼ばれ、京成スカイアクセス線(成田国際空港へのアクセス線)と、上越新幹線と北陸新幹線が分岐する部分の二か所にしかないさうです。なぜ38番かといふと、レールが一メートル分岐するのに38メートル進むといふ意味で、確かに箆棒な長さと申せませう。この桁外れの分岐器があるお陰で高速鉄道も減速することなく分岐できるといふ訳です。
これを作つてゐる関東分岐器株式会社(といふ会社があるんですね)の埼玉県深谷市の工場を紹介してゐます。写真だけでもかなりの迫力。映像で見てみたいですな。平泉成さんのナレーション付きで。
二つ目は「地下鉄トンネル」。もう日本の地下鉄はほぼ完成状態で、東京メトロなどは「もう以降の新線建設はない」と表明してゐるさうです。なので工事の取材も難しいのですが、改良計画は続くので、その現場を取材できたとの事。
沿線住民にとつては何が改良されるのか分かりにくい上、五月蝿くて交通規制も発生する。迷惑なのであります。故に地元の人たちの工事への理解を深めて貰ふために、「展示室」なるものを設置し、模型や映像などで愉しめる設備にしてあるさうです。キッズスペースなんかもあつて、近隣の人たちが子供たちを遊ばせにくる程だとか。涙ぐましい努力と申せませう。
三つ目は「窓ガラス」。大量生産が出来るクルマのガラスと違ひ、鉄道の窓ガラスは受注の数が桁違ひに少ないので、少量多品種にならざるを得ず、手作業での工程が多いさうです。単価も高くなりますね。ここでは,世界最大手のガラスメーカーであるAGC(元・旭硝子)のグループ会社・AGCファブリテックとその外製拠点であるビューテック豊橋工場に取材してゐます。ビューテックといへば、わたくしども豊田市民には馴染みの深い会社で、梅坪といふところに本社があります。
最後の四つ目は「パンタグラフ」。確かにパンタグラフは誰でも知つてゐますが、それをどうやつて作つてゐるのかなんて、あまり考へませんね。最近は菱型よりも「く」の字型が主流になつてゐますが、勿論理由があつての事。また、現在は以前に比べて架線とパンタグラフの接触部分からバチバチ音がしたりスパークしたりが少なくなつてゐます。大変な努力の末、ここまで改良された事がわかります。日本のパンタグラフは世界的に見て特殊で、海外に売り込むのが難しいといふ。現場の人の「ガラパゴス化してゐる」との発言もありました。しかしスマホなんかと違ふのは、外来種が日本を席捲する事もまた難しいのださうです。
といふ事で、読めば読むほど興味深い内容なのですが、一見地味な装丁(叢書なので仕方ないが)だし書名も漠然としてゐるので、その分損をしてゐるかも知れません。ぢやあ何と名付ければ良いのだと問はれると困りますが。デハデハ。続きを読む投稿日:2020.10.02
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