不作為で勝ち残る日本経済 米中没落を直視すれば、復活の条件が見えてくる
増田悦佐(著)
/徳間書店
作品情報
波乱の幕開けとなった2016年。株の暴落とぬぐえぬ戦争の気配。世界中の国家が安易な金融政策から抜け出せず、コントロール不能な状態になった。中国バブルは崩壊し、アメリカはソフトランディングできない。米中経済同時崩壊を日本はいかにして迎え撃つのか。アベノミクスと金相場の密接な関係、国家ぐるみでの株価操作合戦の内幕、止まらぬ原油安の背景、今後の行方等を鋭く考察する。世界経済で唯一、日本だけが浮上する理由を増田流理論で解説。
もっとみる
商品情報
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 4.0 (3件のレビュー)
-
かれこれ15年は読みつづけている増田氏の最新本(2016.2.27現在)です。日本経済がドン底で、日本破綻本が多く書かれた頃から、日本の強みを解説してくれていた数少ない論者です。
しかし増田氏は米国…については相変わらず厳しい評価ですね。シェールガスについての見通しについても、いまだに良い評価を与えていないのが気になります。EUがこのままでは難しいことは理解できましたが、中国の見通しについては今後を注意深く観察する必要があると個人的には思っています。
ひと口に中国といっても、どの地域を指すかで状況はかなり異なると思いますので。今回は原稿を急いで完成させたからでしょうか、今までの本と比較して図表が少なかったのは残念でした。
以下は気になったポイントです。
・日経平均が上がれば金価格が下がるという構造が少なくとも1年半は続いた。これだけ明確な逆相関があったという事実は、日銀が日本株ETFを購入するたびに、金の先物を売るというセット取引があったことを示唆している(p47)
・空売り(先物を売る)とは、将来の一定時点でその商品を現在の値段で売ることを約束する契約、決済時点でその商品の価格が下がっていれば、安く買って高く売れるので差額が儲けになる(p49)
・ヘッジファンドの実績が悪いのは、投資戦略の自由度が高いはずだが、はるかに銘柄集中度が高く、フォートフォリオ分散ができていないから(p56)
・アメリカ株式市場をむしばむ大きな大問題は、自社株買いの激増、従業員を大量解雇しながら自社株買いをする倫理観のない企業が増えている(p59)
・歴史的に見ても、論理的に見ても、金融資産のインフレは物価インフレにはつながらない(p68)
・現在の外為市場は、キャリートレード(米ドル借りて、新興国通貨で運用する)は米ドル返済を遅らせるほど損失が拡大する。なので米ドルを買いあさろうとして米ドル高が進むという構造になっている。(p77)
・アメリカの一般勤労者の実質賃金が伸びなくなったのは、1971年からで、もう40年続いている。1970年代には所得が伸びない時期を経験しているが、お金持ちの平均所得も低迷したので、貧富の格差は変化なかった。(p93)
・所得格差の小さい国のほうが、経済成長率は高い。知的エリートの傲慢な鼻がへし折られた敗戦国のほうが、敗戦直後の解放感・抑揚感を維持しやすかった(p96)
・金融業界にとっては、戦争は、勝っている限りは非常に実入りの良い投資であった(p97、98)
・アメリカで高額所得の取れる職種は、医師・治療師・薬剤師といった医療関係に集中、それ以外では石油関係など(p100)
・世界中に300前後ある国や地域の中で、殺人多発都市ワースト50に入っているのは、たったの10か国の都市のみ、宗主国が初期の移民たちに押し付けた、計画された都市群(p103)
・アメリカ13州の名望家たちが命を懸けて独立革命に参加したのは、アメリカをアイルランドのように「安定した植民地」にさせないため。植民地に反対したのではなく、その利権が宗主国のイギリスの貴族の家系に引き継がれることに反対した(p107)
・1948-73年の25年間は、生産性の累計上昇率と、一般労働者の平均時給上昇率はほぼ同一、しかし1973-2014年では、生産性が72%上昇しているのに、自給は9%のみの上昇(p108)
・アメリカ中で、9400万人の成人男女が、「仕事はないが次の職を探してもいない」という、労働人口に参加していないという宣言をしている(p109)
・アメリカは、一般国民から搾り取った後に、中国や産油国の外貨準備の運用で利益拡大を支えてきたが、その頼みの綱が切れようとしている(p111)
・中国の鮮卑系王朝では、都は、長安・洛陽といった伝統的な王城に置かれていた。異民族であることがはっきりしていた、大元帝国や、大清帝国の首都は、華中・華南に大半が住む漢族を北方から支配するための前線基地という趣の強かった北京におかれていた(p116)
・世界中のほとんどの国で贈収賄として訴追される行為が、アメリカでは「連邦議会に登録し、四半期ごとに財務諸表を公表している」ロビイスト集団を通じて行えば、正当な政治活動とみなされる(p122)
・中国の幹部は上場前の株を会社からの融資で安く買って売ることは正常な投資活動である。これだけに満足できずに賄賂をむさぼると、現在の不買撲滅キャンペーンで引っかかる(p124)
・大富豪(36億円以上の金融資産)人数順ランキングは、2012年からの2年間で、日本は30%以上増えて(→16703)世界2位、2004-12年までの8年間は横ばいであった(p138)
・日本だけは所得格差よりも資産格差のほうが小さいのは、金持ちが一般的に稚拙な資産運用をしているから(p144)
・消費税増税は法人税減税との抱き合わせなので、目的が国家債務削減ではなく、中間層以下の国民から、大企業と富裕層への所得を移転するため(p149)
・消費税導入前は、政府歳出と歳入のギャップが10兆円台で済んでいたが、導入とともに20兆円以上、5%への増税後は50兆円となっている(p152)
・日本のGDPを米ドル建てとすると、2008年の約4.3兆ドルから、2013年の6兆ドルへ拡大していた(p158)
・円安には、世界貿易に占める日本の輸出品シェアを拡大する力は無い、これは高度に発展した市場経済の国では共通した特徴(p158)
・アメリカの貿易赤字総額中で対日赤字の占める割合は、1994年には45%だったが、2008年には10%以下。ドルベースで見た輸出額は、2011年末(1ドル80円)比較で20%以上も下がっている(p166)
・日本は資本の大量投入、労働の量的拡大・質的改善、に頼らずに、社会全体の進歩がストレートに経済発展に結びつく社会を育ててきたのが強味、これが、全要素生産性の伸び率の高さである(p169)
・米英独仏伊に日本、韓国を加えた7か国で、前半(1980-1985)と後半(1995-2007)の全要素生産性を比較して、上昇率が加速したのはアメリカのみ(p175)
・1980年において100棟のうち高層ビルは80棟がアメリカにあったが、2014年ではアメリカには20棟、中国には44棟、2位と3位が韓国と日本(p192)
・原油が2014年7月まで高値であった要因は、1)中国による買いあさり、2)連邦準備制度による量的緩和(p199)
・エネルギー商品が拡大するときに主役を担っていた原油であったが、2005年以降は、発電によってエネルギー需要の伸びに応える年が多くなってきた(p208)
・アメリカ経済の好況は、根っこにあるのは、アメリカ企業が海外で稼ぐ収益の異常な大きさがある(p216)
・アメリカではトップ1%が、平均値の6倍もの借金をしている、これが貧富の格差を拡大している(p225)
・中国では2008年に純輸出がピークアウトすると共に、投資の対GDP比率が急上昇した(p228)
・2014年に習主席が、過去5年間で中国の投資損失は、6.8兆ドル(816兆円)であると公式に認めた、これはGDPの4分の3。過去4-5年間続けてきたGDPの45%の投資のうち、約4割は無駄だった(p229)
・拓銀だけが、あとかたもなく消え去ったかと言えば、北海道独立運動が起きる際にその金融的な中枢を担うかもしれない銀行を手回しよく潰しておこうということではないか(p248)
・イラク、シリア国境が現在の位置に引かれているかは、イラクにはシェル(英蘭)とBPがあり、シリアにはトタル(フランス)の原油採掘権があるから(p249)
・イスラム国は、昔ソ連軍がアフガニスタンに侵攻した際に、アメリカの軍事施設団や特殊部隊が「自由の戦士」としてアメリカ軍が育てた軍隊組織と思われる(p250)
・革命後のソ連のGDPはほぼ一貫してアメリカの3分の1から、2分の1にとどまっていた(p256)
・日本国民は、権力は多重化し、分散し、下降する方が良いと考えられている(p267)
・日本では、自分の家系に権力を集中しようとした人々は徹底的に潰される、権力を分け合う姿勢を示せば、延々と続く傾向が強い。蘇我氏や清盛系の平氏は滅ぼされたが、藤原氏は、近衛家・鷹司家として続いている(p272)
2016年2月27日作成続きを読む投稿日:2016.02.27
2016/07/27:読了
「平岡正明に捧ぐ」という献辞に恥ずかしくない本に仕上がったと、著者がいっているように、非常に面白い本であった。
資本主義は、植民地利権の歪曲化された姿であり、「宗主国の…なき植民地」経済の、アメリカ、中国は、没落する、という内容。
アフリカ、中南米、アジアを植民地化した資本主義の問題を解決するのに、21世紀の前半が費やされる。
などなど続きを読む投稿日:2016.07.27
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。