ダブルオー・バック(新潮文庫)
稲見一良(著)
/新潮文庫
作品情報
シャクリと呼ばれるポンプ・アクション6連発銃、ウィンチェスター・M12。その銃を手にした男たちのそれぞれの生き方――自分の射撃スタイルに最後まで固執した選手、一人前の男として生きる姿勢を身をもって息子に教えた父、悪徳養豚業者と闘う陽気なマスター、スパイらしき男と闘争を余儀なくされた老人。銃が人を巡り、生みだされた四つの切ない物語。ハードボイルド連作短編。
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商品情報
- シリーズ
- ダブルオー・バック
- 著者
- 稲見一良
- 出版社
- 新潮社
- 掲載誌・レーベル
- 新潮文庫
- 書籍発売日
- 1992.01.01
- Reader Store発売日
- 2016.06.24
- ファイルサイズ
- 1MB
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この作品のレビュー
平均 5.0 (4件のレビュー)
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男の話を読むのなら「稲見一良」は外せない。
シャクリと呼ばれるポンプ・アクション6連発銃、ウインチェスター・M12。その銃を手にした男たちのそれぞれの生き方。銃が人手を巡り、生みだされた四つの切ない物語。
稲見一良の作品は、その殆どが猟か銃に…関する話で占められており、銃に関する知識や猟での作法などは読んでみるとそれを経験していなければ書けない「重み」を感じさせる。またそこに描かれる男としての生き様も、作者がどのように生きてきたのかを読んでいるとヒシヒシと伝わって来る。緊張感がある小説で、とにかく粋で沁みるセリフが沢山出てくる。それは病魔に冒されながらも最後まで原稿を書き続け生還することを考えていた作者だからこそ書き得た、また言わしめた言葉だからだろう。
第一話「オープン・シーズン」は、めずらしく女性目線から惚れた男の転落していく様を描いている。自分のスタイルに固執してしまい結局何もかも失ってしまう、男とは哀しい生き物です。。
第二話「斧」は、中学生になった息子が、山で猟をして生活している父親を訪ねる。父親は息子に山での生きる術を教えていくが、これも結末は悲しいが「父親は生涯に一度、息子に強烈な印象を残せればいい」というくだりがグッと来ます。
第三話「アーリィタイムス・ドリーム」。銃は登場しますが、猟には関係ないヒカレスクロマン。登場人物たちのセリフが粋で良い。ハードボイルド被れのBARのマスターが悪徳養豚業者とヤミ金融業者を敵に回して奮闘するのだが、、、、店のなじみ客がいい味出しています。
最終話「銃執るものの掟」。老猟師が山中で北の工作員に愛犬を殺され、海へと脱出する為の案内役として脅される。物語の中で語られる老人の過去。何度も癌の手術を受けその度に生還したその過去は、まさに稲見一良その人に思えた。そして最後の「生きている限り、人は迷う。忘れられるから、生きていける。」のセリフは重く胸にズンと迫まって来る。
和製ハードボイルド、男の話を読むのなら「稲見一良」は外せない。続きを読む投稿日:2016.07.01
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ポンプ・アクション6連発銃、ウィンチェスターM12。通称“シャクリ”と呼ばれる一丁の銃が人から人へ渡る。その銃を手にした者たちの物語を綴った連作短編集。
これが稲見氏の小説で一冊の本として纏められた…実質上のデビュー作となる。
その端緒となる第一話「オープン・シーズン」は腰だめで撃つ自分の射撃スタイルにこだわった男が落ちていくさまを描いた哀しい物語。これを筆頭に、収められた4つの物語は何がしか魂を震えさせるものを感じさせてくれる。
「斧という字の中に父がいる、ということに今頃気づいた」
という印象的な一文から始まる「斧」は離別し、山に篭って生活する父の許に息子が訪ね、大自然で生きていく術を教えていく、親子の交流を描いた作品。
「アーリィタイムス・ドリーム」はうってかわって洒脱で軽妙な語り口で進むバーのマスターの物語。悪徳業者相手に無手勝流に立ち向かうマスターと彼を慕う若者たちを描いた好編。ハードボイルド調の語りが妄想混じりに挟まれるのが非常に面白い。
最後「銃執るもののの掟」は北の工作員が出くわした老猟師の話。この老猟師の生きることに対する考え・構えは心が震えるものがある。
どれも甲乙つけがたい短編集。軽妙さもありつつ、ストイックさも兼ね備えた、「男」による「男」のための短編集。硝煙の匂いが立ち昇ってくるかのようだ。
ガンに侵されていた著者が生きた証を残そうと著した本作は、まさにこの作者が読みたかった作品を書いたのだという強い思いが行間から立ち上ってくる。
これらの登場人物の考え、思い、譲れない領域などは全て作者自身の影が色濃く投影されている。
デビュー作にして人生の酸いも甘いも経験してきた作者の人間としての懐の深さが窺える作品だ。
これも絶版で手に入らない。全くもって勿体無い話だ。続きを読む投稿日:2017.06.14
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