猫的感覚 動物行動学が教えるネコの心理
ジョン・ブラッドショー(著)
,羽田詩津子(訳)
/早川書房
作品情報
ネコは私たちをどう見ているのか? ネコの幸福とは、ストレスとは? 人間動物関係学者である著者が、身近だけれど謎に包まれたネコの生態から進化の歴史、一緒に暮らすためのヒント、未来像までを詳しく解説する、NYタイムズベストセラーの総合ネコ読本。
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商品情報
- シリーズ
- 猫的感覚 動物行動学が教えるネコの心理
- 著者
- ジョン・ブラッドショー, 羽田詩津子
- ジャンル
- サイエンス・テクノロジー - 生物・バイオテクノロジー
- 出版社
- 早川書房
- 書籍発売日
- 2014.11.25
- Reader Store発売日
- 2014.12.24
- ファイルサイズ
- 24MB
- ページ数
- 384ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (9件のレビュー)
-
帯の裏には「どうすれば人なつこいネコになる?」「ネコが飽きないおもちゃとは?」「ネコはわたしたちをどうみている?」というような飼い主の素朴な疑問をわざわざ載せていて、それらの疑問にずばっと答えてくれる…本のように思えるのだけど、飼い主として知りたいそれらの話題は、全体からするとごく一部でしかない。
猫の祖先となる世界中のヤマネコの話や、歴史的にいかに人間社会に入り込んでいったのか、その過程の犬との差異や、身体のつくり・器官について、どういった要素が遺伝によるのか、などがメインの学術的な本である。
図表・図解なども少なくイラスト以外は文章だけで構成されているので、「ネコの飼い方入門」とは違うと思っても、「うちの猫は何を考えているのか」「あの行動には何の意味があるのか」という具体的な疑問を胸に読んでも、解決はされないかもしれない。
ペットの猫との暮らしに即座に役立てようというよりは、猫を生き物として深く知りたい人のための読み物と思った方が良いだろう。
子猫の時期の、飼い主や親兄弟との関わりと経験が、社会化(つまり人間に対する態度など)に強い影響を与えるという話や、猫同士の関係性などの記述は興味深かった。
ちなみにゴロゴロは甘えているとか喜びの表現と一般的に言われているが、そうとは限らず、人のいないところでも猫は一人でゴロゴロいっているそうである。我が家の飼い猫と照らし合わせて大いに納得する部分があった。
この本でもっとも考えさせられたのは、飼い猫・野良猫の繁殖と去勢についてである。
猫を都会で飼うにあたっては、基本的には去勢したうえでの室内飼いが推奨されている。
この本から垣間見える欧米での猫事情と日本のそれとはまた若干状況が異なる。オーストラリアなどでは、飼い猫のハンティングが野生動物を絶滅に追いやるとして非難の的になっているところがある、というのは初めて知った。
しかしペットの雄猫への去勢が積極的に薦められているのは日本もかわらないし、野良猫の去勢の活動も行われている。
飼い猫の病気のリスクやスプレー・家出・発情期の騒ぎなどの問題行動をふせぐには、子猫のころに去勢してしまうほか対処法がなく、それさえ済ませれば非常に共生しやすいパートナーになってくれる。
しかしこの可愛い相棒の血を継いでくれる、直系の子どもはもう望めないのだ。
その一方で、自然な繁殖を繰り返す猫たちというのは、荒くれ者で人間に対する警戒心の強さゆえに生き残っている野良の猛者たち(もしくはブリーダーに管理された、ともすると問題のあるDNAを伝え続ける純血種の猫)なのである。
飼いやすい人なつこいネコたちが去勢されて一代限りで人のパートナーの役割を終え、人から逃れ続ける猫たちだけが繁殖し続けると、未来の猫の性質はどうなってしまうのだろう? 地域猫活動のありかたと合わせて、真剣に考えたい問題である。続きを読む投稿日:2015.10.13
英国の著名な人間動物関係学者による、猫に関する分析結果をまとめたもの。猫の生態や進化の経緯、イヌとの違いなど、猫について科学的な調査結果を基に、その生態について詳細に書かれている。ネコはイヌとは違い、…狩りへの執着があることと、縄張り意識が強いために、人間と仲良くなりにくいことがわかった。
「イエネコは「人間の親友」であるイヌよりも多く、数にして3対1ぐらいだ。アメリカの1/3の家庭は、1、2匹のネコを飼っている」p19
「ネコは愛情深いと同時に、独立独歩の生き物である。ペットとして、イヌに比べネコは手がかからない。訓練も必要ない。自分で毛づくろいをする。1日じゅう放っておいてもイヌのように飼い主を恋しがることはない」p19
「イヌは表現力が豊かだ。尻尾を振り、飛びついてあいさつするので、幸せなときはまちがいなくわかる。また、つらいときは、それを躊躇なくわたしたちに知らせる。かたやネコは感情をあらわにしない。感情を胸に秘め、空腹のときに食べ物をねだる以外は、めったに要求を伝えない。ネコが喉をゴロゴロ鳴らすことは満足を表現していると長い間信じられてきたが、最近になって、もっと複雑な意味があることが判明した」p23
「飼い主の納屋でネズミを繁殖させてしまったネコ、あるいはヘビが家の中に入るのを許し家族の誰かを噛ませたり毒殺させてしまったネコは、長く生きられなかっただろう」p56
「ネコは徐々に人間の家と心に入り込んできて、野生のネコからイエネコへと、何千年もかけて変化していったのだ」p58
「(ネコは肉食)ネコ科の動物は栄養的にも肉をとらなくてはならない」p111
「主としてのネコは多くの社会的環境に適応できるが、個々のネコは一般的に適応できない」p170
「ほとんどのネコは、人間の関心それ自体をほうびとはみなさない。かたや、イヌはほうびだとみなす。第二に、イヌは本能的に人間にとって役に立つような行動をする。たとえば、牧羊犬のヒツジの番は、イヌの祖先、オオカミが狩をしたときの行動から成り立っている。必要なときに特定の獲物にイヌの関心を向けるのは、わたしたちの責任なのである。ネコの行動には、訓練によって磨きをかけられるような役に立つ特徴はほとんどない。人間が望んでいようが望んでいまいが、ネコは穀物倉庫に侵入してくるネズミを探すだろう」p181
「ネコはすばやい決断を下せる。逃げるべきか、毛糸球で遊ぶべきか、飼い主の膝で丸くなるべきか。しかし、ネコはイヌほど社会的に発達していない。まちがいなく知性はあるが、その知性はもっぱら食べ物を手に入れ、テリトリーを守ることに活用されている。相手との相関関係から生まれる感情、たとえば嫉妬、喪失、罪悪感はおそらくネコの能力を超えているだろう。そのため、ネコは他のネコと親密に暮らす要求に、なかなかうまく応じられない。だが、家畜化が進むにつれ、ネコはそういうことを求められるようになった」p207
「歴史的にネコはイヌのように人間に対して親密な愛着を形成する必要がない」p243
「(ネコ嫌いの人間)ネコは部屋に入って数秒で、人間の嫌悪感に気づいたようだ」p290
「持ち込まれたほとんどの場所で、ネコは捕食動物と戦って勝ちをおさめている」p296
「生後3週間ぐらいまでの育て方で、どういうネコになるのか決まってくる」p328続きを読む投稿日:2018.10.30
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