中国停滞の核心
津上俊哉(著)
/文藝春秋
作品情報
グローバル化が急進した21世紀、世界経済の主役に躍り出た中国。二ケタ成長の躍進に「米中G2論」まで喧伝されました。しかし実は今、中国経済は瀬戸際に追い込まれています。今後、中国はどこへ向かうのか? 日本は依然として中国に振り回され続けるのか? 当代随一の中国経済ウォッチャー、津上俊哉さんが、膨大な統計データに加え、2013年秋の中国共産党「三中全会」決定を詳細に分析しながら、中国が停滞する原因を深く考察します。「中国のこれからの10年」がわかる、ビジネスマン必読の書です。
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商品情報
- シリーズ
- 中国停滞の核心
- 著者
- 津上俊哉
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 文藝春秋
- 書籍発売日
- 2014.02.20
- Reader Store発売日
- 2014.06.06
- ファイルサイズ
- 3.6MB
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この作品のレビュー
平均 4.4 (7件のレビュー)
-
中国の停滞は一過性ではないよ・・・
中国経済は瀬戸際あるよ・・・
著名な中国ウォッチャーの新刊・・・
リーマンショック後、苦しむ先進国を尻目に高成長に返り咲いた中国・・・
今後も高成長を続け、2030…年までにはGDPでアメリカを追い越すとまで見られていたけども・・・
シャドーバンキングの問題がクローズアップされるなど、ここ最近どうも変調を来たしている・・・
短期的には下記の後遺症の問題、中期的には国有企業が幅を利かせる非効率な経済による生産性の低下、長期的には日本と同じく少子高齢化から来る人口オーナスの増大・・・
前著で中国台頭の終焉を予見した著者だけれども、今回はその続き・・・
リーマンショック後の4兆元投資&金融緩和で製造業、インフラ、不動産といたるところで爆発的な投資ブームが起こり、経済が劇的に持ち直したけれども、今度はその後遺症が・・・
後遺症としては・・・
まず過剰投資問題。過剰設備、製品価格の値崩れ、ゴーストタウン現象、地方政府のインフラ投資を一気に先食い。
次に過剰債務問題。先進国は政府債務が急増したけど、中国では民間債務が急増しているのが特徴。企業と地方政府がキてる。
さらに(賃金上昇したけど)物価も不動産価格も上昇。公式統計以上に国民生活を圧迫している。
そしてシャドーバンキング問題。社会融資総量のかなりの部分をシャドーバンキングが占めてきている。物価上昇に比べて銀行金利が規制のせいで低く抑えられているので、シャドーバンキング経由の資金調達、理財商品として投資が急拡大。借り手の方は何とか高利で資金繰りしているけれど、破綻企業も出てきたようで、投資家が理財商品を嫌って資金が集まらなくなったら・・・信用縮小?
がある・・・
こういった後遺症があるなかで、経済が高い成長率を維持するのが難しくなってきた・・・
中国の生産年齢人口は既に減少期を迎え始め・・・
しかもルイスの転換点を迎えたことで、人手不足が拡大し、人件費の高騰は止まらない・・・
もはや潜在成長率は7%を下回っているんじゃないか、と著者は言う・・・
高い経済成長率の半分以上は投資の伸びで支えられており・・・
つまり投資を拡大していけば潜在成長率以上の高い成長率を(無理やり)維持できるけども、先ほどの後遺症がさらに悪化するばかり・・・
これ以上の悪化は恐怖・・・
でも高い成長率は続けたい・・・
でも・・・
おお、なんというジレンマ・・・
中国さん、追い込まれているよ!!!
それに対して、習近平政権もまずは李克強のリコノミクスを経て、去年の秋に開催された三中全会でかなり大胆な改革が謳われた・・・
この習近平の改革が成功すれば中国も安定成長に移行できると思われるが、できなければ・・・
これに対して著者の解説、見立てが書いてあるので興味があればゼヒ・・・
そして巷でよくある中国経済崩壊についても書かれている・・・
著者の予測では短期の中国経済崩壊はない・・・
債務は先進国に比べるとまだまだかなり少なく健全・・・
噂のシャドーバンキングを含めても全然マシな方・・・
ただ、もちろん家計や企業、地方政府で急増しているのは問題だけど・・・
でもとにかく中央財政が他国と比べてバツグンに良いというのは強い・・・
何かあっても中央財政でカバーできる・・・
そして政府の経済のグリップ力も強い・・・
これらから考えると短期的に崩壊というのは考えにくい・・・
『ブラックスワン』さえ現れなければ・・・
あとは・・・
習近平についてや・・・
米中日関係や・・・
昨年騒がれた防空識別圏や・・・
安倍総理の靖国参拝や・・・
尖閣問題なんかについても書かれております・・・
今の中国経済について知りたいなら・・・
中国について考えるなら・・・
この本はオススメちゃん・・・
さすが津上さん・・・続きを読む投稿日:2014.03.26
たくさんのデータを使っているにも関わらず、非常に読みやすい本です。
氏は、元官僚、ちょっと前は、会社の社長、今は、中国研究家と、相当な中国通だと感じられる経歴の持ち主です。
氏の独特のユーモアが効い…ているのか、難しい中国経済の話しもスラスラ読むことが出来ます。
日本では、「そろそろ中国経済が崩壊するのではないか?」、「不動産バブル崩壊!」、
「一党独裁崩壊!」と、中国に関して、ネガティブ報道が主流ですが、どれも、
根拠に欠ける気がしていました。
どちらかというと中国の「反日」に対する少なくない日本人の「願望」のような気がしていました。
氏は、統計データーから、中国経済の現状を解説しています。その語り口はユーモアですが、非常に論理的です。
説得力が非常にあります。また、中国の統計データーの、「不確かさ」も考慮に入れている所が、
より、説得力を増しているように思います。
中国経済の崩壊に関しては、短期的に発生する可能性は非常に低いことがわかります。
ただ、崩壊しないとは言っても、危機的な情況には変わりないと、分析しています。
1 08年のリーマンショックに対する、景気刺激策として、4兆元投資したが、結果的にその財源を確保するために、
金融緩和が行われ、 09年〜12年で「固定資産投資」として、総額110兆元!に膨れ上がった。
これは、明らかに、過剰投資であり、現況の中国経済(特に 企業の過剰債務、物価上昇)に深刻な影響を起こしている。
2 2012年11月の代18回党大会で20年までにGDP倍増、収入倍増を計画したが、
それは、20年までに年率6.9%の成長がないと達成でき ない。
しかし、現実的には、この目標は達成するのは困難である。それは再度、過剰投資をすることであり、
新たな負債を増やす原因 になってしまうからである。
ただ、「公約」と掲げているからには、達成しなければいかない。そのジレンマに中国経済が直面している。
現実的に、投資を抑え、債務を減らす方向で動いた方がよい。4%の経済成長が現実的だろうと、氏は考えている。
3 少子高齢化社会の到来。高齢者が増え、若者が減る。社会保障費は増え、労働者数の絶対数が減る。
それが、急速に訪れる。中国が今 までの歴史で経験したことがない事態である。
長期的安定のためにも、急務にこの問題を対処しなければいけないが、
現状中国では「成長維持」に関心が行き、来たる高齢化社会への準備が不足している。続きを読む投稿日:2017.06.06
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