ユニクロ帝国の光と影
横田増生(著)
/文春文庫
作品情報
ユニクロ側が出版社に対し2億2000万円の損害賠償を求め提訴した衝撃の書!(一審判決は原告の請求棄却)
大型旗艦店を続々開き、世界に覇を唱えるユニクロ。総崩れの日本企業の中で、唯一気を吐いているように見える。しかし、これまで創業者・柳井正氏率いる同社の経営を精査したメディアはなく、その実体は謎に包まれていた。なぜ、執行役員が次々と辞めていくのか? なぜ、業績を回復させたにもかかわらず玉塚元一社長は追い出されたのか。なぜ、中国の協力工場について秘密にするのか? 誕生の地山口県宇部から、ユニクロ躍進の秘密を握る中国へ、そしてライバルZARAの心臓部スペインへ。グローバルな取材によって著者があぶり出した、「柳井正」と「ユニクロ」の真の姿。
もっとみる
商品情報
- シリーズ
- ユニクロ帝国の光と影
- 著者
- 横田増生
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春文庫
- 書籍発売日
- 2013.12.10
- Reader Store発売日
- 2014.02.07
- ファイルサイズ
- 4MB
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 3.7 (34件のレビュー)
-
ユニクロおよび柳井社長批判の書である。著者は、ユニクロから名誉棄損で訴訟を起こされたことでも有名になった(正確には被告は文藝春秋社)。本書の刊行は2011年でかなり前の出版になるのであるが、いまだ成長…を続けるユニクロという会社の成功の源泉が、逆説的に批判の書でもあるこの本にあるのではと考えるところがあり、この本の賞味期限は少し過ぎているかもしれないが手に取ってみた。
本書は、『成功は一日で捨て去れ』『一勝九敗』といった柳井さんの著作や、著者が一度だけ実現させることができた柳井さんへのインタビュー、元ユニクロ社員や中国提携工場職員へのインタビューなどを踏まえて進行する。山口の中小商店から、全国展開し、SPAという業態に可能性を見い出して、それを徹底するところは成功譚として読む価値がある。一方で、著者はユニクロで働く人が搾取されているのではないか、その独裁的な企業運営はリスクがあるのではないかと批判的に描いている。
例えば著者は、財務的には万全にもかかわらず、いまにもつぶれそうなことを言って社員やアルバイトを鼓舞する柳井さんのやり方について否定的だ。それは、著者にとってはユニクロをブラック企業として告発するために必要なポジショニングトークでもあるが、経営哲学的な観点ではある意味では、経営者として正当なものであるのかもしれないし、その姿勢こそが成功の鍵であったとも言える。いわく、
「会社というものは、何も努力しなければつぶれるもの。常に『正常な危機感』をもって経営しなくてはいけない。会社を成長発展させようと考えたら、『現状満足』は愚の骨頂だ。現状を否定し、常に改革し続けなければならない。それができない会社は死を待つだけである」
このとき以降特に最近、多くのアパレルが新型コロナの影響を受けて倒産した。日本ではレナウンが倒れたが、海外でもブルックス・ブラザーズ、J.Crew Group、J.C.ペニー、ニーマン・マーカス・グループ、と多くの会社の倒産が続いている。これらは、自社の改革ができず長い間変われないまま、巨大SPAやECサイトに押されてもともと業績が厳しかったところに、新型コロナで最後の一押しをされた形だろう。それがユニクロにも同じことが起きないとも限らない。『現状満足』は愚の骨頂だ、に柳井さんの多くの意志が込められているように思う。
これは、著者が特に批判する2005年の自らが後継者として指名した玉塚社長更迭人事とも整合する。柳井さんはインタビューの中で、成長より安定を望んだから更迭したと言った。著者は、玉塚社長時代の事業成績は決して悪くないし、柳井さんの時代でもよほど悪かったときもあると指摘するが、それは論点がやはりずれているのである。果たして玉塚さんがどういう観点で安定を望んだのかどうかは知る由もないが、著者は事業成績よりもそこを問題にすべきだったのではないか。柳井さんは成長よりも安定を望んだことはなかった。そして、それを徹底できるのは、柳井さん自身が会社の大株主であるからこそであったのである。
また、著者は柳井さんが社員に多くを求めすぎる点についても批判する。10年後(2020年に当たる)には売上高五兆円を目指すと掲げたことに対しても証券アナリストの声として次のように記述する。
「会社としての目標を高く掲げることで、社員からチャレンジ精神を引き出して、ビジネスに対して今までとは別の切り口の発想を求めているんだと理解しています。しかし私には、目標が高すぎるように思えるし、それに伴う負荷とプレッシャーも大きくなりすぎて、働く人と組織が疲れているように思える」
このアナリストは柳井さんの経営手腕を高く評価しているとされていることから、これが正当な発言の切り取り方であるかはわからないのだが、目標を高く上げてストレッチするのは、現代のビジネス的にはリーダーの正しい役目である。
元店長の言葉として、次のように紹介する。
「柳井さんの話は意外なくらい具体性に乏しい」と言う。それでも、「業績が良かろうが悪かろうが、常に反省を強いて、それによって目線を高くして商売に取り組ませる。一言で言えば、言い訳を一切許さない企業カルチャーだね」
しかし、その例として「『考えます』、『努力します』という回答は絶対にしないで頂きたい」と言ったことを挙げている。強いプレッシャーをかけていることを伝えようとしているのだが、それはまた当然のことなのではないか。
「店長の仕事で一番大事なのは「売上高と利益の極大化」である」というのも、ある意味では当然のことだ。
もちろんそういったことが、店舗や工場の劣悪な労働環境につながっていることが、批判されるべきところではある。そしてそれが、本書の主旨なのだろう。それはそれで改善されるべきなのだろう。離職率が高い点も経営リスクではあるだろう。後継者が育っていないところも中長期で見ると指摘されるように課題となることだろう。
しかし、それ以上に著者の意図におそらく反して、ユニクロと柳井さんの成功の理由がとてもよくわかったような気がするのだ。
-----
『ユニクロ潜入一年』(横田増生)
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4163907246続きを読む投稿日:2020.08.09
ユニクロでシームレスボクサーブリーフを買った帰りにブックオフにあったから読んでみた。そんなに興味のない柳井正について無駄に詳しくなってしまった。10年前の本なので今のユニクロの体質がこの時のままなのか…には興味がある。この著者のアプローチは公平でなかなか好感が持てる。ZARAとの比較の部分がめちゃくちゃ興味深くて良い切り口だと思う。ZARAは正社員にちゃんと人件費を払っててユニクロはそうじゃないってのはいいコントラストだよなあ。柳井氏から店長たちに対して慰労の気持ちが見えないのはなかなか残念だね。続きを読む
投稿日:2023.01.28
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。