世界は食の安全を守れるか
村上直久(著)
/平凡社新書
作品情報
※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。人、モノ、カネ、情報が国境を越えていきかうグローバル化時代、食の世界も例外ではない。世界中から来た食材が食卓にならぶとともに、その安全性の危機=食品パニックも瞬時に国境を越えて広がる。狂牛病、鳥インフルエンザ、口蹄疫、ダイオキシン汚染…。いまや、食の安全は世界規模で取り組むべき課題となっているのだ。食の危機管理のために、いかなる世界システムを構築すべきか?「欧州食品安全庁」の取り組みを軸に、日本の課題もさぐる。
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商品情報
- シリーズ
- 世界は食の安全を守れるか
- 著者
- 村上直久
- 出版社
- 平凡社
- 掲載誌・レーベル
- 平凡社新書
- 書籍発売日
- 2004.08.11
- Reader Store発売日
- 2015.05.16
- ファイルサイズ
- 27.1MB
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この作品のレビュー
平均 3.7 (3件のレビュー)
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昨今の食品偽装にはじまり、BSE、遺伝子組換食品、残留農薬、抗生物質など食品の安全性に関する疑問や不安は増すばかりである。日本人のみならず、人類が直面する食にまつわるこうした問題を網羅し、それぞれ分か…りやすく解説した書である。また、日米欧による食品安全政策についての比較を行っており、特に先進的である欧州の例は、日本の進路にとって参考になるであろう。。BSEの発生源となった欧州ではEUの正式機関としてEFSAという食品の安全性を確保するための専門組織が既に発足している。興味深いのは、あくまでの消費者を最大の利害関係者として位置づけ、消費者の懸念を考慮することが政策上不可欠であると位置づけている点である。一方、アメリカの政策は基本的に生産者寄りであり、農業を戦略産業として国際市場で競争的にするために、政府の後押しがなされている。GMOを規制するEUと、戦略的に世界市場での拡販を行うアメリカの対立は、典型的な例といえる。安全に対する考え方も、アメリカが科学的立証の伴わない疑念は一蹴するのに対して、EUは安全が疑われるものは予防的処置をとるという、「予防原則」を採っている。日本においても、より後者の方が消費者の一般的な感覚により近いと思えるため、欧州的な考え方が日本の食品安全政策にはしっくりくるであろう。米モンサントによるラウンドアップという除草剤とその耐性種子であるラウンドアップレディのGMO大豆におけるシェアは90%だという。驚くのは、その種子は自滅機能が組み込まれており、一度発芽するとその次世代の種は発芽しないそうである。農家は、毎年新しい種子を購入しつづける仕組みである。アメリカ資本主義の利益至上主義がこんなところまで顔をだしているのである。本の最後に、食と倫理について触れられている。例えば BSEが本来草食動物である牛に、仲間の肉を粉末にした肉骨粉を食べさせるという、共食いの強制がひとつの要因であると考えられている。動物である牛がまるで工場で生産される物ように扱われ、あたかもそのしっぺ返しを食らっているかのようであるというくだりは、心に留めておきたい。続きを読む
投稿日:2009.10.19
昨今の食品偽装にはじまり、BSE、遺伝子組換食品、残留農薬、抗生物質など食品の安全性に関する疑問や不安は増すばかりである。日本人のみならず、人類が直面する食にまつわるこうした問題を網羅し、それぞれ分か…りやすく解説した書である。また、日米欧による食品安全政策についての比較を行っており、特に先進的である欧州の例は、日本の進路にとって参考になるであろう。。
BSEの発生源となった欧州ではEUの正式機関としてEFSAという食品の安全性を確保するための専門組織が既に発足している。興味深いのは、あくまでの消費者を最大の利害関係者として位置づけ、消費者の懸念を考慮することが政策上不可欠であると位置づけている点である。一方、アメリカの政策は基本的に生産者寄りであり、農業を戦略産業として国際市場で競争的にするために、政府の後押しがなされている。GMOを規制するEUと、戦略的に世界市場での拡販を行うアメリカの対立は、典型的な例といえる。安全に対する考え方も、アメリカが科学的立証の伴わない疑念は一蹴するのに対して、EUは安全が疑われるものは予防的処置をとるという、「予防原則」を採っている。日本においても、より後者の方が消費者の一般的な感覚により近いと思えるため、欧州的な考え方が日本の食品安全政策にはしっくりくるであろう。
米モンサントによるラウンドアップという除草剤とその耐性種子であるラウンドアップレディのGMO大豆におけるシェアは90%だという。驚くのは、その種子は自滅機能が組み込まれており、一度発芽するとその次世代の種は発芽しないそうである。農家は、毎年新しい種子を購入しつづける仕組みである。アメリカ資本主義の利益至上主義がこんなところまで顔をだしているのである。
本の最後に、食と倫理について触れられている。例えば BSEが本来草食動物である牛に、仲間の肉を粉末にした肉骨粉を食べさせるという、共食いの強制がひとつの要因であると考えられている。動物である牛がまるで工場で生産される物ように扱われ、あたかもそのしっぺ返しを食らっているかのようであるというくだりは、心に留めておきたい。続きを読む投稿日:2018.10.08
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