新・日本の外交 地球化時代の日本の選択
入江昭(著)
/中公新書
作品情報
軍事はもとより政治にまして経済を優先させてきた戦後日本は、世界有数の貿易黒字国・債権国となったいま、「持てる国」として世界経済の不均衡を助長していると批判される。そして、戦後世界秩序の大転換の中で、経済力と軍事力の間のギャップが不信感を呼んでいる。市民国家そのものが変貌し、協調と責任分担を根本理念とする、地球時代というべき国際秩序の下で、日本に何が可能か。戦後五十年を検証して日本の未来を考える。
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商品情報
- シリーズ
- 新・日本の外交 地球化時代の日本の選択
- 著者
- 入江昭
- 出版社
- 中央公論新社
- 掲載誌・レーベル
- 中公新書
- 書籍発売日
- 1991.01.25
- Reader Store発売日
- 2014.12.21
- ファイルサイズ
- 0.3MB
- ページ数
- 221ページ
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この作品のレビュー
平均 4.1 (11件のレビュー)
-
『日本の外交』の方のレビューをしたいのだが見当たらないので続編の書評を書く。
本書は、?変転する国際状況の中で日本外交の指導原則が果たした役割、?日本人の抱いていた考えと現実の国際関係との間のずれ、?…日本外交の思想的背景と政治・社会の動向との繋がり、の三点を骨子に、明治初年から第二次世界大戦を経て「吉田ドクトリン」が規定路線となる1960年前後までの日本外交を、一方的なドグマや陳腐な解説に不満足に筆者独自の視点で振り返っている。
目指すべき国家目標が比較的明確であった明治初期、政治面、軍事面、経済面で「海外各国と並立を図る(三条実美)」ための努力が、とりもなおさず不平等条約の撤廃という政治的目標とリンクしていた時代には、一貫した外交姿勢が容易に存在し得た。しかし運輸技術の発展などにより西洋によるアジアへの領土的、経済的、軍事的進出の姿勢が顕著になるにつれ、「欧州連合に加わり利権を獲得(大隈重信)」しようと、列国に歩調を合わせた外交、アジア主義を排して帝国主義的発展を期そうという「現実主義的/機会主義的な」外交姿勢は国内の理想主義者たちの批判の的となっていく。
日露戦争開戦直後、朝鮮半島の支配権、南清への進出経済的発展から更に南満州への進出と、日本が大陸国家への道を歩みだした当時も根底にある外交姿勢は変わらなかった。日露戦争の勝利が西欧諸国を刺戟する事が恐れた政府は、アメリカ国内の排日運動、日英同盟の希薄化、清国内のナショナリズムの昂揚、英米の援清姿勢という厳しい国際環境の中で、列国と協調した「現状維持政策(伊藤博文)」を採っていく事となる。また国内的には、こうした日本外交観念の無思想性に対して、「日本はアジアの指導者として西欧に対峙すべきである」という「道徳的アプローチ」=アジア主義が、民衆や軍部(主に陸軍)の中で高まっていくこととなる。国内外で日本外交は孤立化し、指導者間での対立が生じ始める。
1910年代に入ると辛亥革命、ロシア革命という変転が起きる中、ヨーロッパに代わって台頭したアメリカが新たな国際秩序へ強い意欲を見せる。中国の近代化を助けようというウィルソン外交に象徴される外交姿勢がそれで、むしろ混乱した国際情勢の変転期を「日本の版図拡張の好機到れり」と考えていた日本陸軍とは大きく姿勢を異にしていた。しかしアメリカへの経済的依存性を高めていた日本政府はこうした折衝を避けようと、三次四次にわたる日露協商、日英同盟改定を行って欧米協調主義を貫こうとする。同時に国内では岡倉天心、近衛篤麿、樽井藤吉らに代表されるアジア主義の高まりは抗し難い影響力を持ち始める。米ソが新外交の時期へ突入していく一方、日本は新しい外交観念を打ち出せずにいた。
こうした中で軍事、経済、思想的に乱れた日本の対外態度に統一性を回復し、新しい国際観念を以て世界の諸問題に対処しようと尽力した幣原喜重郎が現れた。幣原はワシントン体制を新たな国際秩序と捉え、米との協調、軍事費の削減、中国内政不干渉による列国との協調姿勢を打ち出し、「経済的依存が平和な国際関係を維持する」という観念に傾倒した。
しかし幣原外交は世界恐慌により破綻、積極外交を標榜した田中外交から満州事変を契機に軍部独裁へと一気呵成に日本外交は瓦解した。ひとたび大陸進出への箍が外れると一挙に対外問題が頻発し、それに呼応するようにアジア主義は暴走気味に大東亜共栄圏思想へと加速、軍部・政府の一貫した国防計画の欠如も相俟って日本はついに破局(日米開戦・帝国の崩壊)へと身を躍らせることとなる。
このような考察を経て、著者は「現実対応的な次元を超えた地平で外交を包摂する哲学や理念を日本はいまだ持てずにいるのではないか」、との問題提起により 本書を締めくくる。とあるAmazonユーザーがこの本の書評で「この言葉は、21世紀を迎えた現代にあってより切実な重みを持ってくるのではないだろうか。」と嘆しているが、正にその通りであると私も思う。16冊目。
続きを読む投稿日:2007.07.03
このレビューはネタバレを含みます
明治維新から太平洋戦争直後までの外交の流れを著した『日本の外交』の続編。本書では、太平洋戦争の結末から1980年代の日本外交を概観する。
レビューの続きを読む
著者は、太平洋戦争期までの日本を軍事強国・経済弱国とし、…戦後の日本はその対称であるとする。そして戦後の日本には、軍事と経済のギャップを埋め正当化する思想が求められたにも関わらず、外交理念の確立が遅かったという。「日本」の政策に思想的な追求が遅れているという状況は、本書から四半世紀経過した現在においても同様なのではないかと感じる。
まさしく副題の通り、地球化時代が不可逆的に加速している現在において、自分の自身の生活に関わる「日本」の選択と選択肢たちを検討するために、知識を深めようと刺激された2019年一冊目だった。
以下、心に残った文メモ。
「現在の世界を理解するために、固定化した過去のイメージにとらわれず、柔軟性のある見方を持った上で、最近の諸現象の意味を探り、それが近い将来にいかなる動きとつながっているのか、考えてみるべきであろう。要するに、バランスのとれた歴史感覚が必要とされるのである。(中略) 未来を創るのも、過去の遺産と同時に現在の努力である。」続きを読む投稿日:2019.01.07
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