この作品のレビュー
平均 4.0 (323件のレビュー)
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太宰治の中期の代表的短編集。
著者の作品の中で読んだことがあるのは『人間失格』だけ。
ふと『走れメロス』も子どもの頃にアニメ映画で観たなぁと思い手に取った。
結婚して比較的安定していた時期の作品らしく…、ユーモアがあったり、自虐の中にも愛情や希望を感じたりできる作品が多かった。
「ダス・ゲマイネ」
東京で暮らす4人の青年が雑誌を作ろうとするなか、芸術や恋をめぐり対立する。なんと太宰治も若手作家として登場。ユーモアのある4人のやり取りが面白かった。性格は全く違うのに4人とも太宰治の内面から生まれたキャラクターのように感じた。
「満願」
一度読んでも理解できず、二度目でなるほど~と。太宰治から見たひとりの女性の清らかさや美しさが描かれる。直接的な言葉を使わないことで、生々しさは一切なく軽やかで爽やかだった。たった3頁でこんなにも表現できる太宰治ってやっぱりすごい。
「富嶽百景」
井伏鱒二の紹介で見合いをするために甲府を訪れた主人公。富士を通して結婚を前にした主人公の精神的な変化が描かれる。否定から肯定へと変化していく富士の見方。登場人物たちのそれぞれの富士の見方。心情によって景色が変わって見えるところがおもしろい。
「女生徒」
思春期の少女の複雑な心理が見事に描かれた作品。少女目線で語られる。太宰治はなぜこんなにも乙女心もわかるのか。ぜひ思春期にも読みたかった。
「駈込み訴え」
深い嫉妬や愛憎。描かれるのはただその一点のみ。それはもうドロドロとしたもの。なるほど、キリストを裏切ったユダの気持ちだったのか。新約聖書をもとにするという発想はおもしろい。
「走れメロス」
この本で唯一知っていた話。子どもの頃は熱い友情の話だと素直に思ったが、改めて読みなおすとメロスってかなり強引な人だったのだなと。王に逆らって、勝手に親友を人質にすると言い出して、妹の結婚式の日程も勝手に決めて…。再会を果たしたときに、メロスが諦めかけた自分を殴れというのはわかるが、親友が疑った自分を殴れというのにはエッ!?となったし、殴ったメロスにはもっとエッ!?となった。親友はメロスの勝手で人質にされたのに…と思ったからだ。あぁ、私は人のせいにしてしまうところがあるようだ。そうか、親友は自分の意志で人質になる決断をしたのだ。きっとそれまでに築いてきた揺るぎない信頼関係があるのだ。だからなんの躊躇いもなく人質になることを受け入れたし、もしメロスが人質になることになっても当然のように受け入れたのだろう。諦めず約束を果たしたメロスも信じきった親友も素晴らしい。なにより命懸けの約束を即断できる友情は眩しいくらい美しい。
「東京八景」
32歳の太宰治が東京で過ごした10年間の日々を振り返るお話。不倫や借金、自殺未遂など起こしながら過ごした日々は暗く重いが、思い出される東京の景色の数々に、最後には少し希望を持てた。
「帰去来」「故郷」
連作短編。北さんと中畑さん。ふたりの恩人のおかげで、10年振りに故郷へ帰ることができたというお話。太宰治はどうしようもないところもあるけど、どこか憎めなくて周りの人から愛されていたのだなぁ。続きを読む投稿日:2023.06.09
あの太宰がなんで走れメロスを書けたのか不思議でならなくて何度も読み返した。ゴーストライターなのか?とか人格変わったのか?とか色々考えたけど、美知子と結婚直後で一番精神が安定した時に書いた作品なんだねえ…。彼の作品は、その時彼が置かれている状況とリンクする「ほぼ/ンフィクション」な愛らしさがあるよね。メロスの話の内容はさておいて、幸せの息吹が溢れる優しいワードチョイスに太宰の幸せを感じて嬉しくなるわ〜この幸せに満ち足りた瞬間が一瞬だったのが尚良い。この翌年から愛人に翻弄されて痴情がもつれまくり泥沼みたいな作品を生み出していくのだけど、まぁわたしはそっちの方が好きじ 恋だの愛だの友情だの素直に絞られた作品はもはやこれだけ、なのでみんなで大切に味わおうね(?)そういえば邪智暴虐ってメロスの音読でしか口にしたことないわ、「メロスは激怒した」からかき始められるのもマジ天才なんだよなあ続きを読む
投稿日:2024.02.24
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