
総合評価
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powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
「関係が終わっちゃっても、大切なわたしの歴史」 そうだよね、無理に忘れなくてもいいよね。 「他人なので、自分がして欲しい話はしてくれないものだと思ったほうがいい」 他人に期待せず自分がどうしたいのか考えます! 「好きなことしかしない日」 そういう日をつくって自分で自分を認めてあげよーっと。 いくつかのフレーズがささりました。 覚えておきたいなーっていうフレーズが
1投稿日: 2024.08.30
powered by ブクログ大した事件は起きない。登場人物は皆普通の人々。「何がいい?」と聞かれて「どちらでもいい」としか答えられなかった人が少しずつ答えられるようになって行く。そんな物語。退屈かと思いきや、一気読み。読ませる。 何かの書評を見て、読んでみた。初めての作家。でも次は読まないだろうなあ。
0投稿日: 2024.08.24
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
小さな和菓子屋が舞台。 古い体質を変えて行こうと奮闘する主人公。いわゆる「働き方改革」がテーマ。昭和のワンマン社長から社員たちが中心となる会社作りとなり、作業のマニュアル化や無償残業の廃止など、主人公が入社する事で少しずつ変わっていく様子がゆっくりと書かれている。新しい風を入れる時は色んな反感がある、その中コネ入社を悲観せず「それならばフルに利用してやろう」と進んでいくが、痛快なストーリーではなく、主人公の葛藤や鬱々とした感情もあるのでそこが人間臭くて身近に感じる。 「言いたいことは言わなきゃ伝わらない。それができる人は恵まれてる」なるほど。私は茉子と同じタイプの人間なので、言いたい事があるなら言えよ!とイライラしていたけど、この考え方に納得した部分もある。 寺地さんは人間観察が得意なのか、毎回いい人が1人もいない。色んな側面を見せてきて登場人物に誰も好感持てない。そこが彼女の作品の魅力だと思う。
2投稿日: 2024.08.17
powered by ブクログ正しいことって人を救うこともあれば人を傷つけることもある。 自分のためにその正しさを振りかざしてくれたら、困ることもあるだろうけど救われることもあるだろうな。
0投稿日: 2024.08.16
powered by ブクログ自分の意見をはっきり言える小松茉子が小気味よい。時には自分は残酷なのではないかと考えたり、周囲の人と共に少しずつ成長していくところがよかった。
5投稿日: 2024.08.14
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話が通じる人、わかりあえる人って、世の中そんなにいない。 ましてや、会社なんて世間の縮図で、いろんな人の集まりだから、なおさら。 どうやったら相手を理解できるか、 よりよく接していけるか、ヒントをもらったような気がする。 難しいけど。 ********* 『なにか不満があったらすぐに言葉にできるだけの反射神経があって、なおかつ今までの人生でそれを周囲にちゃんと聞き入れてもらえてきた人なんやなって思いました。言葉が通じる環境で生きてきた人なんやなって』 『「対話」ってね、言葉の通じる人同士でしか、無理なんです』 p205
0投稿日: 2024.08.13
powered by ブクログ主人公の最初の印象に戸惑ったけれど、読むにつれて、どんどん頼りになってくる。亀田さんとの絡みとか和菓子の知識がもう少し欲しかった。
0投稿日: 2024.08.10
powered by ブクログとにかく和菓子が食べたくなる。 人の内面を知るのは難しい。 茉子のような性格をうらやむ人は多い。会社を辞めた瀬川も、当たり前のように家に来る満智花も、社長の伸吾も。 でも販売員に転職してきた千葉さんのような人もいる。 みんな自分のキャラを、脱げない着ぐるみみたいにまとったまま戦っているんだなあ。 とりあえず善哉さんと幸せになれるといいね。 母親が同じ職場の亀田さんって鬱陶しいかもしれないけど、心強いはずだし。
1投稿日: 2024.08.07
powered by ブクログ巨大な鍋で煮られるうちにゆっくりとほとびてやわらかくふくらんでいく様子。 ほとびて? 青のりのおはぎ? 使わない言葉や食べたことのないおはぎ。 楽しい~。初めまして。 着地点がそれぞれ良くてほっとしました。 こまどりからバットマンやパタリロが脳内盆踊りで騒がしくて、困りました。 娘に話したら、笑いながら 秘密の花園の鍵は?と こまどり姉妹も? こまどりで盛り上がってしまいました。 それにしても表紙のこまどりのうたは、ゆるゆるキャラで可愛いすぎ。
2投稿日: 2024.08.05
powered by ブクログ特殊なシチュエーションのような ものすごくよくある問題ばかりが散りばめられているような、ふしぎな読後感だった 強そうな人が本当に強いとは限らないし、 頼りなさげな人がなにかのきっかけで変われるかもしれないし、変われなくてもがんばってみんな「自分」と向き合っている 静かなエールをもらえた気がする
0投稿日: 2024.08.04
powered by ブクログ職場や実家の細かな軋轢、そう感じる自分を小さいと思うまた1人の自分。ささやかな行き違いや思いの日々を寺地さんが勇気付けて背中を押してくれるようだった。
6投稿日: 2024.08.02
powered by ブクログ親戚の製菓会社に転職した茉子。 コネと呼ばれながらも、会社の昔からのルールを 変えていこうとする。 表紙がお菓子のイラストで可愛らしい。 大丈夫って訊く時は 相手の返事をあんまり信用したらあかんし 大丈夫って答える時は ほんまに大丈夫な時だけにせなあかん こと言葉がとても印象に残りました。
2投稿日: 2024.07.30
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
寺地はるな作品 手に取るのは6冊目 この作家さん 様々な職業の 職場や家庭での人間関係などを それぞれの目線で、それでも暖かく解きほぐしていくことが多いのだけど・・・ 今回はクセが強く内向きの登場人物が多くて スカッと寄り添えるまでに時間がかかってしまった。 主人公は 親戚のお菓子工場に転職した小松茉子 気弱な社長に実権は無く 引退したとはいえ会長が目をh光らせ、女子がお茶をだし、残業はタイムカード後というような 昔ながらのやり方なこの会社。 声がデカく後輩を指導という名のもと罵倒する江島 工場で和菓子を作っていたのを認められ 本社の営業に来たが失敗ばかりの正置 仕事は人一倍できる古参のパート 亀田 などなど どこかついていけない 取り付く島のない社員たちと仕事をしている間に 少しずつ見えてくる 彼らの生きざま・・・・・そして 自分の変化。 息苦しさを感じるものの 文章中に出てくる言葉が 良い。 *「みんな勝手に他人に期待する。そのすべてを抱えていたら、いつかはその重さに耐えきれなくなる時が来る。他人の期待を自分の義務にしてはいけない。」 *「『大丈夫か』ってきかれたら 『大丈夫です』って答えるしかない。 『だいじょうぶ」って訊くときは相手の返事をあんまり信用したらあかんし 『大丈夫』って答えるときは、ほんまに大丈夫な時だけにせな」 *「相手の全部が好きではなくても 『好き」は成立する」 お仕事や人間関係で疲れた人に 何か助けになる糸口が見つかるかも。 そこまでは無理でも 息苦しさにちょっと風を当ててくれる。 そんな本でした。
2投稿日: 2024.07.25
powered by ブクログ親戚の和菓子製造販売会社に転職した茉子。 ブラック企業での派遣やパートの話かと思いきや、やはり人と人のコミュケーションの話だった。 寺地さんらしく。 〝勝手にこの人はこういう人なんだろうと物語を作って、わかった気になるな〟というメッセージの本だったのかな。 勝手にわかったような気になって判断してはいけないが、誰かをわかろうとするには、その人からその人自身の物語を聞くしかない。ともいえる。 でもそれができる関係性ならそもそもコミュケーションのズレは起きていない…。 難しい。 でも、その話しを言う相手が、聞く相手が自分でなくとも、誰か他の人に話しているのをたまたま耳にするだけでも、間接的に同じ時を過ごすことでも理解が深まることがある。 そこが、身体と身体を近づけることの利点と思う。コロナ禍ではできなかったこと。 一時のオンラインじゃやっぱりわからない。
18投稿日: 2024.07.25
powered by ブクログこまどり製菓は、和菓子を製造販売する会社だ。 前の会社を辞めた小松茉子は、いとこの吉成伸悟が社長に就任したところで入社を勧められた。 苦手と思っていた人がある時そうではないと思ったり、嫌いな人の他の一面を見て、人は一面ではないと感じたり。 茉子は社内で色々な人との出会いを通じて、正しいことを通すこと、訳ありなことばかりではないこと、人に言うにはタイミングがあること、伝える方法があることに、少しずつ気づいていく。 仕事していれば、人と付き合っていれば、誰しも疑問に思ったり、悩むことがある。主人公1人の感性ではなく、色々な人の考え方や、その人が持っているこれまで見えなかった部分などを、丁寧に解いていくことで表現するのは、寺地さんならではだろう。 茉子を取り巻く人々は、少しずつ変わっていくが、それは必ずしも主人公の力ばかりではない。 むしろ、主人公に関わりないところで変化していくこともある。それさえも淡々と描いていく。 その後のこまどり製菓のことも知りたくなる。
11投稿日: 2024.07.23
powered by ブクログ寺地作品は人間関係の教本のように読後普段の自分の言動を猛省する事が多い。 人を勝手にこういう人って決めつけたり、困ってそうな人に大丈夫?って聞いたり…。 人間関係は難し過ぎるし考え出すと面倒過ぎて全部投げ出したくなる事もあるけど、本作からも少しヒントもらえたと思う。
8投稿日: 2024.07.23
powered by ブクログ時々新喜劇か!?というようなテンポがあって、読みやすく面白かった すごくリアルな人間関係 こんな人いるいる!!と読みながら作者に感心してしまった みんな心に小さな傷をつけながら日々頑張っている 鈍い人 敏感な人 色んな人がいる 完全には分かり合えないけど分かろうとする努力はしたいなと思った 人間関係 やっぱり難しいこんな世の中だけど 肩肘はらずに自分らしく頑張ろうと思える一冊だった
2投稿日: 2024.07.22
powered by ブクログ寺地さんはハズレがないけど、今作はイライラすることが多かったなあ。頼りにならない社長、パワハラまがいの江島、家庭に入り込む満智花、古い体質の会社…その中でももがき続け、言いたいことを言えた茉子はえらいなあ…私には嫌いな人でも誰かには大切な人になる。全部好きにならなくても好きになることは出来る、うん綺麗な言葉だな。
2投稿日: 2024.07.21
powered by ブクログいとこが社長という親戚の会社で働くことになった茉子.理不尽なことおかしいことに声を上げ,頼りない社長伸吾とともに成長していくお仕事小説.和菓子の会社だけに出てくるお菓子が美味しそうだった.
0投稿日: 2024.07.21
powered by ブクログ誰かに自分のことを認めてほしくて、承認してほしいと思ってる時に、主人公の人が「承認って大事やな。大事なんだろうな、すごく。でも他人に求め続けたら、きりがない。」「わたしは、自分で自分を認めてあげるしかないと思うよ。他人にばっかり期待してても幸せにはならへんと思う。」っていう台詞があるんだけど 自分で自分を認められる人生は 幸せな人生だと思った。皆がそんな風に生きていけたら、楽しい。きっと。
4投稿日: 2024.07.21
powered by ブクログ無理なところを言えない、言えるということはそれを受け入れてもらえる環境ということを言った虎谷さんと、それを後から八つ当たりだと言える状況とが印象的だった。 自分でもなにを選べば良いかわからないところに何度も選択の機会をくれて気づけるようになったことも印象的。 短期的に現在を見つめるだけではなく、過去も未来も含めて現在を見つめていた物語だった。 たくさん映画を観てもたくさん本を読んでも、誰かの考えに乗っかって考えたような気になってるだけ、とたくさん映画を観ている母が言うのはとても良いと思った。
0投稿日: 2024.07.20
powered by ブクログ会社の〝おかしい〟と感じる規則、慣わし、それに声をあげられる人って意外と少ないですよね。 でも、そういう人がいるから会社は変わっていく。 主人公の茉子は 不器用な部分もあったけど、自分に正直に、立ち向かっていくのはたくましいなって思います。 和菓子が食べたくなりますね⭐︎
61投稿日: 2024.07.17
powered by ブクログ人のことはよく見えるのに自分のことにはなかなか気付けない茉子。 茉子の言動により自分らしく働ける道を見つけていく吉成製菓の人々を応援する気持ちが読むほどに増していった。 価値観や境遇の違いから勘違いされたり理解を得るのが難しい重苦しい問題でもこんなにさらっと描けるのがすごい。 ゆっくり大切に読みたいのに早く続きが読みたいという欲求が抑えられなくてあっという間に読んでしまった。
4投稿日: 2024.07.16
powered by ブクログ親戚が社長をしている小さな製菓会社で働き始めた小松茉子は、昼休みの電話番やタイムカードを押してからの残業、代休なしの休日出勤などに疑問を持つ。先輩社員からは「自分の力が及ばないことは見て見ぬふりしとくほうが生きやすい」というアドバイスももらうが…。茉子は、こまどりの声が「ここにいる」って叫んでいるみたいに聞こえると言う。黙っていたら何も変わらないけれど声を上げ続けることで変わっていくかもしれないと希望が持てる物語。この本を読んだあと、こまどりの動画を見た。可愛いオレンジ色の頭をしたこまどりが、空を見上げて高く美しい声で鳴いていた。こまどりは、春を告げ幸せを運ぶ鳥といわれているそうで、こまどりの卵はとても綺麗な青色。ティファニーブルーはこれに由来しているらしい。本の表紙の色はこのブルー?少し緑っぽい気もするけれど綺麗な色で、そこに描かれている和菓子たちも優しく可愛いらしく美味しそうだ。和菓子が食べたくなった。
3投稿日: 2024.07.14
powered by ブクログ仕事をする上で、人間関係が何より大切だと 思っている。 プライベートでは気にならないのに、 いざ仕事で向き合うとモヤモすることがある。 茉子は仕事に真っ当に向き合っている。 もう少し柔軟に立ち回ればいいのにと思う反面、 自分自身もこういうとこあるなと我が身を反省した…, それぞれのキャラクターが、周りにいそうで とても馴染みやすい話。 こういう小説を読むと、些細なことでクヨクヨするのは誰にでもあることと少し安心できる。
9投稿日: 2024.07.07
powered by ブクログ/_/ 感想 _/_/_/_/_/_/ 全、226ページで、さくっと読むことができました。 ・本を千冊読んだらただの「本を千冊読んだ人」になる。 ・なにか不満があったらすぐ言葉にできるだけの反射神経があって、なおかつ今までの人生でそれを周囲にちゃんと聞き入れてもえてきた人なんやなって思いました。 発想が面白いな、、、と、ちょこちょこ、読む手が止まってしまう感じがあって、面白かったです。 それから、こういう人いるな、、、というのが、とても共感できて、物語に入り込むことができました。 他には、主人公、茉子の、心の声が多い(笑) そのつっこみが、笑えます。 私の場合は、心の中にしまっておくことができないので、心の中で突っ込むことは、まずないですが、こんなふうに心の中の声がある人は、大変だな、、、 何も変化していない老舗の和菓子屋が舞台。 ほんと、数十年で大きく世の中変わったなと、、、感じさせてくれる作品でした。今でも、この作品にでてくるような古い体質の会社が存在するのかは疑問ですが、商品は美味しそうでしたので、社長が変われば大きく変わるんでしょうね。 懐かしいです。 昔を思い出しました。 こういう会社にいたわけではなくて、パートのおばちゃんとのやりとりを思い出しました。 なにかの話の中で「人生は流されていくのが楽だよ」と、言われたんですよね。 その言葉を思い出しながら、読んでました。 /_/ あらすじ _/_/_/_/_/ 老舗の和菓子メーカーの吉成製菓で働く人たち、働いていた人たちのお話です。 転職でカナ入社の茉子が、ほんのりと、会社の変なルールに口をはさみ、周りの人たちに影響を与えていきます。 /_/ 主な登場人物 _/_/_/ 小松茉子 まこ 須賀満智花 同じマンションに住む友達 ▪️吉成製菓 吉成伸吾 32歳ぐらい、社長、茉子幼馴染 吉成修一 伸吾父、会長 亀田 古株、女性、離婚、パート、元社員 亀田善哉 息子 瀬川夏希 退職者、伸吾元カノ 江島 うるさいやつ 江島美咲 妻 正置 おたなしい人 原田一臣 伸吾兄、20歳離れ、異母兄弟 ▪️前職 虎谷 後輩
84投稿日: 2024.07.07
powered by ブクログ映画が好きな理由が、自分が小説が好きな理由と全く同じでニンマリ。このくだり大好きです。 淡々と読みやすくも "繊細" な物語。
2投稿日: 2024.07.04
powered by ブクログ可愛い和菓子の表紙と可愛いタイトルに惹かれ、 きっと可愛くほのぼのした話だろうと読み始めたら、 ・・・思ってた感じと違う~~~!!! 違ったけども、決して鋼の心を持っているわけでない主人公が、 昔気質の会社の中で、理不尽なルールや体質に「声」をあげていくのが良かった。 弱さや、昔の失敗やトラウマを持った主人公だったから、 ハラハラしながらも応援して読み進められた。 どこにでもありそうな話の中で、登場人物の細やかな心情を書けるのが、 さすが寺地はるなさんだと思った。 でも確かにこういう昔気質の会社とか沢山あるんだろうなぁ。 自分にも覚えが・・・。 でもその中で、周りの応援得られない中でも勇気を出して、 「声」をあげるのって、すごく大変な事ですよね。 でも確かに、「声」をあげなきゃ、周りの人も環境も何も変わらないんですよね。 自分には果たしてそれが出来るのであろうか・・ って、真面目に考えた一冊でした。 思ってた話と違ったけど(何回目)、これはこれで良きでした。
4投稿日: 2024.07.04
powered by ブクログさくさく1日で読めた。 働くうえで人間関係って本当に大事だ。 人の心身を擦り減らす言動したり、忙しい時に限って尻拭いさせられる先輩のいい加減な仕事。 後輩の尻拭いなら喜んでしますよ。でも、先輩のは…モヤモヤしてしまう。 マコのように自分の意見をしっかり持っていて、それをはっきりと表出できる人でも、やっぱり弱くて傷つくことはある。人を傷つけることを恐れている。 うまく言語化できないような弱さだったり葛藤だったりを上手に描かれていた。
14投稿日: 2024.07.03
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
この作品のすごいところは、働いていれば誰しも思い当たるところがあるところ。 職場にはいろんな人がいて、口論まではしないものの意見が違ってイラッとすることが多々ある。 そのささいな軋みによって出た、イラつきやもどかしさを見事に表現してある。 そして相手をたんにムカつく奴にするのではなく、こんな奴だけどこんな面もあるんだ、と角度を変えれば人間味があふれてくるのだ。 でもこっちも人間だから、キライは嫌い、なんだけど!とな 笑。 主人公の茉子は、親戚の経営する小さな和菓子製造会社に転職した。 2代目社長の伸吾は、初代ワンマン社長とはちがい、はっきり言えないタイプ。社員にも頼りない認定をされている……。 登場人物には、パワハラ上司、黙々と仕事するパートさん、言いたい放題で引っ掻きまわす人、モゾモゾなにか言いたげでも言わない人、正論を振りかざす人など。 これだから毎日ささいな軋みがおこる。 その人たちもベースの性格とこれまでの経験から今があって、はっきり言いたい人、言えない人、諦めてしまった人、さまざま。 昔からある小さな会社だから昔ながらのやり方がまかり通っている。 パワハラ、残業のときのタイムカード、有給は自由には取れない、などなど。 これもずっとそうだったから、今までこうやってきたからーー これの意識改革たるや、一筋縄ではいかない。 どこの職場でもそうなのだ。 私はどちらかと言えば茉子にちかいほうで、周りから疎ましくされることもあった。 波風立てるな、大人しくしとけ、そういう空気でおさえ込まれた。 でも声を上げなければ、変わらないし分かってもらえない。 声を上げたからといって良い方に進むわけではない、むしろ居心地が悪くなる場合のほうが多い。 言う方も言われる方も背にキズを負いながら生きているかもしれない。 映画のようなドラマチックなハッピーエンドにはならない。 それでも働いていかないと生きていかないとならない。そういう日々が続く。 だからこそ、昨日より1ミリでも歩み寄れたらいいな。 小さい会社だからこそ、キズも癒しあうことができる人間関係を築くことができる。 そう思えるようなラストが心にじんわり沁みた。
23投稿日: 2024.07.03
powered by ブクログとても読みやすいお仕事小説でした。 和菓子がたくさん出てきて、とても美味しそうで食べたくなりました。 特に感動したシーンは、最後の方で、社長の伸吾が会社をやめるかやめないかのなか、社員の正置くんが「社長というものは、頼りないとダメなものなのでしょうか?」と訴えかける所。社長というものは、旗幟鮮明でかつ頼りがいがある人だけがなれるものであるという先入観があったので、このセリフを聞いてハッとしました。 コマドリは、ここにいるよと訴えるかのように鳴きます。登場人物それぞれも苦難がありながらも、自分自身の考えを貫く姿が印象に残りました。少し勇気が貰える、かつ気持ちをホッコリさせてくれる作品でした。
0投稿日: 2024.07.03
powered by ブクログ職場のパワハラ上司が日常生活までパワハラなわけじゃない。自己主張できない同級生は気弱で頼りないだけじゃない。自分が作ったストーリーを他人に押し付けてはいけない。 それはそうなのだけど、茉子も同じようにストーリーを押し付けられているのでは?茉子が言葉にする「正しさ」を客観的に評価する人がいても良いのにと思ってしまった。一緒に職場にいたらちょっと疲れるかもと思いつつも。わざわざ茉子を入社させた伸吾はその立場なのかと思いきや、全然そうではなかった。 周囲を見つめ直して考え方も気持ちも変えてゆく茉子が働きやすい職場となりますように(伸吾もガンバレ)茉子に善哉がいて良かった。
1投稿日: 2024.06.29
powered by ブクログ親戚が経営する製菓会社に転職した茉子。 そこには、父の跡を継ぎ社長に就任したばかりの頼りない伸吾。 愛想のないパートで50代の亀田。 パワハラ系で大声罵倒が常習の江島。 江島に怒られてばかりの部下の正置。 変わらない、変えようとしない疑問を感じる会社の古いルールに茉子はどうするのか…。 それに加えて、同じマンションに住む幼馴染だがそれほど仲良くはない満智花とは…。 身近にもこんな人いるわ、などと思いながら自分なら多分惰性でやり過ごそうとするか、極力関わり合わないようにするか…の逃げ一択だろうなと性格の悪さが現れるが、やはり茉子は違う。 良い子ちゃんをするわけではないが、言いたいことは躊躇なく言い、ぶつかっても関わっていく… この人嫌いだわって避けるんじゃなく、流れで仕方なく付き合ってみたら意外な一面が見えてくるという…。 最初の印象が、ガラリと変わることも… 避けてばかりでは、何も解決しないってこと。 最後は、とても温かい気持ちになれる。 涙を流してしょっぱくなっても、甘いお菓子を食べると和んでしまう。 亀田さんの息子・善哉が茉子に言った「会いたい人だけに会う日、したいことだけをする日にしよう」って良いなと思った。年に一度の「好きなことしかしない日」。 余談だが、 「大丈夫?」って問いかけも「大丈夫です」の答えありきの言葉かもしれないと思うと意味の無い問いかけかもと感じる。 「頑張れ」も簡単に発する言葉だが、言われなくても頑張るつもりでやっているのだから当たり前のことをいちいち言ってくるなとなる。 相手がどう感じるかで言葉の使い方に気をつけないとと思ってしまう。 最近、発する言葉が〇〇ハラになってないか?と思うと職場の新人と私語ができない。 そう感じる私が偏屈なのだろうけど。
57投稿日: 2024.06.28
powered by ブクログ寺地さんの作品には、自分の周りにもいるいる!と思う登場人物が多くて、それが楽しみです。 この作品には問題に対して言える人、言えない人、言わない人、と登場します。言えない人の私にも最近、言わなければ伝わらないなーと思うことが多々あり…。主人公の茉子はストレートに言い過ぎな気もしますが、自分だけでなく人のためにも動くところに勇気をもらえました。 和菓子が好きなので美味しそうな表紙にも惹かれます。
4投稿日: 2024.06.28
powered by ブクログ普通にある日常の出来事だが、主人公がだんだんと成長されて行く様に感じてもう少しその先を知りたくなりました。
0投稿日: 2024.06.27
powered by ブクログ寺地はるなさんの作品は、多様な人への温かさ、優しさに満ちている、と感じる。今回も読み終えてみて、様々な人への思いが溢れてきた。 自分とは違う価値観を持つ人、自分が当たり前だと思っていることが苦手な人、自分にはない部分を持っている人…世の中にはいろんな人がいる。 自分が嫌いな人や、自分にとってのどうでもいい人が、誰かにとっては大事な人だったりもする。 どんな人にも、それぞれの背景があり、思いがある。 主人公・茉子の視点を通じて、そんなことに改めて気付かされた。
8投稿日: 2024.06.26
powered by ブクログ親族経営で昔ながらの経営体質が根強く残る和菓子屋さんに入社した茉子。 自分が正しいと思って取った行動が相手にとっても正しいとは限らない。主人公が結構グイグイ自分の想いを押し通そうとするのでちょっと疲れてしまった。たとえ一般的には正しいとしても、押し付けるのは違うよなぁ。自戒も込めて。
0投稿日: 2024.06.26
powered by ブクログなんだか悶々としてしまった。自分の基準だけで生きている人ばかり。好きになれなくても尊重はしろ、的なこと書いてあるけど… 寺地さん、刺さる作家さんかと期待して読み続けてるけど、うーん。
0投稿日: 2024.06.24
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
なぜなのだろう、読んでいる間中、なぜかもやもやした感じが拭えない。優柔不断な社長に対してなのか、パワハラの江島に対してなのか、それに笑顔で耐える正置に対してなのか、パワハラを容認する周りに対してなのか、古い就業規則に対してなのか、その他もろもろ。そして、どの人も考えが変わるということがあまりないからかも。 また茉子の前の会社の事案については、そんなに当人からも責められ、自分を責めることだろうか? しかし、ところどころに出てくる美味しそうな和菓子には救われる。わたしも「こまどり庵」に通いたい。 また、満智花が成長したのは一服の清涼剤だった。
1投稿日: 2024.06.24
powered by ブクログ言いたいことを言える人、言わなくちゃいけないことも言えない人。 生活をしていても、仕事をしていても悩みは尽きないものです。 そんななかで自分らしく生きて、人のためにいられることは、やはり凄い。 自分本位になりすぎず、合わせすぎず、強く生きて生きたいと思った物語でした。
8投稿日: 2024.06.23
powered by ブクログAmazonの紹介より 前職の人間関係や職場環境に疲れ果て退職した茉子は、親戚の伸吾が社長を務める小さな製菓会社「吉成製菓」に転職する。 父の跡を継いで社長に就任した頼りない伸吾、誰よりも業務を知っているのに訳あってパートとして働く亀田さん。やたらと声が大きく態度も大きい江島さん、その部下でいつも怒られてばかりの正置さん、畑違いの有名企業から転職してきた千葉さん……。 それぞれの人生を歩んできた面々と働き始めた茉子は、サービス残業や女性スタッフによるお茶くみなど、会社の中の「見えないルール」が見過ごせず、声をあげていくが――。 一人一人違う”私たち”が関わり合い、働いて、生きていくことのかけがえのなさが胸に響く感動長編! 会社に入ると、会社独特の様々な可笑しなルールに驚くことは誰しもあるかと思います。 といっても、「このルールっておかしいですよね?」となかなか相手に言いづらいのが現実であり、歯がゆさが大いにあります。 そんな気持ちが、この作品に表れていて、読んでいるうちに心に刺さっていきました。 古いルールを変えようと奔走していくのですが、その勇気を自分も欲しいなと思ってしまいました。 「郷に入っては郷に従え」とは言いますが、今と昔では状況が違いますし、変えていかなくてはいけない部分もあります。 なかなか昭和気質な人達が、今迄の習慣を変えることは困難ですが、こういうことは駄目ですよということを自覚してほしいとは思います。 小説の中では、代々受け継がれている会社もあってか、色んな人物が存在していて、もしかしたら「いるいる、こういう人」という人もいるかもしれません。 他にも、接客業ならではのあるあるもあったり、上司との関係に苦悩したりと共感するものが多くありました。 なかなか内部にずっといると、それが常識だと思ってしまいますが、外側からみると、非常識に思えるものもあるかと思います。 個人的にも、そういったものは多く経験してきたので、読んでいると、色々共感するものばかりでした。 それにしても、製菓会社の社長の頼りなさに、後ろから背中をたたきたくなるくらい、「しっかりしろ」と思うばかりでした。周りがベテランだから仕方ないからとなあなあで終わるのではなく、ビシッと社長なんだからと威厳を発揮して、良い会社にしていただきたいです。 個々が仕事に対して意識を持つことが大切であると思いました。 現実はそう甘くはありませんが、一人でも多く率先して言うことが大切であり、自分もそういった存在でありたいと望みたいですし、変えていかなければならないなと思いました。 この作品を読むことで、今迄の仕事に対しての習慣を見つめ直すきっかけにもなりました。
4投稿日: 2024.06.23
powered by ブクログ可愛い表紙だけど、話はえぐい。 人を見る時、どうしてもバイアスがかかる。 この主人公もはかなり見方が偏ってる。 でも、それを省みることができるし、 基本、正しい人だから、 何か許せる。
0投稿日: 2024.06.23
powered by ブクログ時間外労働、パワハラ、他もろもろの古い慣習。茉子は「おかしい!」って言える。私は言えないな。それで弾かれたらどうしよう、って心配してしまって。 しんどい時に茉子がお菓子を食べる。すると表情が柔らかくなる。現実から少しだけ離れて、束の間の幸せ。この描写が好きでした!甘いってすごい!!
1投稿日: 2024.06.21
powered by ブクログ深夜に書いたメールの送信は翌日の朝にするように とか、反論をする前に深呼吸しろ とか 諸先輩方に色々と言われてきた自分にとっては、反省するとさことが多い本でした。
1投稿日: 2024.06.20
powered by ブクログ和菓子を作る会社の事務として働く茉子。 古い会社の働き方に疑問を抱き、声を上げるのだが思う様にはならない。 中々上手くいかない息苦しさみたいなものを感じる。 人の繋がりや思いも絡む。 まぁ色々あるよねぇと自分自身の働き方も鑑みたり…。
2投稿日: 2024.06.19
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
働いたことのある人なら、きっと共感できる点がある、そんなお仕事物語。 親戚の伸吾くんが社長を務める『吉成製菓』で働くことになった主人公の小松茉子。茉子はそこで、就業規則などのコンプライアンスやパワハラなど職場での人間関係に直面する。代休はとれるのかとか、労災とか働いたことのある人なら聞いたことや実際に経験したこともあるんじゃないかという出来事がたくさん描かれている。 働くって難しいなー! 真面目に考えると、私はパートの亀田さんに近いかもしれない。心の中ではこうなったらいいのにと思っていても、波風を立てないほうがいいと自分の意見に蓋をしちゃう。誰が正しいとかはないと思うけど、茉子のように自分の意見をハッキリと言えるのは格好いいなと思った。とは言え、それはそれで敵を作りやすいので、本当に人付き合いって難しい! この本で最も好きな登場人物が亀田さんの息子、善哉くん。前向きな言葉を投げかけてくれて、こんな子が職場とか近くにいたら、頑張れる…!
6投稿日: 2024.06.19
powered by ブクログ美味しそうな和菓子が、昭和の悪習を多少やんわりさせていた。旧弊を指摘しただけで上司に疎まれる職場。おかしい。ムカッとする。だから亀田も無愛想が染みついてしまったのだろう。茉子がいたら一臣さんを救えたかも…叶わぬ幻想を抱きつつ読了。
0投稿日: 2024.06.15
powered by ブクログカスハラ、モラハラ、パワハラ、ハラスメント満載の昭和的な親戚の営む零細和菓子会社に転職した茉子は、前の会社での後悔があり、会社のおかしな規則にツッコミまくる。 おかしな事はわかるけど、なかなか言えたもんじゃないよなーと思いつつも、日本の中小企業は未だこんな感じだよね。 人はそれぞれ。茉子のような人もいれば、波風立てないように、うるさい上司にその場限りで頭を下げればすむと考える人もいる。 心がいっぱいいっぱいなのに「大丈夫?」って、聞かれたら、「大丈夫です」としか答えようがないってわかるような気がした。 無責任な声かけよくないな。 同族経営の昭和的不適切なパワハラ企業が減らなければ、日本経済の明るい未来はないな。
39投稿日: 2024.06.11
powered by ブクログ「働き方改革」と向き合った小説。 和菓子製造販売の零細企業に縁故で中途採用された主人公が昭和的企業体質に疑問をいだき「雇用される側」の権利として「声」をあげます。 その「声」は周囲の人達をハラハラさせる程度で残念ながら多勢に無勢ではあるものの「雇用される側」の人達にも微かではありますが燻りし出します。 私自身もその昔、同族経営の零細企業にいた経験もあるので思わず昭和的企業体質を懐かしんでしまいました。 「雇用される側」として境界線を越えてないとわからない微妙な「雇用する側」への弱さ、遠慮、忖度、諦めや、低賃金での生活環境等の微妙なニュアンスがリアルに描かれています。微妙なニュアンスを汲み取れる寺地先生はこうした職場の経験があるのでしょうか?とWikipediaで調べた所、30歳まで色々な職種をご経験なさってるとの事で納得。 昭和的な企業風土は6〜8年くらい前は当たり前の慣習としてよくみかけましたが、改めて活字にして主人公の立場からみるとそれは明らかに異質な物として映えました。 それだけ働き方改革が浸透してきているのだと実感。 小さな声をあげる事がどれだけ勇気のいる事でそれがどれだけ凄い事か、「声」をあげた勇者達が礎となって現在の社会に至る事に感謝。
66投稿日: 2024.06.11
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
江島と正置のやり取りを見てパワハラではないかと、茉子はどうにかしようと、前の職場で後輩を救えなかったこと見て見ぬふりをされたと言われた事がずっと心にあって新しい会社ではなんとかしようと、間違っていることは変えていかなければと自分の意見をはっきり伝える茉子だけど‥ 相手に期待する、期待に応えなければいけない、大丈夫?って訊くときは相手の返事を信用してはいけない、大丈夫って答えるときは本当に大丈夫な時だけにしないと、職場での人と人との付き合いや一つ一つの言動について いろいろ考えさせられる内容でした。
3投稿日: 2024.06.10
powered by ブクログ自分の理想や願望を相手に押しつけていないか考えるきっかけになると思います。 相手の環境や状況って違うのに自分の思った通りの行動や言動が返ってくる思ってしまう人間って自分勝手だなって思います。 でも、人って自分がここにいることを周りに知って欲しい弱い心も持っていると思うとなかなかめんどくさいですよね そう考えると今回の小説はグッとくるものがありました。 人との付き合いか他を考えるきっかけになると思います。 また、和菓子が食べたくなる小説でもありました。 桜餅が食べたいです(笑)
3投稿日: 2024.06.09
powered by ブクログ少し前の日本の会社って、 よく家族に例えられるくらい親密で 社員同士家族ぐるみで交流があったり、運動会したりと今では考えられないくらいの 一体感があったわよね、、、そう言えば。 あっという間に終身雇用制が崩壊し転職が当たり前になり 労働者の権利はしっかり法が守ってくれる時代になったけれど 今でもこの小説の会社みたいに、古いルールと慣習に縛られ有給すら遠慮して取れないような会社はまだまだたくさんあるのだろう。 おかしいことはおかしいと声をあげてみることの大切さと おかしいことにもそうなった理由と歴史があること。 その二つが同時に描かれていて、 とても奥行きの深い物語だと思う。 読み終わると和菓子屋さんに突撃したくなるおまけ付きです。
10投稿日: 2024.06.07
powered by ブクログよかった。特に大きな何かが起こるわけではないけど本当にすぐそこにあるような職場の光景、すぐどなる人、変なルール。いまだにある。会話もなんか聞いたことありそうな。自分も昭和スタイルの職場で働いてたことあるから。情景が思い浮かぶ。 そんな職場で働く、それぞれの人の事情。えらそうにしている人もプライベートでは実は介護問題で悩んでたりとか。上司に罵声を浴びせられ、暴言を吐かれてもヘラヘラ笑ってやりすごす若者。心が弱くはっきり意見を言えない女の子。怒られる対象が自分になったらどうしようと不安になる気持ち。わからないでもない。 社長の伸吾の性格もなんか自分とかぶって苦しくなったりする。大丈夫?って何度も聞かれるのは逆に人を傷つける。頼りないと言われているようで。主人公の茉子は心強い。はっきりモノが言える子。こういう性格になりたかったと私は思ってしまうが彼女は彼女で苦悩してきた。 自分が羨ましいと思う人もみんな何かを抱えて生きている。切なくなってしまいそうになるが、茉子の大阪弁が小気味よく、時にクスっと笑ってしまう。美味しそうな和菓子がいろいろ出てきて食べたくなった。なんかほっこりいい終わり方。
1投稿日: 2024.06.05
powered by ブクログ親戚の営む和菓子屋さんに再就職した主人公の茉子ちゃんの言動にヒヤヒヤしたり、スッカとしたりで、一気に読めました。 相手に大丈夫?って聞いた時の相手の大丈夫はあんまり信用できないって所とかその通りだなと思う言葉もたくさんありました。
19投稿日: 2024.06.03
powered by ブクログ人間関係に疲れて退職した主人公茉子(まこ)が、営業2名、事務2名の和菓子会社に縁故で就職。旧体質の社風の中、それに反発する自分、そういった社風の中で折り合いをつけながらやっている人々など、様々な人との関わりで成長していく物語だと思います。 長いものに巻かれることが良しとされない昨今、本当にそうなんだっけ、価値観はもっと多様なものなのかな、と、身近な題材でそう思わせてくれるような内容と感じました。 星4つです。 #美文
4投稿日: 2024.05.30
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
寺地はるなさんの新作 コツコツ読み進めていた寺地さん 気づけば15作品目です さっと読める1冊でした 今回は和菓子の会社での物語 はとこの伸吾から頼まれて入社した会社は 残業するならサービス残業 電話番をさせられる昼休み 高圧的な上司がいつもら大声を出している そんな職場でした 茉子は思ったことを主張できるタイプで おかしいのではないのかと声をあげます しかし周りの反応は芳しくない ずっとこうだったからと言われたり… あなたは嫌われると言われたり… 強そうに見えてさらっと言われた一言に ちょっとずつ苦しくなる茉子 読んでいると同じようにじわじわと苦しくなってきます この作品の面白いところは 茉子のおかげで会社がガラッと良くなるわけじゃないというところ。 なんでも主張できる人もいれば、出来ない人もいて、主張される側の人もいる。 そのそれぞれの事情や思いがきちんと描かれていて 見えているものが全てではないと気付かされます 全てスッキリ解決するわけじゃないけど お互いを知ることで少しずつ好転する 茉子が知り得ないところで 事態が好転してたりするところも さすがだなと思いました 主人公はあんまり好きではなかったですが 少しずつ、いろんなことに気づいていく姿はよかったです 今作品も素敵な言葉がありました 『だいじょうぶって訊く時は 相手の返事をあんまり信用したらあかんし、 だいじょうぶって答える時は、 ほんまにだいじょうぶな時だけにせなあかん』 『クラスの子みんなと仲良くできなくていい、 嫌いな子がいてもいい、 でも他人には敬意を払いなさい』 『本人を前にほめるって けっこう照れることやんか それやのにみんな 『そんなことないです』って否定するのね あれはプレゼントを受け取ってもらわれへんかったみたいでかなしいねえ』 あと年に一回の 『会いたい人だけに会う日、 したいことだけをする日』 も素敵だなと思いました^_^ 『これから自分たちは たくさん我慢をすることになるだろう。 今までもそうだったし、 生きていくというのは たぶんそういうことなんだと思う。 でも、だからこそ、年に一度だけでも 「好きなことしかしない日」をつくろう』
94投稿日: 2024.05.29
powered by ブクログ令和の世になっても、パワハラ&モラハラが横行する家族経営の会社はまだまだありそう。直接被害を受けた人も気の毒だけど、それを取り巻く人々も辛い。 刺さったお言葉。 「人はたいてい他人の話を自分が聞きたい部分しか聞かない」 「わたしにとってはどうでもいい人でも、誰かにとっては大切な人なのだ」 続編があるといいな。
4投稿日: 2024.05.27
powered by ブクログ旧体質な和菓子の会社が舞台の物語。 今どき、まだこんな会社あるの?とイライラ、もやもやしながら読んだ。 思うだけで、実際に茉子のように正論を言葉にできるわけではないのだけど。 救世主が現れて会社がいきなり変わる!なんてことはなく、寺地さんの作品らしくゆるゆると物語が進む。 その中でポツポツと出てくるセリフには、心惹かれるものがたくさん。 「他人は自分がしてほしい話はしてくれないと思っておいた方がいい」 「言わなきゃわからない、伝わらないというアドバイスをする人は恵まれている人」 「考えさせられますって言いながら、実際そのテーマについて考えてる人ほとんどおらん」←私(笑) 確かになぁと頷きながら読んだ。 そして、バーバパパみたいなお団子はすぐに検索。 ほんとだ!
36投稿日: 2024.05.26
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
2024/03/26リクエスト21 美味しそうな和菓子のイラストから想像しにくい内容。 嫌な人ばかり出てくるのに、誰もがこちらの心に突き刺すような鋭い言葉を発する。 見たくない見ぬふりしてるのに。読書中、キツかった。 亀田の 【定時に家に帰って何してるの、若い時間はいつまでも続かない、自分の都合で動けないときが来る】 店内で店員に罵声を浴びせる客に対して、千葉は 【お帰りください、他の方の迷惑になる】 そう言った千葉の意見に賛同した茉子に 【みんながみんな、そう言える人ばっかじゃない】、と言う満智花。 亀田の言う事は、同じようにムスメに言ってる気がする。 千葉と同じように思うくせに、満智花のようなことを思い動けない私。 いくつ歳を重ねても、できないことばかり。 せめて(若くてもきちんと自分の意見がある)千葉のような人に対して尊敬の気持ちを忘れないでいたい。 東海地方の出身だがお月見団子のエピソードが気になり調べてみた。 バーバパパのような、ういろう生地の団子は見たことない。そして京都の細長い形状に餡を巻きつけるものも、知らなかった。 名古屋で和菓子屋に勤めていたことがあるのに…
3投稿日: 2024.05.25
powered by ブクログ地方の小さな製菓屋さんのお話ですが、普通の企業でも当てはまりそうな問題をほっこり描いた作品。いい作品ですが、寺地さんで作品への期待は少し超えなかった。
23投稿日: 2024.05.24
powered by ブクログどら焼き、桜餅、紫陽花、水無月、鯛焼き 、みたらし団子、そして、こまどりのうた。美味しそうな和菓子の表紙に誘われて読み始めた。 はとこの伸吾が三代目の社長になった吉成製菓で働く茉子が主人公。両親に取り入っているような満智花の存在、古い体質の会社の社員たちに不満を持ちつつ、過去の後悔から、声をあげていく。「言わなきゃわからないという人は、言って受け入れられてきたからそういえるんだ」と言われたり、大丈夫?という言葉のとらえかたについてなど、気づかされたことが多かった。家庭でも会社でも人との関わり方の難しさ、複雑さを感じた。そんななかでの善哉くんが、一服の清涼剤みたいでよかった。
22投稿日: 2024.05.23
powered by ブクログ茉子は親戚が営む製菓会社「吉成製菓」に転職。 社長の伸吾から請われ入社したので「コネの子」と呼ばれる。 インタビューで 「古い体質の会社に入ってそれを変えていく物語は痛快ではあります。 最初はわかりやすい話を目指していた」 ただ、ご自身の体験から変えることの難しさを感じ茉子に重ねたと。 なるほど。 読みはじめ、茉子がクセのある会社の人たちと戦い ともにスカッとするのだろうと思っていた。 読者の私は、そちらを期待した。 でも、悪の塊のような上司にしても その一面だけでなく、いろいろな顔を持っている。 物語としてはリアルすぎて茉子に共感しにくかったが 社長の伸吾の気の弱さに(がんばれ)と応援したくなった。 読者それぞれに贔屓の人物がいるような気がする。 読んでいる間は和菓子を思い浮かべ物語の世界に浸った。
3投稿日: 2024.05.19
powered by ブクログ親戚が経営する製菓会社に転職した茉子。古い社則や人間関係に辟易する。 テーマが何だか分かりにくいが、現代的なお仕事小説なんだろうと思う。面白いのかそうでないのか、判別しにくい・・・
2投稿日: 2024.05.19
powered by ブクログ→「和菓子の時間~島根の旅5」 https://blog.goo.ne.jp/mkdiechi/e/3e352853d05d4dfd0a75bf2ae9b9f98a
2投稿日: 2024.05.18
powered by ブクログ可愛らしい装丁のイメージとは全然違った人間関係って本当に難しいがテーマ。ずっとモヤモヤしながら読んでいた。 社長がパワハラ社員を庇う理由、パワハラおじさんが母親を介護する理由、会長が社長を過保護に扱う理由、パート社員が理不尽を受け入れる理由。みんなそれぞれの思いがわかったら、モヤモヤがちょっと晴れた。 主人公の名前が上から読んでも下から読んでもはウマイと笑えた。善哉との恋愛は微笑ましかった。
14投稿日: 2024.05.16
powered by ブクログ前職の人間関係や職場環境に疲れ果て退職した茉子は、味方が欲しいという親戚の伸吾に頼まれて、伸吾が社長を務める小さな製菓会社「吉成製菓」に転職する。 茉子が触媒となって、物事が動く。正論を言う人を疎む人は、結局自分の首を絞めていることにいい加減気づいてほしい。といっても、茉子は正義の味方でもなければ、特別優秀なわけでもない。等身大の働く人が、ふつうに意見を言える社会が生きやすい社会だろう。 彼女自身、迷いながらそのときそのときできることをやっている。後悔もあれば、他人を責めることもある。 パワハラ社員や事なかれ主義の人、心の弱い人…… それぞれに背景がある。そして一人一人が今いるところから一歩踏み出していくさまが描かれている。そこには周囲との関わりがある。 こうだったら息がしやすいなと思える終わり方で、読後感がいい。 真っ当に育てられた人、真っ当に育った人が嫉妬される社会はおかしい。被害者意識をもったり、怠慢を世間知にすり替えたりしていては、何も変わらない。そう思って声を上げてくれる人がいるから、環境がよくなるのに。自分ができないことをしている人を羨んで、足を引っ張ることはしたくないものだ。
19投稿日: 2024.05.14
powered by ブクログ良かったです。 製菓会社へ転職した茉子。 いろいろなタイプ・経歴をもつ人と一緒に働くなかで、見えないルールにモヤモヤする彼女に自分を重ねながら読んでいました。 人間関係やルールなど小さな違和感・不快感を感じることって普通にある。 「今までずっとこうやってきたから」 これホント多い。おかしいと感じながら、黙って受け入れることに対するモヤモヤ…。 あります!私も茉子と同じで対応はするけど「何で?」って誰かに聞いてしまう。 だけど、それぞれの理由で我慢して受けいれてる人が多いと思う。伝えようとしても“対話が出来ない人”もいるし、自分に辞めたくない事情もあるから。 読みながらあちこちで文章がグサグサ刺さりました。 自分では言葉にしにくい心理描写や鋭い視点は、さすが寺地さんだと改めて感じました。 ストーリーに引き込まれ、清々しい気持ちで読了。 そして、読後はやっぱり和菓子が食べたくなった。 作中、実話をもとにしたNASAで働く黒人女性たちの映画「ドリーム」のセリフの引用がありましたが、私の大好きな作品で強く心に残っている言葉です。 『前列がない場所では、自分が前列になるしかない』 『みんな、勝手に他人に期待する。そのすべてをいちいち抱えてたら、いつかはその重さに耐えきれなくなる時がくる。他人の期待を自分の義務にしてはいけない。』 『だいじょうぶって訊く時は相手の返事をあんまり信用したらあかんし、だいじょうぶって答える時は、ほんまにだいじょうぶな時だけにせなあかん。』
20投稿日: 2024.05.12
powered by ブクログ現実にもあるような日常の出来事が小説になった感じで、寺地はるなさんらしいなと思いました。物語に出てくる和菓子が美味しそうで、甘いものが食べたくなりました。
4投稿日: 2024.05.12
powered by ブクログしっかりと意見が言える人にも、発した言葉に、迷いがあったり、悩んだり、ちゃんと言えるからと言って、言えない人と、同じように、葛藤もあるんだなって思いました 登場人物も、それぞれの問題を抱え、もがきながら生きている所も、しっかり伝わってきて、よかったです
12投稿日: 2024.05.10
powered by ブクログ地方都市に必ずあるようなお菓子の老舗、登場人物の一人ひとりが、どこかで見たことあるような人ばかり。 正論を声高に言える人、何となく流されていく人、誰か言ってくれないかと依存してる人、そして全く何も言えない人。 会社という組織は、いろんな人間が集まるからこそバランスがとれているのかも。みんなか有能なら問題解決と言うわけではない。 自分の会社の製品を愛している、案外これが一番大切なのかもしれない。
26投稿日: 2024.05.06
powered by ブクログ後悔してきたことを反省し、働き方改革にも果敢に取り組んで行く茉子ちゃんに拍手 お菓子の描写に甘党の私は無性に食べたくなりました。
4投稿日: 2024.05.05
powered by ブクログ主人公、小松茉子(こまつまこ)。訳あって、はとこが社長の和菓子屋で働くことになった。小さいがゆえの労働基準法違反や常習的なパワハラに茉子は疑問を持つ。さらにそれを口に出したりする。1番近くで働くと思われるパートの亀田からの「この会社では嫌われる」の一言。家に帰ると同じマンションで家族関係が複雑な満智花が両親に甘えるように我が家にいる。そんな満智花から出た「いいな、茉子ちゃんは」という言葉。小さなトゲが気になるような微妙に嫌な展開が続き、このお話はすっきり楽しくなることがあるのか?と思いながら読み進めた。タイトルのこまどりは茉子の働く吉成製菓で出しているこまどり庵という店舗やこまどりのうたという銘菓っぽいお菓子、そして小さいながらに鳴き声の大きなこまどりという鳥の性質にかけられたタイトル。茉子は前職の経験やいまの生活でのもめ事などを引きずりながらも、絶対おかしいと思ったことは声を上げていく。悩みながらの行動なのでいけいけどんどんって感じでも、スーパースターのような格好良さもないから読んでいてすっきりはしないと思うけど、私は嫌いじゃなかったです。 大人っぽい悩みが多いので就業後の年齢が向いているとは思いますが中学生から。
11投稿日: 2024.05.01
powered by ブクログほっこりする和菓子が全面に出てるカバーデザインだけど、内容的にはお仕事小説感が強め。 不思議とどの登場人物にも愛着が持てて楽しく読めました。 カバーイラストにも癒される。
5投稿日: 2024.05.01
powered by ブクログはじめての寺地はるなさんの作品。 舞台が関西なこともあり、関西人のわたしには読みやすく身近に感じた。 何よりつっこみがあったり笑えて面白かったなぁ。 改めて色んな人がいるよねぇと思わせてくれる作品。
11投稿日: 2024.04.29
powered by ブクログコロナ禍で業績が悪化した勤め先に見切りをつけ、親戚が社長に就任した和菓子会社に転職した茉子。だが、ワンマンだった先代の社長(現会長)の支配に慣れきった社員は数々の奇妙な習慣を律儀に守っており、それが茉子には不満で仕方がない。そんな彼女が巻き起こす騒動を描いたコメディタッチのお仕事小説だ。 うーん、この茉子というキャラクターがなかなかに曲者で、素直に受け取れない。彼女自身抱えているものはあるものの、作中でも指摘されているように「言える人」なのだ。正しいばかりでは回らない環境で拳を振り上げられてもねえ……。
8投稿日: 2024.04.29
powered by ブクログ上読んでも下から読んでもコマツマコなヒロイン茉子の転職先は親戚(ハトコ)が社長を務める和菓子メーカー。 小さな会社ながらもなかなか歴史がある会社ですが、上司が部下にキツく言葉で指導したり、残業をつけないために残業は定時にタイムカードを切ってから、就業規則?平成のものですかね?という、いわゆる老舗の中小企業でした。 ヒロイン茉子はその実態に驚き、残業をつけないのはおかしいとか、休日出勤?休日出勤手当つきますか?などなど、法律で認められているのだと、正当な、権利だと主張して周りを困らせる。 果たしてコマツマコ(名前をついつい言いたい)は、新しい職場でやっていけるのでしょうか。それとも会社に新しい風を吹かせるのか。 というお話です。 おそらく、読んだヒロインに対する読者の印象は2通り。 ①KY社員 ②わかるわぁと共感できる社員(むしろ転職先の会社ヤバいでしょ?) 上記のどちらかになるのかなと。 これはおそらく作者の意図通りだと思います。 こんな社員がいて煙たいだろうなぁと思うか、当たり前のことをガンガン言えるヒロインにそらそうだろうと思うかがほとんどじゃないかと。 ちなみに、私は読んでいて、最近入った社員が 「休憩時間は60分なはずなんですが、57分しか取ってないです。3分は?」 と聞いてきた、どうしたら良い?という相談を受けたりしたなぁと思いながら、そういう従業員をヒロインに重ねてしまいました。 流石にコマツマコもそこまでは言わんやろうなとは思いますが。 いわゆる古い考えや昔ながらの社風、まわりとの同化(正しくなくても、不満があっても我慢して従う)と、労働基準法ではこうだとか、自分には権利があるという感じで正論を振り回すタイプの従業員。 本作品もまさにそれぞれの考えや思いを持っているこまどりたちがそれぞれに鳴きます。 さて、本作品から思うのは、昔ながらの社員や今どきと言われる社員の両方がはじめは歪み合い、ときには寄り添いながら会社は回っているということなのかな?と思います。 労働基準法ではといえばそれまででも、会社には会社のルールが法律上間違っていてもある。 どっちが優先すべきかは、正論で言えば労働基準法です。 でも、そうじゃないでしょ?と会社に飼いならされた私は思うし、そう考える人も多いのでは? ところが、じゃあ、そんなに従っている会社は私達になにをしてくれるのか? 大きな失敗をしたら責任をなすりつけてきませんか? 従業員は家族だ、会社の歯車だと言いながら、何かあると会社を守るためという名目で簡単に切り捨ててきたりもします。 正論ばかりだとしんどいですが、そういうド正論は刺さるし、役に立つこともある。 そして仕事は生活を維持するための手段だし、生活の一部でもあるということに気づかせてくれるそんな作品だなと思いました。 あの新人、融通きかないなぁ… とか あの上司、先輩、古すぎるねん! と、実はどの時代でも起きていたことが、今でも起きているだけなんだろうなぁと思いながら。 バラバラに鳴いているこまどりたちは今日も歌っている。
6投稿日: 2024.04.28
powered by ブクログブラックほどではない会社でも、当たり前のようにある好ましくない暗黙の了解事項。なくならないパワハラ・セクハラ。おかしいと声を上げても無視されたり報復されたりするダークな空気漂う職場。 それでも声を上げようと決めて臨んだ転職先の小さな製菓会社を舞台に、孤軍奮闘する1人の女性を描くヒューマンドラマ。 ◇ 小松茉子は、目の前に座る男を見た。 男は名を吉成伸吾といい、茉子のはとこに当たる。現在27歳の茉子より5つか6つ年上だが、幼い頃からよく知る相手だけに、今日から「社長」と呼ぶことに違和感がある。 ついそんなことを考えつつぼんやりしていると、「話聞いてる?」と伸吾から声がかかった。ハッと我に返った茉子に「会社では小松さんと呼ぶから」と伸吾は言って、社内を案内するため立ち上がった。 茉子は今日から、伸吾が社長を務める吉成製菓という、社員35名の小さな会社で働くのである。 事務所内には机が5つあって、事務員用と営業員用が2つずつ、向かい合わせに並んでいる。入口にもっとも近いいわゆる下座が茉子の席だ。そして上座に当たるいちばん奥の入口に向いた机が伸吾の席のようだ。 茉子の向かいがベテラン事務員の亀田の席だと言ったあと伸吾は、「亀田さんはパートさんやから、話題は慎重に選ばなあかんで」と心配そうに付け加えたのだった。 ( 第1章「春の風」) ※全6章。 * * * * * 作品の魅力は主人公の茉子です。 前の職場での劣悪な人間関係に嫌気が差して退職した茉子は、はとこの伸吾が社長を務める製菓会社「吉成製菓」に就職しました。 茉子がこの会社に勤める気になった理由は2つあります。 1つ目は、伸吾に懇願されたことです。 急な心臓の病で引退した父親に替わり、いきなり社長に就任した伸吾は、ベテラン揃いの社員たちに言いたいことも言えません。折よく事務に1人欠員ができたので、気心の知れた茉子に来てもらうことにしたのでした。 2つ目は、「吉成製菓」に対する思い入れです。 茉子の保育園時代のこと。祖父の葬儀に参列した茉子は、焼かれて出てきたお骨を見て泣き出してしまいます。「死」というものを認識したからなのですが、祖父の死を悲しんでいると勘違いした1人のおじさんが、持っていた小鳥の形をしたお饅頭をくれました。 その美味しさに思わず泣き止んだ茉子にとって、おじさんがつぶやいた「涙はしょっぱい、お菓子は甘い」ということばと、そのとき食べた「こまどりのうた」は特別な存在になったのでした。 でも本作は、若社長の期待と和菓子への熱い想いに支えられて奮闘する若い女性を描いた爽やか系の物語ではありません。 社会や世間に根強く残っている理不尽な慣行や、パワハラ・セクハラ・モラハラ等の人権無視の言動に、いちいち異を唱えては跳ね返されイライラモヤモヤしつつも挫けずに行動する女性の姿を描く物語です。 そして、茉子が鉄の女のような闘士タイプでないところが物語のミソになっています。 小鳥にすぎないこまどりですが、その鳴き声はとても大きく、まるで自分の存在や主張をアピールするかのようです。 茉子の主張や抗議もこまどりのさえずりに似ています。これが設定としておもしろい。 社会に影響を及ぼすだけの力は若い茉子にはありませんが、言わなければ何も始まらない。 そんな茉子のさえずりもなかなか功を奏さず、中盤まではイライラモヤモヤし通しで少し疲れます。 でも、寺地はるなさんらしいカラッとした文章と展開のテンポのよさで気づけば終盤を迎えていました。 勧善懲悪・万事解決とならずに、少しずつ事態が好転していくところが却って心地よかった。 前途はまだまだ多難ではあるのですが、それでも現状を改善していこうとする茉子のしぶとさに希望を感じる、とてもいいエンディングでした。
96投稿日: 2024.04.27
powered by ブクログ「言わなきゃわからない、伝わらないみたいにアドバイスする人は恵まれている人」すごく心に残った。ストレートに思ったこと考えたとおりの言動が、周りから浮いたり上手く馴染めなかったり、残酷な素直さと思われる。とても生きづらく息苦しいかもしれないけれど、自分を閉じ込めてもやっぱりそれはどこか息苦しい。それぞれが生き方を考えていて少しづつ前へ向かっている。何かを変えたいと思っていても焦ることなくゆっくりでいいんだよな。大人の心の機微と弱さと踏ん張る力強さがあった。
5投稿日: 2024.04.27
powered by ブクログ残業つけずに仕事しろって、ブラックだな…。でもきっとこういう会社まだまだ沢山あるのでしょうね。 確かに全体的に古い体制ではあるけれど、新入社員がここまでできるかな?とちょっと疑問に思う。 正しいことであったとしても他人まで軌道修正させるって相当乱暴なな気がする。でも終わりよければ全て良し…になってるから、ま、いいか。 人は自分から見える部分はほんの一部。それでその人全部を知った気になってはいけない。そんなことを茉子を通して改めて思い出させてくれるお話しだったなと思う。
15投稿日: 2024.04.23
powered by ブクログ美味しそうな和菓子にパステルカラーの表紙というのに惹かれて購入し、読みました。 考えさせられるお話で、寺地さんの本はいつもすごいなぁと感心させられます。 職場はいろんな性格、いろんな価値観、いろんな力量の人がいて人間関係もあるしすごい悩まされることが多いと思います。 その中で会社を良くしようと声を出していける人ってのもすごいなぁと感心させられます。 私自身が、思っていてもなかなか声に出すことができない、また嫌われたくないのと、どう思われるかが気になってなかなか言い出せないタイプなのでモヤモヤしてしまうこともしばしば…。 だから一人でも信頼できる人がいれば救われるし、思いやりも大切だよねと感じました。 何か勇気をもらえるお話でした✧︎* いろいろあるけど、お仕事無理せず自分を大切にがんばろー⚐⁎∗
21投稿日: 2024.04.20
powered by ブクログアマちゃんすぎる伸吾社長にも理詰めすぎる茉子さんにもイラッとして付いて行かれへん。気持ちはわかるが…「いろんなものを見ようとし過ぎる。考える必要のないことを考え過ぎてる。じきに消耗する。見ずに、考えずに、通り過ぎたほうが楽やで」その通りですが…性分は変えられない。「誰かになにか言う時、無意識に欲しい反応や返事を設定している」かなぁ?ヒヒーンという鳴き声が馬に似ているから“こまどり”?
5投稿日: 2024.04.20
powered by ブクログあれ?こんな感じだったっけ? お久しぶりの寺地はるなさんは寺地はるなさん最新刊の『こまどりたちが歌うなら』です 連載時は『こまどり製菓』だったそう 『こまどりたちが歌うなら』のが二万倍くらいいい で、まず冒頭の感想 あれこんな感じの文体だったっけ?と思ったんよね そしたら頭の中でひまわりめろんBが「いや、寺地はるなって書いてあるやん!なに君疑ってるの?寺地はるなって書いてあるんやから、寺地はるなの文体なんやろ!」 いや別にそこを疑ってるわけじゃないんだが、ひまわりめろんBと揉めるとあとあと色々面倒なので「えへへ」とやり過ごしてしまった あと「さん」を付けろ!とも思ったが、それも言わずにおいた 会社でよくある色々面倒なので「えへへ」問題についてのお話であったわけです まぁ、自分はどうかとまず思うわな で考えたんだが、どう考えても「えへへ」タイプではない 譲らない人である そして譲らない根拠がいわゆる正論でなかったりする つまりまぁ困った人に分類されるかもしれない いや誰が困った人やねん 「正論」という刀をやたら振り回す人っているやん?まぁ、うちの奥さんがそうなんだが、めんどくさいな〜と思うのみである 良くない、とても良くない ちゃんと正論に向き合おう そして寺地はるなさん文体についてであるが、読み終わってみればはちゃめちゃに寺地はるなさんであった 要するに読み進める間にそうそう寺地はるなさんてこんな感じだった!と思い出しただけである 和菓子食べたい
73投稿日: 2024.04.20
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
‣ やりがいとか生きがいとかたいそうなものに頼らなくても仕事はできるし、働く喜びだって感じている ‣ 考えさせられますって言いながら実際にそのテーマについて考えている人、ほとんどおらんような気がする ‣ いっぺんは才能を認めてられたっていう事実にしがみついて生きていくのは、めちゃくちゃ苦しいと思う ‣ わたしは物事の一面しか見ていないのかもしれない。そしてその「一面」を、異様に歪んだ見かたをしているのかもしれない ‣ 黙っていたら、みんな無視するやん。無視していいってことにされてしまうやんか。いないことにしていいってなる。だから、こまどりは鳴くんや。ううん、叫んでるんや。ここにいるって ‣ みんな、勝手に他人に期待する。そのすべてをいちいち抱えていたら、いつかはその重さに耐えきれなくなる時が来る。他人の期待を自分の義務にしてはいけない ‣ 前例がない場所では、自分が前例になるしかない ‣ だいじょうぶって訊く時は相手の返事をあんまり信用したらあかんし、だいじょうぶって答える時は、ほんまにだいじょうぶな時だけにせなあかん ‣ その人が抱えている問題も、それにまつわる感情もぜんぶその人のものだから、なんとかしてあげたいけれどもなにもできない場合のほうがずっと多い。でも気にかけているよ、ということぐらいは伝えたい。そういう時に、人は食べものを差し出してしまうのかもしれない ‣ ひとりで「なんでも」は無理だ。でも皆それぞれになにかはできるから、それはなんだってできるということだ ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ いろいろな人が集まっているからこそ、職場での生きづらさって、人それぞれ。 でも、昨日よりほんの少しだけ周囲の人を気にかけて、ほんの少しだけ自分の行動を変えてみる。 すると、これまで「何もない」と思っていた場所にも、小さな希望や喜びが見つかるかもしれません。 そんなことに気づかせてくれた物語でした。 この本を読み終えたら、無性に和菓子が食べたくなりますね
3投稿日: 2024.04.20
powered by ブクログよくある小説なら、入社した会社が古い体質のため、働き方改革を一人で始めたら、徐々に賛同者も増えて、スカッと終わる。 でも寺地はるなさんの小説は違う。 「同じことを繰り返したくない」 「自分も認められたい」 「自分はなりふり構わずこの現状を受け入れるしかない」 など、皆様々な事情を胸のうちに抱えながら、それぞれ自分に与えられた仕事やなりたかった自分を達成しようと一生懸命もがくも、上手くはいかない。 意見を言える人も、言えない人も、言わない人も。 そして、人は自分以外の一面だけを見て、その人のすべてだと判断し、こういう人なのだと決めつけてしまう。自分だけが問題を抱えていて、他の人が何か事情を抱えているとは思わずに。 物語では徐徐に各々が抱えている事情が明らかになり、偏見に気付かされていく。 私自身、自分の日頃の態度を見透かされているようで、ハッとさせられた。 読み終わった後、じわじわ来る作品。 自分が陥りそうになった時、繰り返し読みたい。 『涙はしょっぱい、お菓子は甘い』 ひりひりしたものも含まれているけれど、優しい物語。 この会社の未来は明るさに溢れていると思う。 茉子の両親が良いキャラ。
13投稿日: 2024.04.18
powered by ブクログ会社の規則やルールの中の暗黙の了解に立ち向かうお仕事小説としてだけでなく、人間関係という名のもとに搾取される個人そのもののあり方に一石投じる作品として様々に身に覚えを感じる作品でした。 「自分で自分を認めてあげるしかない」「他人にばっかり期待してても幸せには」なれないという茉子に共感してしまう私は、伸吾にいわせると「ぞっとするくらい残酷」らしく、そういうどきっとする場面もたくさんありました。 甘さの中にほんの少しの塩味があっておいしさが沁みていくように、時々で食されるお菓子が、そのちょっとトゲトゲしたもの、不安定に揺れ動く人の気持ちをそっと包み込んでくれるような物語でした。 しんどいとき、悲しいときに甘いおかし「こまどりのうた」が欲しいと思いました。 #プルーフ
5投稿日: 2024.04.16
powered by ブクログとても良かったです。 表紙の絵が和菓子だったので、もしかしたら美味しい話?と思いましたが、やはり違いました。 製菓会社が舞台の話でした。 主人公、小松茉子をはじめ登場人物たちは職場環境や人間関係で様々な経験や辛い思い、悔しい思いを過去にしてきた。 だからこそ次は失敗しないように、期待を裏切らないようにと思うのだけれど、なかなか上手く出来ない。 それでも自分を大切にして、「今」出来ることを考えてやっていこう。 と、読み進めるうちにとても力強いエールが送られているように感じました。 残念なことに甘い和菓子の話ではなかったですが、主人公たちが一歩ずつ前に進んでいる様は、やる気と元気をもらいました。
40投稿日: 2024.04.16
powered by ブクログ寺地はるな先生の本と和菓子が好きだから手に取った。 会社にある謎ルールに対して主人公が切り込んでいく物語かな。舞台は和菓子の会社なんだけど、和菓子のように人の心を甘く暖かく包むというよりは、菓子を黒文字で切っていって、切った断面を覗くようなそんな話? もちろん現実はこう上手くいかないんだけど、主人公が奮闘する様子がかっこよかったな。 仕事で失敗したときや人間関係で上手くいかず気分が落ち込んで流す涙はしょっぱいけど、そんなときに食べる甘いものは臓腑に染みて元気に出るってことを伝えたいのかな。辛いときは甘いものを食べようと思います。
5投稿日: 2024.04.15
powered by ブクログうーん、なんだか読んでてイライラしてしまった。 愛されて尊重されて育った人のまっすぐさに嫉妬してた自分を思い出したのかも。 主人公に対する周りの反応に共感してしまった。 ただ、愛されて育ったからこそ、周りを強く照らせるところもあるなぁと思った。
6投稿日: 2024.04.13
powered by ブクログ物語の舞台は製菓会社『吉成製菓』。 主人公の茉子は前職の人間関係に疲れ果て、親戚の伸吾が社長を務めるこの会社に転職して来る。 この茉子が強い。 入社早々、サービス残業に物申し、社内の人間関係に声を上げる。 彼女の意見は正論で、本来であれば改めなければいけない所だ。 だがそれがスムーズにいかない所が会社という場所。 合間に挟まれる甘くて美味しそうな和菓子の描写とは裏腹に、一筋縄ではいかない人間関係の苦さが描かれる。 理不尽なルールを正し、あるべき姿にする事の難しさを思う。 自分達がより良く生きる為のヒントが込められた作品。
15投稿日: 2024.04.13
powered by ブクログ涙はしょっぱいお菓子は甘い 人は多面的で長所も短所もそれぞれ でも人それぞれという言葉で片付けてはいけないしそんなに簡単でもない 身につまされた 欲しい答えを求めた聞き方をして聞いたり 物語を求めてしまったりしている自分が 恥ずかしい こまどり庵 が少しずつ良い方向に 働きやすい会社になっていきますように
3投稿日: 2024.04.12
powered by ブクログはじめはブラック企業と主人公の行く末を見届けるつもりで読み始めたけれど、さすが寺地はるなさん、人それぞれの価値観や人の心のちいさな声に焦点が当てられていて、気づきの多い作品だった。 もちろんパワハラやブラックな労働環境に対して、主人公のように声をあげていくことについて、その必要性や効果なども描かれていた。 職場で正論を貫くことで、煙たがられたり陰口をたたかれたり。それでもめげない精神が必要で、そうした精神を持ち合わせている人はひと握りだろうなとも思う。 だからこそ、めげない主人公の周りにいる人たちの声が読者に聞こえるようになっている。 忙しくて声を上げるのをやめた人、人から嫌われたくなくて声をあげたくない人、思っていることがあっても言葉にできない人……。 実際、私たちの生活を振り返っても、言わない/言えないタイプの方が多いはず。読んでいて、あぁこの人私みたいだ、と感じる人が必ずいるのではないかと思う。 ちなみに私は茉子のような言えるタイプの人間なので、その価値観や世界観の違いには気をつけないといけないなと思いながら読んだ。 そして、やっぱり食べ物の出てくる作品はいい。 こまどりのうたはどこで買えますかね!
47投稿日: 2024.04.11
powered by ブクログお仕事というより、寺地さんの「今日の私、明日のハチミツ」に近い、どうやって自分の感情を大切に、相手に敬意を払いながら生きるか?という社会と折り合いつけるお話でよかった。 自分も含めて、誰も彼も、組織もいきなり変わることは難しくて、自分もより良い方向へ変わり続けるためにちいさな一羽のこまどりとしてまた歌い続けるぞ、と元気がもらえた一作。
7投稿日: 2024.04.10
powered by ブクログめーーーちゃめちゃよかった。 先日、新宿の紀伊国屋書店の店頭で見つけて、春らしい装丁と帯を見て購入。このタイミングで出会えてよかった物語だった。 言動に問題がある人のこと、「根はいい人だから」と目を逸らしたり、絶対に困っている人に「大丈夫ですか。」としか聞けなかったり、なんかひとつひとつの捉え方表し方がすごくリアルで、文字通り自分や周りの人を重ねて読むことができた。 物語を期待しちゃうとか、こんなこと言われたらどきっとする。表面的なコミュニケーションと、ぐっと心の中に踏み込んでくれる登場人物たちの言動の対比が、揺さぶってきた。うわあ、よかったな。出会えてよかった。 湿気がすごい日の湿気の凄さを、空中のどこかを手のひらではっと摑んでぎゅっと絞ったら、指のあいだから水が滴りおちてきそう、というところとか所々の表現もとても。よかった。
9投稿日: 2024.04.07
powered by ブクログ久しぶりにここに帰っきたんだなという感覚が自身に満ちている。 ただいまとわざとらしく言うまでもない、なんだか息のしやすい空間。実家のダイニングテーブルでかつて自分が座っていた椅子とか、以前よく行っていたパン屋の香りとか、母校の制服とか、学生時代の友人がそろった時の自分の声のトーンとか、そういうものに似通ったもの。それが今日のわたしにとっての寺地はるなさんの物語。 ただいまと言うのは照れくさいし大げさ。でもここにいるとわたしはなつかしさと苦々しさと寂しさと温かさを同時に感じる。 こまどりたちが歌うなら タイトルを目にした時、こまどりってどんな鳴き声だっけ?と思い、検索したら想像より50倍くらい騒々しい声が耳を劈いた。 おいおいどんな騒々しい物語かと思えば、たしかにこれは静かなようでとても騒々しい物語だ。 自分がここにいることをだれかに伝えるには、少し騒々しいくらいに鳴かないと伝わらない。 それが悲しいことなのか、憤るべきことなのかわからない。 でも、もしその叫びにもにた鳴き声を耳にしたならば、せめて自分は聞こえたよと答えたいなと思った。 伸吾の声も、満智花の声も、千葉さんの声も、茉子の声も、亀田さんの声も、ぜんぶ無いものにはしたくないし、もし自分の耳に届いたなら、ちゃんと届いたと伝えたいと思うのです。 この物語のだれに共感するとかそういうことではなく、これはすべての「ここにいる」がぎゅんぎゅんに詰まった騒々しい物語。 読む人にとって誰の声が聞こえるかはちがうのだろうし、きっと読むタイミングによってもちがうだろう。 ふと、あの子ならだれの声が聞こえたのか聞いてみたいなと本好きの友の顔が浮かんだ。
7投稿日: 2024.04.07
powered by ブクログ2021年に「水を縫う」で河合隼雄賞 ー人の心を支えるような物語を作り出した文芸作品ー を受賞した寺地さん。なるほどと思う。 どこにでもありそうな街の どこにでもありそうな製菓会社。そこで生活する人達のお仕事と家庭の悩み。 主人公の女性は、人間関係で勤めていた会社を辞めて、親戚の製菓会社の事務へ転職。経験ない老舗で小規模な会社での働き方と人間関係に納得できない。 お仕事小説の側面はあるけれど、社内の人間関係や性格を幅広く描いて 全体を少しずつ良い方向へ向かわせていく。 数々の和菓子は、どれも美味しそうです。
95投稿日: 2024.04.06
powered by ブクログ寺地はるな、最高傑作!人の見え方って会社、家庭でも違うし、同僚からみてもそれぞれでその人の見え方が違うものです。なぜそういう行動を取っているのかは一方の見方だけではわからないものです。映画化される浅倉秋成さんの六人の嘘つき大学生もそういう描写で人間の見え方の怖さを同じように感じました。 そういった感情の見え方は中学受験の国語問題で使われそうですが今回は関西弁満載なので?でしょうか。 P174の知り合いにお土産を買う心理描写。とても気に入っています。
6投稿日: 2024.04.06
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
寺地はるなは裏切らない。 今回も世の中の生きづらさに苦しんでいるたくさんの人が寺地小説に救われるはず。 不器用で人に合わせることが苦手で、さりとて周りを気にせずゴーイングマイウェイができない主人公を描かせたら天下一品。 あぁ、これは私に伸ばされた手だ、これは私への応援歌だ、とそう思いながら読んだ。 生きていると、たくさんの呪いの言葉をかけられる。それは悪意のあるものであるとは限らない。 良い人がかける良い言葉も、その言葉にとらわれ身動きが取れなくなることがある。 そんな言葉からの解放。 強くなくてもいい、弱音を吐いてもいい、へたくそでも、不器用でも、逃げても、いい。そこに自分の心と身体があれば、大丈夫。 寺地はるなは、ずっとずっとそばでそう言ってきてくれた。 ありがとう、そんな気持ちでページを閉じた。
11投稿日: 2024.04.01
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
新刊発売とほぼ同時に購入し読了。 優しく温かいストーリーながらも、現代の労働環境の問題に立ち向かう芯の通った主人公。多数の名言にも出逢えた。読了時に鼻の奥がつーんとしました。
11投稿日: 2024.03.31
powered by ブクログ●なぜ気になったか 『川のほとりに立つ者は』が初読だった作家さん。現実感を感じる作品で楽しめ、相性いいと感じた。過去作にもさかのぼって読みたくなるのか判断するために読みたい ●読了感想 現実感を感じさせられる話は好みで引き込まれはしたが、人の機微表現にもう一息感を感じてしまってちょっと残念な読後感。ただ、過去作に比べて残念、的な他の人の感想も見受けられるので評判のいいのを選んで読んでみたい #こまどりたちが歌うなら #寺地はるな 24/3/26出版 https://amzn.to/3x7Rf0e
9投稿日: 2024.03.28
powered by ブクログいろいろあったけど、たぶんみんな、そんなに変わっていない。交差したり、ぶつかったり、寄り添ったりしながら、ほんのすこしだけそれぞれの背景を知ることになるけれど、考え方が大げさに変わったりはしないところがいい。 それと、寺地さんが描く人びとの、泣きそうになるツボが、わりと独特だけど共感ポイント。
26投稿日: 2024.03.26
