
総合評価
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powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
≪内容≫ 15歳の少年ミヒャエルが21歳年上のハンナと出会い、恋に落ちる。突然姿を消してしまったハンナへの想いと次第に明らかになるハンナの過去との対峙。多くの言語に翻訳されたドイツ文学のベストセラー。 ≪感想≫ 年齢の差を超えた愛を描いたようなシンプルな恋愛小説だと想像しながら本書を手に取ったが、甘酸っぱい恋愛小説を装いながらも著者が本当に語りたかったテーマは別のところにあるように感じられた。冒頭の官能的なシーンを餌にした壮大な釣り小説ではないかと邪推してしまうくらい、背後にあるテーマや著者の問いかけは重い影を落としている。 もちろん、ハンナという女性に対するミヒャエルの愛が物語の大きな軸であることに変わりはない。ただ、その関係の背後では文盲という境遇への恥とプライドや、強制収容所の看守として働いていたハンナの過去の罪や、戦後のドイツ国民が持ち続けているナチスに対するある種のアレルギーなど、様々なテーマが複雑に絡み合っている。主人公のミヒャエルはそれらに対峙しながら、どこまでも自らの内面に向き合い、都合のいい解釈や逃避に迷いながらも、最後まで彼の人生に課せられた問いの答えを見出そうとする。 先の戦争で「してしまった」罪悪についての問いが現代のドイツ文学で繰り返し語られてきたテーマであるとすれば、一方で「しなかったこと」に対する罪の物語としてこの小説はあるのかもしれない。ハンナという恋人の存在を友人に明かさなかった主人公の罪悪感、教会の扉の鍵を開けなかった看守たちの責任、ナチズムを含めた戦争責任や集団罪責を十分に追及してこなかった親世代への違和感。いずれも何が正しいのか、どうすればよかったのか、明確な答えなど存在しないように思われるし、実際に小説の中でも問いかけだけがなされている。 これだけ重いテーマを孕みながらも読者を魅了するのは、ハンナとミヒャエルを結ぶ「朗読」という行為のどこか神聖でドラマティックな美しさなのかもしれない。戦後文学としても恋愛小説としても、悲劇としても美談としても、本当に色々な読み方ができるような、示唆に富む美しい物語だと思う。
1投稿日: 2011.05.31
powered by ブクログ終わってからも人生に影を落とし続ける戦争と、戦争を知らない子どもの物語。誰かを悪者にするのではなく、ひたすら傍観しているように感じる。
0投稿日: 2011.05.30
powered by ブクログ「なぜ、彼女は本を読ませるのか?」 絵本の読み聞かせの要領で、誰か大好きな人に隣で本を読んでもらうのが単に好きなんだろうか? 頭の片隅に「?」を抱かせられつつ、今度はなんと相手の女性は裁判にかけられていく。 本のタイトルには、大きく分けて2種類あると思う。内容そのものを表したタイトルと、少し謎なタイトルをつけることで興味をひき 読むと謎が解けていくものである。 この本のタイトルは一見前者なようで、話が終わるまでタイトルの真相が解けきらず、終わってみて「なるほど」とすっかり納得できる部類だ。 最後まで飽きさせず、読み手の「?」をうまく拭い去る作品に最近なかなか出会えてなかったので、とても良かった。 映画版も原作の世界観を壊さず、温かみのある作品だったと思う。
0投稿日: 2011.05.26
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
内容がスケベ。 大学生の頃に読んだ。友達に面白い本だよと言い、薦めたら、エロい奴だと思われた。 年上「すぎる」女性との恋。 衝撃なラストを迎える! エロい!切ない! 裁判所のシーンがちょっと退屈に感じてしまったのは、まだ私が読んだ頃、バカ田大学生だったからだろうか? でも今でも内容は覚えているほど、面白い本だった。 映画化されているらしいので今度見たい! エロ切ない!
0投稿日: 2011.05.23
powered by ブクログ彼女との1年記念日に贈った一冊。(当時は互いに未読) 文盲を隠すハンナと、昔の幼稚さが失せた大人になったミヒャエルの心理描写が印象的。 罪を被ってまで秘密を貫くハンナ、面倒を見ようと試みるミヒャエル、いつの間にか大人と子供が入れ替わってしまっている2人の関係が何とも哀しかった。
0投稿日: 2011.05.20
powered by ブクログ題名だけ聞き覚えていて、いずれ読もうと思っていた。世界的ベストセラーということは後から知ったが、情報をまるで仕入れてなかったことで先入観なしに読めてよかったと思う。 最初はよくある「少年(或いは青年)のひと時の恋の思い出」かと思っていた。コレットの「青い麦」とかゴールズワージーの「林檎の樹」みたいな。相手の女性がかなり年上という設定もあり、余計にそう想像していた。 だが、それはまるで違った。 本を閉じた後、色々なことを考えて胸が詰まった。 ハンナの根源的な渇望を、結局誰も癒すことができなかった。ミヒャエルさえも。 だがミヒャエルを責めることはできない。どうしようもない葛藤の中で、彼は自分にできる精一杯を尽くした。勿論、「もっと色々出来たのではないか」と言うのは簡単だ。だがそれは結果論でしかない。私が彼と同じ立場だったとしたら、彼と同等のことすらできたとはとても思えない。 だが、そう分かっていてもなお、ハンナのことを思うとこみ上げるものがあって言葉が出なくなる。 素晴らしい作品だった。また近々読み直すと思う。
0投稿日: 2011.05.18
powered by ブクログ母親ほども年の離れた女性と恋に落ちる主人公。 (とはいっても、ハンナは母よりも十歳年下。) で、ちなみにこの設定がいいのだ。 つまり、ハンナはぎりぎりのラインなのである。 主人公は15で、ハンナは36。 母親ほどいうが、微妙に母親ほどではない感じが、 なんともマザコンとは言いがたいのである。 それよりは、単純に「年上の女性」といった感じ。 そして、そのハンナと恋に落ちていく主人公。 絶えず自分は愛されているのか、あるいは、愛しているのか、 といった不安に苛まれながらもそれでも主人公は、 ハンナから離れられずにいる。 個人的に恋愛なんて依存だと思う。 依存じゃない恋愛というのは、ある意味で、 その程度しか好きじゃないってことなのだろう。 まぁ、このあたりの定義はかなり長くなるので省略。 印象的なシーンはやはり主人公がハンナに朗読をしているところ。 一部でハンナと離れ離れになり、 二部ではハンナが裁判にかけられている。 一部よりも六年くらい?だったかな、の、時が流れて、 ハンナは四十を超えて、主人公は大学生になっている。 ハンナは、自分が文盲であることを隠すために、 どんどん不利な状況に追いこまれていき、 主人公から離れていったのも、つまりはそれが理由で、 主人公を愛していなかったわけではなかった。 一部ではミステリアスに描かれた人物は、しかし、 二部では生々しい人間となってしまっているが、 それでも、ハンナにはやはりハンナの魅力がある。 それは作者の描写力によるものだろう。 ちなみに、ハンナの罪状はホロコースト時のもの。 彼女自身にはそれほど深い罪はないようにも思われるので。 たぶん、この場合の罪は特定の誰かに帰するような単純なものじゃなくて、 たぶん、当時のドイツ国民全員が背負うべき罪なのだろうから。 三部では、ハンナが十八年の刑期を終えていよいよ、 出所というところで自殺してしまい、主人公はその、 墓を訪れるところで終わる。 主人公は七年目から十八年目まで、ハンナに自分が朗読した、 カセットを送り続ける。かわりにハンナは短い手紙を返してくれる。 ハンナを自殺に追いこんだのはようするに、 時の流れなのだろう。 主人公が再会したハンナを、「老人」と描写しているが、 まさにそこなのだ。 ハンナは六十に差しかかっている。 六十は老人というには早いかもしれないが、 そうかといって、決して若くはないのだから。 ただ、この物語はところどころはっとするような、 描写があってびっくりした。それは心理描写なのだけれども。 もちろん、ホロコーストへの罪と罰や、 最愛のひとが裁判にかけられるということなど、 いろいろ見所はあるのが、それ以上に、個人的には、 心理描写にくるものがあった。 顔が思い出せなくなって、その人物への感情があたかも、 消え去ったかのように擦り切れたとしても、それでも、 その人物が誰よりも自分の深いところに絡まりついている、 のだという事実。 あとがきによれば、ハンナのモデルはいないようだけれど、 たぶん、このひとが誰かを好きになってそうして感じてきた、 ことがこの物語には集約されているような気がして、 あとがきで二階読めって言っている理由がわかったような気がした。 いつか、読み返そうと思う。 空しさが寂しさ、哀しさ、はかなさなどが漂う物語ではあるが、 しかし、この物語がすごくきれいに感じられるのは、 やはり「朗読」だろう。 朗読ってものはすごくきれいなのだ。 ハンナに朗読して古典を読み聞かせていた主人公。 ハンナへカセットを送ってやった主人公。 「字を読めるようになったハンナにはぼくのカセットはもう必要ないのではないか、と頭を悩ませることはなかった。彼女が自分で読むことは構わない。朗読がぼくの流儀であり、彼女に対して話しかけ、ともに話をする方法だった」 ハンナは手紙を求めていたし、そのことで所長に怒られ、 主人公は悔いてもいるがそれでも、主人公はハンナにとって、 「朗読者」であったという部分がたまらなくきれいなのだ。 主人公はハンナにとって、恋人でもなく愛人でもなく、 「朗読者」だったのだ。
0投稿日: 2011.04.21
powered by ブクログ年の差を越えた刹那的な愛をはぐくむ2人。 なんでいつも本を朗読させたのか? 何故、突然目の前から消えてしまったのか? 謎を残して話は進んでいくけれど、真実が明らかになるにつれ悲しくなってくる。 ハンナにとっての真実は劣等感、自尊心を含め自ら選んだ道。 反対にミヒャエルだけが知っている真実。 良かれと思うことが、相手にとっての良いこととは限らない。 読後感はバッチリ重たいです。
0投稿日: 2011.03.29
powered by ブクログ戦争がもたらしたもの。 無知なことが罪なのか。 本当の優しさとは何なのか。 読んでいくうちに作者の世界観にあっという間に呑み込まれた。
0投稿日: 2011.03.18
powered by ブクログ【重たい歴史&恋愛】の組み合わせは読みながら泣くのを止められない率が高いのですが、これも例外ではなかったです。 戦争や自然災害などの大きく世界が動くイベントが、どれだけ人間の普通の生活の営みを奪い去るのか。そして、それは不変なことなのだとこれを読んで改めて思いました。
0投稿日: 2011.03.17
powered by ブクログ映画化したということもあって、気になっていたので読みました。・・・が。まだ、読みが足りないようです。また挑戦しようと思います。ゆっくりじっくり読むほうがいい作品なんだろうな。
0投稿日: 2011.02.08
powered by ブクログスタバで若い女性がブックカバーを付けずに読んでいるの見かけたのが購入のきっかけでした。 久しぶりに、『文学』小説を読んだという満足感に充たされました。 帯にある、「クライマックスが・・」とか「泣いた」「泣ける」ではこの切なさや儚さからくる幸福感は表現できません。 多くの人に読んでもらいたい、自分にとってもとても特別な作品です。
0投稿日: 2011.02.06
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
「青い麦」みたいな小説かと思いきや、後半はテーマは深い。 ナチスの問題をどのように受け入れていくのか、戦後に生まれた人間には責任はないのか…。 考えても正しい答えに辿りつけるかも分からないが、想像をめぐらすことさえしないことは、その場にいなかった人の「罪」にはならないのか?そう突き付けられている気がした。
0投稿日: 2011.02.03
powered by ブクログ好きな作品。解説にある「もし愛した人が〜だったら」という問い掛けはこの作品にそぐわない感じがしてしまう。「朗読者」というタイトルの意味がこの作品の大きな仕掛けなのではないかなぁと。
0投稿日: 2011.01.16
powered by ブクログ映画を観た後、読み始めました。 原作にかなり忠実だったみたいなので、非常に読みやすかった。 「ハンナとミヒャエルとの出会い」「ハンナが街を去ってから」 と「裁判が終了してから」のⅢ部構成となっていて、彼が彼女を徐々に理解していく様子が胸を打つ。 彼のものごと(ハンナについての)を肯定したり、否定したりする、わけのわからない心境がすごくよくわかった。 彼女が大切にしたものは何だったのか。 なぜ文盲ということを明かさなかったのか。 偏見やプライド、正義と真実そして秘密。 さまざまなことを考えさせてくれる。 最近読んだ本で一番 深いと思う作品に出会えた。 でも、あとがきにも書いてあるけれど、最低でも2~3回は読まないと よくわからないというか、数回読んでこそ、味わい深い本なのではないかな、と思える本。
0投稿日: 2011.01.15
powered by ブクログ夏の100選に選ばれていて、衝動買い。 「年齢差の恋愛」「戦争責任」「ナチス」をテーマとした文学作品。 切ないという表現では、物足りないぐらいに切ないラスト。 これこそ、文学の醍醐味。厳選された文庫化された洋書の邦訳は、やめられない。
0投稿日: 2011.01.14
powered by ブクログ映画「愛を読む人」をみた後で読みました。登場人物の気持ちで感じきれなかったところを読むつもりだったのですが、文章の中にも答えはありません。歴史的な背景は説明があっても、読み手がどう考えるか、どう捉えるか、それだけです。 本来の小説ってそういうもののはずなんですよね。作者が全て説明してくれて、感じ方まで細かく指定するものじゃない。気持ちがついてくる早さで読み、時に高ぶりを押さえてから進む。湧いてきた感情の理由を考え、振り返って過去の行動を噛み砕く。読書とは作業でもあること、一つの作品が如何様にも変化するものであること。さらに知への欲求、「読む」ことの意味、全てをひっくるめての「読書」がこの作品に凝縮されているように思います。
0投稿日: 2011.01.11
powered by ブクログ高校生のころにドイツ人の人からもらった本。昔は前半の恋愛系しかよまず、おもしろくなくて先に進めなかった。久しぶりにとりだして読んでみたら、ナチの時代のことでびっくり。ドイツ人が日本語訳までかってしまったのもわからなくなかった。ナチにくる囚人の看守が「あなただったらどうしていましたか?」と裁判官に聞いたところとか、下手したらナチのときの罪を正当化してるようにも思えるけど、そうじゃないんだろな。これは単に著者が解決できない問題を本にした感じ。最後のほうになってやっと話の筋が理解できた。「愛の物語」てかいてあるけど、それだけじゃない。ナチの下で自分の意志に反して罪を犯した人の裁きや背景、ドイツの負の過去の世代間の葛藤、理解しようとするほど通常の裁きができなくなる裁判の矛盾…ずっしりくる1冊だった。
0投稿日: 2011.01.09
powered by ブクログ洋書は苦手ですが、なんとまぁ読みやすいこと。 というのも、きっと最近書かれた時代背景的にも理解しやすいからだったと思われます。 映画にもなっていますが、この作品なら映画で見てもいいな。と思います。 悲しい歴史も背景にあり、単なるラブストーリーではない、 そしていやらしいだけじゃない、何かを感じさせる作品です。 登場する歴史に関して調べたくもなりました。
0投稿日: 2011.01.01
powered by ブクログ少年と年上の女性との恋愛物語ということで、設定的にラディゲ『肉体の悪魔』と照らし合わせながら読みました。 設定内容から予想されるストーリーにしては、量があると思いましたが、彼女の正体を知ってからの話の方が長くなっています。 15歳の少年と倍以上の年齢の女性との恋愛に、彼女の隠された過去が絡んでいきます。 はからずも彼女の秘密を知ってしまったことで、社会と向き合い、少しずつ大人になっていく少年。 出会いの皮肉を感じさせられます。 ただ、この少年は、女性の正体を知った後も、独房の彼女に彼なりの愛情表現をしています。 10代の過ちとして忘れてしまうような残酷さはなく、出来る範囲内なりとも、きちんと現在の彼女に向き合っている、その姿は、年齢差を越えた、しっかりとした愛が続いていることを伝えています。 全て若さのせいにして自分を守る、傲慢な『肉体の悪魔』の主人公とは全く違う、現実に苦しみながらも成長していく青年像が描かれているのです。 彼女がなぜ彼に朗読をせがみ続けたのか。 文盲は、今の日本ではほとんど馴染みがありませんが、その秘密を隠しぬいた彼女は、そのために彼との関係がぎくしゃくしたり、出世できなかったり、誤解により自分の罪が重くなったりします。 それでも自分のプライドのため、決して文盲を明かさなかった彼女。それほど恥ずべきことなのでしょうか。 青春文学の粗野さあふれる作品かと思いきや、緻密に作りこまれた物語でした。 おそらくは貧しさゆえにまともな教育を受けられず、読み書きもできないまま、物事の善悪を深く知ることもなくナチスに身を投じたであろう彼女。 哀れに感じますが、そんな彼女を別れた後も支え続けた彼。 美しく切ない、一つの恋愛の成就形のように思いました。 戦後間もない発行かと思いきや、1995年の作品。最近の物語にしては、堅固な時代背景に支えられた重厚なものとなっています。
0投稿日: 2010.11.25
powered by ブクログ_ はっきりと見えていた 山の稜線も空にとけて 帰り道は群青の宵闇。 優しさや 正しさは 相手を想えば実現化 するものだろうか。 現実と夢は違う。 いつまでも、夢で 在れば良かったの だろうか。 何かが 出来ると思う事は あの星に手が届くと 思うのと同じところに。 何も互いに 足りないものなど 無いのに。 _
0投稿日: 2010.11.24
powered by ブクログ最初はただの年の差恋愛モノ、といった感じで始まるのだが、彼女の戦犯の裁判で再会したあたりからどんどん物語に引き込まれました。 付き合っていた時の彼女のヒステリーの理由が分かった時は、興奮! 彼女の年齢に近づいてからもう一度読み返したいと思う本でした。
0投稿日: 2010.11.18
powered by ブクログ物語の最初は、15歳の主人公ミヒャエルと母親ほど歳の離れたハンナとの出会いから恋愛までを書いてあるが、第二部からはハンナ自身が知りたかったことや守りたかったことを裁判を通して、主人公ミヒャエルが理解しようとする姿が描かれている。 終わった戦争について、当時の人々の立場になって考え、理解することがどれだけ難しい事か、主人公によって上手に表現されている。ただ、ミヒャエルがハンナに抱いた愛情を、読み手が深く理解するためには、再読が必要な気がしました。
0投稿日: 2010.11.16
powered by ブクログ文盲であること。ナチスの親衛隊であったこと。 ハンナの背負ったものの重さがのしかかってくるようでした。
0投稿日: 2010.11.12
powered by ブクログ理解と裁き。ミヒャエルの問いは、私の頭も悩ませた。 過去に縛られる想いそのものが彼の人生となり、消せることのない過去は善くも悪くも重すぎるものだった。 物語最後の締めの一文は酷く切ないものに感じられた。深い余韻を残し、抜け出しにくい。 あとがきに、二度読むことを勧める、とあった。暫くしたら読み返したい。
0投稿日: 2010.11.02
powered by ブクログ以前、映画になっていた時に気になっていたが、文庫化されているとは知らず、最近になって本好きの相方に薦められて読んだ本。 前半はぐっと年齢の離れた女性と少年との恋であるが、中盤からは前半のロマンスなんてどこへやら、恋愛小説とばかり思って読み進めていると、愕然とする。 作者も少年時代にこのような恋愛を経験したのだろうか。リアルな心理描写は、リアルな性描写を上回る。 物語の最後で、主人公の元恋人がなぜこのような終焉を選んだのか、わからないままに物語りは終了する。読者に考えさせ続けるという意味では成功したのであろうが、読了した後もずっと考えてしまう次第である。
0投稿日: 2010.10.30
powered by ブクログ映画「悪人」が公開され、話題を呼んでいる。でもこういうみんなが話題にしている映画を見に行くことが昔からできない自分は原作を買って読んでみた。で、思い出した。2年くらい前にケイト・ウィンスレットが主演女優賞をとった「合いを読むひと」の原作「朗読者」のことを。もう10年くらい前になるがこの本では最後の最後で思いがけない真実に出くわした読者は涙が止めどなく出ることだろう。 で、原作の印象があまり強いと映画は見たくないと思ってしまう。ということで「愛を読むひと」は見ていない。話は最初に戻るがそう言う意味では「悪人」は映画を見てもいいかなと思った。(永田)
0投稿日: 2010.10.19
powered by ブクログ図書館の本 内容(「BOOK」データベースより) 15歳のぼくは、母親といってもおかしくないほど年上の女性と恋に落ちた。「なにか朗読してよ、坊や!」―ハンナは、なぜかいつも本を朗読して聞かせて欲しいと求める。人知れず逢瀬を重ねる二人。だが、ハンナは突然失踪してしまう。彼女の隠していた秘密とは何か。二人の愛に、終わったはずの戦争が影を落していた。現代ドイツ文学の旗手による、世界中を感動させた大ベストセラー。 面白かった。 想像していた以上に重かった。 ドイツはナチズムを避けて語れないのかしらとも思ったけれど、戦時下でも、その後でも人としての営みがあり、静かな愛情がある。 人の営みに戦争が絡むと、全てが複雑になり、全てが壊れていく。 二人の秘密。 そして二人にしかわからない愛情。 「朗読」の意味が痛いくらい心に響いた作品でした。 Der vorleser by Bernhard Schlink
0投稿日: 2010.10.14
powered by ブクログ読後、言葉がなかった。 出なかった。 なにが間違いで、なにが適切かは分からないけど、 でも、彼女に彼女のしたこと、 私は納得いかない。 過去に何があったか、彼や彼女がどう思ったかは関係ない。 今、どうすべきかだ、きっと。 彼を縛り付けるためにああしたんじゃないかと思って、 私は今でも懐疑的に思っているのだ。 せつなくなんてない。ただの我儘だ。
0投稿日: 2010.09.18
powered by ブクログ15歳の主人公の少年と中年女性ハンナの恋愛話が中心の第1部はとても面白く読めました。屈折した魅力を持つハンナに少年が強く惹かれていく様子はよく書けていると思いました。 第2部からは戦争責任・贖罪がテーマになりますが、私にはハンナがなぜ自分の秘密を守ることにそこまでこだわるのか理解できませんでした。しかしハンナの裁判官への「あなただったら何をしましたか?」 という問いかけには考えさせられました。
0投稿日: 2010.09.02
powered by ブクログ15歳の少年と30半ばの女性との年齢差を超えた恋愛の話、と思って読んでたら途中から全く予想しなかったテーマが現れてびっくりした。 どうして?と思うこともあるし、女性の最期にも、かつて少年だった彼の心の動きや行動にも、とくに共感できたわけではなかったけれど、それだから余計にか、もう一度読み返してみたいな、と思いました。訳者あとがきにも、何度か読んでほしいというようなこと書いてあったと思います。 同じ敗戦国である日本にも同じような戦後の苦悩はあったのでしょうか。 今まで考えたことなかったけど、確かに戦後ドイツではナチスによって迫害された人々だけでなく、ナチス側に与していた人々もいたわけだよね。戦争が終わったからもう平和ですよ、なんてことには当然ならないよね。。。 簡単に私が感想なんて書いたりできる本でもないなぁと思いますが、この本を読めてよかったなぁと思います。 たしか、映画化されたと思うんだけど、どんな俳優でどんなふうに映像化されたんだろうか。
0投稿日: 2010.08.16
powered by ブクログベルンハルト・シュリンクの「朗読者」読了(´・ω・`) いつのまにやら映画化されてたんやね!(邦題「愛を読むひと」) 映画化の話は知らなかったけど、この作品はずっと気になってたし秋学期の「裁判所と憲法訴訟」の授業でシュリンクが出てきたからこのたび読んでみようかなと。(※シュリンクはドイツの憲法学者さんでもある) あらすじは以下。あからさまにネタバレを含むので、読みたくない人はとばしてね(´・ω・`) Ⅰ部では、ミヒャエルとハンナの出会いが描かれる。 15歳のミヒャエルが20歳も年上の女性ハンナと恋に落ちる。 ミヒャエルは会うたび、ハンナに本を朗読をして聞かせる。 人目を忍び逢瀬を重ねるも、突然ハンナは姿を消してしまう。 Ⅱ部では、ミヒャエルが思いがけない形でハンナと再会する。 ミヒャエルは、大学で法学を学び、ナチス時代とそれに関連する裁判を研究するゼミに参加する。 ナチスドイツの収容所の看守の責任を問う裁判を傍聴に行ったところ、5人の被告人のうち1人は、ハンナだった。 ハンナは無期の判決を下される。 Ⅲ部では、判決後のミヒャエルとハンナのやりとりが描かれる。 この部分は、いくらなんでもここで書いてしまうと味気ないのでカット。笑 ミステリー作家でもあるシュリンク、真相を明らかにする鍵の演出はさすがでした…! あんまり期待してなかった分、すごい得した気分。(´・ω・`) ナチスドイツに関する事柄の書き方が、ある意味とても印象的だった。 というのも、作者としてのナチスへのスタンスが、無色透明だから。 判断を一切下していない。逃げているのではなく、ただ問いかけとして描かれている。 ハンナは裁判官に対し「あなたならどうしましたか?」と尋ねる。 裁判官は言葉に窮する。 これはそのまま私たちへの問いかけでもあるんだろうな。 また、ナチスが行ったことについて、人々は「麻痺していた」と表現している。 これは適確な表現なのだろうなと思う。 同じ人間を理不尽な方法で殺害する。新しい囚人が送られてくるから、古い囚人を死に追いやらなければならない。 システムとしてそういうふうにできており、逸脱することは許されない。もし逸脱すれば自分にも死が待っている。 部分的に感情を何らかの方法で遮断しなければ耐えられなかったのだろう。 おそらく自己防衛のための、本能的な麻痺。 さらに、戦後世代のあり方について「驚愕と罪と恥の中で押し黙る」べきではないとの表現があった。 世界中でドイツ人同様、第二次世界大戦で自国・自国民が行ったことについて考えるべきは日本人だろう。 戦後の私たちが一個人として常に罪の意識を感じたり恥じたりしている必要はないし、それを誰かに求められるとしたら、それは筋違いというものだろう。 しかし、考えなくてはいけないことには変わりない。 正当化することはもってのほかであるが、あたかも最初からなかったことかのように黙殺することは許されない。知らない、と平気で言うことも許されはしない。 言いたいことの半分も言えていないけど、 いろいろ考えさせられた本。 少し時間をおいて、もう一回読もう。 ニュルンベルクや東京裁判についてもちょっと調べたいなー
0投稿日: 2010.08.14
powered by ブクログ作者の、そしてかの国の抱える闇が垣間見えてしまう本。危うい恋愛小説的な色合いで広範囲の読者を捕らえ、逃げられなくしてから「本当に伝えたいこと」が綴られる。 異国の地に居る我々ですら、辛く読みたくない、その「過去」を、かの国の読者はどう捉えたのだろうか。また、こういう手法を取らねば、この「伝えたいこと」は読んでもらえないだろうと判断した作者の気持ちを考えると、複雑である。 同じ戦敗国でありながら、わが国のたどったこれまでの歩みとは何と異なることかと、自省も兼ねて思う。
0投稿日: 2010.07.09
powered by ブクログ正直、泣ける、大感動、っていうのはよくわかりませんでしたが、「くだらないベストセラー」扱いされるほど悪くもないと思いました。 恋愛ものとしては取り立てて素晴らしいとは思わないし、サスペンスとしても、ハンナがホロコーストに関った戦犯らしいことは帯に書いちゃってあって、もう一つの彼女の「秘密」も、すぐに察しがつきます。 個人的には、「(恋愛として)愛した人が戦犯だったらどうするか」というよりも、「自分をはぐくんでくれた大人たちが犯した罪とどう向き合うか」ということがテーマのように感じました。 小さい時から周りにいた、近所のおばさんや、肉屋のおじさん、学校の先生、バスの車掌さんなんかが、戦争中に(戦犯というほど積極的でなくても)親ナチ派だったことや、ホロコーストの本当の恐ろしさに、実感を持って思い当たり始めるのが、主人公の年齢である15歳くらいなのかもしれないと思います。 戦後そのくらいたって(主人公も作者も戦中生まれ)初めて語られたこともあっただろうし。 戦争の記憶はどの国でもつらいものだとは思いますが、自国内で、隣人を大量にガス室に送ってしまった、というのは、遠い戦場で起こったどんな悪行よりも、次の世代にとって受け入れ難い悲惨な出来事だろうと思います。 親が戦犯だったというような鋭い痛みとは違う(主人公も作者も父親は反ナチ派だったらしい)でしょうが、作者の世代には、大人になっていくにあたって、安心して反発できる大人世代も、単純によりどころにして誇れる祖国もなかった、鈍く長い痛みがあったと想像します。 それを一人の女性との関係に置き換えるのが陳腐といえば陳腐な気もしますが、個人的には有効でした。 ドイツ文学に明るくないので、同じようなテーマの先行作品はたくさんあるのかもしれないですけれど。 うーん、星3つ半。
0投稿日: 2010.07.04
powered by ブクログ傑作だと思います。電車の中で涙止まらず。 朗読という一方通行の愛しか送ることができなかった主人公。手紙を書かなかったのは、やはり、彼の怠慢と、傲慢としか思えませんでした。美化された古い記憶のなかに、彼は閉じこもってしまいたかったのでしょうか。 と、多少ネタばれをつづってしまいましたが、どきどきするような謎と、ホロコーストの罪に関する重厚な主題にもどかしい駆け引きがからみ、あっという間に小説の世界観に呑まれてしまう小説でした。おみごとです。
1投稿日: 2010.07.03
powered by ブクログ(10.6.30) ミヒャエル・ベルクとハンナ・シュミッツの物語り。 映画「愛を読む人」の原作。 本作は三部から成っていて、第一部はミヒャエルとハンナの出会い、そして幸せな日々が描かれている。 あまり現実味がなく空想的ではあるが、独特な雰囲気の二人の暮らしは読んでいて飽きることもなく、この一部は素晴らしいものだった。 朗読を始めたきっかけ、そして別れるまでが描かれている。 けれども裁判所でハンナと再開した第二部や、ハンナが刑を受けてからの第三部は、暗く広がりのない絶望的な感じがする。 特に終わり方はひどいもので、後味悪い、尻つぼみな作品である。 そもそも翻訳作品であることから、文体は単調で色気も薄く、なかなか読む手が進まなかった。 朗読を通して繋がれた二人の心…しかし決して再び結ばれることはなかった。 社会性を読み取るには難しく、かといってただ純粋に楽しむような作品ではない。 少し時間をあけてから再び読んでみたいと思う。 機会があれば映画の鑑賞も。 [10.8.16] 映画バージョン、ブルーレイで見た。 ハンナはオバサンすぎだし。裸体も醜くて。まあ現実味はあったけど。 マイケル(小説ではミヒャエル)もビミョーだったな… やはり映像化されると細部が省かれて分かりづらいし、なんだかなぁ… 特典映像はもうヤバイね。 全体的に出しすぎ! そしてこういう終わり方はやはり嫌だ。
0投稿日: 2010.06.30
powered by ブクログ主人公が体験した人生も裁かれようとしている戦争犯罪も、複雑な体系の結果…なのかな。 過去のどうしようもない出来事やどうにかできたかもしれない部分もまわりまわっていろんなものに関連してしまう。 おれは構造主義者ではないけれど、面白かった。
0投稿日: 2010.06.21
powered by ブクログこれは映画「愛を読むひと」の原作です。 前半は主人公と年上の女性がHをする話ばかりなんですが、そこにも伏線が張られていて、後半に進むと急激に話が進み重厚なストーリーになりました。 主人公は基本的に悩みながらも嫌なことから目をそらして、自分の都合のいいように解釈しながら行動していたと思います。主人公が朗読を続けたのも直接会話をするのを避けて、それでも自分は相手を思って行動しているという自己満足に近い行動だと思います。だから、映画のタイトルはちょっと違うんじゃないかと思います。 面白いという小説ではありませんでしたが、主人公の葛藤や年上の女性の思いなどが丁寧に書かれていて、色々と考えさせられるいい小説だと思います。
0投稿日: 2010.06.16
powered by ブクログ2010/0518 主人公の心の揺れがリアルだった。 罪ってなんだろう。愛するってなんだろう。 いろんなことを自分に問いかけながら読んだ本。
0投稿日: 2010.05.18
powered by ブクログ本当は、こんな物語なんか嫌いだ。 でも幸せはほんのひと時で、忘れたい過去や 大切な人にも話せない自分のこと、 知らないうちに誰かを傷つけていたこと、 当たり前にあることが当たり前でないこと、 誰もがそんな感情を持っていること。 そんなことを改めて思い出させてくれる。 ドイツは贖罪をこのように捉えている。
0投稿日: 2010.05.10
powered by ブクログたくさんのことを考えさせられる本でした。 世の中、正しいとか間違っているとか言えることばかりではないと、実感しました。 訳が少しぎこちない日本語で、きっとドイツ語を日本語にするのは難しいんだろうなと思いました。 わかりにくい部分もあるけど、充分心に訴えかけられます。
0投稿日: 2010.05.02
powered by ブクログ「愛をよむひと」を勧められ、DVDを観る代わりに原作を読んだ。 はじめは話全体的に変態臭くて、引いてしまったところもあったけれど、 そこがあったからハンナの色気だとか気質だとかの魅力は十分伝わってきた。 一変して後半の裁判のシーンでは、第二次世界大戦の只中を生きたハンナと、方や資料館としてのアウシュビッツしかしらないミヒャエルの対比が鮮明に描かれていたように思う。 結局ハンナが求めていたのはミヒャエルの若いからだではなく「知識」だったのだから、朗読という手段でハンナに知識を与え続けた、特にハンナが服役中の期間のミヒャエルと、会うことはなくても「知識」を得ることができた2人の関係は充実していたのでは、とおもう。
0投稿日: 2010.04.27
powered by ブクログ初読:2009年初夏 映画が見たくて読んだけど、内容がけっこう重くて意外。 あまり理解や共感はできなかったかな;;
0投稿日: 2010.04.09
powered by ブクログ20090729(Wed)ドリコムブログに投稿 映画は「愛をよむひと」なってる。 確かに「朗読者」は味気ないかも。 でもきっとこっちがより原本っぽいのかな…
0投稿日: 2010.03.27
powered by ブクログp129 「わたしは…わたしが言いたいのは…あなただったら何をしましたか?」それはハンナ側からの真剣な問いだった。彼女はほかに何をすべきだったのか、何ができたのか、わからなかった。 **** 「20歳ぐらい年上に恋しちゃう男の子の話」ぐらいに思って読み始めた。読んだら恋愛とは関係ないことばかりに目が入った。 ドイツの歴史、ナチスのこと、法律のこと。 ナチスを認めたという言葉は適切ではないけれど…ナチスが存在した世代と、その下の世代の間には冷たい壁のようなものがあるなんて今まで考えたことがなかった。私は「ドイツ」というひとくくりでしか歴史を捉えようとしていなかった。 戦争や混乱を経験している世代としていない世代のラブストーリー。それはすごく難しいと思った。 「その時代それが当たり前だった」、「その時代それは犯罪ではなかった」それが時が流れるにつれて、「間違いだった」ってわかるけど、それは今の価値観で裁くことができるのだろうか。なんだかパラダイムの授業を思い出した。 主人公はハンナに対して責任のようなものも感じて頑張ってた。責任感や好奇心が強いと、「それ」から離れるのって難しいんだと思う。
0投稿日: 2010.03.18
powered by ブクログ私個人として後味悪い作品はあまり好みではないので。前半は青春みたいでよかったんですけれど。ただし印象に残る作品ではあるのでこの評価で。
0投稿日: 2010.03.14
powered by ブクログ映画を見た後にすぐ読みたくなるだろうと思い、購入。 けど、なんとなく見そびれてしまい本も放置。 今日、入浴中に読む本・・・と探していたらたまたま目についたので、ちょうど春休みだし、勉強のあいだにゆっくり読んでいこうと思っています。
0投稿日: 2010.03.07
powered by ブクログ親世代が戦争に行った第二世代ともいうべき人々が、あの戦争をどう捉えるのか。ドイツ人である主人公の場合はナチスに対することになるわけだが、この問題は実に多くのものを内包している。 ストーリーの入口ではティーンの少年が親ほども年の離れた女性と出会い恋におちていく様子が、とてもみずみずしく、丁寧に描かれている。少年の「春の目覚め」を実際に目撃してしまったような、気恥ずかしささえ感じる。 それが。突然の別れを隔てた数年後、相手の女性に秘められていた謎が、急激に重量と濃度でかつて少年であった主人公に迫ってくる。 このギャップは深い。 舞台はドイツだが、同じ状況は日本でも設定しうる。 断定的な結論を出せる問題ではないが、自分なりに歴史を、そして色々な「人」にたいする思いを再認識するための良い機会を提供してくれる。
0投稿日: 2010.03.05
powered by ブクログナチスの戦争犯罪が大きなテーマになっていて・・・。 ただ、このことは日本だったらどうなのかな?と少し思いました。 末端部分での犯罪は、上からの命令だからと許されてしまう、どこかあいまいなままごまかされてしまうのが日本なのではと思います。ドイツはそこのところは徹底しているんじゃないかと思います。
0投稿日: 2010.02.16
powered by ブクログ衝撃的な出だしは、題名から想像もできず面食らいつつも、ドイツ文学の世界をきちんと継承してる空気感を感じた。 ドイツ人が背負った戦後を、この異色のカップルに命がけで語らせた渾身の作品ではないだろうか。
0投稿日: 2010.02.11
powered by ブクログ★ネタバレですので、注意してね。 読み終えて、しばらく経つと、作品全体の印象がどこか『わたしを離さないで』という本と共通したところがあるように感じた。カズオ・イシグロの臓器移植をテーマにした近未来小説と、第二次大戦中のドイツの戦争犯罪をとらえた『朗読者』とは、まったくスタンスが違うはずなのに、人間が実行してしまう悪と、その前に立ちすくむ弱くて、時にずるがしこく、一方で純粋な人間のあり方が、時代背景にかかわらず共通しているのかも知れない。 『朗読者』はいうまでもなく、その構成が秀逸で、読み進めるごとに新しいテーマが立ち現れてきて、次々と人の心の深淵へ連れて行かれてしまう。 まず一章は主人公で十五歳のミヒャエルと三十六歳のハンナの不思議な恋の世界の描写からスタートする。そこでは徹底的に男女の世界を描き、そして思春期の少年の世界を懐かしくも、つややかに描いている。ストッキングを履くハンナの美しさ。苦しい結末に終わってしまった当時の幸福を思い返す苦しさ(今と過去を行きつ戻りつして描く手法なので、本書後半の不幸を知らない読者にとって謎かけのようにもなる)。読み終えた今ならわかるけれど、ハンナ独特の性格描写の意味。たとえばミヒャエルとケンカをしたとき、いつも彼に詫びさせたり、誓わせたりする強引なところ。特に自転車旅行中の些細な誤解がきっかけで、ハンナが突然、細い革ベルトでミヒャエルを打ったシーンは衝撃的だ。 ここでは二人の年齢差にインパクトがあって——もちろんそこには二章以降の話の展開が続くから必然なのだけれど——だからこそミヒャエルの少年らしい視線が冴えてくる。これがただ病み上がりの少年の思春期の日常を描くだけなら、もちろん父親の描写などはすぐれているけれど、ここまで緊張感のあるストーリーテリングにはならなかったと思う。 二章は秘密を暴く物語だ。法廷での再会は、「もしかしたら、こうなるのでは」と微かに予想させていたから驚きではなかったけれど、読み進める中で「ハンナは文盲では」と私自身が気づき、「さあ、ミヒャエルはどうするのだろう?」と期待しながら先へ進むという、小説らしい興奮があった。 この著者は、とにかく繊細な心理描写が上手で、それがあらゆるページにばらまかれているような気がする。その中でも、やはりもっとも重要なのは戦争犯罪についての考察だろう。 ミヒャエルはハンナの裁判を傍聴しながら、裁判で明らかにされる残虐な行為に、被告はもちろん、裁判長も参審員(陪審員のような人々)もしだいに慣れて、ある種の麻痺状態になっていることを語る。その体験を自らも味わいながら、「加害者と被害者、死者と生存者、生き延びた人間と後から生まれてきた人々を互いに比較し、嫌な気分になった。…こんなふうに人間を比較してしまっていいのだろうか?…強いられて収容所に来た人々と自分からやって来た人々、自ら苦しんだ人々と他人に苦痛を与えた人々との区別を相対化するものではないし、そうした区別の方が重要で決定的な意味を持つものだ、と強調してきた」と語る。 この部分は文章として少しわかりにくい(もしかして翻訳の問題?)。たとえば「区別を相対化する」というのは、どっちが偉くて、どっちが愚かで悪なのかという比較を行い、第三者が断罪するという意味だろうか? 「区別が重要で決定的な意味を持つ」というのは、自分がどの立場に立っていたのかということそのものだけが、優劣とか罪のあるなしに関わらず、ただ重要だということだろうか? ただ、次に続く彼の考え方は、ドイツ同様、歴史のすねに傷を持つ日本人としては、常に投げかけられる永遠の謎だ。私たちあとから来た世代は、過去をどうすればいいのかということ。数少ない何人かが戦犯として死刑になったり、刑に服したりして、なんとなくお茶を濁し、あとの世代はただ驚愕と恥と罪の中で押し黙るのか。 本当ならあの時代の現役世代だった人たちが、なにかを明らかにして欲しいと思うのだが、まさに作品中で現役世代だったハンナは囚人たちを死の場所へ送り返すかわりに、何をしたらよかったのかと問われたとき、何をすべきだったのか、何ができたのかわからなかった——という様子で、ついには裁判官に「あなただったら何をしましたか?」と問いかけるのだ。 裁判の中で、囚人の看守として働いていたハンナたちを遠巻きに見ていた村の住民たちの描写もまた意味深い。囚人たちを本当なら救えたのではないかという非難が自分にふりかからないよう、賢く逃げ、十分に注意する。こういう状況はなにもホロコーストという究極的な場面でなくとも、戦時下の日本でもあったし、実は今も私たちの身近にしょっちゅう存在している。結局、生きていく上で何を重要視し、どう行動し、何を譲らないのか。そういう小さなことの積み重ねが、ハンナが遭遇したあの事件——空襲で燃えてしまった教会に閉じこめた女性囚人を救うことなく、鉄のドアを外から施錠し、放置し、二人の女性を残して全員を焼死させた——につながっていくのだろうか。 ハンナ一人のせいではもちろんなくて、他の女看守、逃げ去ってしまった男の上司たち、遠巻きの村人。さらに遠くから見ていくと、それこそ一億総懺悔になってしまって、何が何だかわからなくなる。 結局、この話題は戦後ずっと日本でも語られ、語られず、どこかに沈殿し、もちろん私の中にも忘れることなく残っている。もっと若い世代はどうなのだろう。ヒロシマと南京虐殺について語りながら、天安門広場の事件を思い起こし、イラクではどうなのか、一年前、イスラエルがパレスチナでやったことは何なのか、そういったことを全部忘れたような感じで、でも機会があればちらちら思い出したりしながら、毎日の暮らしに追われているかのように振る舞っていることは、各世代の中でどういう意味があるのか。だけど、それは誰にとってもそうだろうけど、ハンナのように人殺しの場面に知らない間に立っていることだけは避けたいのだ。 第三章は、ある運動に関する物語かもしれない。その運動のあり方を、主人公・ミヒャエルが法史学の専門家となった後、法律の歴史を説明しながら、こんな風に解説している。「法律の歴史には進歩があるのだと信じていた。…そんな確信が幻想に過ぎないことに気づいて以来、ぼくは法律の歴史について別のイメージを抱いている。法律はある目的に向かって発展していくが、…たどり着く先は結局またもとの振り出し地点なのだ。そして、そこに戻ったかと思うと、またあらためて出発しなくてはいけない」 新たに出発するため、あえて出発地点へ回帰することがある。ぐるぐる回っているかのような運動に意味があると同時に意味が無く、成功と同時に無駄でもある。一方通行の「進歩」でなく、輪のようになっているという発想はとてもユニークだし、この社会を理解するのに役に立つような気がする。 それを具体的に表現したのが、この小説の中では「朗読者」になるということだった。ミヒャエルは幸福な一章で「朗読者」になり、二章で殺された「朗読者」の存在を知り、三章で再び「朗読者」になった。最後の「朗読者」のおかげでハンナは文盲から脱出し、強制収容所についての書物を多量に読んで、当時の自分が置かれた状況を学び、なにか違う存在に生まれ変わったかも知れない。そこがプラスとすれば、結局、彼女は自殺してしまい、マイナスがあって、わずかに残したお金をユダヤ人識字連盟に寄付することができたという何かのプラスがあった。ひとつの救いがあるとすれば、もしかしたら生き残った女性がハンナの残した紅茶の空き缶を受け取ったということで、わずかな赦しか、あるいは理解があったのかもしれないと思わせたことだろうか。 文盲のテーマも実は深くて、もっと語りたいところだが、長文になりすぎたのでここまでに。恐らく今の私には「なにをなすべきなのか」ということに興味があるのかもしれないと、本書を読み終えて思った。
0投稿日: 2010.02.04
powered by ブクログ年下の男の子との恋愛モノと紹介されて読んだ。物語の最初の章は確かにセンセーショナルな恋愛モノだけど、次の章からはナチスの戦犯、戦争の負の遺産を背負った民族の物語であり、青年の成長記であり、そして朗読がつなぐ人間関係の物語だ。私も朗読をしてみようかという気持ちになった。ところで「朗読」と「音読」の違いはなんだろう?朗読は誰かのために感情をこめて読むこと、音読は一人でも…といった感じらしい。きっと朗読をする時間は、人として豊かな時間と言えるんだろうな。
0投稿日: 2010.01.29
powered by ブクログ本文中には収容所の悲惨な描写も少なく、「ぼく」と「ハンナ」の感情の描写も抑えられているので、読書中や読了後も激しく心に響く作品という感じではありませんでした。しかし、ここに感想を書こうとすると、「あなただったら何をしましたか?」というハンナの言葉が、戦犯という一点だけでなく、「ぼく」の行動、恋愛などたくさんの事柄に投げかけられていて、簡単には書くことが出来ない気持ちになりました・・・。
0投稿日: 2010.01.27
powered by ブクログ帯と映画の宣伝に魅かれて読んだけど、はぁ?って感じ。 読み返したら何かつかめるかもしれないけど読み返してみたいとは思わない。
0投稿日: 2010.01.27
powered by ブクログ映画「愛を読むひと」を観て、答えがほしくなって、原作を手にとる。 ドイツという国の 過去の過ちに対する感情が作品の端々に表現されていて、とても興味深かった。 ぼくがしたこと、しなかったこと、彼女がぼくにしたこと。いつも少しずつ違う、僕が紡ぐ物語。 淡々と、しかし丁寧に、過去を追っていく文章に誠実さを感じた。答えはなくとも、読んでよかった。
0投稿日: 2010.01.24
powered by ブクログ『朗読者』を読むきっかけになったのは、映画『愛を読む人』が話題になっていたからです。でも実際読んでみたら、なかなか難しい話でした。それに、自分が創造していた内容とは全然違うのには驚きました。恋愛の話なのですが、なかなかドロドロしていて、でもマイケルの恋愛している気持ちはすごく新鮮な感じがしました。すごく二面性のある話だったと思います。映画も見てみたいと思います。
0投稿日: 2010.01.20
powered by ブクログしっかりとした「ドイツの小説」を読んだ、という気がします。 ひとりの男が過去から現在へ流れてきた自分の「跡」を見つめるときに、ある地点で交差した別の軌道が見出されます。必然的に歴史の大きくて速い流れに流されて、一致することのなかった他人の軌道をたどる。それは小説のひとつの有効な方法です。 ひとつの大きな歴史の激流が途絶えたように見えたときに、実はその傍流が自分たちの足元を暗渠としてひたひたと侵し続けていることを自覚させられる瞬間の描写。は とせざるを得ないようなその瞬間において、意識は自らの過去を、まるで現在に在るもののように錯覚させ、主人公の意識を混乱させます。 主人公の男は結局救われもせず、そして救われたいと願うような地点もとうに過ぎさり、そして昔から定められた通りに、自らの「跡」は見えなくなっていきます。
0投稿日: 2010.01.17
powered by ブクログこれは去年映画化されたの見たときは、正直はずれだと思った。でもまあ、もっとたくさん問題になるべきことが原作に隠れてた。シュリンクのこの文体はスマートで好みだし。 ドイツのナチスの歴史についても多く言及されてて、ドイツ文学に慣れてない方にもおすすめかな。
0投稿日: 2010.01.13
powered by ブクログ愛を読む人(映画)の原作。 映画と本とどちらを先に....は好みですが、 この本と映画は、後になったほうがたくさん涙が出ると思います。
0投稿日: 2010.01.12
powered by ブクログ15歳のぼくは、母親といってもおかしくないほど年上の女性と恋に落ちた。ハンナは、なぜかいつも本を朗読してほしいと求める。人知れず逢瀬を重ねるものの、ある日突然ハンナは失踪してしまう。彼女の隠していた秘密とは何か──二人の愛に、終わったはずの戦争が影を落としていた。 最初にこれを読んだときはまったく内容に感動できなかったけれど、改めて読み直してみると、物語に隠された悲しみがひしひしと伝わってきて、呼んでいるうちに切なくなった。 衝撃のラストシーンでは、物語を一貫しているテーマでもある「戦争」について深く考えさせられた。 文字を読めることの意味、書けることの素晴らしさが、ハンナという女性を通して描かれている。
0投稿日: 2010.01.11
powered by ブクログ本屋さんにいくと、 あまりにも話題で、話題なら読まないぞ。と思っていたのだけれど たまたま読んだ書評が気になったので読んでみた。 ハンナが裁判で守り通したものは興味深い。 けれど、そうであるがゆえにテーマがゆらいでしまうきがする。 大切なことがたくさん込められた小説なのに、 もったいない。 好みの問題かもしれないけれど。
0投稿日: 2010.01.08
powered by ブクログ自身が無知すぎるので感想という程のものが書けません。 この本で触れている色々な事柄を最低限度の知識も持たず安易に評価するのは…。 読んで落ち込みました…
0投稿日: 2010.01.01
powered by ブクログ日本の職業軍人と戦争責任という問題にも置き換えることができ、いろいろと考えさせられる。 戦争とは平穏であったかもしれない人生を狂わせるものである、戦争による平和などはない、ということだけは言えるのではないだろうか。
0投稿日: 2009.12.15
powered by ブクログシンプルなストーリーの中にはミヒャエルの精神的成長やハンナの葛藤が見え隠れしています。戦争に視点を当てたりしてますが、本質は彼ら自身がどう付き合い、どう愛を表現したかです。
0投稿日: 2009.12.07
powered by ブクログ大好きな一冊です。 声とか記憶とか。 形のないものだけが二人の間の愛。 ハンナの孤独は周りの世界から隔絶されたものでした。 すべては誰のせいだったのでしょう。 戦争?その首謀者?関わった人全て? 様々なところに戦争の傷跡は残っている。 その中のたった一つにすぎない悲しい愛のお話です。
0投稿日: 2009.11.27
powered by ブクログそれは朗読のせいだった。 冷たい目と細く結んだ唇でぼくを愛するハンナ。 無言でぼくの朗読に聞き入り、しまいに手で壁を叩くハンナ。 ぼくに話しかけ、顔を醜くゆがめるハンナ。 ぼくは彼女を思い出そうとする。ぼくは彼女の顔を再構成しなければいけない。 その顔をきれいだと思ったことは覚えている。 でも、その美しさは記憶の彼方にあるのだ。
0投稿日: 2009.11.26
powered by ブクログ情景の描写が綺麗で、映画は観ていないけれど 観ているような気分になった。 けれども、展開がドイツの暗い歴史という難しい内容に。 重かったー。
0投稿日: 2009.11.24
powered by ブクログ15歳の主人公が36歳の女性と恋に落ちたが、彼女は突然姿を消す。そして時間を経て再会するのだが…。 なんだかんだと面白かった。ネタはばれてるんだよね。女性が主人公に朗読させたあたりで、あああれかと、思ってしまうし、戦争の蔭が云々ってあたりで、ああなのね、って見えてしまう。それは作品のせいじゃなく、他の小説や映画で同じネタなのがあったからなんだけど、そのすでに使われてるネタだとわかっててもひきつける力がある。で、それは始終変わらない作者の冷静な視線なんだと思う。 でも、そんなに泣ける本じゃないよ(帯に「泣ける本」ってあったから)
0投稿日: 2009.11.22
powered by ブクログ静かで哀しい物語。 ドイツの歴史とも絡んでいるが、それを真っ向から 書いているのではなく、ひと組の男女の愛の話だ。 結末をしって泣くと帯に書いてあったので、どんな 結末になるのかを考えながら読んでいたのだが、 予想できなかった。 とにかく、哀しい話だった。 でも、救いのない哀しさとも違う。 二人だけが知っている愛の物語という感じ。
0投稿日: 2009.11.16
powered by ブクログ10月26日読了。映画「愛を読むひと」の原作本。少年が愛した年上の女性ハンナ。些細なことで別れた二人は意外な場所で再会し、それから少年は彼女を理解する努力を続ける・・・。「意外な場所」ってのはまあ戦争犯罪の法廷なんだが、ナチスの記憶というものがドイツ人にとって今も地続きのものなのだ、ということを感じさせる小説だ。どこまでが罪なのか、犯した罪はどう償えばよいのか、個人の尊厳/プライドとは何か?などということについて、声高にメッセージを主張するわけではないが、主人公の少年による、思春期ならではのためらいや誠実さ、世界を理解しようとする努力ゆえになんとも考えさせられる。
0投稿日: 2009.10.29
powered by ブクログドイツの弁護士さんが書いた小説。「愛を読む人」というタイトルで、ケイト・ウィンスレット主演で映画化もされています。 面白かった。翻訳モノって硬くて読みにくいイメージだったけど、これはスラスラ読めた。 第二次世界大戦時のホロコーストの、BC級戦犯に対する裁判…とかそんなド重いテーマの作品だけれど、悲惨さばかりが強調されるわけではなく、その事実をいったいどのように把握するべきか、みたいな視点で結構客観的にクールに捉えている。 一切言い訳をしないのがシュミッツさんなりの正義だったのか。潔いとは思うけど、どうなんだろう。15歳のミヒャエルにできることは少ないけど、大学生になって再会したミヒャエルには、もっとできることがあったんじゃないのか? と思ってしまう。
0投稿日: 2009.10.28
powered by ブクログ面白かった。 15歳の少年が親子ほども年齢の違う女性と恋に落ちてしまうお話。 あまり恋愛経験のない青年が、好きな女性のちょっと理不尽な行動に対して右往左往するさまや、なんとか彼女の気を惹こうとするが無残な結果に終わってしまうところなんかは、なんとなく昔の自分を重ね合わせたりしてしまっていた(こういう経験って、世の男性なら結構あるのでは?)。そのちょっと「痛い」感じが、なんとも切なかった。 著者であるシュリンク氏がもともと法学部の教授であるからか、文章はどちらかと言えば硬い感じであるが、読みにくいという程ではない。 この作品は、その最後まで読んで初めて、それまで不可解にもみえた彼女の言動の意味がわかるようになっている。 もう一回読みなおしてみようかと思わせてくれるような作品であった。(本自体も薄く、250頁程なので、さらっと読めると思う。)
0投稿日: 2009.10.25
powered by ブクログ2008.10(大学3年) いつかの夏,父に買ってもらった 小説って最初はたいてい退屈なもの。この本もそうで一度挫折した。 でも,もう一度読むとある地点を過ぎるとぐんぐん引き込まれた。 ずっと興味のあったホロコーストの話。 後世の人間がその悲惨な歴史をどう受け止めていくのかをテーマにした本。 自分が正しいということを証明するために他者に罪や責任を転嫁する。それで自己を保つ。葛藤や逃避 日本とは戦争史観が全く違うように感じた。 国民の国への帰属意識が低いからなのか。 ちょっと難しい・理解できなかった部分もいくつか また読んでみよう。
0投稿日: 2009.10.19
powered by ブクログ悪くは無いけど、それほど売れた理由は分からん。ドイツの人にとってナチスというのは言わずもがな、深く避けられないテーマであり、日本人の自分には知識が少なすぎたのかも知れない。それをテーマにした物の中では読みやすいので、取っつきやすいかも知れない。個人的には少し物足りなく感じた。
0投稿日: 2009.10.18
powered by ブクログ映画「愛を読む人」の原作です。映画の評判が高かったのは知っていたのですが、(ケイト・ウィンスレッドがアカデミー賞の主演女優賞をもらったしね)予告の裁判シーンを見て、あ、彼女が何か事情があって過酷な判決を受けるんだ…と。私は怖がりなので、それはちょっと辛すぎるかも、と見ず仕舞いでしたので、せめて原作だけでもと手に取ったという次第です。(やっぱり気になっていたんですよね。)で、読めてよかったです。若い男の子と禁断の恋の物語に、戦後のナチスドイツの自国民による糾弾が絡まり、とても立体的なお話になっていました。小説は終始、かつての少年の目線から描かれていて、年上の女性とのセックスに有頂天になり、その後彼女の失踪による大きな喪失感、そして、裁判での偶然の出会いと驚き、彼女の秘密を知ってしまってからも彼の思いと行動…。どのテーマをとっても大きな物語を含んでいて、読み応えのある一作になっていました。少年の家族との関係や、光の入れ方などを取り上げ、映画のほうがよりよかった、という感想も多くありましたから、きっと映画も素晴らしい出来だったんでしょう。彼女の秘密には巧みに伏線を入れてあって、私はそれを知っていて読み進んだのですが、それもまたよし、でした。たぶん、テーマ的にはこの秘密が一番だったんでしょうが、それ以上にずしんと来たのが、戦争に関わっていた世代とその次の世代との相克です。日本では、戦後すぐ、一億総懺悔、などと言い出して、日本人みんなが悪かった、ということになってしまい、戦勝国による東京裁判は別として、軍部の上層部はもちろん、悪名高い特高警察だった人たちも、なんかうやむやに市井にまぎれてしまいましたが、ドイツでは、自国民が許さなかったんですね。実際にナチスの党員だった人はもちろん、その活動に異議を申し立てず静観していた親たちをも、その子どもたちは許していない、という…。それは勿論意味のあることなのですが、その裁判が、実際にホロコーストに関わった、いわゆるしたっばの官吏たちに集中したことで数々の悲劇が起こったんですね。ケイトが演じたハンナが、裁判で、「あなたならどうしましたか?」と裁判長に質問するシーンは悲しかった。確かに当時の彼女の仕事だったのだから、任務を遂行するのは当然、という思いがあったのだろう、と想像がつきますし、裁判長の困惑もよくわかりました。日本の「私は貝になりたい」は無実の罪で戦犯として裁かれたという庶民の悲劇のはずですが、それを一歩進めて、無実でないとしたら、実際に捕虜を殺していたとして、それは彼の罪なのか、うん、確かに罪なんだけど…ということに考えが行ったりもしました。ホロコーストはもちろん許されるべきではない。でもね・・・という作者の問題提起を受け止めることができたことがこの作品を読んだ一番の収穫のような気がします。
0投稿日: 2009.10.09
powered by ブクログ海外の作品はとっつき辛くて普段あんまり読まないけど、これは良かった。 ハンナの秘密は衝撃でした。最後切ない。
0投稿日: 2009.10.03
powered by ブクログ「愛をよむひと」(ってタイトルあってるかな?)の原作だ!わおー!と思って読んでみました。 15歳の男の子と30過ぎの女の人がちょっと人に言えない関係になって、情事のあとには本を読む みたいな、偏ったというかそんな前知識しか持ってなかったというかただそういうすきゃんだらすな話なのかと思ってたら 罪とは何かみたいな。愛とか哲学とか罪とか罰とか、ナチスとかドイツとかそんな話でした。 むずかしー!! 年の差恋愛とか年の差カップルがけっこう昔から好きなんだけど、15歳と36歳かーしかも男の子が年下・・!ゴクリ ロリコン文化は光源氏とか昔っからあるけど、当然のように女の子が下なわけで、男の人はおじさんになってもおじさんにはおじさんなりの魅力があるけど(おじいさんになってもカッコイイ人もまれにいるし) わたしは女だけどおばさんになったおばさんというものは、年増というか熟女というか、まあいわゆるおばさんに魅力ってあるのかなあなんて思ってしまいます。 でもなんというか男尊女卑じゃないけど、男の人でかっこいいひとは年をとってももてるけど、女の人はいくらきれいでも年をとるともてないような気がする・・ってそんなことないのかなー勝手にそう思ってるだけかな。きれいなひとはいつまでももてもてかな 年をとれば年をとったなりの魅力とか、年の功というか含蓄というかなんかいいものもたくさん身につくひとは身につくんだろうなー 年をとるのもやなことばっかりじゃないんだろうな。でもわたしには年取るのは恐怖とまではいかないけどやっぱり嫌だなあ わたしは赤ちゃんとか幼児とかこどもが好きで、うつくしいなあと思うのですが 年をとってもそういう外見的なうつくしさに負けない内面的なうつくしさというものと、ひとに不快感を与えないくらいの清潔感というかうつくしさを保ったおばさんになりたいなー おじさんもおばさんも、おじいさんもおばあさんも、きたないひとを見るとぞっとします。髪の長いひとも最近苦手です。遠くにいる分にはいいけど、人ごみとか困る・・ って何かいてるかわかんなくなってきた 最近年をとるのってどんどん汚れてくような気がして気がめいります。人生賛歌というか、生きる喜びというか年をとることのしあわせみたいな、そういう本とか映画とか見よう。かっこいいおじいちゃんおばあちゃんが活躍する映画とかないかな。
0投稿日: 2009.10.01
powered by ブクログ15歳のミヒャエル・ベルクはハンナと知り合い、21も年上だが一人暮らしで官能的なハンナとひそかに愛人関係になる。 市電の車掌をしているハンナは、なぜか本を読んでくれるように望み、会うたびに朗読することになる。 理由のわからない緊張した様子を見せた数日後、一言も告げずに突然姿を消す。 大学生になったミヒャエルがゼミの授業で裁判の傍聴に行ったところ、被告席に彼女の姿があった。 ナチスの親衛隊に入り、看守をしていたというのだ… 悩みながら傍聴に通い、数年後、刑務所にいるハンナに朗読したテープを送ることにする。 会いには行かなかったのだが… 忘れられない女性への複雑な思い。 話し下手なハンナの孤独と苦闘。朗読の意味が切ない。 重い内容ですが、実感をこめて描ききっていて、その書きっぷりに勇気を貰える気がします。 作者は1944年生まれ。1995年に発表された本書は世界的に大ベストセラーに。
0投稿日: 2009.09.26
powered by ブクログ外国作品は苦手なのですが、この作品は周りの評価が高いので読んでみました。 案の定、読みづらかった。 親子ほどに年が離れた少年と女性の恋愛を軸に、戦後裁判などの時代背景を絡めながら話は進みます。 1章で情熱的な恋愛が描かれますが、2章で皮肉な再会を果たした時の主人公の冷めた感じが理解できない。 その後、真摯に向き合い、朗読を続ける主人公に対し、ハンナが自ら命を絶ってしまう最後も納得がいかない。 周りの評価ほどには、思い入れを感じることはなかった。 映画「愛を読む人」の原作。 映画を見た後に再読すれば、少しは評価が変わるかも・・・?
0投稿日: 2009.09.23
powered by ブクログ悲しいのか、切ないのか、 良かったのか、不幸なのか。 抱いた感想をどんな言葉で表現したらいいのか、 適切な言葉がわからない。 一気に読める小説ではないけど、 味わい深い小説。 気になった一節。 「その努力が遅すぎたことや、彼女の人生が失われてしまったことを思って悲しくもあった。正しいタイミングを逸してしまい、あまりにも長いあいだ拒んだり、拒まれたりしていたら、最終的に力を注いだり、喜びを持って取り組んだりしても、もう遅すぎるのだ。それとも「遅すぎる」ということはなくて、単に「遅い」というだけであり、遅くてもやらないよりはましということなのか?」 この1節だけは、いつまでも取れない簿記1級の資格と絡めて読んでいた。
1投稿日: 2009.09.22
powered by ブクログ心に響く話が読みたくて、「泣ける!」て書いてあった帯に惹かれて購入したんですが、、 まぁ、どう響くのかは人次第ということで。 私にはあまりなじめないお話でした。
0投稿日: 2009.08.21
powered by ブクログ2001年メキシコ、日本人向けペンションのホールで夜が更けるのを忘れて読んだ。 少年と少年の母ほど年の離れた女が出会い、恋に落ちていく。 女は少年に小説を朗読させる。その読み手と聞き手の静かな時間。 2人は自転車で旅行にでかけ、直後に女が姿を消す。 2人は数年後めぐり合う。 女がなぜ姿を消したか、その理由がわかる。そしてなぜ少年の朗読を好んだのかということも
0投稿日: 2009.08.18
powered by ブクログかなり予想外の話でした。 一章と二章以降があまりにも違う内容で、ビックリです。 一章の少年のノスタルジックで、どこか哲学的で、でも欲深い感じが、15歳くらいの男の子をリアルに描いていてのめり込みました。母親ほど年の離れた女の人との情事の描き方も、その女性自身も非常に興味をそそられるものです。 二章以降は本作のテーマがはっきり表れてくるのですが、一章で情事を熱烈に描いたことで、主人公の心情の揺れが読者に効果的に伝わってきたと思います。非常に重いテーマで、答えはそれぞれの胸の中にのみ存在する、白黒はっきりとはわからないものです。 ドイツ人ならではの話なので、ドイツ関係を学んでいたなら卒論とかのテーマにしたいなあと思わず考えた本でした。
1投稿日: 2009.08.17
powered by ブクログ映画「愛を読むひと」を観にいったら、原作を読み返したくなった。読み終わって、映画はかなり原作に忠実に作ったんだと感じた。映画オリジナルのシーンもあったけれど、それは原作を補完している程度で、より判りやすくするためだけに追加したんだと思う。 ケイト・ウィンスレットのハンナは、私が思い描いていたハンナよりはきれいだったけれど、少年が恋するくらいだから、これくらいきれいでないとね。本は大人になった主人公が当時の自分を分析する所とかが、たまに読みづらかったけど、ドイツ文学ってこんな感じなのかな?とにかく、原作も映画もラストは悲しくて辛いのでした。
0投稿日: 2009.08.04
powered by ブクログ15歳の少年が初めて恋した相手は母親のような年齢の女性。彼女には秘密がありました。その秘密が明かされるのは少年が大人になってから、法廷での思いがけない再会の時でした。ナチス時代を経たドイツという国の特異性。戦争による負の遺産とあまりに悲しい結末に胸がしめつけられます。
0投稿日: 2009.07.30
powered by ブクログ(ネタばれあり) 第二次世界大戦後のドイツが舞台の恋愛小説。 となるとやっぱりナチス関連の話が出ないわけがありません。 このお話もやっぱり戦争の被害者(戦時中は加害者か?)が辿る 悲しい運命を少年と熟女!?の恋として描いています。 私は恋愛小説は結構感情移入してしまうたちなのですが、この本 は何だかすごく遠い位置から眺めてしまいました。 主人公が少年であること、その少年が恋するのが30代の女性であること、舞台がドイツであること、戦争物であることなど私の経験からは およそ想像できない状況ばかりだったからなのでしょうか。 ただ共感できたのは、主人公が恋する女性が自分が文盲(これって 差別用語なんですね)であることを隠すために実刑を受けるシーン。 それ以降の彼女の文字を覚えていく姿と最終的に彼女が選んだ死という 選択までの思いは私にとってはありえない状況であるにも関わらず 何だかすごく納得してしまいました。 彼女には主人公の少年の住んでいる世界はあまりにも綺麗でまぶしすぎて、実刑を終えて文字を習得しても到底辿りつけない世界だと感じてしまったんだ、と強く感じました。 もう一度読んだらもっとふか〜く味わえるといいなと思う一冊でした。
0投稿日: 2009.07.29
powered by ブクログ年上の女性に惹かれる少年の物語として始まるのですが、当初から伏線が張り巡らされています。 最後、ヒロインはなぜそうせずにいられなかったのかな…… と思います。 自分のしてきたことと、尽くしてくれる恋人との思いを比べると、「自分には幸せになる資格はない」って思っちゃったのかな。 罪をつぐなって、出獄して幸せな余生を送ってもよかっただろうに。自らの罪を許せなかったのでしょうか。
0投稿日: 2009.07.26
powered by ブクログ私は最初映画の「愛を読むひと」を観てからこの本を読みました。 映画の中の「ある謎」について・・・ 本ではどの様に描かれているのか知りたかった為。 これはネタバレしてはいけない内容の本&映画なので 詳しくは書きませんが、色んな意味で切なく、考えさせられる内容の本です。
0投稿日: 2009.07.19
powered by ブクログ映画化されているというので、読んでみました。へんに感動的な話にしたてあげてないところが偽善的でなく、リアリティがあってよかったです。とくに主人公の「ぼく」がハンナが出所すると聞いて喜ぶよりも、気が重く負担に感じたり、再会したとき、彼女の老いた姿を見て、さらには老人臭を嗅いで、思いっきり引いて失望し、彼女に察されて傷つけてしまうあたりがそれにあたります。そして朗読したカセットテープを送り続けるという行為が実は気楽でエゴイスティックなただの自己満足で、本当はこのまま距離を保っていたくて、自分の人生のほんの隙間にしか彼女を入れていないことを主人公も自覚しています。一方ハンナの方は彼のそのカセットテープを生きる糧に懸命に学び、おそらく罪の深さも認識し、彼からの手紙を待っているのです。その2人のそれぞれの人生に占める割合の差はそのままハンナの絶望的な孤独をより一層浮かび上がらせます。21歳の年の差があるのでどうしても「ぼく」のほうは最後まで「坊や」のままで、ハンナの重すぎる罪と秘密、そのすべてを受け止めるには幼すぎ、後手、後手にまわりすべて手遅れになってから気づきます。ハンナの生涯に思いを馳せるとやるせない悲しい気持ちになる物語でした。
0投稿日: 2009.07.12
powered by ブクログ2009/07/19 少年時代に年上の女性と恋に落ちた主人公。ある日突然その女性は姿を消してしまう。 法学を勉強する大学生になった彼は、授業の一環で足を運んだ裁判で彼女の姿を目にすることとなる。 主人公の内面が中心に描かれるが戦後世代の抱える社会的なテーマがオブリガードになっている小説だと 思う。 素晴らしかった!この本との出会いは、映画化されて主役となった「ケイトウィンスレットが 好きだから」というミーハーなものだったが、読んでその深さに感動した。 人を愛するということ、そして歳をとっていく中でものごとやひとに対する自分の感情さえも変わっていくこと、 他者への想像力に限界があること・・・ 主人公の内面描写からは様々なことを感じた。 また、戦後世代の私たちは過去の戦争に対してどう対峙していくのか、その難しさも感じさせられた。 価値観が変わる、法も変わる。何が正しく、正しかったのか、それを判断することは誰にできるのか、 そういう問題を考えてみたいと思った。 ドイツ文学の特徴なのか、自然の美しさと主人公の内面の繊細な描写が印象的だった。 また映画も見てみたい。
0投稿日: 2009.07.12
powered by ブクログ大きく3編に分かれた小説。 第1編は、15歳の主人公と30代の女性との熱い恋愛が展開される。 第2編は、その30代女性ハンナが、ひょんなことから裁判にかけられる。 アウシュビッツを舞台にした歴史的背景をうかがう作品に。 第3編は、主人公が刑務所の中のハンナに朗読したテープを送り続けながら 彼なりの愛を育んでいく。 そして、衝撃の終末。 第2編が、ちょっとぐるぐるする印象があって星4つ。 本当の愛ってなんだろう?と考える作品でした。 映画はどうなるんだろう??
0投稿日: 2009.07.08
powered by ブクログ映画化されるという事で読んでみた作品です。 最初は年の差カップルの恋愛話かと思っていたのですが、想像以上に 深いです。 なぜ彼女は突然去っていたのか? その答えを知る時、多くの人は世界史をもう一度勉強しなくてはと 思うのではないでしょうか。 かつてのドイツとはどんな国であったのか?もう一度学び直したくなりました。
0投稿日: 2009.07.06
powered by ブクログ彼女はいつも本を読んでほしがりました。 彼は、いつもそれに応じました。 でも、そんな日々は長くは続きませんでした。
0投稿日: 2009.07.06
powered by ブクログ映画化のついでに追加 読了は2006年 面白いです。前半はとろけるような二人だけの世界、後半は二人を分かつ冷酷な法廷の世界。 戦争が絡んでくるとは読み進めるまで想像付かなかったけど全体的に主人公の少年を 通して描かれるのでじつに読みやすく分かりやすいです。 愛した人が戦犯だったらとか考えたくないな・・・・。けど悲しい話とひとくくりには出来ない作品ですね。
0投稿日: 2009.06.25
powered by ブクログ恥ずかしさがあり、恋を諦めた。 悲しい時代であり、人生を諦めた。 不運な人生、そして切ない想い… お互いが全てを無くしてから再会する。 その切なさや哀しさが逆に羨ましい。 映画化されるって聞いて、なんだか嫌だなって思った。 美しいお話は本の中での方が美しく、そして悲しいのに。
0投稿日: 2009.06.18
powered by ブクログ読んでよかった…!!って、こんなに思ったの久しぶりかも。 自分の殻に閉じこもったり、何か答えが見つかったかのようにはしゃいだり。。若いって感じるってことなのかな…なんて(笑) どんなに大事な人ができても、自分の幸せとどう関係するか、比較するかということについて考えさせられたけど…今、見いだすことできないなぁ。 …そして、もう一度読んでみよう。って、思わせられる本でした。
0投稿日: 2009.06.16
powered by ブクログこの本は、私が中学生のときにいったん話題になった本である。 そのときも、何となく、この表紙のアルカイックな感じに惹かれ、 また、海外文学の恋愛小説に単純に興味があって、 いったんは挑戦したのだが、挫折した。 最近になって、ケイト・ウィンスレットがこの作品の映画化作品において、 アカデミー賞を受賞したことから、 「そういえば、あの時挫折したけど、今なら理解できるかもしれない」 と感じ、手にとって読んだ。 私の推測通り、すでに24歳になった私は、まだ十分な大人とはいえないまでも、 この作品を理解するに十分な精神性を持ち合わせていた。 まず、それに感謝したい。 この作品は、確かに恋愛小説の類に属するものであることは確かだが、 主人公であるミヒャエルの目線を通じて、 作者であるベルンハルト・シュリンクによる、 人間に対する深い洞察がうかがえる。 私は、ベルンハルト・シュリンクが人間に対して持っていると推測される、 弱さ、愚かさに、深く共鳴する。 弱さ、愚かさというのは別に良い悪いで明確に区別されるものではなく、 ただ、「人間は弱く愚かな生き物である」という命題が、 おそらくベルンハルト・シュリンクの内側に確率された哲学として 存在しているように思える。 人間は人間であるがゆえに、弱さ愚かさを抱えながら生きていく。 この命題は、私は、絶対的に正しいものであると信じている。 もし誰かが「自分は弱くないし、愚かな人間ではない」と言っていたとしたら、 その人は、やはり「弱く、愚かな人間である」と言うほかない。 なぜ、こう言い切れるのか? それは、今まで生きてきた私の経験からくる知見、感覚であり、 言葉で説明する類のものではない、と思う。 ただ、こう考える人は世の中には結構多くいるはずだ。 そして、人間は弱く、愚かだから、「愛」を求める。 しかし、常に世の中には、特に他人間においては絶対的な愛は存在しえない。 これが「絶対」だと確信したところから、崩壊が始まる。 もし、その「絶対的な愛」が存在する、 現に私たちカップルはそういった絶対的な愛によって結ばれている、 と主張する者がいればそれは、何千万分かの1の確率でレアなケースである。 かもしくは、 単なる思い込みだ。 なんだか(とっても私らしい)ニヒリズムが漂う文章にしてしまったが、 でも、この小説に感動したことは確かだ。 小説として、ハンナが最後に自殺したことは、私にとってはとても自然なことで、 腑に落ちるラストだった。 他人からしたら、どうでもいいこと、そんなことにしがみつく、 言いかえれば「プライドを守る」ということは、 ひとつの生き方だ。 それに、他人は何も文句をいうことは出来ないし、言うべきではない。
0投稿日: 2009.06.07
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
読始:2009,5,15 読了:2009,5,16 久々にミステリ以外読んだかも 全部で三部構成 第一章は恋愛の話 15歳の少年が母親といってもおかしくないくらいの年齢の女性とこいに落ちる ただ、この話はそこがメインではない その後の二章三章がメイン 恋に落ちた相手の女性はなぜか少年に朗読をせまる… ナチスをこういった視点で描くのか 色々考えさせられる作品 『あなたの恋人が戦争犯罪者だったら?』 投げかけられる問… 推理ものから離れ考える作品を読むのもたまには悪くないw
0投稿日: 2009.06.04
powered by ブクログまず、これを原作の言葉で読めないことが悔しい。 日本語訳されるにあたって、いくつもの丁寧に綴られた表現が消えてしまっているんだろう,,,そう思うと残念。 ただ、その消えてしまった表現を覆すほどの感動があった。 「ナチ裁判」というタブーに挑みながらも、1つの一途な愛を描ける作者がすごい。 直視したくないエンディングも美しかった。 15歳の若々しさ、そしてじょじょに衰えていく感受性,,,それを全て受け入れてでも貫ける愛はすばらしい!
0投稿日: 2009.06.02
powered by ブクログ15歳のミヒャエルは、学校帰りに体調を悪くし 一人の女性に面倒を見てもらい家まで送って貰ったお礼に 訪ねて、そして恋に落ちる。 市電の車掌をしてる36歳だというハンナ。 家族への執着に悩みながらも、母親であってもおかしくない 年齢差を越え、ハンナと逢瀬を重ねる。 ミヒャエルが何を勉強しているのか知りたくて 『オデュッセイア』『カティリナヘの演説』『エミーリア・ガロッティ』 『たくらみと恋』『戦争と平和』etc・・・ 「何か朗読してよ、坊や!」とハンナは要求する 病み上がりだった、ミヒャエルは、自信が湧き 自立への一歩が出てくるのである。 だが、ハンナは突然彼の前から姿を消してしまう。 6年後、法学を専攻し大学生となったミヒャエルは、 ナチス時代に関連する裁判を研究してる教授がその事件を取り上げた その強制収容所ゼミに登録し、 裁判所でハンナと運命的とも思える再会を果たす。 過去の行為に遡り、戦争犯罪を裁くというもの。 ミヒャエルたちの親の世代も断罪もし、 強制収容所のあった場所へも足を 運び、思いを巡らしハンナの犯罪を理解しようとする。 無期懲役の判決が下る。 18年にわたり、朗読したテープを刑務所に送り続け いつまでも彼女への想いが消えないミヒャエル 思ってもいなかったハンナの辛い苦しい過去 そこに、ある秘密が・・・・・。 かつて愛した人が、戦争犯罪者だったら? 危うい恋というか衝撃的な部分もあろうが 同様の罪で被告となった他の者達より重い罪を科せられ刑に服する アンナにとって、学ぶということは、生きる希望の光であった 忠実に職務を全うしただけで、 無知ゆえに犯した罪の残酷さを知ったことで。 たとえどんな事をしても購えないと 問いかけている気がする。どうしようもなく切ない。 単なるラブストーリーで終わらないところに、この物語の重さがある。
0投稿日: 2009.05.31
