
総合評価
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powered by ブクログしっかりと読み終えました。 長い小説でした。 山陰の旧家名家の赤朽葉家の万葉、毛毱、瞳子の三代に渡る物語りです。 特に、山の民の末裔で置き忘れられた子である万葉の話が貴重で面白かったです。千里眼というのが、とても興味深かったです。その子供の泪や鞄なども変わったキャラクターですし、いじめっ子でのち友人になった黒菱みどりもとても個性的に描かれてました。 長女の毛毱は、不良で暴走族の製鉄天使アイアンエンジェルの頭として中国地方制覇をする美女でブサメン好みで、その青春が描かれました。その後売れっ子漫画家になるのです。異母妹の百夜との対比もよく書かれていました。 次に、その子供の瞳子の話ですが、これは万葉が最後に残した謎を解くことに費やされました。 その時代時代の空気をうまく表現していて、自分の事も思い出しながら読みました。 私は、古い小説ですがパールバックの「大地」を思い出しました。 もっと書けることありますが、これくらいにします。 是非みなさんにも読んでいただきたい小説でした。
15投稿日: 2025.08.05
powered by ブクログ長い。けどテンポ感がよくサクサク読める。正直内容は覚えてないんだけど(おい)こちらも10代の時に読んで超おもしれ〜ってなった作品
0投稿日: 2025.07.17
powered by ブクログ鳥取の製鉄業を営む旧家に生きる女性三代の話 千里眼の祖母、漫画家の母、そして何者でもないわたし 目次で 第一部最後の神話の時代 第二部巨と虚の時代 第三部殺人者 とあって、第三部の最後の女性は殺人を犯してるのかと思っていたら違った 第三部では平成の世代で 自分の在り方に悩みながらも孫が祖母の最後の言葉を探っていく 女性三代を通して 高度経済成長、ハブル崩壊、平成へと移る様子 女性たちの生き様 周りの人たちとの関わり すべて描写されていて…圧巻 読者を飽きさせない 読後感半端なかった 私にはかなりおもしろかった 最初は字が少し小さいなぁ…読めるかなぁと心配だったけどサクサク読めた
41投稿日: 2025.07.11
powered by ブクログ著者の別作品のシリーズに『GOSICK』なるライトノベル作品が存在する。一九二四年、架空の西欧の小国ソヴュールを舞台とするホラーテイストのミステリである。二〇一一年には悠木碧主演でアニメ化もされた。 此の『GOSICK』シリーズに関して、著者が何処かで、歴史上、近代とは日本にとって青春の時代ではなかったか、というようなニュアンスのコメントを残していたと思う。 即ち、子供から大人へ。神秘から科学へ。換言すれば近代とは神秘の残り香を宿した最後の時代なのである。本書『赤朽葉家の伝説』もまた『GOSICK』と同様の通奏低音の下に書かれた作品であろう。 サンカ、服わぬ山の民。其の遺児たる万葉は、同時に神秘の時代の落とし子でもあった。 本書は第六十回日本推理作家協会賞受賞作とある。ならば、まあ、推理小説の類であろうと頁を繰るのだが、其処に展開されるのは神秘の落胤・赤朽葉万葉から始まる少し不思議な女三代記である。 然も質の悪い事にこれが結構面白い。途中まで本書がミステリである事を本気で失念して娯しんでしまった。 だがミステリを愛好する向きには安心されたし、本書はちゃんとミステリである。本来御法度とされる筈の神秘の要素も不可欠な仕掛けの一つ。日本推理作家協会賞受賞は伊達ではない。 然し乍ら矢張り自分としてはジャンルの枠組みで縛るのが勿体無いくらいには純粋にクオリティの高い作品であったと感じる。単に小説作品として面白いのである。 これまで読んだ桜庭一樹作品では『私の男』が個人的にはベストであったが、若しかすると首位交代も有り得る……。
2投稿日: 2025.07.04
powered by ブクログ文庫本の小さな文字にも負けずに読みました。 それほど面白くて… あとがきがまた興味深い。 この作家さんのはもっと読みたいと思いました。
40投稿日: 2025.06.24
powered by ブクログ今まで読んだことのないタイプの小説で初めはなんだろこれと思っていたが、50ページほど読んだところでこれは面白い!と思い始めて一気に読んだ。 この一冊に一つの世界が詰まっている、閉じ込められているように感じる。スノードームのような錯覚。と思っていたら3部目は一挙に外に飛び出して、しかもミステリー持ってくるか!純粋にエンタメとして大変楽しめました。 著者もこれを書いているときは楽しかっただろうなと思ったら、あとがきにそう書いてありました。
17投稿日: 2025.06.22
powered by ブクログ「その大屋敷は山の樹木や土になかば埋もれるようにして、巨人の手で押されてやわらかな山に押しこまれでもしたかのように、ちょっとかしいで、のっそりと建っていた。‥‥赤朽葉家はまことに、どこもかしこも、赤かった。それは暗い、腐りかけた紅葉の赤とでもいう色彩で、山の頂に、まさに王者の風格で堂々と、しかしちょっとかしいで、建っていた」 この文章だけで充分ワクワクする! ワクワクゾクゾクしながら物語は進む 日本の歴史の流れの中で赤朽葉家の歴史も流れる その中で生きる人々のなんとも愛くるしいこと どの登場人物も愛おしく好きになれる 女三代 やっぱり女は強し!だけれど その強さの中に必ず素敵な殿方がいたりして‥ 一言 おもしろかった! 桜庭さんの作品また読んでみたい
66投稿日: 2025.03.16
powered by ブクログ山陰の製鉄業で財を成した旧家の三代に渡る女性の年代記 以下、公式のあらすじ --------------------- 「山の民」に置き去られた赤ん坊。この子は村の若夫婦に引き取られ、のちには製鉄業で財を成した旧家赤朽葉家に望まれて輿入れし、赤朽葉家の「千里眼奥様」と呼ばれることになる。これが、わたしの祖母である赤朽葉万葉だ。――千里眼の祖母、漫画家の母、そしてニートのわたし。高度経済成長、バブル崩壊を経て平成の世に至る現代史を背景に、鳥取の旧家に生きる3代の女たち、そして彼女たちを取り巻く不思議な一族の血脈を比類ない筆致で鮮やかに描き上げた渾身の雄編。2006年を締め括る著者の新たなる代表作、桜庭一樹はここまで凄かった! --------------------- 1953年から現代より10年前くらいまでの山陰地方を舞台にした地方の名家の三代記 製鉄業で栄える旧家の赤朽葉家 冒頭は現代パートの三代目視点の回想という形 後に赤朽葉に嫁ぐ事になる万葉が、山の民に置いていかれるところから物語が始まる 千里眼万葉時代 不良毛毬時代 名探偵瞳子時代 祖母の万葉は予知の能力があったのと、戦後と高度経済成長に伴う赤朽葉家の隆盛期 母の毛鞠は激動の世の中と丙午の年に生まれた気性と合致してしまった不良の時代でもあり、赤朽葉家の衰退を少女漫画家としての稼ぎで留めた時期 物語の語り手である瞳子は過去を振り返りながら、祖母の語った言葉の真意を探す 果たして、祖母の万葉は本当に人を殺した事があるのか?殺したとしたら誰なのか 戦後、高度経済成長、所得場像計画、職人の減少に伴う近代化、それに伴う公害問題 団塊ジュニア世代の学歴社会の受験戦争と落ちこぼれの二極化、暴走族の台頭、バブル景気など 歴史としての出来事や、少し上の世代の出来事として実感はないけれども知っている空気感、そして実体験として存在する社会情勢 本としての分量もさることながら、物語としての情報量も多い 万葉は地方の昭和史そのものだし 特に、毛鞠時代の暴走族の勢力争いなんて、城平京のスパイラル外伝「鋼鉄番長」を読んだような気分だ それでいて、途中から少女漫画家に転身するあたりは漫画家の修羅場エッセイのようでもある そして、瞳子も途中までは祖母や母に比べて平凡な女性の人生かと思いきや、いきなりミステリになる しかもその謎の対象がこれまで語られてきた赤朽葉の歴史という構造に面白さを感じる 万葉が昔に見た、空飛ぶ一つ目男のイメージ その人物が誰かは判明しているが、なぜ飛んでいるのか? そんなところにヒントがあるとはねぇ…… あと、面白いなと感じたのは、みどりと万葉の関係かな 子供の頃は苛めっ子と苛められっ子だったのに みどりの兄の死をきっかけにそれまでとは違った関係性になり 晩年は落ちぶれたみどりが同居しているのが普通になるというね それにしても、赤朽葉はほぼ無関係の高等遊民が多いなぁ 現代でこんなことできる家はまずない もしかして、富裕層では未だにこんな事ができたりするのかしら?
1投稿日: 2025.01.27
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
桜庭一樹先生の代表作の一つ。 1番大好きな作家さんなのに、なぜ今まで読まなかったのだろう。 桜庭先生独特の世界観が大好きです。 ミステリーと聞いていたけれど、1部、2部は全くミステリー色がなく、あれ?と思っていたところ、3部でミステリー色が出てきました。 3部の主人公が付けられるはずだった、「自由」という名前、これは「家」というものから「自由」になる世代という意味で付けられたのではないかと思います。 万葉も毛毬も生き方は違えど、「家」に属して、「家」を守っていた女たち。 瞳子はきっと「家」に縛られず、「自由」にこの物語が終わった後も生きていくのでしょう。 そして、きっと赤朽葉家は静かに終わりを迎えるのでしょう。 最後の3行は私たちのような、これからの未来を生きて、作っていくための人に向けた言葉。 ビューティフルワールドを作って、生きていく私たちへの言葉です。
0投稿日: 2024.12.27
powered by ブクログ始め物語が頭に入ってくるまで時間がかかり何ヶ月にも渡って読んでしまったが、軌道に乗ればストーリーが面白く早く読めた。文章はくどいところがあり、同じ言い回しが何度も出て来たり時系列が分かりにくかったり、個人的には必要のない文章があったりで、それが読みにくかったかなと思う。でも最初の千里眼の伏線が本当に最後に綺麗に回収されてスッキリした。
0投稿日: 2024.12.11
powered by ブクログ2024.10.20 読了 千里眼の祖母、漫画家の母、そして何者でもない私。戦後史を背景に、鳥取の旧家に生きる三代の女たちを比類ない筆致で鮮やかに描き上げた雄編。 万葉編は少しファンタジックで世界観を掴むのが難しかったけど毛鞠編は自分が育った時代に近かったのでめちゃくちゃあるあるだらけで楽しく読めました。 最後の瞳子編は瞳子自身の人生はごくごく平凡だけどミステリーとしての面白さがありどんどん読み進められました。
0投稿日: 2024.10.20
powered by ブクログ女3代いやタツさんも入れると4代の昭和の戦後の高度成長時代から平成、21世紀に跨る赤朽葉家の歴史の物語 それぞれが不思議な力を持っており、家の存続に力を果たす 男よりも女性の方が守るという事に合っているだろう それにしてもそれぞれ不思議なエピソードでグイグイと引き込まれていく また、周りの登場人物たちも個性が強くネーミングセンスも抜群、サンカの存在や古代より受け継いできたたたら場など物語に華を添えまくっている トーコにも必ず何かしらの能力はあるはずで、鞄にもあるのかな? 丁度いいサイズの読み応えと満足のいく物語でした
0投稿日: 2024.09.29
powered by ブクログ女三代の登場人物の視点で描かれた物語で複数のテーマを包含しているが、桜庭一樹の独特の世界観も根底にあって良い意味でのアンマッチ感が面白かった
0投稿日: 2024.05.17
powered by ブクログ親子3代のお話だったので、時代の流れを感じられました。 それぞれの時代の若者の特徴をすごく的確に表現しているなと思いました。 このまま物語が続いていたら、令和の若者はどんなふうに表現されるのでしょう?
0投稿日: 2024.05.03
powered by ブクログ終戦後から平成の中頃までを、実際の出来事にも触れながら紡がれる女三代記でした。 語り部である三代目、瞳子が私と同じ頃の生まれで、誰か人伝に聞いた話のように読むことができ、社会情勢や価値観、暮らしなど移ろう時代を登場人物に想いを馳せて読んでいました。 特に一代目万葉の時代の話が、実家に伝わる古い話とどこか似ていて、お気に入りです。
0投稿日: 2024.03.24
powered by ブクログあとがきで「全体小説」という表現が使われているが、その名に負けない、色々な要素の詰まった作品。たくさんの要素の中で個人的に注目したいのは万葉の健気さと律儀さ、そして時代という名の大きく加速するエントロピー。 ただ、ミステリーではないので出版レーベルの選択は間違えだと思う。また瞳子につけようとタツが考えていた名前が「自由」というのにも違和感を禁じえず (どうせなら「転機」とか...)、また万葉の一代記 (を瞳子が語るの) でも良かったと思う。
0投稿日: 2023.12.24
powered by ブクログ話は3部作構成。鳥取の名家赤朽葉家の女三代の物語。里で拾われた山窩の子供、千里眼の万葉。未来に起きることを幻視する。大奥様のタツのひと声で赤朽葉に嫁入り。その娘でレディースから漫画家になった毛鞠。恋愛、抗争、友情、そして青春の終わり。更にその娘、まだ何者でもない瞳子。万葉、毛鞠が主役の2部目までは、これはいわゆる大河小説か?という展開。日本の経済発展、オイルショック、バブルへと。 当時の風潮を思い出しながら波乱万丈の2人の人生を愉しむ。それが面白い。自分の親の世代の万葉も、自分の世代の毛鞠も私の知ってる時代とは少し違う気もするが地域の違いか、個人の違いか。そこは小説だから御愛嬌。 そして瞳子の出てくる3部目になって思い出したかのように殺人の話が出てくる。登場人物が、その昔の殺人を告白するのだ。誰が殺されたのか?なぜ?どうやって?という謎解きに瞳子が挑む。その謎を解く伏線は前の2部、大河小説部分に隠されている。だからこんな突飛な2人の女性の人生を描いたのかと、そこで気づく。 そもそもこれは推理小説なのか?と思いながら読んで、違うけど面白いなと思い始めた頃に謎が提示されるから、そのときにはもう推理小説としての興味を失っている。謎解きはどうでも良いのだが、上手に作っている。それが良いのか悪いのかわからんが何より小説にいちばん大事なこと、お話として面白いので十分だ。
1投稿日: 2023.11.19
powered by ブクログ何度目かの再読! 桜庭一樹さんの長篇、いつも前半部の面白さがとてつもない。後半になって減速する印象は否めないが、それでも最後まで面白い。
0投稿日: 2023.10.22
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
2008年。(第5回)。7位。 GOSICK好きなのよ。 鳥取の旧家女性3名の歴史。万葉はフィリピン系の感じで山の民に捨てられ、鳥取で育った。中国山脈あたりって八咫烏も住んでいたような。旧家の大奥様タツの指名により輿入れ。世の中は鉄鋼業が盛んだった。泪、丙午の娘の毛鞠、鞄、孤独の4人を生む。毛鞠は中学生より暴走族で中国地方を配下に収める。やがて引退、そして人気漫画家に。長男の泪の死により、父の決めた男と結婚、瞳子を産む。鉄鋼業も衰退していく。この話は瞳子が語り手。 昭和の歴史と絡めた一族の歴史。
0投稿日: 2023.03.09
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
三部の最後までネタバレしてるので注意! 通勤時間にちまちま読む私には超大作すぎるけど、その分すごく面白かった。 万葉の見る神話の世界にぐっと引き込まれ、 毛鞠の突き抜ける衝動と喪失の歴史に踏み潰され、 一部・二部に対して比較的軽く、二部の喪失から癒えてきた傷口をさらっと爽やかにグリグリされる瞳子の三部。 視覚的にずっと美しい。 鉄砲薔薇と箱の渓谷や、曜司の乗るお座敷列車が浮き上がるシーンは、死にまつわることなのに美しすぎる。 桜庭一樹は生きている人間はもちろん、死んでゆく人間も美しく書き上げてくれるから信頼と愛を捧げたい。 最高。最高で最高に辛い。 泪がすごく好きだったので生まれると同時に作中での死が確定して、亡くなるまでずっとしんどかったし、 いざ死ぬと喪失感がすごくてそのあと泪の話が出てくる度に静かに本を閉じて休憩した。 最後に瞳子のことを抱きしめる三城の気持ちを考えるとつらい。 男に生まれてしまったが故に三城と結ばれる未来を選べず、自死してしまったかもしれないかつての友人(まぁおそらく恋人)の泪とそっくりに生まれた女の子の瞳子を、泣いている瞳子を抱きしめるなんて……。 優しいな三城は。 女に生まれていたら、って泪はきっと1度は思っただろうな…………。 しんどい。 そして豊寿さんも好きだったのに……そんな……ってなる。 友人の枠からはみ出ないように節度を持って万葉に接する豊寿が大好きだったので、死ぬなんて……。 この作品に出てくる男たちはみんな魅力的すぎる。 女たちももちろん魅力的なんだけど、男たちに狂わされる。 瞳子の今の自分に対する評価とか、未来への不安は共感できるところがあって最後の「ようこそ」は、瞳子を含む生まれた人間たちに対する歓迎の言葉。 瞳子とは違う種類だけど、三城もまた傷と不安を抱えて生きていくしかないのだ……。 今生きている私たちと同じように。
2投稿日: 2022.11.05
powered by ブクログ鳥取の旧家での女三代の物語。戦後日本史、家族、青春、恋愛、いろんな側面から楽しめる。 一部ごとに主人公がかわる三部構成になっていて、特に第一部の万葉の話と第二部の毛毬の話は濃い。第二部まででだいぶお腹いっぱいになった。
0投稿日: 2022.10.21
powered by ブクログamazonでも評価がとても高いので図書館で借りてみた。なんという壮大なストーリー!あとがきにもあったが第一部は歴史小説、第二部は少女漫画、第三部は青春ミステリー‥どれも時代や世相を鏡のように忠実に写し取り主人公に反映させていく作者の筆致に圧倒される。私も赤朽葉家の一員となって大きな戦艦に乗って荒波を進むような読み心地だった。未来視ができる赤朽葉万葉、レディースの総長、赤朽葉毛鞠‥どの人物も惹かれ、ミステリーを終盤に持ってくる構成も良かった。 日本推理作家協会賞受賞。
0投稿日: 2022.09.23
powered by ブクログ女三代の話。 朝ドラにもありましたね、そういうの。 毛鞠と青春時代が重なり、懐かしく読みました。 面白かったけど、結局万葉はなぜ、誰から捨てられたのか、そこが気になった。
0投稿日: 2022.09.04
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
15年ぶりの再読。著者のあとがきにも書いてあるが、主人公の1人万葉をいじめ倒していたみどりの存在感よ。 まさかこんなに長く彼女とかかわり続けることになろうとはね。 15年前はとにかく毛毬の章の「異質感」が苦手だと思いながら読んでいた記憶。今回読んでみて思うのは瞳子のよるべなさへの肯定感。『少女を埋める』を読んでからこれを読むと多分イメージが変わるのでは。
1投稿日: 2022.09.03
powered by ブクログ読み初めは、堅いタイトルに加えて時代小説っぽい感じで最後まで読めるか心配していましたが、不思議な世界観と登場人物に魅了され一気に読んでしまいました。 明るい内容ばかりではないですがどことなく朝ドラのような雰囲気がします。 どの時代にも栄枯盛衰があり、流れにのれる人と取り残される人がいる。その繰り返しで今があるんだなと思います。後半で急にミステリー感が出てきてちょっと驚きました。
0投稿日: 2022.07.30
powered by ブクログ山陰の旧家に生まれた跡取り娘の瞳子。 祖母は未来が見え、母は破天荒な生涯を送った。 時代と共に村の勢いは衰え、特に秀でた能力があるわけでもなく、未来に希望があるわけでもない。 そんな自分は、優秀な叔父が亡くなったために生まれた娘。 祖母と母の人生を辿りながら何者でもない自分を受け入れていく先に、未来がある。 祖母の話が中心だが、女三代の物語と家族の歴史がドラマチックで、読了後も物語の余韻に浸っていた。
0投稿日: 2022.04.29
powered by ブクログ戦後不死鳥のように生き返り、猛烈に成長し、そして行き詰まる現代までの日本の歴史を、ある旧家の3代の女たちを主人公に書き上げた長編。あとがきにも記されてるけど『百年の孤独』などのラテアメ文学の影響がよく見て取れるので、マジックリアリズムがどんなのか軽く知りたいって人にもおすすめ。沢山の登場人物が出てくるのに誰もが個性的で魅力を感じた。特に出目金おばさんの黒菱みどりはキャラが濃くて好き。マコンドは最後消し飛んでしまったけど、本作は私たち自身の未来に希望を持たせる締めくくりで、充実した読後感だった。
0投稿日: 2021.07.30
powered by ブクログ戦後から平成初期にかけた日本の歴史に沿ったある特殊な一家についての物語だった。学校の教科書で習ったような風習や当時の様子が描かれていて、懐かしい感じがした。またそこから十数年前の常識は今の非常識なのはいつの時代も同じだなと感じた。時の流れが早くりつつあるように思える現代では、世間の常識より自身の信念こそが最も大切なのかもしれない。
0投稿日: 2021.07.20
powered by ブクログ日本推理作家協会賞を受賞した作品。この人の本は初。 戦後まもなくの鳥取県紅緑村に、一人の赤ん坊が置き去られていた。 「山の民」の子と見られるこの子を村の若夫婦が引き取り、その子は後に製鉄業で財を成した旧家・赤朽葉家嫁入りする。 それが赤朽葉家の「千里眼奥様」こと、赤朽葉万葉だった。 時代は過ぎ去り、万葉の娘・毛毬は中国地方最大のレディースの頭から漫画家に転身する。 そして孫の瞳子は、旧家の娘として何が出来るかわからぬまま、空虚な自分を感じていた。 本来ならば“自由”と名付けられるはずだった瞳子。彼女は祖母と母の本当の物語を知る為に動き出す。。。 非常にスケールの大きな作品である。 何しろ親子3代に渡る、長い時代を掛けた物語なのだから当然か。 第一部の「万葉編」は、昔の風景と神話と戦後の高度成長など、多くの要素を含みながらも “山の子”である万葉があれよあれよと赤朽葉家に嫁入りし、数多くの子供を産んで行く、 情緒溢れる「成長譚」のような物語だった。 個人的には一番面白いと感じた。 第二部「毛毬編」になると、その時代を知っているせいもあってか 妙な古臭さ(ダサさ?)を感じ、毛毬や友人達の言葉使いに青臭さを感じてしまった。 ある意味狙い通りなのかもしれない。とりあえず突拍子もない物語である。 第三部「瞳子編」は、正直面白味を感じる事が出来なかった。 何もない瞳子。彼氏と上手くいったりいかなかったり、 突然浮かび上がる“万葉の殺人疑惑”の謎を探ったり。 そしてその謎の真相も、それ程驚くような内容でもなかったりする。 語り手としての瞳子は必要だったのだろうが、彼女自身の物語は何一つなかった。 そもそも、個人的にこういった「時代を生きた女性達」みたいなお話はそこまで好きではない。 赤朽葉家は女性がいなければどうしようもないのか?という疑問も湧く。 あまりにもあっさりと人々が死んでいくのも、味気ないものである。 それでも、読み応えはあったし話の展開の仕方は読み易かった。 直木賞を取った『私の男』も読んでみようかと思う。
0投稿日: 2021.03.14
powered by ブクログ3部に分かれてるんだけど、1部は途方もなくて読み終わらないかと思った………ミステリーとして読むと物足りなさはあるけれど、女3代の物語としては日本のその時々の文化や世相もよく現れていて読み応えはありました。しかし、3部の現代編が1番読みやすかったな。
2投稿日: 2021.03.02
powered by ブクログ“辺境の人”に置き忘れられた幼子。この子は村の若夫婦に引き取られ、長じて製鉄業で財を成した旧家赤朽葉家に望まれ輿入れし、赤朽葉家の“千里眼奥様”と呼ばれることになる。これが、わたしの祖母である赤朽葉万葉だ。―千里眼の祖母、漫画家の母、そして何者でもないわたし。旧家に生きる三代の女たち、そして彼女たちを取り巻く一族の姿を鮮やかに描き上げた稀代の雄編。第60回日本推理作家協会賞受賞。
1投稿日: 2021.01.31
powered by ブクログ三世代に渡る一族の物語。なかなかの名作。鳥取の旧家の土着的な雰囲気あり、ミステリアスな雰囲気あり、と思えばコメディタッチな部分もあり、楽しめる部分は多い。三世代それぞれが生きた時代の日本社会の描写がいささか表面的な気はするが、世代によって移り変わっていく時代を書くということが主眼であり、それ以外については瑣末なことであろう。三世代目の娘が同い年というのも共感を覚えた。
0投稿日: 2021.01.03
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
タイトルからも堅苦しそーだなあでも読みたいなあ読まなきゃなあを彷徨ってたこの超大作をようやく読めました。読んで良かった。堅苦しさとはなんのことやったのか。物語への没入のしやさすさ。戦後からの時代背景を詳細に踏まえながら、赤朽葉家の物語は語られます。時代に沿ったり沿わなかったり、旧家の有り様も表現豊かでとても面白かった。 なにより、文体や語り草にとても笑ってしまう。 『寝取りの百夜』は腹抱えて笑いました。死に様も全く裏切ることなく、とても良いキャラでした。 万葉、毛毱、瞳子の3世代がもちろん色濃く強く素晴らしい主人公でしたが、周りを取り巻く女性たちのなんと華やかで可笑しなことか。黒菱みどりがとても印象的です。この女性が出てくるたびに、万葉の少女時代が思い返され、飛行人間の謎をそのたびに思い出してたのですが、これはまた最後に解決されるお話。切なくも、強かった男のお話。 毛毱とチョーコの関係性はとても儚く、寂しいものでした。チョーコという人間の考え方にはとても共感するものがあり、この陰影な考え方は毛毱が大きく強い赤い光であることを再確認していた。 だからこそ、毛毱の最後には驚いた。チョーコが迎えに来たのか、毛毱がチョーコを迎えにいったのか。死してなお、胸を打たれた。 桜庭一樹さんの全体小説、とても楽しませていただきました。流石の一言に、尽きます。
1投稿日: 2020.10.14
powered by ブクログ3章で構成された物語ですが、1,2章は独特の世界観で引き込まれます。ところがミステリー小説と思っていたのにその要素が無い?…。3章目で漸くその展開がありました。昭和から平成に生きる女性の愛憎を時に恐ろしく、時にコミカルに描いた作品です。とても面白く印象深い作品でした。
1投稿日: 2020.09.12
powered by ブクログあまり好きな作風ではなかったが、読破して良かったと思える良作。 祖母、母、娘三代にわたる、旧家の物語を、当時の社会情勢を交えて描いている。 創作ながら、地に足がついており、登場人物たちの名前に違和感を残すのみだった。 その時代の空気感や、社会の変遷から派生する登場人物たちの悩みなど、大きな視点と小さな視点のバランスがうまく取れていた。
0投稿日: 2020.08.31
powered by ブクログ最初から特殊な能力を持った女の子が、空を飛ぶ男と遭遇するところから物語が始める。時代は大正の頃か昭和の初め頃か、日本海に面した田舎での物語。不思議な雰囲気で物語が進む。特別な殺人事件が起きるというわけではないが、雰囲気ならば江戸川乱歩か横溝正史のような感じ。3代にわたる女性の人生を描いてゆくが、祖母は超能力者、母は伝説のヤンキー、そして語り手の女性はそんな母や祖母の人生を振り返る特別な能力は持っていない女の子。三部構成の異次元の世界のような物語に引き込まれる。
0投稿日: 2020.07.29
powered by ブクログ借りた本。 3人とも、魅力的だった。文章も綺麗で、変なひとたちが興味深く可愛らしくて。また、名付けが絶妙。昭和時代のこと、歴史と雰囲気をなんとなく知ることができたこともよかった。 地方に興味がある。名家はどんな感じかなと気になるし、山の人って今でもいるのかな、というのも気になる。
3投稿日: 2020.05.06
powered by ブクログ濃密な時代小説を読んでいるようで。 文字は小さいし分厚いしうーんってなったけど、 ノリ始めたら止まらない。 不思議な運命の巡り合わせに翻弄されます。 毛鞠の話が一番すき。 赤朽葉家は今も何処かで続いているのかしら。
1投稿日: 2020.04.29
powered by ブクログ普段の桜庭一樹とは違った雰囲気の作品。独特の世界観という点では共通しているものの、終盤まで盛り上がりがなく、読了に時間を要した。 全体小説というジャンルに初めて触れ、比較するものがないからだろうか、最後まで何故こんなに評価が高いのかいまいち理解できなかった。 ただ、地方の現代史として見た場合に面白いエピソードも沢山あり、歴史好きにとっては嫌いになれない作品だと思う。
0投稿日: 2019.12.19
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
再読。結構な分量だが一気に読める。女の三代記というのはそれだけで面白い。さらりと描かれる細かい時代背景にいちいち懐かしさを感じる。時代に絡めて、強烈な個性の祖母と母、地味な娘の設定が全く違う雰囲気を醸し出す。周りの男性の薄味感がまた女性を際立たせている。この一作で桜庭さんの小説の雰囲気が、少女から大人の女性へと一気に変わった。
0投稿日: 2019.06.26
powered by ブクログ2019.6.9 物語の軸が赤朽葉家という曖昧なものだし、主人公も変わるのに何故かスラスラ読めた。 登場人物の時代に対する感覚とか、何気ない会話に味があったからだと思う。
0投稿日: 2019.06.09
powered by ブクログ桜庭氏の著作を読むのは、『少女七竈と七人の可愛そうな大人』以来で二作目となります。 最初に出会った桜庭さんの物語は、何とはなしに浮世離れした、幻想的な雰囲気をまとった作品という印象でした。そして、少しばかり官能的な要素も含まれていたように思います。 二作目であるこの物語は、あとがきによれば、著者いわく「全体小説」だそうです。つまりは、歴史小説でもあり、家族小説でもあり、恋愛小説でもあり、かつミステリーでもある。そういった趣の長編小説ということです。 読み終わって、振り返ってみると著者自身が評した「全体小説」とは、まさに言い得て妙でしょう。三代にわたる山陰のとある村に住む本家の大家族を描いた作品ですが、歴史小説としても読めますし、恋愛小説でもあります。どうにでも読めますが、一方でどの既定のジャンルに収めようとしてもそこから逸脱してしまう。そんな不思議な風合いの小説です。それゆえ、桜庭氏の最初に読んだ作品に感じた幻想的なエッセンスも再び味わうことができました。 長編小説でもあり、一つの作品で実の多くのエッセンスを味わわせてくれます。読み進めていく間にくるくると表情を変えながら、「全体」としては鳥取の村に大きな鉄工所を構える「赤朽葉家」の三代記という通底奏音に乗って、ゆるやかに、静かに物語は進行していきます。三代記ですが、物語の語り部は、三代目にあたる「なんでもない」娘です。この語り部の選択は絶妙と言えます。 そんなわけで、『赤朽葉家の伝説』という全体小説は、桜庭氏の代表作たり得る作品という世間の評判どおり、いつしか作品世界に引き込まれ、なにか上質なオーケストラでも聴いているかのような気持ちで読むことができました。本当に一冊で、何度もおいしい作品だと思います。 残念なことをひとつ。作品中とあとがきで、あきらかな誤植が二カ所ありました。作品の質を思えばわずかな瑕疵とも言えますが、画竜点睛を欠く気がして、その点だけがいささか残念です。
1投稿日: 2019.01.08
powered by ブクログ少女だったり青春だったりファンタジーだったりミステリだったりする山陰製鉄一族の近代現代記 まとめていうと「全体小説」だが便利すぎるので 時代小説を重ねた一家の歴史小説であるから 昭和の後半と平成の今の山陰地方であることに意味ある時代小説の結構 これを書いた後に『私の男』を書いて そちらの方を賞として評価したくなるというのはとても良くわかる 作者の他作品に通底する要素をごったに煮込んだ代表作的、 その作者がその時期だからの作品としてはこちらというのも良くわかる 『私の男』はなるほどと思ったが 『赤朽葉』はそういう意味で面白かった
0投稿日: 2018.12.09
powered by ブクログ山陰地方鳥取県の旧家赤朽葉家を舞台にした女三代記。 ここがすごく面白いという物ではなく、全体小説として とても楽しめた。 時間を置いて再読したい。
0投稿日: 2018.12.08
powered by ブクログ高校時代にいわゆるスケバンとして、不良たちの間で伝説的存在となり、その後大人気漫画家となった女性の生涯……って気になりませんか?そんな人物がこの小説には出てきます。彼女の名前は赤朽葉蹴鞠です。 上の話だけ聞くと、たとえフィクションでも「そんなやつおれへんやろ~」となると思います。実際、ライトノベルやマンガのキャラ付けとして表層的に書くなら、なんとかなるかもしれません。でも小説として、そして一人のリアルな人間として、その人生を描くのは至難の業だと思います。しかし、それを可能にしたのが桜庭一樹さんなのです。 なぜ、そんな破天荒な人生を描くことが出来たのか。それは、蹴鞠が生まれ、そして生きた「時代」の空気感、そしてその前後の「時代」も一緒に描ききったからだと思います。 この小説の特徴は三世代に渡った小説だということ。彼女たちは大きな製鉄会社の奥様という立場になります。 彼女たちと時代を描くうえで、この製鉄会社というキーワードも効果的に機能します。高度経済成長で大きく成長しながらも、石油危機や公害問題で縮小や、業態の変更を余儀なくされ、オートメショーン化や産業構造の変化で、職人たちも減り、シンボルだった巨大な溶鉱炉も停止、そして工場の取り壊し……。 赤朽葉家の製鉄は、一つの時代の始まりと終わりを描きます。 そして、それと呼応するように、時代の若者たちの意識も変化していきます。働けばその分報われると信じられた高度経済成長期。学生運動が盛んになり、若者たちのうねりが仕事以外に向き始めた時代。 学生運動の熱も冷め、若者たちのうねりのぶつけどころが無くなった時代。そして、バブル崩壊後の失われた20年、希望や生きる目的が見えにくくなった現代。 こうしたそれぞれの時代と、その時代を生きた若者たちの空気感を描きったからこそ、万葉の時代も、わたしの心情も、そして蹴鞠の不良時代から、漫画家への転身という破天荒な人生も、時代の要請として描き切ることが出来たのだと思います。 この話の謎の中心となるのは、千里眼として未来予知ができた祖母万葉が視た空飛ぶ男の謎。でも読んでいくうちに、その謎が吹き飛ぶくらい万葉、そして蹴鞠の人生の濃さに夢中になると思います。(蹴鞠の人生が濃すぎるだけで、万葉の生涯もかなり濃くて面白いです!) そして、現代、万葉が死の直前につぶやいた「わたしは人を殺した」という言葉に導かれ、現代の語り手、瞳子は赤朽葉家の謎に向き合います。そして謎の先にあるのは、時代の終わりと、そして未来への小さな決意だと思います。 この小説の最後の文章って、冷静に読むとちょっと青臭いです。しかし、それぞれの時代のうねりと女性の生涯を読み切ったあとならば、この文章が美しく、そして読者を勇気づけてくれるものになっていると思います。 第60回日本推理作家協会賞 2007年版このミステリーがすごい!2位 第5回本屋大賞7位
5投稿日: 2018.07.31
powered by ブクログ登場人物一人一人が魅力的。特に、赤朽葉毛毱と彼女の周囲の女たちの話が好きだった。 万葉の見る世界が不気味でぞくっとする。 紀伝体で赤朽葉家の人々を描写する話…と思いきや、それらの話が全て現代で繋がって、1つのミステリーを織り成す様が見事。
0投稿日: 2018.06.18
powered by ブクログ”砂糖菓子の~”が好きで、他の作品も是非!と思いながら、なかなか読めずにいた作品。今回、どこかでオススメされているのを見かけ、いよいよ読んでみることに。で、これがまあ絶品でした。件の家族に生きる女性たち3代(4代か?)を描いた長編で、そういうのが好物な自分としては、祖母や母が活躍する1・2章も十分に魅力的。そのままの流れで自身のことも綴り、家の没落で幕が切れるのかと、勝手に想像してました。一方で、自分の中で勝手にミステリーかと思い込んでたこともあり、1・2章を読みながら、『あ、純文学的な作品なんだ。でも素晴らしいから結構』と、作品の見方が変わっていたところで…。3章、題名からして”殺人者”って不敵なんですが、まさかのミステリ的展開にビックリ。未来視の中で、なぜ空中飛行だけは実現しないんだろう?って、ずっと引っ掛かりながら読み進める訳ですけど、それも最後の謎解きに当たって、いよいよ重要な意味合いを持って現出します。純文学ともミステリとも読めて、かつどちらの観点からもハイクォリティ。素晴らしい作品でした。
1投稿日: 2017.12.16
powered by ブクログ2017年、36冊目は桜庭一樹。ハードカバー出た段階で気になってた一冊。 製鉄業で財を成した旧家、赤朽葉家。そこにまつわる、女史三代の物語。 『ヤられたわ』が最初の一言。メチャクチャ面白いじゃん。 全体を貫くミステリー要素は正直、どぅでもイイ。千里眼を持つ祖母。伝説のレディースを率いていた、売れっ子漫画家の母。今は何者でもない私。紡がれる戦後~の歴史。しかも、それが、地方都市~のモノ。 様々な要素が渾然一体化した一冊。第三部が馴染みきれなかったが、充分、★★★★☆の価値あり。 心のささくれに順応するか❔否か❔で評価変わりそぅだけど……。
0投稿日: 2017.09.14
powered by ブクログ歴史小説ではないけれどまるで大河ドラマの原作のような物語だ。 朝に似合うかどうかはさて置いて、万葉を主人公にすれば朝ドラだっていけるかもしれない。 赤朽葉家の女三代、万葉、毛毬、そして瞳子。 彼女たちの波乱に満ちた人生が描かれている。 あまり現実味のない内容も、桜庭さん独特の筆致となればまた違ってくる。 見えるものを大切な人たちのため使い、それでも言ってはいけないと決めたことには沈黙を通す万葉。 見えることを隠し、素知らぬ顔を通した毛毬。 どちらも強い女性・・・といった印象が強く残る。 赤朽葉家の、というよりも万葉の中に流れる血の特異性の成せるわざなのか。 生半可ではない芯の強さと潔さが、赤朽葉家の女性たちを通して伝わってくる。 タイトルにある「伝説」に十分頷けるような物語だった。
0投稿日: 2017.04.26
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
評価は5。 内容(BOOKデーターベース) “辺境の人”に置き忘れられた幼子。この子は村の若夫婦に引き取られ、長じて製鉄業で財を成した旧家赤朽葉家に望まれ輿入れし、赤朽葉家の“千里眼奥様”と呼ばれることになる。これが、わたしの祖母である赤朽葉万葉だ。―千里眼の祖母、漫画家の母、そして何者でもないわたし。旧家に生きる三代の女たち、そして彼女たちを取り巻く一族の姿を鮮やかに描き上げた稀代の雄編。第60回日本推理作家協会賞受賞。 未来が見えたり、幻想を見たり・・・最初はSFなのか?と中々読み進められなかった。しかし、この小説は人をもの凄くいじめたり貶めたりする話では無く、淡々とこの一族の日常や出来事を語っていくのである。 そして、2代目の「わたしのはは」の時代はまさに私の青春時代にあたる。それでも、話は淡々とすすむ。 それが私の青春とも重なり・・ マッタリとしたそれでいて地道な一族の3代の女性の生き様が生き生きと書かれたとても良い話であった。
0投稿日: 2017.02.07
powered by ブクログ赤朽葉家の女三代の年代記。年代記ってどうしてこんなに面白いんだろう。もちろん、桜庭一樹が読ませる作家ということもあるのだが。桜庭一樹がワクワクしながら書いたように私もワクワクしながら読んだ。
0投稿日: 2017.02.06
powered by ブクログ昭和という時代の激動を見事に写しとった、架空の名家の一大叙事詩。鉄鋼と造船で栄えた山陰の地方都市の栄枯盛衰。時代の流れに伴うライフスタイルや価値観の変遷。そこに生ずるドラマが心を打つ
0投稿日: 2017.02.02
powered by ブクログガルシア・マルケス『百年の孤独』から影響を受けているのは間違いないが、 見事に日本の鳥取という地方に移し変えている。 大傑作。 時代の終わり、人の死が、濃密にうずまく旧家を舞台にした、 壮大なスケールの絵巻。 さすがに百年には及ばないが、たとえば万葉だけでなく、タツやみどりのような、最初からほぼ最後まで登場する人物が、 この作品を読みやすいものにしているのは確か。 約50年という期間に設定したのは、成功のもとだと思う。 泪という人物の死までを視てしまった…… という切ない場面、物凄い哀しみである。 そして語り口調の軽快さ。 軽薄でもなく、重苦しくもなく、軽快にやわらかく語られる。 この文体は新たな発見である。 登場人物がwikiに載っているので、参考にしてもいいのかも。
0投稿日: 2016.07.14
powered by ブクログ女の三代記、それだけで私にはたまらない設定でして。しかも様々な人物による群像劇なんて、もう! 折々に読み返す逸品です。
0投稿日: 2016.06.26
powered by ブクログ第一部は未来が見える千里眼奥様こと万葉、第二部が万葉の娘の毛鞠、第三部が毛鞠の娘の瞳子と三世代に渡る赤朽葉家の話。昭和史を織り交ぜながら、時折おどろおどろしい描写を挟みつつ語られる家族の歴史。二部まで読むと、この風変わりな家族が何だか愛しく思えてきた。そして、三部の謎解きで万葉が隠していた秘密を瞳子が解き明かし、あの設定はこのためにあったのかと、ちょっと切なくなった。自分にとっていい時間は止まっていて欲しいと願うけど、そうはいかず時間は流れ、世の中も変わっていく。浮き沈みがあったり、右往左往したりしながらも人の営みは続いていくんだなあと、しみじみ思った。
0投稿日: 2016.05.07
powered by ブクログ最後の神話の時代、巨と虚の時代、殺人者の三部で構成されてして、各時代背景の中で登場人物が魅力的に描かれていました。この先、未来はどうなるんだろうってワクワクしました。
1投稿日: 2016.05.01
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
山陰地方の名家、昭和から平成にかけての女三代の物語。最後の瞳子の章が、瞳子自身が何者でもない、と自分を評しているだけに、少し弱いかな…という気がしたが、一方で祖母の万葉、母の毛鞠の章が非常に濃厚で、読み応えがあった。 万葉は自分に近しい人の死に際が視えている、ということか。夫よりも親愛の情を感じていた男性の未来、というのもそういうことなのか。 個人的には毛毬の章が一番面白かった。なんといっても自分も同世代に、田舎町で育ったものだから。中学校は荒れていたし。橋脚とか必ず夜露四苦とかスプレー書きされていたものだ。そして私も、作者が毛毬をそう評したように「有能だが、地に足のついていない女」の一人なのかもしれない。
0投稿日: 2016.03.05
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女3世代。 祖母・万葉は山の民の一族。製鉄の町に捨てられ、若夫婦に育てられる。やがて、地元の名士の家の奥様に息子の嫁にとなれと見初められ、嫁ぐ。そこで子どものころに霊視した飛行人間と出会う。見えないものを見る万葉は、やがて千里眼奥様と呼ばれることになる。 母・毛鞠は乱暴で粗忽な女だ。やがてレディースの番長として君臨するも、親友の死によって抜け殻のようになり引退する。引退後は売れっ子漫画家として過酷なスケジュールで仕事をこなす。 語り手・瞳子は、これといって語るべきことがない人生を送っている。祖母や母と比べるとあきれるほどに普通。だが、祖母がいまわのきわにもらした「私は人を殺した」という発言で、ほんのわずかに人生に向き合うことになる。 するすると読めてしまった。 世相や時事がわかりやすく盛り込まれていて、自分が生きてない時代なのに懐かしさすら感じた。 2016.2再読。
0投稿日: 2016.02.19
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
第一部が非常に面白かっただけに、第二部、第三部と、だんだんとわたしの好みからずれていくように思えて、少し残念だった。 辺境の人である万葉の千里眼と、鳥取という地の持つ神秘さ、作者の表現描写や文体、どんどんと少し不思議な戦後の物語に魅了されていっただけに、蹴鞠が生まれ、なんだか不良漫画のような展開になっていき、瞳子に至っては、語るべきものが本当になかったのかと思われるようなだらだらした話。万葉の話で一冊通しても良かったのに、と思えてしまった。 しかし、三世代の女を描くことで良かったことは、その戦後から現代という三世代分の価値観や世界観、世相や文化が縮図のように知れたことだ。男性の役割、女性の役割、地元と都会への意識、大切にすべきもの、憧れるもの、人は時代によって、生きていく中で触れるものへの認識や価値観がこのように変わってきたのか、と勉強になった。 作者の立ち位置として、リアリティーを求めているのかファンタジーを描きたいのか、結局のところ何を描きたいのかはあまり明確には理解できなかった点で、少しもやもやは残るが、読んでいて実に面白く興味深い本ではあった。
0投稿日: 2016.02.02
powered by ブクログ桜庭一樹初期代表作の全体小説。神話の名残の千里眼から迷える現代娘までの地方名家の女三代記。 傑作です。
0投稿日: 2016.01.28
powered by ブクログ『わたしたちは、その時代の人間としてしか生きられないのだろうか。たたらの世界をめぐる村の男たちも、女たちも、生きたその時代の、流れの中にいた。 人間というのはとても不器用なものだ。わたし自身を振り返っても、まったくどうしてこんなにだめなんだろうと自分でもわかっているのに、そういう自分からなかなかうまく抜け出せない。 変わるって難しことだ。成長するって、たいへんなことだ。だけどわたしは、がんばって生きていくぞ、と思う。』 1953年から60年間にわたる赤朽葉の女たちの物語。宮台真司の社会学と呼応するような作品。 めちゃくちゃ面白かった。 ある種のビルドゥングスロマン。
0投稿日: 2016.01.11
powered by ブクログ面白かった!旧家である赤朽葉家の女三代記。一家の盛衰が各時代を反映した青春、労働、恋愛だけでなく、未来視能力、空飛ぶ男、長女にだけ見えない妹などなど、不思議なモチーフも通して描かれているので、楽しくてぐいぐい読んだ。女に求められる在り方はその時代によって変わるけど、赤朽葉家の女たちはいずれも強い。それは一家の濃い血の呪いのようでもあり、大きな家族愛のようでもあると感じた。私が共感したのは自由の幅が広くなった時代の中で何者にもなれない同世代の瞳子で、だからこそ万葉の貫禄と毛毬の青春が眩しかった。
0投稿日: 2015.12.16
powered by ブクログ赤朽葉万葉、毛毱、瞳子の三代にわたって描かれる一家の行く末。始まりは「最後の神話の時代」。万葉が拾い子として村で育てられたのちに、旧赤朽葉家で"千里眼奥様"と呼ばれるまでの話。 強く生きた三代の女性たちが、古典の匂い香る世界で生き輝く。
0投稿日: 2015.10.10
powered by ブクログ家は土地に根付き、人は家に根付く。 その昔、この国の人々には確固たる使命と宿命があった。 赤朽葉家に生きる女達には数奇な物語があった。 他人には見えないものが視えた祖母 レディースで頭を張った母 何者でもない現代っ子の娘。 彼女らの美しい世界と命の物語。
0投稿日: 2015.09.27
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
このミスベスト10、2008年版2位。本屋大賞2008年7位。3代にわたる女性の話。その時代の世相も映し出した大作。作者の代表作として評価が高いやつ。ボクは2代目よりも少し年上で不良文化まっさかりの時代を過ごしたので懐かしいところが色々あった。それぞれの女性を中心とした3部作となっており、それぞれが異なる雰囲気を持った小説となってるが、どれも微妙に自分の好みとはずれてる。第1部はテンポが遅くて退屈、第2部は逆にテンポあがるけどおちゃらけすぎ。第3部のみミステリーっぽくなってくるのと自然な文体で一番好みに近い。そのせいか、読後感はとても良い。「私の男」読んでるときも感じて、この本読んでるときも思ったんだけど、やけに女性っぽいなーと思ってググッたら、女流作家だったんですね。
0投稿日: 2015.09.05女性三代記
おばあちゃん、お母さん、私の女性三代にわたる三章からなる物語です。 最初は昭和の製鉄所を舞台にしたサンカの捨て子で千里眼を持つおばあちゃんの話です。出目金との変な友情物語が良いです。 次は中国地方最強レディースヘッドであるお母さんの話です。無敵すぎて爽快です。そして後半、思わぬ方向へ話が進みます。(この章が一番面白かった。) 最後は何の特徴もない私の話です。おばあちゃんの章の謎が明かされます。 どの章も女性が主役で男性は脇役の話なので、女性のほうが楽しめると思います。
0投稿日: 2015.08.17昭和世代のノスタルジー
未来が見える千里眼をもつ女性の話,などというと大昔のことのように思いますが,昭和の高度経済世長期の山陰地方の街が舞台です。 個人的な物語とともに,昭和の日本の歩みと神話の入り込む余地の残る地方の村落の変わりゆく様が描かれています。 昭和を歴史でしかしらない世代には難しいかもしれません。私はかなりマッチする世代ですけど。
1投稿日: 2015.08.09
powered by ブクログ桜庭ー樹の初期の代表作を書け、と編集に言われた。さらに、桜庭さんは全体小説が書ける人だと思います…… そう言われて、大きな物語を書くことにワクワクして書いたのが本作である、と作者は語っている。 そうして本当に代表作を紡ぎ出した手腕は見事。さびしい山だしの娘が語る素朴さと、山陰の暗さと赤朽葉のあざやかさ。楽しい読書だった。
1投稿日: 2015.05.18
powered by ブクログ2008年本屋大賞7位 戦後から現在に至るまでの赤朽葉(あかくちば)家の女三代の物語。 実際の時代背景と共に作中人物を通して一元的統一を目指す小説を『全体小説』っていうのかぁ、知らなかった。 この本では昭和・平成の変遷する世相から心理的な一元的統一が図られているので「なるほどこの世代の人の考え方ってそうだよなぁ」と妙に合点がいく。 といっても、コミカルな物語なのでとても楽しく読めたw 自分自身も、現在の若者も「なぜこういう価値観を持っているのか」ということを照らし合わせることができてなんか勉強にもなったなぁw これ本屋大賞7位なの?もっと上位にランクインできるんじゃないかな?と思うくらい面白かった。 2008年の本屋大賞9位には同著者の「私の男」も入っており、票が割れてしまった…?
0投稿日: 2015.03.21
powered by ブクログ桜庭一樹版百年の孤独。鉄鋼の町の名家の女三代記。一つの家系を変質的なまでに書き上げる、執念のようなものを感じた。 古い価値観が好きなので、これには「かつてあった古い日本」萌えを揺さぶられた。
0投稿日: 2015.03.02
powered by ブクログめっちゃ面白い。 こんな小説初めてです。 すっかり桜庭一樹ファンになった!! 女性作家ぽくない骨太な小説。 海外ミステリーを知り尽くしている著者。 うなずけます。 まさにそれが裏付けるようだと思いました。
1投稿日: 2015.02.28
powered by ブクログ日本推理作家協会賞受賞作品。 とはいえ、推理小説ではないです。 1950年代から現代まで、3代にわたる赤朽葉家の女性たちの生きざまを、イキイキと描いた作品。 それぞれの時代を背景にした描写もあり、のめり込めました。
0投稿日: 2015.01.25
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
鳥取県で古くから製鉄業を営む旧家、赤朽葉家。 そこに千里眼を持っ捨て子の万葉が嫁ぐことから始まる、赤朽葉家の伝説が孫娘の瞳子目線で語られる。 万葉、毛毬、瞳子の女3世代の壮絶な人生を通じて、昭和から平成にかけての時代そのものを描いているともいえる作品。 3部構成で、第3部でミステリーの要素も加わるものの、やはり時代小説としての読みごたえ。 登場人物が皆、個性的で魅力的❗タツ、万葉、毛毬、泪、鞄、孤独、蝶子 …読んでいて楽しかった。
0投稿日: 2015.01.12
powered by ブクログ女三代の物語。おもしろい。 登場人物がかなり個性的ではあるが、気に触るような感じでもなく、また、その時の時代も反映されていることがさらに物語の魅力を増幅させていると思う。 他の作品とは毛色が違うので、他の作品にも興味を持つかも。
0投稿日: 2014.11.28
powered by ブクログミステリーと知らず手に取った。鳥取家の製鉄会社の名門、赤朽葉家の女性3代の人生を描いた小説。かなりディテールに凝ってあり、ミステリーになるのは最後少しだけ。そのため、やや間延びした印象と言うか、ミステリーがメインなら前半部分はそこまで描かなくてもという感じだった。
0投稿日: 2014.11.24
powered by ブクログ山陰地方の旧家を舞台にして戦後から現代までを生きた3代の女性たちをめぐる物語です。 第1部と第2部では、登場人物たちが時代の文脈に深く埋め込まれた生き方をするため、濃密な歴史の追体験をさせてもらいました。 他方現代である第3部は、ある意味時代を反映して、物語も役割も持たず漂う主人公によるミステリ仕立てでした。間延び気味な点や謎解きと主人公自身の展開がうまく噛み合わない点に若干苛々しましたが、それには自分の立ち位置を見失いがちな同時代人として同族嫌悪的な側面もあったかもしれません。 役割を受け入れた時代と役割から自由な時代。各々に難儀ではありますが、我々の代理人たる3部の主人公にはもう少し頑張って欲しかったというのが本音でしょうか。
0投稿日: 2014.11.23
powered by ブクログまた一つ珠玉の読書経験を得たと云っても過言ではないと思える。後書きにもありましたが「全体小説」と云うこの一個人から社会全体まで、幾つかの時代を追いながら折り重なり流れ進むこの物語に自分の育ってきた時代を感じ取る事ができたからか、赤朽葉の一族に奇妙な親近感が生まれて、物凄く楽しく読ませて頂きました。 三世代の女の奇妙な人生には悲喜交々のドラマが織り込まれていて、多くの悲しみを乗り越えながら家を一族を守り続けていく、強さと弱さと優しさに満ちており、登場人物の一人一人に愛おしさを感じてしまうような作品でした。とても素晴らしかったです。
0投稿日: 2014.11.12
powered by ブクログおもしろかった、と思う。感想がちっともまとまらないんだけど、それでいいような気もする。猛烈な盛り上がりとか不思議現象とか、あったのかもしれないけどそのテンションの高低を感じさせない。女三代分の赤朽葉家と日本の地方都市の空気を、気持ち揺さ振られることなく楽しめた、と思う。
0投稿日: 2014.09.30
powered by ブクログ米子に旅行に行っている間、ずうーっと読んでいた。そして2日で読み終わった。「こんなの、読んだことないっ」という気にさせてくれる面白さ。作中の鳥取弁が、異国の赤い言葉に聞こえる。ここであって、ここでない世界。ようこそ、ビューティフルワールドへ。 語り手の瞳子の祖母・千里眼の万葉と、母・漫画家の毛鞠。それに比べて、現代の語り手である瞳子の、なんとふわふわと薄っぺらいことだろう。 そう嘆きたくなるくらい、万葉と毛鞠の時間は謎めいた驚きに満ちている。時代とともに駆け抜けていく彼女たち、しかしそこにはまだ知らないもの、見たことのないもの、そして出会ったことのない人とのまだ見ぬ出会いがある。未知であることが不思議を生み、希望を生む。それらは時に残酷で、恐怖ですらあるけれど……それでも見えないからこそ、立ち向かえることもあるのだと思う。 わたしたちは、悩み多きこのせかい、広大でちっぽけなこのせかいに生まれた。周りは自分と同じような人ばかり……なんでもできるけれど、特になにもできない。どこに行けばいいの? わたしはこのせかいで誰なの? それでもわたしは、真っ赤なこのせかいで生きていく。せかいは、そう、すこしでも美しくなければ。
3投稿日: 2014.09.09
powered by ブクログ2014/09/01 読了 万葉の千里眼、毛鞠の破天荒さ、そしてその周りの脇役、百夜、みどりなどがいい味出している。 3章が物足りなかったかな。
0投稿日: 2014.09.02
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
赤朽葉家の物語としては面白い。ただ、ミステリと思って構えると拍子抜けする。 作者のあとがきにもあったが、当初は第一部が歴史小説、第二部が少女漫画、第三部が青春ミステリと三部構成で雰囲気をがらっと変えたものにしようとしていたらしい。 そのあと、当初の構想からいろいろと手を加えているようなので、読んでいてがらっと雰囲気が変わったな、とは特に感じないように思った、第一部と第二部については。 第三部だけはほかの二部と比べ、悪い意味でがらっと雰囲気が変わってしまった様な気がする。なんだか、安っちいミステリじみている気がするのだ。試みは良かったのだが、何だか急にミステリ分をぶっ込まれているので「飛行人間」についての思い入れも特になく、あぁそうか…という感じでおいてきぼり感のするミステリ筋になってしまっている。
0投稿日: 2014.08.29
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
女三代の織りなした歴史とこれからの世界。 壮大な大河小説だった。特に「わたし」(瞳子)は、自分とほぼ同じ年で、自分のことを重ねて読んだ。祖母の万葉、母の毛鞠、わたしと三部作で少しずつ雰囲気が変わっていく。第一部では神話のように語られていたことが、第三部では謎解きされるのも、もう伝説や神話が生きていける時代ではなく、不思議の力の薄れた現代だなと思った。 万葉、毛鞠、瞳子だけでなく曾祖母タツ、ライバルみどり、見えない異母妹の百夜、製鉄天使のマスコット蝶子、影武者アイラなど女の物語であるが、それに寄り添う男の話でもある。万葉の夫曜司や職工の豊寿、長男の泪、末っ子の孤独。兄貴分の多田忍、番長野島武、編集者蘇峰、婿の美夫。頼りない多田ユタカ。それぞれが、それぞれの時代を生きていた。 長いけれど、どんどん引き込まれてしまう。桜庭一樹のことばには、フィーリングが合うものが多くて、どうしてこんなぴったりな表現を使えるのだろうと、楽しんで読める。これもそうだった。
0投稿日: 2014.08.23
powered by ブクログ先週末に「私の男」を一気読みしてあまりに面白かったので、文庫版解説で北上次郎さんが強く薦められていた「赤朽葉家の伝説」を購入して、これま面白くて一気読み。 これは好き好きだけど、「私の男」よりこちらの作品のほうが心に残っていく一冊。作家自身のあとがきに「担当編集から初期の代表作品をつくりましょう」というプレゼンから生まれたというだけに、まさに力作。 作家自身は、ガルシア・マルケス「百年の孤独」やヴァージニア・ウルフ「オーダンドー」などが書き始める前に抱いたイメージだったとあったが、個人的な読後感としては、ジョン・アーヴィング「ガープの世界」「ホテルニューハンプッシャー」なども頭を過った。 またこのような作品を「全体小説」と呼ぶということもこれまで知らなかったのでググってみると、中上健次三部作「岬」「枯木灘」「地の果て至上の時」などがジャンル的にはその代表作ということで、なるほどなあという想いに駆られる。それで言うとこの作品の第一部は「鳳仙花」にも雰囲気がとても近い。 「全体小説」は好きなジャンルなんだと知れたので、しばらく漁ってみたい。全体小説について解説されているサイトで、高村薫「晴子情歌」は中上三部作の影響を感じるという感想があったので、まず読んでみたい。
2投稿日: 2014.08.03
powered by ブクログ戦後史を背景とする女三代記の大河小説に、異能の漂流民の神話的ファンタジーと、「犯人捜し」ならぬ「被害者捜し」のミステリを絡める。謎解きは非常にイージーで意外性の欠片もないので、むしろ純然たる大河小説にして欲しかった。二代目の第2部が最もよく描けている(著者の同世代の総括的意味で)。
0投稿日: 2014.05.11
powered by ブクログ桜庭一樹が2006年に発表した長編小説。鳥取県紅緑村に君臨する赤朽葉家の3代の女性の物語です。読むまでは文庫の分厚さに躊躇してました。また、ライトノベル作家としての桜庭一樹を読み慣れているので、どうだろうと思いましたが、実際の出来事や時代に合わせて話は展開していますが、かなりファンタジーが入っていて、案外サクサクと読めました。基本的には三代目の赤朽葉瞳子が祖母と母について、そして自分について語るという体裁です。しかし、なぜ推理小説として紹介されてしまったのか。次はスピンオフの"製鉄天使"でも読むかな。
0投稿日: 2014.02.28
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
本作はミステリーですか?はいミステリーです。 いや、ミステリーじゃないかもしれないけど、ミステリーのような。などということは気にならないほど面白い。 本作は、一人称でありながら過度に心情を書ききらず描写によって読者を引き込む筆力の高さに圧倒させられる。それほど面白い話ではないと思われるのに、第一章を遠視の万葉というキャラクターで引き込み、次に不良少女である毛鞠の存在感ではらはらさせ、最後に何者でもない瞳子で着地させている。破綻の無い安定感は見事としかいえない。 そもそも、女性の年代記などと書くと、陰鬱になるほどのドロドロしたものを思い浮かべるが、本作では淡々と描写を連ねることで比較的バランスよく書き連ねられている。だから、読み進めることも抵抗なく、読後感も悪くない。 まさに、本書を紐解けば昭和の時代を体現できるのだ。 もし、弱点があるとすれば、この読みやすさ読後感の素晴らしさなのではないか。そんな捻くれたことを考えながら本を閉じた。
0投稿日: 2014.02.05
powered by ブクログ赤朽葉家の女三代を描いた大河小説。 GOSICKシリーズとは違って、割と重厚な読み応え。黒くても文体は軽めだから読みやすいけどね。 ミステリ要素は3部だけなんだけど、1,2部を注意深く読んでると推理できるようになっているんだな、これが。
0投稿日: 2014.01.28
powered by ブクログ旧家の赤朽葉家の女三代の話。 一部は、「千里眼」を持つ祖母・万葉。 二部は、ヤンキーから少女漫画家になった母・毛毬。 三部は、現代に生きる私・瞳子。 それぞれの主人公たちの周りの人々、そしてそびえ立つ「赤朽葉」という家との関係がおもしろかった。 それぞれテーマが違ったけれど、さまざまな人間関係が絡み合う二部の毛毬編が一番好き。 チョーコと毛毬の危うい関係、兄の泪のことなど、切ない。 なかなか読み応えある一冊だった。
0投稿日: 2013.12.05
powered by ブクログ昭和の世相を縦糸に、赤朽葉家3代の女達の生き様を横糸に紡いだ大河ドラマ。幻の漂流民に捨て置かれた、千里眼を持つ祖母「万葉」、暴走族の頭を張り、中国地方を制圧した伝説を持つ母の売れっ子漫画家「毛毬」。その子供である普通の「瞳子」。夫々の代の世相を反映した物語があり、最後に瞳子の代の話でミステリー性を帯びてくる。推敲の段階で切られた「製鉄天使」が別物語として発刊されている。これも読んでみたい。
0投稿日: 2013.11.09ま、「渾身の雄編」と言うよりは、大河小説的ホラ話だよね
にゃんぱすー。 富士見ミステリー文庫から出た「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」を読んだ時は、おいおいおい、ライトノベルのレーベルからこんなん出していいのかよ、これ中学生が読んだらトラウマになるんじゃね?と思ったのも今となっては懐かしい想い出の桜庭一樹の代表作、と言ってもいいのではないでしょうか。 第60回日本推理作家協会賞を受賞したことからも分かるとおり、ミステリ的な要素も多少はありますが、どちらかというとファンタジー、それもマジックリアリズム寄りのホラ話、もとい、年代記で、今のところ個人的にはこの作者のベスト作だと思います。 なお、桜庭一樹は「青年のための読書クラブ」も好きなので、新潮社は早く電子書籍化するように(ナゾの上から目線)。
2投稿日: 2013.10.19
powered by ブクログ赤朽葉家の四世代の女性のタツ・万葉・毛鞠・瞳子を通して戦後から現代までの日本の歴史や時代時代でかかえていた社会問題を表現しているかのような作品。 一番年若の瞳子の視点でかかれているので淡々と他人ごとに近い語り口。 ラスト近くのの万葉の殺人の告白からはミステリー仕立てにはなってはいるが、付け足しのような感じがしないでもない。 終わりよければ全て良しとまとめた感じの作品。
0投稿日: 2013.10.13
powered by ブクログ赤朽葉家の女性三代を、戦後~現代までの日本経済復興~繁栄~停滞と 合わせて描く作品。 物語は二層構造となっており、1つが赤朽葉の家業(製鉄所)と 赤朽葉家の人々を、戦後以降の日本世相と重ね合わせて描くパート。 (フィクションと現実を上手くミックスさせた構成が肝) もう1つが、赤朽葉家の女性三代の1人目である「千里眼奥方様」こと、 赤朽葉万葉が見た未来視を巡る謎。 万葉は「サンカ」の捨て子であり、赤朽葉家を取り仕切るタツに その千里眼を見込まれ、赤朽葉家に迎えられる。 読者は万葉の未来視が次々と実現していく過程を、ミステリーのように、 読み解くのだが、あるケースだけ未来視が実現しておらず、 死に際に「わたしはむかし、人を一人、殺したんよ。」「だけど、 憎くて殺したんじゃないんだよ・・・」という謎の言葉を残す。 謎を託された瞳子(三代目)は、その解明の旅に出て・・・。 /// 個人的には、赤朽葉万葉が見た未来視を巡る謎が、非常に印象的。 なので、もう1つの赤朽葉家と日本の世相を重ねるパートの比重が 大きかったのは、少々残念。 (バランスは逆でも良かったような。。。) あと、内容(特に、日本の世相と重ねる部分)は、 岩井志麻子の「ぼっけえ、きょうてえ」と共通した方向性を感じました。 もっとも、岩井志麻子が描く陰惨な習俗がもたらす救いのなさに比べ、 本作はカラッとした感じで(ジメジメしていない)、 あくまでミステリーテイスト(未来視を巡る謎)の作品。
0投稿日: 2013.09.22
powered by ブクログ淡々とした作品だった。 特に盛り上がるようなところもないのなだが、なんとなくページが進んでいくとても不思議な作人だった。 ミステリーというほどでもないような感じがしたけど作品を通してフワフワした感じだった。
0投稿日: 2013.09.16
powered by ブクログ推理小説と思わず読み進めたため、最終章の殺人者でぞくりとした。神話の時代から現代へ。時は流れて血も繋がっていく。飛行人間と千里眼奥様。
0投稿日: 2013.09.10
powered by ブクログ想像力豊かで面白いのは面白いけど、 それまでだった印象。 はっとしたり、苛まれたり、なんていうか、 ぐっとくる読書体験ではなかった。 ところどころ、ユーモラスで面白いんだけど。
0投稿日: 2013.07.03
powered by ブクログやっと、読み終わりました~っ。 戦後の昭和から平成の今までを生き抜いた、女三代の生き様を書いた小説です。 あとがきにもあったけど、有吉佐和子さんの『紀ノ川』みたいな感じをミステリー調に仕上げた本だな~。 でもミステリーというよりは、ドラマを読んでる感じ。 社会背景を踏まえながら、その時代に生き抜いた女の有様とその女に絡んだ男の生き様をとてもよく表現してると思う。 物語は一見すると淡々と語られてるように感じるんだけど、要所要所でスパイスが効いてて私は楽しめた。 私の時代は毛鞠を一緒なんだけど、読んでると万葉の時代がとても面白かったし、この本は彼女を中心に書かれてる気がするな~。 一番つまらなかったのは、瞳子の時代。 ミステリーさは、ほんとに最後の方にしか出てこないんだけど、でもこれはやっぱりこの長い前置きを読んでからじゃないと分からないんだな~。 仮に「万葉が殺した」という死体の正体が早々分かっちゃっても、当人の心理描写や万葉との関係は、最後読むまで分からない。 なんか、最後は胸があつくなった。 最後、やられたな~~~。
2投稿日: 2013.06.19
powered by ブクログ「推理文庫」だからって、ミステリーだと思って読むと、がっかりしてしまうかも。 女が怖くて強くて畏いはなし。
0投稿日: 2013.06.07
powered by ブクログ帯文(裏表紙):"旧家に生きる三代の女たち、そして彼女たちを取り巻く一族の姿を鮮やかに描き上げた稀代の雄編。" 目次:第1部 最後の神話の時代 1953年~1975年 赤朽葉万葉、第2部 巨と虚の時代 1979年~1998年 赤朽葉毛毬、第3部 殺人者 2000年~未来 赤朽葉瞳子、文庫版あとがき
0投稿日: 2013.05.27
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
あとがきにあるように全体小説。 殺人なんて物騒な言葉が(終盤)出てくるけれど、それよりその中で生きる伝説の女たちの伝記というか記録を読んでいた印象が強い。 たくさんの人が死に、そこで出会った親戚に死者の話をきくように、荘厳で凛として神話めいた伝説を教えてもらっている感じ。 文章がかたく読みづらいけれど、内容と合っていて飲み込みやすい。 これだけ個性的な人がいれば謎も生まれるでしょう。 すこし千里眼なトーコの調査も好きです。
0投稿日: 2013.05.20
powered by ブクログ題名から推測されるように、おどろおどろしい脚色でありながら、尚且つどこかコミカルな雰囲気もある長編小説です。伝説とあるように時代背景は1950年代、場所は山陰地方の辺境と称される一帯が話の発端になります。語り手は、この地で財をなした旧家、赤朽葉の系統者であるわたし、赤朽葉瞳子、彼女はその祖母、赤朽葉万葉の生きた時代、その母、赤朽葉毛毬の生きた時代、そして今の自分のことと、過去から未来に向けて三代に亘る一族の尋常ではない軌跡をたどります。 祖母の万葉の超能力ともいうべき、「千里眼」、10歳の少女がその時視えた未来がこのお話をひもとく鍵になっています。 祖母や母、その兄弟友人など登場する人物も多く、さらに時代の移り変わりと共にその時代の出来事などの記述も多いので、散漫になる部分も否めませんが、祖母、母も亡くなり、残ったわたしが、祖母の「遺言」ともいうべき言葉の謎を探る辺りになると、急に視界が開けた感じになります。
1投稿日: 2013.05.19
