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ある一日(新潮文庫)
ある一日(新潮文庫)
いしいしんじ/新潮社
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総合評価

13件)
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    いしいしんじの作品は最初にトリツカレ男をよんでいたので文体の違いに最初は戸惑いつつも、次々と目まぐるしく映る景観が流れてくるような不思議な文章で中盤くらいから癖になっていた。 自分は性別が男な為、慎二の立場で出産の立会いの場面を読んでいたがなかなかにハードというか、、想像を絶するのだろうという臨場感がひしひしと感じた。

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    投稿日: 2025.05.27
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    前半ははもとまつたけを食べる2人が印象的。 そして園子さんの出産シーン。私もつい3ヶ月前に体験したのが誇らしく思えるぐらい、神々しくて、奇蹟に近い営みなんだと思わせてもらえた。 母親目線だけでなく、これからまさに産まれ出ようとする胎児の目線で書いてある文章はものすごかった。手に汗を握るぐらいドキドキした。 また読み返したい。

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    投稿日: 2023.02.05
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    恐らくは作者自身の、ある夫婦の出産の一日。日常からはじまり陣痛を経て出産へ至る過程が、実に濃密にでも淡々と描かれています。独特の言葉遣いや、こちらとあちらを行き来する文章に圧倒されながら、ずんずんとお腹の底から力が湧き出てくるかのような気持ちにさせられます。 視点は夫から妻へ、妻から夫へと移り変わり、そして生まれて来る子の視点へと繋がります。それは生き物の持つ道であり、土地が結んだ道でもある。 最後にバースプラン(どのように出産したいかを記したもの)が提示されるのですが、それを読むと今まで通った道をもう一度振り返りたくなります。何とも力に満ちた物語でした。

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    投稿日: 2021.12.12
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    園子さんの出産を私小説として描いている。 ごはん日記のファンなので、やはり事実は日記として読むのに敵わないのだが、 出産の描写は未経験者にはとても恐ろしく、かつ、尊い。 園子さんのバースプランが巻末に載っているのもよかった。 高齢出産ということもあり、いろんなひとに希望を与えるとおもう。

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    投稿日: 2017.12.23
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    読み進めていくうちに、タイトルの「ある一日」を実感してハッとした。 1つ目は、この小説が一日ちょっとの出来事であること。 いしいしんじの言葉巧みな描写が、「ある一日」にこれほどの読み応えを与えている。 そして、もう1つは当たり前だけど「ある一日」の過ごし方は人それぞれ違い、どこかで違うドラマが起こっているということ。 登場人物以外の時間の存在を認識することで、「ある一日」の奇跡をより感じた。 記憶はないけど、何故か「いきもの」に共感する傍ら、 読者としてこの奇跡に純粋に感動できる、そんな物語です。

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    投稿日: 2015.11.29
  • 「食べる」と「食べられる」が一緒くたになる

    ひと組の夫婦が出産を迎える。 たったそれだけのシンプルな物語だけれど、「子を産む」という原初的なエネルギーの奔流を見事に表現している1冊です。 予定日を迎え、錦市場のアーケードでハモとまつたけを購入する慎二と園子。 それらを口にする場面は、どこかで不思議で官能的。 「まつたけを食べるのは、まつたけの夢をみるのと同じことだ」と語るように、自分が食材を食べているのか、それとも食べられているのか、その境界はどこまでも曖昧になっていきます 自分たちが食べたものが子となり、この世に生まれてくる。 後半、想像を絶する痛みを真正面から描ききった出産シーンは実に痛々しいのだけれど、どこまでも力強く命があふれているのです。

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    投稿日: 2015.07.17
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    園子の出産場面、最後の手紙でボロボロ泣いてしまった。 本を読んで泣いたのは『西の魔女が死んだ』以来だと思う。 最初の方こそ、登場人物2人の視点があっちにいったりこっちにいったり、ハモやうなぎの話をしたりで読みにくい小説だなぁ、と思ったけど、読み進めるとそれらが全て『生まれる』ことや『生命のエネルギー』や、その逆にあるであろう『死』に繋がっていたのだなぁ、と感じる。 京都の街を舞台にしているのも、伝統行事や錦市場の色が作品にすごく良いスパイスになっていると思う。

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    投稿日: 2015.02.26
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    もうすぐ出産を迎えるわたしに友人が贈ってくれた一冊。 いしいしんじという人は神様みたいだ。出産するのは自分ではなく妻なのに、ましてや胎児でもないのに、陣痛の苦しみ、胎児がこの世に生み出される瞬間の思いを、ものすごく鮮明に、詩的に描いていて、凄い。まさにいのちの誕生の奇蹟。

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    投稿日: 2015.01.18
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    こんどこそは、この世に生まれてきてくれる――。ひとつの命の誕生という奇跡をのせて、天体は回転しつづける。人生最大の一日を克明に描きだす、胸をゆすぶられる「出産小説」。 出産前に読んでおきたくて、予定日まであと17日というところで読了。 いしいさんの作品で現代が舞台のものは初めて読むから、どんな感じなのかなぁと思ったけど。くるくると情景が変わっていって、やっぱり不思議な感じ。 陣痛〜出産シーンは壮絶…。〝お腹の中の小さな「いきもの」〟目線がとても良かった。 バースプランは泣いた。 2020.7再読 こないだ読んだ「京都ごはん日記」のすぐ後の出来事。 いしいさんと園子さんの赤ちゃんのお話。 前に読んだ時は出産前だったけど、出産後のいま読むと陣痛の描写にうんうん頷いていた。 『だんだん人間でなくなっている、見まもる慎二はおもい、いっぽう園子には、そんなことはもうとうにわかっていた。』 『気絶できればまだ楽なのに、からだは燃える筒のように覚醒し、痛みとまぶしさのあまり目をつむることもできない。』 お腹の中の「いきもの」の目線。 『あらゆるものと一体だった自分が、いまはもう、すべてから切り離され、そうして、その切り離されてしまったものの影武者ばかりが、まわりにどさどさ無秩序に転がっている。』 確かにそう考えると、いきなり外に出され今まで一緒にいた紐やぶよぶよと離れて心細いし泣きたくもなるよね。 妊娠出産は神秘。

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    投稿日: 2014.11.05
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    意味がわからないようなわかるような。 また読みたいような読みたくないような、 面白くなかったような面白かったような。 不思議な感じ。。 数年後にまた読んでみたい。

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    投稿日: 2014.11.04
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    いしいしんじの息子さんの誕生の時をモチーフに描かれた、いきもの=いのちが生まれる瞬間。 生きてはいるけどまだ何者でもない状態。その象徴として、うなぎの幼生「レプトセファルス」が繰り返し登場する。どこから来るのかわからない(つい最近わかった)。こんなにも小さい。これから何になるのかわからない(何の幼生なのか大きくならないとわからない)、何かになったと思ったら変わってしまう(オスとメスを行ったり来たり)。 私が直前に読んだ福岡さんの動的平衡論の影響を受けているせいもあると思うが、「生き物はモノではない」「いのちとは名詞ではない動詞だ」というメッセージが伝わってくる。 いしいしんじは変わった、と感じたのが『みずうみ』。解説によると、本作品はその『みずうみ』とつながっているという。読み返してみよう。

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    投稿日: 2014.10.10
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    出産の一日を切り取ったお話。 母親が経験する痛み、胎児の戸惑いが迫ってくる。自分も色々な光と音、匂いに包まれているような気分になった。 141ページと薄いけど、濃かった。。最後のバースプラン、ステキです。

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    投稿日: 2014.08.25
  • 子どもが産まれるまでの1日は、驚くほど長く、濃密なものだった。

    自身の子の出産立ち会いを経験し、「自分が生きてきて一番驚いたこと。余韻がこだましているうちに、書いておかないといけない」という思いから書かれた実話ベースの出産小説。 夕食後に産気づき、出産をし、初乳そして家族の風景へ。子どもが生まれる前日から、24時間にもならないであろう”ある一日”の出産の様子が、立ち会う夫の意識が世界中に飛びながら描かれる。 40代を過ぎて、母子ともに命や健康に危険性が高い自然分娩を望む園子(実在の妻と同名)。お腹の中に10ヶ月もの間ともに過ごした子どもという名の、自分であり他人を、外の世界に産み出す時、そこには分かち難さを乗り越えるだけの痛みが必要だったのかもしれない。するりと出たのでは、何かが終わらず、何かが始まらない。 命をかけた危険で贅沢な長ーい1日を、立ち会うように体験できる濃厚な物語。

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    投稿日: 2013.09.20