
総合評価
(714件)| 169 | ||
| 233 | ||
| 206 | ||
| 40 | ||
| 3 |
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
表題作ともう一編からなる短編集。 小川さんの作品は、なんとなく心が取り込まれるというか、取り囲まれるというか、そういう内容が多い気がする。 今作もやはり標本のお店、かたりこべやのお店に取り込まれていく女性の物語。 そこに至るまでの描写の静謐さ美しさが堪らない。 抜け出す機会はあるのに自ら呪縛の世界に身を投じる様はネガティブな印象を受けがちだが、この人にかかるとそうなることがあたかも幸せであるかのように描かれるはやっぱりさすがだと感嘆してしまう。 この作家の醸し出す雰囲気というか質感というか、改めて好きだなぁ。
0投稿日: 2015.12.04
powered by ブクログタイトルに引かれて。 小川洋子さんって博士の愛した数式の人か…と読んだ後に気付いて、同じ人が書いているとは思えないダークな雰囲気。 作者のふり幅すごいなーと実感した一冊。
0投稿日: 2015.11.29
powered by ブクログ今回も小川洋子さんの世界に引き込まれる。 穏やかで密やかな世界。 ありえないほど現実離れしたことを書いているわけではないのに、自分の生きている世界とは違うベールの向こう側にある世界のことを話しているような、それでいて空想ばかりで莫迦らしくはない。 当たり前と言えば当たり前だけれど、この小川洋子さんの世界が苦手なひとは苦手だろうし、好きなひとは好きだろう。 ちなみにわたしは好きなひと。 「薬指の標本」 標本室で働くことになったわたしは、ある日、技術士から靴を贈られる。 毎日履いて欲しいと言われるままに、靴を履きつづける。 あつらえたように靴はわたしにピッタリ馴染む。履いているうちに、靴と足の境がわからなくなってくるほどに。 読んでいるとちょっとホラーのようにも感じるけれど、別に靴を脱ごうとしたら脱げなくて、脚を切り落としてなんてことにはならない。 なったら驚く。どうした小川洋子。 靴に侵食されていく足などと恐ろしいことを書いているのに、小川洋子さんの文章は神秘と愛に溢れている。 標本室にやって来る客も、技術士も、謎めいたひとばかり。 結局その謎も何も明らかにならないけれど、そこを読む物語ではないので問題ない。 封じ込めること、分離すること、完結させることが、ここの標本の意義だからです。 繰り返し思い出し、懐かしむための品物を持ってくるひとはいないんです。(P23) わたしなら、何を標本にしてもらうだろう。 形にならない過去の想いを標本にすることは不可能なのだろうか。 「六角形の小部屋」 プールで出会ったミドリさんを軽い気持ちで追ってみたわたしは、語り小部屋という六角形の小部屋の存続を知る。 その小部屋で独り言を呟くために様々なひとが訪れる。 わたしは、ミドリさんと息子のユズルさんに会いたくて、語り小部屋に通うようになる。 独り言を呟くための小部屋。 独り言を呟きたければ、トイレにでも篭って好きなだけ呟けばいいとも思うけれど、きっとわざわざ出向いてわざわざひとりになって呟くことに意義があるのだろう。 独り言って若いときには全く言わなかったけれど、最近気づいたらテレビに向かって話していた自分に衝撃を受けた。 年を取ったなと。 小川洋子さんらしい実体のない世界を堪能出来る一冊だった。
4投稿日: 2015.10.29緊張感がたまらない
表題作と『六角形の小部屋』の2点を収録。 どちらも不思議というか不気味な設定の話だけど、緊張感があって惹き込まれる。 小川洋子の作品は、『博士の愛した数式』しか読んだことがなかったけど、設定も面白いし、読ませる力も持っているので、もっと他の作品も読んでみたくなった。 点数は五つ星にしようかとも思ったけど、実質4.5ということで。
0投稿日: 2015.10.03
powered by ブクログ再読 前に読んだときは別に好きではなかったけど、読み返したら面白かった。大人になったのかな。大人な小説というイメージ。 薄いガラスみたいな雰囲気。強く押すと割れちゃいそうなやつ。上品な変態(貶してない)。
1投稿日: 2015.09.18
powered by ブクログ短編二編、どちらも共通して静謐な、閉じられた空気のある話。冷たく湿ってる、柔らかい指に触ってる感触がする。
1投稿日: 2015.09.14
powered by ブクログ読書loversの会で知り合った人のおすすめ本。 その方、とってもおきれいな方なのでその人はどんな本をよんでいるんだろうと思い、よんでみた。 精神的SMの話よね。 でもね、わかんね。 わからなくもないけど、わかりたくないっていうのが本心。 最後、どうなるんだろう。 身体ごと試験管に入れられて標本にされちゃうのかな、といろいろな想像がかけめぐり、ちょっと気持ち悪くなった。 でも、小川洋子さんの文章、好き。 他の小説も読んでみようと思えるほどすっと入ってくる。 空気で以心伝心しちゃうようなSM。 「わからなくもないけど、わかりたくないっていうのが本心。」っていうのは人間の根底にあるSMなんだと思う。それが露呈されるのが嫌だから(恥ずかしいから)そんな表現をしたんだと思う。 『六角形の小部屋』の方はそんなにおもしろくない。
1投稿日: 2015.09.12
powered by ブクログ大好きな作品です。 綺麗で少しゾクゾクして 温度や空気感がとても伝わってくる。 情景がはっきりと浮かび その世界観に入り込むことができる。 小説を読むようになった きっかけである大切な本です。
1投稿日: 2015.08.27
powered by ブクログ小川洋子の作品は、数字のように無機質で、整然としたところがあると思う。非日常な空間の中に散りばめられた小道具は日常的に目にするものだったりして、私たちの知らないところで、こんな不可思議なことが起こっているのかもしれないと思わせる。 薬指の標本、六角形の小部屋、どちらも非日常的な雰囲気があるのに、もしかしたら…と思わせる不思議な感覚がありました。 「薬指の標本」が特にお気に入り。主人公が標本技師に囚われていく感覚と、消失する女性や謎の地下室、乾いたバスルームでのデート、サイダーに落ちていく薬指の肉片のイメージなど、妖しく透明感のある描写がたまりません。 「六角形の小部屋」は小川洋子作品の中では普通のイメージですが、ミドリさんの存在感が忘れられません。 不可思議な感覚が心地よく美しい世界。小川洋子の世界観、素敵です。
3投稿日: 2015.08.27
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
まず「薬指の標本」って何だ?と思う。ちょっと気味悪い。 ここでの標本は封じ込め、分離、完結すること。 思い出や思いを標本にできたら気持ちが楽になるかも…。 「標本技術士」「指先の欠けた薬指」「浴室」作品全体の薄暗くて、奇妙で、不思議な世界観は、なんだか自分もあの古いアパートに入り込んでしまったみたいで、逃げ出したい気分と謎を確かめてみたい気分でぐいぐい先へ読んでしまいました。 こんなに気になるのに結局謎は謎のまま… 主人公はどうなってしまっただろう。 薬指と火傷の標本、ちょっと見てみたいです。
3投稿日: 2015.08.03
powered by ブクログ日の当たらない、静けさに満ちた部屋。 美しくて穏やかな日々の中に時折のぞくおそろしさに、こちらまで張り詰めてしまうほど引き込まれる。 私なら何を標本にするだろうか。
0投稿日: 2015.07.20
powered by ブクログ久しぶりに良い本に出会ったと思った。物語の中に、ピンと空気が張り詰めたような緊張感や静けさを感じる。文章から映像を想像しやすかった。弟子丸のやっていることはかなり異様なのに、なぜか彼に上品さを感じる。それは「標本」という言葉のマジックなのかもしれない。
3投稿日: 2015.05.14
powered by ブクログ面白かった。小川洋子さんって、こんなミステリータッチの不思議な物語も描かれるのですね。雰囲気が村上春樹にどこか似ているかも?
0投稿日: 2015.05.10
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
う~ん、私には合わなかった。確かに美しい文章ではあるが、特に後に何か残るわけではなかった。「薬指の標本」は、平たく言えばシリアルキラーの話か。昔読んだ青髭、という童話を思い出した。きっと地下室は青髭の開けてはいけない部屋のような場所なのだろうと。対して「六角形の小部屋」はほのぼの系。小部屋は懺悔室のようだけれども。しかもパエリアひっくり返したのがきっかけで憎まれた男は悲惨。ミドリさんが老婦人のお供のように行動を共にしていた理由も不明。ちょっと投げっぱなしすぎてよくわからなかった。本当に美知男の話はあれで終わりなのか…憎しみは消えなかったのか…哀れすぎる。
0投稿日: 2015.04.14
powered by ブクログ私が標本にしたいものってなんだろう。切り離して封じ込めてしまいたいものって、実は私にはないのではないかしらん。
0投稿日: 2015.04.04
powered by ブクログあまりに美しい内容と文体で、私には全く入る隙はなく、共感するところも、重なるところもない。 読みやすく、ライトで、しっとりとした暗さがある。しかし優れた文体なのに隙がある。現実のようにまで感じる作品なのに、時々小説になる。と言った方がいいだろうか。 この作家の作品をまた読むのだろうが、また、苦しい気持ちになるのだろう。
0投稿日: 2015.03.21
powered by ブクログ技術士と主人公の会話や文章全体につきまとう息もできないような密やかさにただ圧倒され、文章だけれど目を見張るという感覚を味わいました。
0投稿日: 2015.02.26
powered by ブクログちょっと変わった人を描く恋愛。 どれも純愛ではあるけれど…あまりにも難しくて共感したりするところを見つけられなかった。
0投稿日: 2015.02.16
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
薬指の標本…ぞわぞわする。気持ち良くないほうの…。ホラー?サスペンス?感情もの?分類出来ずに混ざっている。彼女、弟子丸氏が好みのキャラクターだったら多分一変するんだろうなあとも思う。私は靴磨きのおじいさんが好きですが。 「ああ、そうだ。ごくまれに、そういうすごい靴があるんだよ。足を冒しちゃうような靴がね。~それをはくのは、一週間に一度くらいにするんだな。そうじゃなきゃお嬢さん、自分の足を失くすことになるよ。」 「お嬢さんは標本を作ってるんだから、分るだろ。そういう、物との交流ってやつがさ。~それは俺がとやかく言うべきことじゃないけど、ただ、手遅れにならないうちに、自分できちんとけりをつけた方がいいっていうことさ。」 六角形の小部屋…ミドリさんとユズルさんの親子がかわいい。 『その時、老婦人は水の中からすっと腕を持ち上げ、人差し指を私の唇に当てた。~小部屋の外で、余計なことを語っちゃいけない。そう言って彼女はわたしの唇を封印したのだ。』
1投稿日: 2015.02.01
powered by ブクログ薬指を失った女性は仕事を辞め新しく勤め始めたのはあらゆるものを標本にしてくれる場所。 そこでともに働く標本士との間に生まれる官能と疑念はただ静かに語られる。 久々に小川洋子を読んだなあ。
0投稿日: 2014.12.28
powered by ブクログなんというか、淡々とした文章で語られているが、実はとても重い内容なのかもしれない。自分なりに表現するならば、極薄の膜の上で現実と深層心理的な意識の間を行ったり来たりしているような、、、 感想としてうまく表現できない。読後に眉間にしわを寄せ唸ってしまった。
0投稿日: 2014.12.14
powered by ブクログとても好きな作品です。 女子なら誰しもがうっとりするような比喩がちりばめられていました。 二人の関係がとても密やかでミステリアスでエロティック。
3投稿日: 2014.11.23
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
エロス。フェティッシュ。 たぶん標本シリアルキラーの術中に嵌った女性のお話し。犯人サイドのストーリーも面白そう。デクスターとか、ハンニバルみたいな感じで。
0投稿日: 2014.11.15
powered by ブクログ小川氏らしい、さわやかな筆致の短編小説。女性一人称の視点で淡々と描かれる日常のなかのちょっと不気味な話。2編とも似たようなストーリーで、「わたし」がどこかの隙間に入り込んでしまうような感覚。このあとどうなっちゃうんだろう?と思わせながら終わる。 ここに書くのもナンだが、「博士の愛した数式」は傑作だった。一方、妊娠カレンダーは何がいいのかさっぱり分からなかった。
0投稿日: 2014.11.10
powered by ブクログどうしてこうも、小川洋子さんの小説はなんともいえず、エロティックなんだろうか。 そのエロティックさはただ裸になるとか、そういうことではない。欠けた薬指。靴に侵食される足。標本室。これらが読み進めていくうちに、なんともいえぬエロティックさに変わっていく。 とても怪しい世界なのに、抜け出したくないような気持ちにさせる。いつまでも浸っていたいと思わずにはいられない。読後も、肌にいつまでも小川洋子さんの世界がまとわりついてくる。それが心地よい。
5投稿日: 2014.10.20
powered by ブクログ初めて読んだ時には、『標本』について色々考えた。自分の過去、傷つき、重たさを完全に切り離してどこか安全な場所においておけたら、と標本室のある世界が、標本室がなくても同じことを違う手続きで出来る、この世界にいるだろう人達のことが羨ましくなった。 心の負担となる過去さえ、その存在を消したいわけではない。大切に守り、保管しておきたい。それは自分の一部だからだ。ただの物ではなく、自分の思いそのものだ。時間、思い、空気等がそれに注がれ、馴染み、切り離せなくなってしまった。だから破棄することはできない。 今日読み返して、標本技師の彼のことを考えた。 一見中性的な穏やかさを持った男性、その奥に潜む熾烈さ、サディズム、隙の無さ…標本という美学に執着し、標本となるものを強烈に惹きつけて、遅効性の解けない毒で何処までも侵食してしまう。 靴だけじゃない、目線、言葉、身のこなしまでもが、相手を彼の意のままにするためのツール。それが無意識のものでも。標本以外のものへの徹底的な無関心、その冷ややかな残酷さ。 恐ろしく、危うく、魅惑的な男…主人公が、徹底的に囚われたままでいたい、完全に侵食されてしまいたい、彼の標本になりたいと願うのも無理はないと思う。 このようなことが、淡々とした平和的な文章で書かれている。 不完全なものを完全に描き切っている、世界が完結していると思った。 次に読んだ時にはまた違う感想を抱くのかと思うと楽しみだ。
0投稿日: 2014.10.07
powered by ブクログまさに耽美。 日本語と云うのは、こんなにも妖艶で、官能的に使えるんだね。 なんだろう、いつもこの人の本を読むと、夕焼けに照らされた商店街や田舎道を思い出す。 なんか現実味がないのかな。
0投稿日: 2014.09.23
powered by ブクログ楽譜に書かれた音、愛鳥の骨、火傷の傷跡―。 人々が思い出の品をなんでも標本にする「標本室」。そこで働いている“わたし”は、ある日標本技術士に自分の足に吸い付くようにぴったりと合った靴をプレゼントされる。 古いフィルム映画を見ているように情景が広がる。 「標本室」という閉ざされた空間のなか、危ういバランスで保たれた甘美な関係。人に溺れるとはこうゆうことかもしれない。
1投稿日: 2014.09.18
powered by ブクログ『薬指の標本』と『六角形の小部屋』の2つのお話が入った1冊。共に、非常に不思議な感覚にとらわれてしまうセピア色のお話でした。あまりに不思議すぎて、自分がどこにいるのか分からなくなってしまうような感じでした笑
0投稿日: 2014.09.18
powered by ブクログ残念ながら、合わなかった…こういう「すこしふしぎ」系の話は難しい。これも年のせいなのか??でも標本室には勤めてみたい。
0投稿日: 2014.07.31
powered by ブクログとても奇妙でいて、文のところどころに艶めいた色気を感じられる本。不思議でちょっと不気味だが、同じくらいの美しさがある。素敵。
0投稿日: 2014.07.25
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
どちらもゆったりで静謐な感じの雰囲気。 だが、表題作の「薬指の標本」はほんのりと猟奇的な臭いが漂う。弟子丸が実は。。。地下の標本技術室には。。。テラーな展開を想像してしまう。 もう一つの方も常人とは違う宿命を持った種族の切ない話しと、とらえられなくもない。 どちらも幻想的風味が濃い味付け。
1投稿日: 2014.07.25
powered by ブクログフランス映画「薬指の標本」を観てから読んだ 地下室のあの湿度のたかさや、別世界のような標本室の空気感が文章からひしひしと伝わってきて凄い 無音のおそろしさ
0投稿日: 2014.07.24
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
ラストにはもう、はまり込んでいたので 次の章「六角形の小部屋」を読み進めて、はてな。 標本技術室が六角形なのかと思っちゃったよ…! 3ページくらいでやっと気付いた。 まあそのくらい。不思議な空気感にずっと 薬指の標本みたく浸っていたい気持ちになる。 生々しく耽美的な感じがフランス映画のようだと思ったら 既に映像化されていたようで。少し気になります。 何故、弟子丸という名前なのかも気になります。
0投稿日: 2014.07.20
powered by ブクログあいかわらず透明感のある文章を書くな、と。一方で、序盤のミドリさんや、ホームパーティでの美知男の様子など、ひとが嫌悪感を抱くような表現も上手いことを知った。
0投稿日: 2014.07.13
powered by ブクログ小川洋子さんの、独特のゆらゆらした文章が大好きです。 青い海の近くの工場でサイダーが桃色に染まったかと思えば次の舞台はモノクロ感が漂い、主人公の心理描写には透明感があり、この色彩感がなんとも言えない。 かと思いきや、ストーリーはかなりブラックです。 2編の短編からなりますが、「薬指の標本」の方が好き。官能的なのに恐ろしい。
1投稿日: 2014.07.07
powered by ブクログ「本当はそういうものを持っているのに、 気づいていないだけなのかもしれないし、 最初から標本なんか、必要としていないかもしれない。」 私にもあるのかなと思って考えてみたけど いまのところわからない。 カタリコベヤはあってもいいかも。
0投稿日: 2014.05.15
powered by ブクログ小川洋子女史のミニマムな部分への偏愛がひかる一冊。とりあえず小川洋子さんをお勧めするときはこの一冊。
1投稿日: 2014.04.30
powered by ブクログ穏やかで繊細で美しいけれど、少し怖くて寂しいお話 サイダーを桃色に染めてゆく薬指の欠片、ゾッとする光景のはずなのに妙な魅力を感じさせる この本に出てくる標本技術室と六角形の小部屋は、どちらも不思議な場所なのに現実の何処かに存在していてもおかしくないような気もした
1投稿日: 2014.04.25
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
図書館で何かに導かれるように手に取った本。静かで音もない物語。描かれる恋愛模様は妖艶で少し危険な雰囲気を醸し出しています。弟子丸がくれた靴をこのまま履き続けていると、脱げなくなって、いずれ自分の”足”になってしまうのではないか、という描写が怖いけれどステキだなとも思いました。
0投稿日: 2014.04.13
powered by ブクログ依頼人が持ち込む何もかもを標本にして封じ込める標本屋。小指の先をなくし清涼飲料の工場を辞め、そこの事務員として働き始めた“私”は、ある日標本技師から、自分の足にぴったりと合う靴をプレゼントされる。「これからは、毎日その靴をはいてほしい」 放課後の学校の廊下のようにひっそりとしている中、静かな狂気と美しさを垣間見たような感じがしました。清らかな透き通った文体で描かれるどこか浮世離れした世界。薬指がちぎれる描写は生々しくなく、淡い色合いの水彩画を見ているような気分になりました。小川洋子さんの作品はこれが初めてでしたが、紅茶のお供に似合いそうなお話だなあという印象を受けます。このまま静けさと共に体が消えていくのではないか、そんな読後感のある一冊でした。
0投稿日: 2014.04.07
powered by ブクログ博士が愛した数式の映画を観て以来とても気になっていた作家、小川洋子さん。何かに導かれる様に、薬指の標本を手に取りました。とても不思議な題材で予想も出来ない内容でしたが、読んで行くうち、安らかな空間と今迄感じた事がないような世界に引き摺り込まれたような自分がいましま。忘れることの出来ない不思議な世界を感じた一冊です。
1投稿日: 2014.04.02
powered by ブクログ今回の明るいボヤキテーマの最高峰はサッカーだろう。足蹴にし、頭突きをかまし、手ではさわってやらないボールのあわれ。ラグビーのボールは、敵と奪い合って大切に自分ちへ持ち帰ろうとする。対してサッカーのボールは、自分の陣地には入れさせまいとキーパーなる警備員を置き、こんなもの相手の陣地に蹴り込んでおけというまるで疫病神扱い。ホントだ。
0投稿日: 2014.03.02
powered by ブクログ嫌いではないけど、理解しがたい世界。「六角形の小部屋」の主人公は面倒くさい人間だなあ、と思った。「薬指の標本」は幻想的なムード満載。薬指がちぎれる描写は、グロテスク感を全く感じさせず、美しく仕上がっている。桃色に染まるサイダーの色と泡が、美しい水彩画を見ているようだ。
1投稿日: 2014.02.23
powered by ブクログ徹底的に静かで清潔感のある文章。性的な描写も含めて上品。妖しくて美しい独特の世界観に引き込まれてしまう小説です。
1投稿日: 2014.02.12
powered by ブクログ恋という言葉も愛という言葉も使わずに、ここまでの表現ができるなんて。大切なものを標本にすることで、自分を解放するという発想もすごい。
3投稿日: 2014.01.26
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
『薬指の標本』…"わたし"は、人々が思い出の品々を持ち込み標本に閉じ込める、標本室で働いている。ある日標本技術士に素敵な靴をプレゼントされた。その靴はわたしの足にあまりにもぴったりであった。 『六角形の小部屋』…六角形の小部屋で、人々は一人きりで語っていく。その話し声は外にもれることはない。ミドリさんはその六角形の小部屋を移動させながら旅をしている。 本の後ろの紹介文に「恋愛の痛みと恍惚を透明感漂う文章で描いた珠玉の二編」とあるが、私は本書から恋愛を感じ取ることはありませんでした。 標本室も小部屋も自分を封じ込める、吐き出す場だと思います。 毎日生きていると、どうしようもない感情を自分の中から出さないといけないのかもしれません。そんな場所だったのだと思います。 『薬指の標本』は、弟子丸氏がことさら奇妙で、彼の考えていることが全くわかりません。 どうしてわたしに靴を贈ったのでしょう。なぜ靴はあんなにもぴったりだったのでしょう。なんだか弟子丸氏に殺されてしまいそうな、消されてしまいそうな感じがしました。 『六角形の小部屋』では、ミドリさんにもユズルさんにも好感を持ちました。そばにいてほしい人たちです。 人に悩み事を相談することもあるけれど、自分だけで語ることが必要な時もあるんだなと思います。 そんな時、そっと飲み物を差し出してくれる人というのは安心すると思いました。
0投稿日: 2014.01.23
powered by ブクログ不思議な読了感。謎が残ったままでもどかしいけれど、だからこそ物語が自分の中でずっと生き続けるのではないかと思う。
1投稿日: 2014.01.01
powered by ブクログ「薬指の標本」も、「六角形の小部屋」も、奇妙な恐怖心が残った。 明らかにされないことが多いゆえなのかな。 子供の頃に観た笑うセールスマンみたいに感じた。いま観たら、全く違うのかもしれないけれど。 映画みたいだと思っていたら、実際にフランス映画になっていておどろく。 どちらの話も、想像で立ち上がるのが日本人ではなく西洋のかたのイメージ。 「六角形の小部屋」の中に出てくる「特別な印象」という言葉がなんだか強く残っている。 ほめているわけでもけなしているわけでもなく、ただ本当に周りと違う、という意味に感じた。プラスとかマイナスとかとは違う意味合い。
0投稿日: 2013.12.21
powered by ブクログ幻想的でミステリアスな話。それぞれの想いが標本になっていく中「わたし」も標本に魅せられていく。黒い革靴にかけられた呪い、そしてあの標本技術室の扉の先はどうなっているのだろう。
0投稿日: 2013.12.08
powered by ブクログ2013.12.6 pm11:35読了。2編からなる短編集。『薬指の標本』『六角形の小部屋』まず『薬指の標本』について述べる。穏やかでどこか現実と切り離されたような場所。静かな物語。静かすぎて恐ろしくもある。標本をするということは閉じ込めるということ。そのモノと、それにまつわる時間や思い出、記憶を。自分から切り離す。切り離すことで客観性をもたせる。この世界の、標本室のどこかにある自分の標本があるという事実が、ひとを支え、安心させる。誰もが標本を持つ。例えそれが無意識下であっても。私の「標本」はなんだろう。穏やかすぎて恐ろしくも感じる物語。
0投稿日: 2013.12.06
powered by ブクログ運命とは自分で選択していくものではなく、あらかじめ決められた道をただ進みそれに導かれているだけという印象を与える二篇。靴屋の男を出さずに靴と足の描写の変化だけにすれば良かったのに、と生意気にも思うところはあった。
0投稿日: 2013.12.04
powered by ブクログ言葉では表現しがたい何とも言えない雰囲気が漂うお話。この世の話なんだけど、この世ではないような感触のお話。 淡々としているようでしていない。 閉じた空間 セピア色 音のない世界 三時から四時くらいの昼なのか夕方なのかよく分からない時間。 そんなことを思わされるお話でした。
0投稿日: 2013.12.03
powered by ブクログ薬指の標本。 人々の思い出を標本にして閉じ込める標本室で働く私と標本技師。技師の眼差しや、私に背中に添えられた大きな手、正確な言葉、それらにからめとられる女の喜び。保存液の中で音もなく揺れるような物語。 欠損した薬指の先であったり、黒い革靴であったり、火傷の痕であったり、誰も居ない浴室の静かで清潔なフェティシズムやエロスが支配する物語でもあったけど、一番それをあらわしたシーンは技師が脱がしたビニールの靴を浴室の床に叩き付けた様を優美に感じながらもそれをまだまだ歩き続ける合図のように捉えた女の思考だったと思う。そこが非常に気に入った。 ラストの終わり方も予想通りとはいえこれ以上ない所で終わっていて気持ちよかった。 六角形の小部屋 語り小部屋と呼ばれる六角柱に入り独り言を落とす不思議な話。 リアリティーを持たせながら非現実的な話を書き、1を10に大げさに描写出来る著者の能力がこれでも活かされてる。 こちらのほうは主人公の私が嫌いなタイプで合わなかったし、何がという物語でもないので淡々と読み進めていったが内緒話を覗き見てるような感覚で楽しんだ。そして終わり方が最高に好み。 それぞれ5と3で間を取って四つ☆。
3投稿日: 2013.11.18
powered by ブクログ静かで幻想的な、小川さんの世界に引き込まれました。フランスで映画化されたのも納得の雰囲気が、秋にぴったりです! 熊本大学:ミチヨ
0投稿日: 2013.10.29
powered by ブクログ読んでて村上春樹を連想した。 何を言っているのか分かるような分からないような純文学は理系の僕には合わない。
0投稿日: 2013.10.16
powered by ブクログ静かで綺麗なんだけれどどこか怖く、でもドロドロしているわけでもなく…気がついたら読み終わっていました。とても不思議な感じ。 http://lettura.blog86.fc2.com/blog-entry-330.html
0投稿日: 2013.10.16
powered by ブクログ薬指の一部を欠損した女性。 どのようなものでも標本にしてくれる店。 思い出。音楽。火傷の傷。 そこにはどのような想いが、 あるのだろうか。 あなたは、 標本にすべき大切なモノは、 なにかありますか?
0投稿日: 2013.10.11
powered by ブクログアンニュイってこういう雰囲気に使うのかな?と思った作品です! 小川洋子さんの作品は『博士の愛した数式』以来ですが、作品全体に漂うアンニュイな感じにやられました。 謎に包まれた標本技術士と出会い、次第に濃密な時間を共にするようになる主人公。誰かの「標本」になりたいとか、閉じ込められたいという願望は私にはないけれど、それも相手次第…ってことなんでしょうか(*^^*)
0投稿日: 2013.10.07
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
六角形の小部屋を読むと、薬指の標本の不思議な世界があざとく感じる。弟子丸氏もピースも対して変わりはない。が、ユズルとミドリは常野の人達のよーでもある。
0投稿日: 2013.09.25
powered by ブクログ表題作『薬指の標本』は、そのタイトルからして、何やら背徳的な匂いが漂う。そして、小説は、やはり期待(?)に違わず、その細部に至るまでが、淫靡な美意識に満ちていた。そもそも、ここでは物語の全体が、隠喩として機能しており、それはまさしく「標本」そのものを指し示しているのにほかならない。語り手である「わたし」は、しだいに標本技術師の弟子丸のフェティッシュに捉えられてゆくが、やがて2人のフェティッシュが共振した時、読者である私たちは、小さな戦慄に震えるのである。『六角形の小部屋』は、安倍公房風のシュールな味わい。
1投稿日: 2013.09.24
powered by ブクログ暗く湿った雨の日に ずぶずぶと人知れず呑み込まれていく… そして静かに、標本として永い永い眠りにつく。 そんな感覚に陥る一冊でした。 奇妙で不可思議で、そして静かに蠢く底なしの欲望。 こんなにも何かに(誰かに?)執着できるのはある意味 幸せなことなのかもしれない。
1投稿日: 2013.09.19
powered by ブクログお、小川洋子を読むのが何年ぶりか分からないのですが、(とりあえずブクログの記録つけ始めてからは小川洋子の小説は読んでいないから、4年以上はたってるのはたしか)印象が違いすぎて驚いた。もっと平仮名を乱用したぬめぬめとした文章の記憶があったのだけれど、全然そんなことない。もしかしたら川上弘美と混同していたのかもしれない。なんていうか、けっこうしっかりとしていて非常に日本語らしい日本語というか、とにかく読みやすい。物語は生き生きとしていて、特に薬指の標本はぐっと心に迫るところもあった。たまに流れを損なっているかもしれないと思わせる描写があるように感じられたけれども、それはわたしの感じ方であって、何を隠そうなんだか優れた、とても面白い小説だった。こんな試みをしていたなんて。小川洋子はこんな作家だったなんて。なんだかほんとうに今まで誤解していたみたい。
0投稿日: 2013.09.19
powered by ブクログ何ともミステリアスな読み物であった。 「標本室」があったなら、自分は何を標本しようとするだろうか。。。 なんと、2005年、フランスの女性監督ディアーヌ・ベルトランが映画化していた。 映像化したら美しくなるだろうなと想像しながら読んでいたので、 映画化されていたのには納得できた。 見てみたい。。。。 この文庫本には、薬指の標本」「六角形の小部屋」の二篇が収録されていた。 「六角形の小部屋」もミステリアス。。。 小川洋子作品は「博士の愛した数式」が初めてだった私にとって、 端々に、「この人(小川洋子のこと)、理系っぽい」という表現があって、 おもしろかった。
0投稿日: 2013.09.13
powered by ブクログすごく甘美的で、 でも、変なねちっこさはなくて 読みやすい恋愛作品 小川洋子の作品はこれが初めて 標本室というそんな場所が 本当にこの世にあったのなら わたしはなにを標本にするのだろう 二篇とも続きが気になって 終わるパターン 自分で想像するしかない(笑)
0投稿日: 2013.09.10
powered by ブクログ設定やら関係性にはとってもとっても胸が熱くなるものがあるけども、 もうすこしお話を読みたかった物足りなさが残る。
0投稿日: 2013.08.22
powered by ブクログ薬指、標本、靴。物語のキーとなるアイテムの使われ方が素晴らしかったです。また、「脱がせる」描写が官能的かつ清らかで、主人公が靴を脱がせられる場面がとくに詩的で、映像が目の前に浮かぶようでした。
0投稿日: 2013.08.01
powered by ブクログ夏だからゾクゾクするのが読みたいと思ってこれにしました。薬指の標本も六角形の小部屋もいい感じに気味悪くてよかったです。六角形の小部屋は、主人公の失恋秘話が少し中途半端かなーと思い星4です。
0投稿日: 2013.07.30
powered by ブクログ「あらゆる物」を標本にする博士と、その事務員のお話です。 幻想的で妖しい、読み終わった後にちょっとぞっとする感じがしました。 こういう世界観、好きですv
0投稿日: 2013.07.15
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
暑い夏の日に読了。 「薬指の標本」事故で薬指の先を欠かしたお嬢さんが、浮き世離れした変態ぽい標本士がいる標本室で働き始め、靴をもらって浮かれたりやきもきしたりして、彼のことを知りたさに自分の薬指を標本にしてもらう話。 友人たちの評価が高い作品だったので期待して読んだが、この標本士、弟子丸を好きになれるかなれないかで評価が分かれる。わたしは純粋に気持ち悪いと思った。 全体に漂うお洒落な雰囲気、ゆっくりと壊れていく古いモノたち、穏やかで台詞がかった言葉、そしてさらりとしているのに変質的で、絡み付くような男。胸焼けがする。 せっかく裸でいる機会があったのだから、もらった靴で蹴りの一つもくれてやり、セックスして既成事実作って夫婦で楽しい標本室を切り盛りして、老婆に裁縫を教えてもらって楽しく暮らせばよかったのに(それではお話にならないか)。 「六角形の部屋」ジムで出逢った、不思議な空気を持ったミドリという人が気になり、話し掛けてしまう主人公。 あとをつけ、辿り着いたのが小さな六角形の部屋。その部屋では何を言っても誰にも聴こえないので、皆その部屋に独り言を言いにくる。 ミチオを振った理由は、わかった。絶対にうっかりしてはいけないところでやらかしてしまい、許しを乞うような目でお茶目に笑う男性は、本当に情けない。それすら愛しいと思えれば、結婚していただろうけれど。 今のわたしの六角形の箱はTwitterだろうが、確かに、いつか手離さなければなあなんて考えた。
0投稿日: 2013.07.12
powered by ブクログ小川作品と初めて会ったのがこちらの薬指の標本で、ここからどんどん小川ワールドにはまっていきました。 狂気と甘美な美しさが同居している作品です。
1投稿日: 2013.07.01
powered by ブクログ薬指が本体ってことですか? 標本にされるのはいいことなのか… 二つ目のお話は人生の結末は決まっていても色々もがいていくんだと感じた。 そして、語ることで解放される思いってあるよね。うん。
0投稿日: 2013.06.24
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
「薬指の標本」と「六角形の小部屋」の二篇を収録した短編集です。 どちらも胸の詰まるような閉塞感に包まれた、いわば瓶詰め箱詰めの愛といった雰囲気でした。 短編で読みやすいのにぎゅっと凝縮された痛みが濃く鈍く響いて、読了後はなんとも言いがたい想いが募る。 すっきりとするわけではないけれど、後味の悪さもない。これでよかったのだとおもえる結末がそこにありました。 小川洋子さんの透明の中にひとすじの濁りを落としたような文章が本当に美しかったです。
3投稿日: 2013.06.16
powered by ブクログ裏表紙のあらすじに書いてある、“恋愛の痛みと恍惚を透明感漂う文章で描いた”という言葉に惹かれて買ってみました。 読んでみたら何とも言えない感じでした。 何か難しい。 文学的というか、感覚的というか、不思議な感じで、短編だから読みやすいんですがあまりハマれませんでした。 解説を読んでなるほどと思いました。 「ある」ということ、「ない」ということ。確かにその通りでした。 薬指の標本はフランス映画があるということだったのでそれはちょっと見てみたいなと思いました。
3投稿日: 2013.06.08
powered by ブクログ何とも言えない雰囲気を持った話でした。この本を題材にしたフランス映画があるとか。いずれ見てみたいです。
0投稿日: 2013.06.03
powered by ブクログ小川さんの作品はなぜかどれもゆっくりと情景を想像しながら読むことになる。この二つの作品とも余韻に浸らせてもらいました。 読者に、読み終えた後いろんなことを感じて、考えてもらいたいと思ってるんじゃないかと思えるほどの終わり方には脱帽。
0投稿日: 2013.06.01
powered by ブクログ法学部だった学生の頃、刑事訴訟法のヤストミ先生がいうことには「いいか、不在証明(アリバイの立証)ってのはすごく難しいんだよ。ある時間に自分がそこにいなかったことを証明しなくちゃいけない。それはつまり、<そこにいた>可能性を<すべて>否定するか、あるいは<そこではない別のところにいた>という、他の場所における存在を証明しないといけないってことなんだ。つまり非存在を証明するためカウンターとしてとりうる手段は、可能性の100%の否定がありえない以上、別に存在していたことを証明することしかないということになる。な、面白い論理矛盾だろ?非存在は存在でしか証明できないってことなんだよ」 長い思い出話しつれい。なにがいいたかったかというと、小川洋子の「薬指の標本」を読んで一番感じたのは「非存在の証明ないしは強調」だったから。主人公の女性は事故で薬指の一部を「失い」、弟子丸さんに送られた「靴」のせいで自我も喪失しかけているのだ。彼女の関わる訪問者たちも、それぞれ失ったものを封印する(自分の心から「失う」)ために標本室を訪れる。焼け跡から生えたきのこは家族の「不存在」を封じ込めるために標本にされ、楽譜を持ってきた女性は、失った恋人の思い出を封じ込めるために音楽を標本にする。そしてそれらの標本は、基本的には二度と省みられることはない。そこにも来訪という行為を「失う」人々が描かれ、また出会いと別れを余儀なく強いられる続ける主人公の「出会いの喪失」が描かれる。よくもまぁ、といささか食傷気味になるほどに、喪失のオンパレードだ。 ちなみに今回、タイトルになっていない「六角形の小部屋」の方によりあたしは、小川洋子のたくらみというか女性特有の粘っこさを感じた。まず、「薬指~」で主人公が欠損しているものは薬指の一部と言う比較的分かりやすい部位であり、エンディングが、世間一般の理解とはかけ離れこそすれ、当人の満足にフォーカスされている。彼女は薬指の欠損と引き換えに「充たされる」ことが最後の最後で暗示されている。ところが六角部屋のほうは、一見穏やかに見える主人公が実は、婚約直前の男性に対して憎しみを抱き始めてしまっていうという穏やかでない告白で急転換する。彼女は逆に、「恋人」を得ることで「憎しみ」を発芽させ苦しむのである。しかもついに彼と別れた彼女にすがる男の姿は、非常に惨めに描かれる。まるで喪失を認めない方をせせら笑うかのように。 <引用> わざとらしくあわてたふうに、彼はコートのポケットから何か小さな袋を取り出した。「これを返さなきゃと思ったんだ。<中略>」 かれはとても大事な品物を扱うようにその袋を両手で包んだ。 それは化粧ポーチだった。確かに彼の部屋に置いていたものだ。ずいぶん昔、化粧品会社の景品でもらった安物で、花柄模様は色あせ、ファスナーのところがほつれている。 <中略> 頬と鼻の頭が赤くなっていた。一ヶ月前と比べて美知男はどこも変わっていなかった。短く刈り上げた髪も、緊張すると繰り返しまばたきする癖も、衿の大きな時代遅れのコートもそのままだった。 <引用終わり> 失うことのできない男女に作者が渡す引導は、予想通りの冷徹なものだ。男には女との別離を、女には安心の小部屋との別離を。 主人公が彼に対して幻滅を感じるのが、婚約発表予定パーティーで、うっかり男性が転んでパエリヤをぶちまけ、そこに倒れこむことをきっかけにするのがまた、底意地悪い。いったん作るとわかるがパエリアは、生米からいため、サフランを使い、シーフードを大量に使うなどなかなか手間のかかる高額なお料理なのだ。しかもサフランの黄色、えびの赤、パプリカのオレンジやグリーン、ムール貝の紫(黒)などの色とりどりの、楽しいパーティー料理でもある。そこに医者のポケベルを油まみれに突っ込む小川洋子の悪意。ポケベルは主人公が、医者である彼を奪われるシンボルとして配置されているからなおさらだ。カラフルに彩られた別離と悪意。不愉快極まりない食べ物への冒涜。 小川洋子さんの物語にあたる際には自分がかなり健康であるときを選ぶ、あるいはかなり警戒して読み進むべしと思っている。彼女の文章はいつも淡々としていて繊細なのに、その後ろに割と底意地の悪いカタマリがあって、ときどきあたしはそれにけつまずくからだ。明らかに作者がそこに故意で置いたのが見え見えなのでちょっと怖い。悪意のカタマリにつまずいて転んで、振り返ったときに作者の冷笑に出会うとややへこむ。わかっているのにやっぱりあんたかよ、そんな感じに。 今回ももちろん、その寒々とした冷笑は健在。(健康に在る、というこの漢字が似合わないこと!!!)ただし最後の最後にどんとなげてあるだけなので、転ぶことはあんまりないとは思うけれど。でもさー、この文庫版、作者の顔写真が掲載されているんですよ。女性の目から見ても彼女は、色白の結構かわいい線の細そうな女性に見えるのね。少し微笑んでいて。でも正直、読後にこの写真を見たら逆にこわくなっちゃった。ほれ、彼女がそこに「存在」している前後、レンズに写っていない(レンズ内に非存在しているところ、とでもいいましょうかね)ところでは、どんな性格悪いオンナなんだろかね、なんて、つい思っちゃうわけなんですよね、もう。
1投稿日: 2013.05.17
powered by ブクログ静かで澄んだ空気の中に、緊迫した空気を感じる、不思議な物語。 危なくて、なまめかしくて、美しい。 もうひとつの「六角形の小部屋」では、人の心のとりとめのなさを感じた。 きっと、誰の心の中にもカタリコベヤがあって、語りつくせない言葉たちが静かに封印されているのだろう。
9投稿日: 2013.05.11
powered by ブクログ小指の先を無くし清涼飲料の工場をやめ、 標本屋の事務員として働き始める彼女。 標本技師から黒の靴をプレゼントされ、 毎日履くようにお願いされる。 ある時、靴磨きから 「それをはくのは、一週間に一度くらいにするんだな。 そうじゃなきゃお嬢さん、自分の足を失くすことになるよ」 と言われ… 少しずつ破滅に向かっていることを予感させる怖さや歪んだ愛の形、 好きって訳ではないのに、次頁を読まずにはいられない面白さがあるな。
0投稿日: 2013.04.30
powered by ブクログ小川洋子さんのこういうところが好き。 炭酸水のぽつぽつという音だけが聴こえるような生ぬるい世界。静かで、グロテスクで、そこが官能的で… 彼からいちばん愛されている今を標本にしたい。時間は止まり、外とは隔絶された空間で、自分は彼に永遠に所有されるのだ。 なにもない、時の流れない世界で、ふたりきりで…… というような気持ちが好きなんだと思う。わたしの恋愛観には少なからずこういう要素がある。
0投稿日: 2013.04.16
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
決して、悪い意味での★3つではないんですが。 彼女、小川洋子さんの名前を聞いたのは 「博士の愛した数式」。 初めて読んだ作品が、この「薬指の標本」になります。 「薬指の標本」と「六角形の部屋」という 作品が収録されていて。 どちらも一人称は「わたし」、名前は明らかになりません。 惹かれる、といえばそこでしょうか。 表題作の「薬指の標本」。 標本室、にて標本を作る男性弟子丸と、 事務作業をこなす「わたし」。 弟子丸さん、なんてこわいひとなんでしょうね。 心が取られていくような心理的恐怖が私は好きです。 正にそういうお話でした。 こわくて、かなしくて、どうしようもなく不安になる。 最後、「わたし」は薬指を、 弟子丸さんにあげたいと思って標本にするのだと思うんですが 左手、なんですよね。 そう考えたら少しだけ温かいかな。 左手以外の部分はどこへ行ったんでしょう。 足は。どうなったんでしょう。 合った物を贈るという縛りに、すごく怯えました。 こわい、とってもこわかったお話です。 私だったら、 おじいさんが靴を磨いてくれた時点で脱いでる。 「六角形の部屋」。 最初、老婦人の件はあまり惹かれなかったのですが 語り小部屋、が出てきた時点で一気に引き込まれて。 私は文字にする派なので多分、 この部屋の必要はないんですけど。 何か変わったんでしょうか、「わたし」。 なにかひとつ、テーマがあるというよりは。 一部分を切り取って書いた、そんな印象。 嫌いじゃないけれど、謎はとても多く残るね。 彼女の世界に初めて触れたけれど、 言いようのない不安感。 描写はとても丁寧でいいと思います。 それでもこわかったな。本当に。
0投稿日: 2013.04.13
powered by ブクログ短く読みやすいのにいつまでも心に残りそうな物語。 少し怖いような寂しいような切ないようななんとも言えない気持ちになる。
0投稿日: 2013.04.11
powered by ブクログなんとも言えない怪しく官能的な世界。夜中のろうそくの光や、ランプの光の中で醸し出される幻想的な風景。それにしても靴をはかされるってなんだかどんな行為よりエロティックに感じてしまうのはなぜだろう。足を掴まれてぴったりな靴をはかされるシーンには独占欲を、履いていた古ぼけた靴をタイルに打ち付けるシーンには狂気を。どれも恋愛すると抱く感情。
3投稿日: 2013.04.06
powered by ブクログ2013.3/17 標本室で働く女性の話。 静かで閉鎖的な世界観、透明感のある綺麗な文章。こういう不思議な世界観好き。
0投稿日: 2013.03.17
powered by ブクログおとぎ話。なんだか救いようのない感じ。静かな読み心地です。 六角形の~はオチを期待して読み進めたががっかり。
0投稿日: 2013.03.15
powered by ブクログ『薬指の標本』 そら恐ろしい感じがしました。 でも、嫌いじゃないです、こういう不思議さ。 独特の雰囲気があります。 歴史ある聖堂、教会とか寺社仏閣、博物館に訪れた時のような、何とも言えない空気を感じました。 ホコリっぽいような、もの静かで、荘厳な、重いような、現実離れしているような。 うまく表現できませんが、何か教訓的なものを得る、 共感する、娯楽というものではない作品でしょうか? 観察する、垣間みる、傍観する。。。 アタマを使うでも無く、そんなスタンスで読みました。 (END)
0投稿日: 2013.03.11
powered by ブクログ中学生の時だったら、きっと好きになっていたであろう作家。短編「六角形の小部屋」の主人公と同じようなことで悩んでいた思い出がある。 今の私には、ちょっと色々と物足りないかな。
0投稿日: 2013.03.09
powered by ブクログこの人の書く『愛』は形が歪んでて解りにくい。一筋縄じゃいかないものばかり。 『博士の愛した数式』で目にとまっちゃったからかもしれないけど、「大丈夫です。」って台詞がすごく目を引いた。 小川洋子さんが誰かに云いたい言葉なのか、誰かに云われたい言葉なのか。
0投稿日: 2013.02.20
powered by ブクログフランス映画の原作 と書かれた帯が目に入り、興味が湧いて購入した本。 薬指の標本というタイトルからは内容が想像できなかったのですが、読み始めるとあっという間に不思議な世界に引き込まれてしまいました。 確かに、映像化するなら邦画ではなく、フランス映画!と納得できる作品でした。とても丁寧に、綺麗な文章で表現される独特の空気感が好きです。
0投稿日: 2013.02.19
powered by ブクログ『博士の愛した数式』の著者。 短編小説が二篇。 ふとしたことをきっかけに日常を踏み外した主人公の恋愛小説?といえばそのような類。 この著者の短編は思うに、かさぶたを興味本位ではがしてしまう痛々しさまたは生々しさを帯びているというのが個人的な見解です。 設定は緻密でそのような世界もあり得るのだろうけれど、何かを掛け違わないと、どこかで踏み外さないと辿り着けない世界で繰り広げられる物語です。 文章は精緻で美しいので、雨降りの午後に小説でも読みふけるか、という方にオススメです。
0投稿日: 2013.02.19
powered by ブクログ短編2本。「薬指の標本」は、思い出の品を何でも標本にする研究室で働く女性の話。ちょっと気持ち悪い話だが、静かな研究室の静かで不思議な描写が良いと思う。ソフトSM小説。「六角形の小部屋」は、迷い込んだ路地に忽然と現れた、自分の内面を吐露できる場所六角の小部屋での話。こちらも良い。
0投稿日: 2013.02.15
powered by ブクログ薬指の標本 不思議な世界。「わたし」を含めて標本室に来る人たちの一見残酷そうなエピソードが、ただ淡々と進んでいく。その度にドキドキしたり、胸が締め付けられるようになる・・・それが余韻のように広がっていく。繰り返し読みたくなってしまう。 六角形の小部屋 こちらも不思議な世界。こんな部屋があったら行ってみたいと思ったのだけど、吐き出すことは実は閉じ込めることなのかなっと、はっとした。
0投稿日: 2013.02.09
powered by ブクロググロテスクなシーンでさえも、あまり血生臭さを感じさせない文章が、逆に不気味さを醸し出しているように感じました。 また透明感のある文章が、不思議な「世界観」を表現していると思います。 読み終わると何とも言えない、不思議な気持ち・不気味さが心に残ります。
0投稿日: 2013.02.09
powered by ブクログ非日常的 / 浮遊感/ 自由/ 所帯染みてない/ 主人公はマイペース、自分が興味がある事だけ考えて、 自分の事でも、どこか人ごとで客観的/ 賑やかさの反対/ 迷い込んだら戻れないかもしれないのに覗いてしまう感じ/ 出てくる男性はぜったいに綺麗な顔立ちをしているはず…願望
0投稿日: 2013.01.25
powered by ブクログフランス映画の原作。 綺麗でエレガント、シュール。 どこか冷たさが漂う。 フランス映画になるのも納得。 映像にするには、とてもいい材料だと思う。 でも、私としては、 もうひとつの『六角形の小部屋』の方が好き。 『薬指の標本』よりも、 より人間的で、日常的。
1投稿日: 2013.01.21
powered by ブクログ二つの物語からなる小説。 個人的に最初の一編が印象的。 それを標本にするってことは、あの人物はそうなっちゃったというこでよろしいんでしょうかね?
0投稿日: 2013.01.11
powered by ブクログ表題作の薬指の標本を読みながら童話の青髭を思い出した。 静謐さの中に、グロテスクとエロスが紙一重で混じり合う狂気を孕んだ世界。 その奇妙なバランスで成り立つ美しさが、現代的な大人向けの童話やお伽話的な空気を纏っていると思う。 これは私が初めて読んだ小川洋子の作品が、おとぎ話の忘れ物だったことも影響しているかもしれないけど。 六角形の小部屋はこの表題作と並べちゃうとインパクトに欠けるかも。
0投稿日: 2013.01.10
powered by ブクログ「薬指の標本」「六角形の小部屋」の二編。 それぞれの物語の「標本室」と「小部屋」の雰囲気、空気感におもわず吸い込まれそうになる不思議な話。
0投稿日: 2013.01.04
powered by ブクログ小川洋子さんは、物語よりも「世界観」を描いているんだなと思った。 標本、薬指、靴… 目指す空気感に似合いの題材を、 丁寧に織ったような物語。 話に実を求めるような読み方ではなくて、それに浸ることを楽しむ読み方。
4投稿日: 2012.12.31
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
子丸氏は毎回事務員を消しているのか?主人公は薬指だけ残して消えてしまうのか?そうすると他の人たちと標本の意味が異なってしまうのでは?謎のまま気になる。 2つ目の話、六角形の小部屋はそれに依存しすぎて主人公が狂うのかと思ったら、最後普通だった。 でも文章全体の静かな雰囲気とかは好き。
0投稿日: 2012.12.15
