
総合評価
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powered by ブクログ小川洋子の世界観、描写の美しさにどっぷり浸かれる作品。消失の美学。この喧騒に溢れた世界の何処かに、こんな穏やかに時が流れる空感が実在していたら、それはどんなに素敵なことだろうと思う。
1投稿日: 2022.10.29
powered by ブクログふたつの短編で構成されている。 思いがけず標本室の受付係へ転職した主人公。そこでは依頼主の要望により、あらゆるものを標本として閉じ込める。文鳥の骨や楽譜に記された音、頬の火傷跡さえも。そして主人公は自分の不完全な薬指を標本にしてもらうべく、雇用者であり標本技師の仕事部屋につづく廊下を歩くのであった。 もう一つ。スポーツジムで何となく目に付いた老婦人。ある日のスーパーで偶然彼女を見かけて後を追う主人公。あえなく尾行が見つかって、彼女と彼女の息子が運営する六角形の小部屋に招かれるのであった。その小部屋は独り言をいうための部屋、その名もカタリコベヤ。今日も様々な人がその小部屋に入っていく。 両方の物語で、それぞれ主人公と恋人との関係を描いているものの、その関係は対照的。けれど、世界観はどちらも少し不思議ですごくぞわぞわする。 上手に感想をまとめることができないけど、とても面白かった。
0投稿日: 2022.10.08
powered by ブクログふたつの不思議な場所の話。 どこにも行けない思いを、どうにかする場所の話。 とにかくずっと、ことばがきれいで、 この本を標本にしてずっと眺めておきたいくらいだった。 ひとつひとつの言葉が、耳にぽてんとおっこちてきて、しゅわーと身体の中にはいっていく、そんな感じ。 読後感が、今までにあまりないようなもの、 ふわっとした、終わりの曖昧な本は、あんまり好きじゃないけれど、この本は好きだ。
1投稿日: 2022.07.29
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
消えそうで、有る。無いようで、有る。有るようで、無い。何も無いことが、そこに有る、ことを表すこともあるのかもしれない。
0投稿日: 2022.07.25
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
不自由という幸福、自由という不幸。 近ごろ考え続けていたテーマを別の物語で確認したみたい。 純粋な物語と言ったら、語弊があるかもしれないけど、社会的な概念を持った要素が必要最小限度に抑え込まれている。 出てこない(殆ど)要素をあげれば一目瞭然だ。 ・主人公の名前 ・食事を摂る場面(僅かに登場) ・土地、建物、人、モノの名前・固有名詞(工員の女の子、おじさんや、少女、〇〇号室の老婦人と固有名詞が出てくるのは弟子丸氏のみ) ・動物(文鳥のみ骨として登場) この徹底された文章管理にまず敬服しました。 考えてみれば、自分の中で意味のないものには、固有名詞で呼んだり、考えたりしない。 〝わたし〟の世界で意味を持ってるの弟子丸氏ただ一人だというところや、私生活がちっとも描かれないのも、彼女が自然と切り離していると考えるとしっくりくる。 物語の進行は、標本室で働き始めてから一年経った私が、現在に至るまでの経緯を追って、働き始めてからを現在進行形で描く。 小川洋子さんのエロイズムがズバリ語られているところにも注目。 余計なことは口にしない、他には譲りがたいこだわり、使命感を持っている、理知的で謎めいていて、しかし女性に対して徹底したパワープレイ(非暴力的な)を、仕掛けてくる男性像。 パーツを言えば、白衣というのが、作者の好みかもしれない。(博士の数式) そんな特徴を備えた弟子丸氏から「毎日その靴を履いて欲しい」と靴をプレゼントされた〝わたし〟は、まるでマイフェアレディの如く、緩い調教に身を浸していく。 女性的嗜好の読者の秘めた欲求を曝け出していく。 ふくらはぎをきつく、でも痛くないようにしっかりと握ったり、落ちたタイピングの文字を一つ一つ全て拾わせたり、四六時中プレゼントした靴を履くよう、強制的に命令したり。 そう、薬指の標本という作品は、女性の願望を見事形にしているのだと思うと恐ろしくなる。 〝封じ込めること、分離すること、完結させること〟 これは『愛の過程』を辿っている、名言だと思う。 恋に落ちる前の二人は、どちらも自由に野を漂っているようなもので、接点を持ち、やがて芽生える恋が目指すのは〝完結する〟ということ、つまりはゴール。 結婚がゴールだと思っている人(それは幸福な結婚生活を送った家庭に育った人)が恋愛のゴールに結婚を据え置くのと同じ。 それが〝わたし〟のゴールでは、薬指を標本にしてもらうというゴールになっている。 色々な恋の形があっても、上の原則に適った物語の累計として、あくまで忠実に女性の心理を描写しているのには恐れ入ったというところだ。 作中で〝わたし〟は幾度となく弟子丸氏に身体的拘束、精神的拘束を余儀なくされる。 けれどその一つ一つの拘束が、甘やかで刺激的で、思わずドキッとさせられるものばかり。 人は自分に不自由さを与えてくれる相手を、心の奥底で求めているんだと思う。 最後、標本室の扉を開けにいく〝わたし〟は、自ら、望んで終身刑に向かう罪人のようだった。なのに〝わたし〟の幸福で満ち足りた姿。 標本という題材、秀逸です。
2投稿日: 2022.07.12
powered by ブクログ世界観なんて書いてしまうと非常に安っぽいけれど、この世界観が好き。 この小説を原作としたフランス映画もおすすめ。舞台がフランスの田舎町で、却って無理なく映像化出来てます。
1投稿日: 2022.06.05
powered by ブクログ小川洋子さんを好きになったきっかけの本。 表題作の薬指の標本は特に、読み終わったあとの気味の悪さ(いい意味で)で眠れなかった。 最後のおじいさんとの会話から、淡々と語られるラストまでを何故かふと読み返したくなる時がある。
1投稿日: 2022.05.18
powered by ブクログ薬指の標本 標本を作る技師である弟子丸氏と主人公のお話。主人公の心の中に生まれる、どうしても抗えない感情・欲望が描かれていてよかった。しかし、空の浴槽の中を歩くシーンの描写が理解できず、少しお話に集中できなかった(浴槽深すぎない?)。私の読解力と想像力がなくて無念。 六角形の小部屋 主人公が、プールで見かけた女性に興味を持ったことから始まるお話。静かで不思議。ある種宗教的な雰囲気も感じた。小部屋は不思議な存在なのに、それがある空間、転校の話など現実的な世界観もあってそのアンバランスさが好きでした。
1投稿日: 2022.04.13
powered by ブクログ静かな世界の中に静かさの中にある理解出来るような出来ないようなまっすぐな純粋さと熱に寒気がする話。狂気というようなことでもなく淡々と話が進んでいく。言葉では表せないのにこの小説の世界にはまってしまう。
12投稿日: 2022.04.03
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
本書は古書店でたまたま見つけて購入した。 表題作のほか、「六角形の小部屋」という別の作品もある。いずれも引き込まれる物語で、あっという間に読み終えてしまった。 どちらも、日常の延長にあるが、どこか一歩異界に通じる道に踏み出してしまったかのような、不思議な物語だった。インターネット上の感想に、どなたかが、肝心の結末がぼやかしてあるようだけれど、それで中途半端な印象にならないのは、著者の力量のなせる業だ、というものがあった。確かにそのとおりだと感じた。いずれの話も起こったことの解釈(もしできるとして)などが示されているわけではもちろんなく、読み方感じ方は読者によってそれぞれになる可能性があると思った。 表題作は「薬指の標本」だが、実は作中では、語り手の女性が贈られた靴(つまり足)も大きな要素になっていた。欠けた薬指と、靴を履いた足は、どちらも外から物理的には見えないが、はじめに靴を履いた足が、次に欠けた薬指が、順に弟子丸氏に領されていくようで、怖かった。薬指は少なくとも、語り手の女性にとっては、過去のトラウマの象徴だと思うし、少女の火傷の跡もそうなのだと思う。そうすると標本にすることで、つまり弟子丸氏にゆだねることで、それらを忘れることができるということなのだろうか。だが、贈られた靴によって、「赤い靴」の寓話ではないが、足が彼の虜にされてしまうのは、どちらかというと積極的な支配のような気がして、なお怖さを感じた。 『六角形の小部屋』の方も、やはり身体につけられた心理的な痛みを扱った小説のように受け止めた。2作とも身体(の一部分)や性をテーマにしているのだと思われた。 また、これは全く本質的ではないけれど、いわゆる純文学の小説を読んでいると、実際にはありえないような職業を設定していることがたまにある。本書の2作にも、標本室や、小部屋を運ぶという独特の仕事が登場する。高山羽根子さんの『首里の馬』にもそういえば出てきたが、それに関連して、町を歩いていると本当にたくさんの会社、たくさんのビル、たくさんの組織名などをみる。世の中のどこかにひっそりと、本当にそういう奇妙な職があるということを想像するのも、個人的には面白い。少なくとも、明日の現実の仕事内容を思うよりは。
1投稿日: 2022.03.28
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
洋書のようなアンティークな装丁にまず惹かれる。 「薔薇水1リットル」と書かれた試験管。 何なんだろう。気になります。 『薬指の標本』 小川洋子 (新潮文庫) 表題作を含む二編を収録。 「薬指の標本」は、静かで官能的で不思議なお話。 いろいろなものを標本にしてくれるという「標本室」で事務員として働く「わたし」が主人公である。 標本室は古い女子専用アパートをそのまま使って営まれており、中庭や浴場まで備わっている。 そこで働くのは、「わたし」と標本技術士である「弟子丸氏」の二人だけ。 標本室には様々なものが持ち込まれる。 昆虫や植物といった有機物は少なく、髪飾りやカスタネット、毛糸玉、カフスボタン、オペラグラスといった無機物がほとんどなのである。 「封じ込めること、分離すること、完結させること」 これが標本の意義なのだと弟子丸氏は言う。 依頼人の思い出の“思い”そのものを“物”と一緒に標本にする。 依頼人は楽になって帰っていく。 そう、ここは癒しの場なのである。 が、その一方で“わたしと弟子丸氏”のいびつな恋愛がここで育まれていくのだ。 今は使われていない浴場が逢瀬の場なのだが、密やかで倒錯した愛情がものすごく伝わってきて怖くなる。 弟子丸氏本人しか入れないという標本技術室。 行方不明の女性たち。 この謎の標本技術士は何者なんだろう。 地下室で何をしているのだろう。 “胸元にしみのある白衣”などの小道具と相まって不気味さ倍増。 彼に絡めとられたい、標本にされたい、という主人公の心理が、読んでいるうちにだんだん分かるような気がしてくる。 きっとそこにはまり込んでしまうと、身を委ねてしまうんだろう。 「弟子丸氏はわたしの標本を大事にしてくれるだろうか」 「わたし」は、自分の一部である“あるもの”(タイトル見たら分かりますね)を彼に標本にしてもらうために、禁断の地下室へ向かう。 うわ… 「六角形の小部屋」も“癒し”がテーマになっている。 「語り小部屋」という小さな部屋。 ここに来る人は、この中でいろいろなことを話し、癒されて帰っていく。 番人の「ユズル」さんも謎めいた人だ。 一見この二作はファンタジーのように見える。 しかし、“標本室”も“語り小部屋”も、商売として成り立っているところが、ただのファンタジーと一線を画していて、妙にシュールなのだ。 日常を離れた不思議な世界。 二編とも独特の繊細な世界で、異様といえば異様なんだけど、波長が合う人はきっとハマると思う。
0投稿日: 2022.03.20
powered by ブクログこわかった。日常を慈しむ態度に憧れていたが、こんな側面もあるのかと知った。態度や向き合うものや向き合い方を変えたとしても、やっぱり失敗、ミス、エラー、予想外は起きる。どんな粒度でいようと、それらは起きると知った。なんとまあ。でもしばらくはこの感じを続けてみたい。
1投稿日: 2022.03.14
powered by ブクログ“静謐”…という言葉が これほど似合う作家さんは他にはいないだろう… 日常と非日常の狭間にひっそりと佇み 美しい文章で綴られ…静かな世界観へと誘われる サイダーを桃色に染める薬指の肉片 背徳の香り漂う 浴場での甘い囁きと秘密の逢瀬 白い麻のワンピースと黒い革靴のコントラスト 足を浸食しはじめる奇妙な革靴 名前のつかない淡い感情を抑えるための小さなため息… どのシーンも詩的で アートな映像美が浮かび上がるようだった… 標本技師の男に縛られ 絡めとられたいと願う主人公_ 縛りつけ 支配したいと思う標本技師_ 束縛という甘い果実に囚われ 嫉妬心と独占欲に絡めとられる主人公が 最後に選んだ美しい狂気の結末にゾクゾクとする… どこか幻想的で耽美の匂いを放ちながら 小川さんの知性や品性を感じさせる美しい言葉に酔いしれる 今日はこの余韻に浸りながら 眠りにつきたい…
3投稿日: 2022.03.12
powered by ブクログ表題作について 最初は標本室の不思議な感じが憧れにも似た感じの好ましさを感じていましたが、主人公が靴をもらって相手からの誘いは今日はあるかと気にしましたあたりから童話の赤い靴を思い出してゾッとしました
0投稿日: 2022.02.14
powered by ブクログ✋あらすじ✋ 楽譜に書かれた音、愛鳥の骨、火傷の傷跡…。人々が思い出の品々を持ち込む「標本室」で働いているわたしは、ある日標本技術士に素敵な靴をプレゼントされた。「毎日その靴をはいてほしい。とにかくずっとだ。いいね」靴はあまりにも足にぴったりで、そしてわたしは…。奇妙な、そしてあまりにもひそやかなふたりの愛。恋愛の痛みと恍惚を透明感漂う文章で描いた珠玉の二篇。─「bookデータベースより」 ✋感想✋ いつぞやの読書会で紹介された作品です
0投稿日: 2022.02.09
powered by ブクログ「薬指の標本」お気に入りの一冊だが、膨大な活字盤拾いを一晩中主人公一人にさせたり、プレゼントした靴で相手を支配する標本技術士の傲慢さが嫌な感じ。
3投稿日: 2022.01.16
powered by ブクログ時に残酷とも言える場面もありますが、柔らかいものに包まれ、優しい風の中で息をし、ゆっくり時間が流れている感覚になります。 ありえないことなのに、その世界が理解できるというか心地いいです。 自らを解き放つ場所があれば、幸せに近づくことができるのでしょうか。
0投稿日: 2022.01.11
powered by ブクログよくよく考えれば、どちらも奇妙な話だ。 リアルと不思議が混じり合う絶妙な匙加減がそうさせているのか、 浮世離れした登場人物が、妙に生々しい人間らしさを持ち合わせているせいなのか、 『よくよく考えれば』が入り込めないほど 気がつけば標本室や社宅管理事務所の世界に囚われていた。 そこはかとなく不穏な空気が漂うのに心地がいい。 しのびやかな場所にたどり着いた者たちといつの間にか共有した感覚に陥る。 この濃密な空気感が小川洋子作品の魅力の一つだと思う。 今回もたっぷり堪能させてもらえた。
6投稿日: 2022.01.05
powered by ブクログ忘れたくないけど抱えるには大きすぎること、 託せる人も受け入れてくれる人もいなくて、それでも変わらずそこに還ってゆきたい、還らないけど、還れる可能性を標本にすることで残したい。。そうすれば忘れて生きてゆける。 同時に、標本にして手放すことで永遠に見詰めてもらえる、孤独な人にとってこんな甘美なことあるだろうか。今日これを読んだのなんのめぐりあわせだろう。。
0投稿日: 2021.12.11
powered by ブクログ短編が2本収録されていた。2編に共通してたのはどちらも心の内に抱えたものを何か(標本と言葉)に閉じ込める。そうでもしないと乗り切れない世の中は世知辛いなと感じた。
1投稿日: 2021.11.29
powered by ブクログ【読了メモ】活字ひろいのシーン、ぞくぞくする。一緒に収録されている「六角形の小部屋」も好きだなぁと感じた。 ※文庫ではなく単行本版を読了。
1投稿日: 2021.10.22
powered by ブクログ不思議な本でした。つかみどころの無いフワフワとした世界なのに、想像力はどんどん掻き立てられていく。光景が目に浮かぶ。主人公の感情も伝わってくるのに、でも、淡々と話は進んでいく。綺麗な作品。
1投稿日: 2021.09.26
powered by ブクログ静謐という言葉が似合う文章を書く。小さい頃に祖母の家にいたあの感じを思い出す。非常に綺麗な文章。ラストシーンが非常に好き。バッドエンドでもハッピーエンドでもないあの感じが好き。何が好きなのかもわからないけどなんだか好きでよく読み返すことがある。
0投稿日: 2021.09.20
powered by ブクログ「薬指の標本」がフランスで映画化されたと知って、読んでみました。映画は観ていません。結末がフランス映画っぽいな。と思いました。もうひとつ「六角形の小部屋」も何となくモヤっとした妖しげな感じでした。
0投稿日: 2021.09.15
powered by ブクログ数年前に、薬指の標本を原作としたフランス映画を見ました。こちらを読んだのは、映画を見て数年後ですが、当時見た映像が呼び起こされました。 (浴場の印象は、映画と小説で異なりましたが、舞台が外国なので仕方ないですね)
0投稿日: 2021.08.30
powered by ブクログ小川洋子の描く愛はいつも歪んでいて美しい。 今回の2篇から感じたのは「依存」の拘束力の強さと、美しさと、脆さ。 私の最も好きな作家でありながら、彼女の作品を読んだあとの感情をうまく言語化できたことは一度もない。もはや言葉にしたくないのかもしれない。 なにせ、私にとって彼女の作品が運んでくるのはいつも「空気」なのだ。酸素とかそういう意味ではない。何かが纏う空気だ。表現のしようがない。 本人も曖昧で混沌とした世界を描いているのだから言語化できなくて当たり前なのかもしれない。 よって、この魅力を人に伝えたくても私からは不可能だ。 結局、また何も伝わらない感想になったが、彼女の本は実際に手に取り、心に直接触れてくる空気を楽しんでほしい。
1投稿日: 2021.08.14
powered by ブクログ忘れ去られてしまいそうなものたちの密やかな生命をすくいあげてそっと覗くような甘美な物語。 古いものと甘さとほんの少しの苦味を感じる作品。 私の人生観を形成している、秘密にしたい大切な一冊。
1投稿日: 2021.08.01
powered by ブクログ博士の愛した数式は映画化されヒット、書籍はベストセラー売れに売れ、記憶消える系作品が世に溢れ帰りました。 博士の愛した数式、この、哀しくて優しい本から作者を辿って手に取った知り合いは軒並み気持ち悪いと言いました。 ですが酷評される本書を私は愛しています。この本は剥き出しの叫びに見えるからです。 苦界の泥を磨いて削って咲かせた蓮の花があれならこれは、泥に塗れて足掻き悩み叫び憎んだ人間の半身、私はこの後味の悪さを、気味の悪さを愛します。
0投稿日: 2021.07.14
powered by ブクログまるで綺麗にきらきら光るような、でも同時に気持ち悪さも持った不思議な文章だった。何も考えずに読むと、綺麗な情景だけれど、よくよく考えるとゾッとする、そんなお話。 全てが語られすぎておらず想像する余白があるのが良かった。きっと一年後、もう一度読みたくなっていると思う。
0投稿日: 2021.07.12
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
小川さんの独特な世界観を読んだ。官能的、空想的、現実的な部分の境界性が滲んでいるようで、この不思議な世界は女性の心を鷲掴みにするのだろうか?一話目、ちょっとした事故で自分の薬指が欠けた。それを標本にすることで、標本を作製する男性に我が身を預けたい、愛されたいと願う私、しかも強引に。二話目、自分の婚約相手は医師で優しいが優しすぎるので全く刺激がない。女性としては、強引に、若干の危険性を持つ男性から愛されたいと願うのだろうか?女性の心情に含まれる危険でエキセントリックでエロティックな一面が見えた気がした。 ps 真面目、優しいだけでは物足りない。男性の魅力とは何か?についてちょっと知った気がします。男性も女性に対して刺激的なふるまいって重要なのかな?自分は失格のような。。。
28投稿日: 2021.07.04
powered by ブクログ静かで、優しくて、ロマンチックで、少し背中がひやっとする、大好きな作品。日常の延長線上の不思議な世界観に夢中になってしまう。また読みたい。
2投稿日: 2021.05.30
powered by ブクログ儚く形のあるようでないような、ふわふわとした物語二編でした。浮遊感気持ちよかったです。奇妙な恋愛模様も心地よかった
0投稿日: 2021.05.30
powered by ブクログ「薬指の標本」 小川洋子(著) 平成10年1月1日文庫発行 (株)新潮社 令和2年2月25日29刷 「薬指の標本」「六角形の小部屋」の2篇からなる短編集。 twitterで何度か目にして印象に残り手にしました。 人の内側や世界の外側を思わせる世界観は 村田沙耶香に繋がっている感じ。 ビビットで刺激的な色合いの村田沙耶香 淡く暖かい色合いの小川洋子。 しばらく小川洋子作品を読んでみよう。 やはり文庫本の巻末解説は面白い。
26投稿日: 2021.05.03
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
「薬指の標本」 楽譜に書かれた音、愛鳥の骨、火傷の傷跡。人々が思い出の品を持ち込む「標本室」で働いている私は、ある日標本技術士の弟子丸氏に素敵な靴をプレゼントされた。「毎日その靴を履いて欲しい。とにかくずっとだ。いいね」靴はあまりにも足にぴったりで、次第に足と馴染んで一体化していくような感覚だ。サイダーを桃色に染めた薬指の欠片。静寂に包まれた標本室に囁く、309号室婦人のピアノの音色。そして標本「薬指」を求めて、私は地下室の扉を叩く。 綺麗で大人なお話。「標本室」という現実から程よい距離感の舞台で、自分の生活と重なることのない非現実感を味わうことが出来る。印象的だったのは、浴場で弟子丸氏と2人で過ごすひと時の描写。上品なエロティシズムを感じさせる、爽やかでほの暗くて、美しい言葉選びが好き。 「六角形の小部屋」 プールで偶然に出会った私とミドリさん。彼女は付き添いの老婦人とプールに来ていた。少しの会話をして、それきりだと思っていた。次に彼女を見かけたのは、近所のスーパーマーケットだった。好奇心から尾行をすると、行き着いたのは「語り小部屋」。私はその六角形の小部屋の中で、心の内を解放する。どうしてここにたどり着いたのか、元恋人の美知男の話、パーティで出会った陶芸家との一夜。気が付けば、いつの間にかそこに居たミドリさんもユズルさんも、語り小部屋もどこかに消えていた。 読みやすかった。プールやスーパーマーケットといつた身近な場所が出てくる一方、「語り小部屋」という非現実的な空間が異質を放っていて、ファンタジーに近い物語だった。
0投稿日: 2021.04.03
powered by ブクログ人生で出会った一番好きな本。 弟子丸氏の視線に徐々に絡め取られていくような描写にぞくぞくする。 小川洋子氏は瑣末なものや失われたもの、さらには元から無いものに焦点を当てるのがとても上手で、いつも驚かされる。
0投稿日: 2021.03.04
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
描写しないことで存在感が大きくなる 初めて薬指の標本を読んだときは、なんのことだかよくわからず、薄気味悪い感じを受けたが巻末の解説を読んで納得いった。 解説を抜粋すると、 ”少女はそんな光景を夢想する。ここにはたしかに、薬指が「ある」。しかしここで重要なのは、そこにある薬指よりも、薬指以外の「残りの身体」の方だ。この試験管に浮かぶ薬指のイメージの中では、少女の身体が消えている。ここには薬指が「ある」ことよりも、残りの身体が「ない」ことの方が、強烈なイメージを沸き立たせる。指は、消えた身体の残り物なのだ。” とある。 作中では少女は標本にしてもらおうとしている薬指のことを考えている。しかしそれ以外の部分をあえて描写しないことでその部分を逆に読者にイメージさせている。実際、自分も作品のこの部分を読んでいたとき、薬指以外は?と思っていた。 このことを理解して読み返してみるとなかなかに奥が深い作品なのだなと思った。
0投稿日: 2021.02.19
powered by ブクログ村上春樹の作品を読んでいるかのような錯覚に陥った。 少しミステリアスではあるけれどそれが主軸ではなく、読後に裏表紙の内容紹介を見て、これも恋愛小説の部類に入るのかと驚くと同時に納得もした。
0投稿日: 2021.02.05
powered by ブクログ小川洋子さんの小説の中でも とびきり息を潜めて読んでしまう1冊 なのではないだろうか。 幼稚な感想だけど、素直に書くと、 「大人だ………!!」と。 密やかさってえっちなんですね。 大事なことは決して直接書かれず、 きっと読者が各々自分の経験とか哲学とかと 照らし合わせながら読む話だなと思うから、 読む人によって、読む時期によって、 感じることが違ってくるんじゃないかな。 好きとか、愛とか、恋とか、苦しいとか、不幸とか わかりやすい感情語を使わないで、 安堵とか、嫌な感じはしないとか、 日差しや風の描写とか、 行動とそれが持つ意義とかで 主人公が弟子丸氏に傾倒していく様子や心情が だからこそ切なく強く 伝わってくるのかも知れない。 これはブラフマンとか他の作品とも共通だ。 しかも標本室とか語り小部屋とか ちょっと特異な舞台設定って所が 読者の安易な共感を呼ばない、みたいな なにか大事な効果を持っている気がする。 小川洋子さんの本を何冊か読んで、ずっと、 不幸をサラッと書くな、と思っていて、 主人公たちは 自分を悲劇のヒロインと思っておらず、 淡々として潔く、感性が豊かで意志が強い。 美しさすらある、と思っていたんだけど、 「意思や努力が既に運命なのだと、 わたしは感じます」 とあるように、諦めとはちょっと違うんだけど、 大いなる意思に運ばれていく、 それを受け入れる、過度に心を乱さない、 みたいな人生観が そんな不幸の取扱いに結びついているのかも。 密やかな結晶でも登場したタイプライターが また登場しましたが、 これも小川洋子さんにとって、 なにか重要なモチーフなのかしら。
6投稿日: 2021.01.29
powered by ブクログどんなものでも標本にしてしまうお店の話と、謎の六角部屋の話。 読みやすい。 普通のように見えて、でもずっと不穏な空気が流れてるところが好き。 ただ、終わり方がハッキリしてないのが私には物足りなかった。
2投稿日: 2021.01.06
powered by ブクログ初めてこの本に出会ったのが15年ほど前。 それからたまに読みたくなり、読み返し、を何度も繰り返している。 小川洋子さんの爽やかな文章で、でも少しぞくぞくするお話。
0投稿日: 2021.01.04
powered by ブクログ初めて読む小川洋子さん。静かで、穏やかで、どこか上品な艷やかさのある文章、独特な雰囲気に、一気に惹き込まれました。本作はフランスで映画化もされているということで、お洒落でモダンな洋画を観ているような感じも受けました。 小川洋子さん、なんだかとても不思議な魅力があって今一番気になる作家さんかもしれません。『ブラフマンの埋葬』や『妊娠カレンダー』など、他の作品も読んでみたいです。
3投稿日: 2020.12.29
powered by ブクログ小川洋子さんの本を読むのは「博士の愛した数式」に引き続き、2冊目です。 本作は表題にもある「薬指の標本」と「六角形の小部屋」の短編二編で構成されています。 私は完全に「薬指の標本」という題名に吸い込まれて手に取ったタイプの人間なのですが、六角形の部屋もミステリアスでファンタジックな雰囲気が「薬指の標本」と共通していて、どちらもとても好きな物語でした。 特に私は小川洋子さんの書く文体が堪らなく好みで、「お米や赤ピーマンや海老やムール貝が空中で花火のように弾け」るだとか、情景がぱっと色も鮮やかに浮き立つような感じが読んでいて心地いいです。 現実世界を描いている筈なのに、どこかファンタジックな色に溢れていて、ふわっと甘いのに最後にすっと消えていく綿あめのような不思議な感覚は小川さんならでは、という感じがします。 同著者の別作品「博士の愛した数式」は人と人のゆるやかなつながりを描いた感動物語、という感じですが、こちらはどちらかというと「人と人とを結ぶ不思議な空間」を舞台にしている感じがあります。標本室にしろ小部屋にしろ、その舞台装置があってはじめて、人がつながる物語、といえばイメージしやすいでしょうか。 ときどき取り出して、また読みたくなるようなお話です。
13投稿日: 2020.12.28
powered by ブクログ2020.12.21 ママと行った本屋でたまたま見つけた物。 私はこの本も、有名らしいフランスの映画も知らない。 表紙のアンティークな雰囲気に惹かれて手に取り、内容紹介のうっそりとした純愛の予感に購入を決める。 足と靴の表現が、素敵で、恐ろしくて、美しい。 艶かしいような生々しいような空気感が漂いかけて、しかしふっと霧散して、透き通ったものが残るような本だと感じた。 怪しい男・悪い男は得てして魅力的なものであるが、本作でもそれは顕著。 久しぶりに好みど真ん中の小説だった。
0投稿日: 2020.12.21
powered by ブクログ秋の夜長にぴったりな感じの穏やかな短編2作。表題作よりも「六角形の小部屋」の方が好き。どの過程を選んでも人生の最後にたどり着く結果は同じかも、という話。
0投稿日: 2020.10.25
powered by ブクログ素敵な描写が、いちいち胸をつかむ。 webにつかり、じわじわと侵食してくる毒を、静かにとかしてくれるように。 なんといっても、紙の上の文字は落ち着く。 「静けさ」が身に染みる作品。 「標本室」は、どこかミステリアスで「ヴァニラ画廊」をイメージさせる 天気の描写が素敵。
0投稿日: 2020.10.25
powered by ブクログ【薬指の標本】 サイダーをつくる工場で勤めていたわたしは、機械に薬指を挟まれ、指の先を欠損してしまう。それが原因で工場を辞めたのち、古びた建物の中にある標本室で事務の仕事をすることになった。そこは人から依頼された様々な変わった標本を作り、保管している。 あるとき、標本を製作している弟子丸という男に、わたしは靴をプレゼントされる。彼はその靴を常に履いていて欲しいと言う。実際そうしているうちに、わたしの足はその靴に獲り込まれていく。足だけではなく、やがて。。。 【六角形の小部屋】 語り小部屋と呼ばれるそれは木でできた小さな小さな部屋。廃墟と化した団地の管理室に置かれ、ミドリさんとユズルさん親子が管理している。必要としている人だけが見つけることができる六角形の箱のような小さな部屋。 みんな順番にそこに入り、自分だけの何かを、誰にでもなく、その部屋で語る。 『薬指の標本』は妙にエロティックな感じがした。 もう今は使われていない女子寮の共同浴場でのデート、プレゼントされた靴を履かせてくれる彼のあの手つき。床にばらまいてしまったタイプライターの文字をひとつひとつすべて拾わされるわたしと、その這いつくばっているわたしを何も言わずずっと見下ろす弟子丸さん。 エロスと狂気と死が、透明なとろっとした液体の中でくるくると回る。静かに静かに、それが溶け合う音が聞こえてくるようだ。 『六角形の小部屋』のほうは、うって変わってなんどなくユーモラスで不思議な話だ。 生きていれば誰にでも、人に聞かれたくないけど声に出して話したいことのひとつやふたつあると思う。だからって夜中に自分の部屋でそんなことを丁寧に独り言でしゃべったりはしない。聞き手はいないけど、語るべき部屋。そんなものがもしあったら、わたしは馬鹿馬鹿しいなんて思わないできちんと語ると思う。だからそんなものが本当に存在するとしたら、絶対そこへはたどり着けるはずだ。 小川洋子さん、わたしはあなたが好きです。 あなたの作る話、段落、句読点の場所、比較的短い文とそのリズム。使われる漢字、選ぶひらがな。 そのすべてが。
2投稿日: 2020.09.14
powered by ブクログなぜ感想を書いていないのだろう。 とにかく独特の世界観と、やや怪奇ながら美しい雰囲気が漂っていたことを覚えている。それなりに面白かったし、印象には残る一冊だったはずだ。(2020/9/2追記)
0投稿日: 2020.09.03
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
魅惑的なタイトルに惹かれて手にした一冊です。 著者の作品は本作で2冊目の読了となりました。 ○薬指の標本 標本技術士とそこで働く事務員の物語。 彼女は前職のソーダ工場で勤めていた時に事故にあい薬指の先を機械に挟まれて失った。 その後、たまたま見かけた標本室のある建物の門柱に貼られていた事務員募集の張り紙。 そこで出会った標本技術士との霞がかかったような恋。 彼からもらった靴は驚くほどに彼女の足に馴染み、その靴を脱いではいけないと言われる。 標本作成を依頼しに来た靴磨きの老人からは早く脱がないといけないと言われながら、彼女はその靴を脱ぐことが出来ず、最後は欠けた薬指で標本遠作ってもらおうと標本技術室の扉をノックする。 体の一部が消えていくような不思議な感覚を覚える作品でした。 ○六角形の小部屋 スポーツジムで出会ったミドリさんを追いかけるうちに木立の奥にたどり着いた古びれた社宅。 そこの社宅管理事務所内に設置されている六角形の小部屋。 その小部屋は語り小部屋で、その中で会話をしたい人が自然と集い1人また1人と順番に語り小部屋に入り語り自分が語りたいことを1人で語る。 多くの人が訪れ、語り小部屋の中で何を語るのか。 消え入りそうな空間の中、眠りから目覚めた彼女の前からミドリさんとその息子のユズルと共に語り小部屋も消えて無くなっていた。 どちらも消えていく儚さを描いた儚い作品でした。 説明 内容紹介 楽譜に書かれた音、愛鳥の骨、火傷の傷跡……。人々が思い出の品々を持ち込む〔標本室〕で働いているわたしは、ある日標本技術士に素敵な靴をプレゼントされた。「毎日その靴をはいてほしい。とにかくずっとだ。いいね」靴はあまりにも足にぴったりで、そしてわたしは……。奇妙な、そしてあまりにもひそやかなふたりの愛。恋愛の痛みと恍惚を透明感漂う文章で描いた珠玉の二篇。 内容(「BOOK」データベースより) 楽譜に書かれた音、愛鳥の骨、火傷の傷跡…。人々が思い出の品々を持ち込む「標本室」で働いているわたしは、ある日標本技術士に素敵な靴をプレゼントされた。「毎日その靴をはいてほしい。とにかくずっとだ。いいね」靴はあまりにも足にぴったりで、そしてわたしは…。奇妙な、そしてあまりにもひそやかなふたりの愛。恋愛の痛みと恍惚を透明感漂う文章で描いた珠玉の二篇。
6投稿日: 2020.08.20
powered by ブクログ表題作をずっと読んでみたかった。 綺麗でゾクゾク、冷んやりとしていた。 映画を観たい。 密やかな…の作中の小説と似ているように思った。
6投稿日: 2020.08.14
powered by ブクログひんやりとした静かなお話が二編収録されています。 両方とも、閉塞的で独特な空気が主人公をじわじわと浸食していって、飲み込んでしまうような感じを受けました。 読んだあとの背中がぞくっとするような感覚がとても好きでした。
2投稿日: 2020.07.30
powered by ブクログ『まぶた』が大すきだから、この小説で再び似た空気が存在していることがとてもうれしい! 表題作『薬指の標本』も、『六角形の小部屋』も、なんの変哲もない日常であるはずなのに目を凝らせば一点だけおかしい、あんまり周囲と馴染まないから目を逸せない、そんなお話だった。 薬指を読んでいるとき私も標本室に勤めたいと思ったし、小部屋を読んでいる時はこの近くにもあるのかしらと行きたくなった。おかしいはずだけど、それくらい小川さんの書く世界は魅力的だった。もしかして、知らないだけで、そういうのって存在するのかなと考えた。 ドロっとしていて重たい、何度でも読み返したい小説だ。
5投稿日: 2020.07.23
powered by ブクログ標本室にも語り小部屋にも行きたい 自分の引き出しが少なくて言い表し辛いけど、 文章がとても美しく物語に惹きつけられます ブクログでの感想の多さや内容の濃さも凄く、 読書家の誰からも愛される作家さんなんだな、と再確認 映画化もされてる様なので絶対に観たいと思います
4投稿日: 2020.07.14
powered by ブクログ知人が仕事中に少々高いところから転落。頭を打ち、鎖骨などや胸骨などを骨折。頭の中は血腫が発生し、緊急手術。 こんなことが昨年師走の中旬に起きました。それから3週間たち、おそるおそるお見舞いに行きました。 目黒の完成で高級な住宅地を抜けて行ったところに病院はあります。 知人は驚くほど元気で、顔色も良い。きちんと話もできる。 痛みはなかったのか、感じなかったのか、不自由はないか、など聞いてみると、 「痛みは殆ど感じない」 「なぜ病院にいるのかさえ覚えていない」 「何があったのか覚えていない」 「家族に出来事を聞いて初めてわかった」 なんと幸せなことでしょうか。 本人は「守られた」とつぶやきました。 家族の愛に、そのときにいた周囲の人達に、天に守られたのか。 本人を凝視しました。今までにないスッキリした表情、憑き物が落ちたような顔でした。 「これからの生き方」について無言でしたが、清新な決心を感じました。 さて、『薬指のよう本』はこの見舞いに行った病院の待合室のようなところで出会いました。 角に入院患者たちが残していった本や見舞いに来た人たちが一読した本、あるいは忘れていった数冊の本が、誰か読者を待っているように、無造作に厚紙でできた箱の中に投げ込まれていました。 その中の一冊がこの本。 タイトルに惹かれたのは、私は小学生の頃、薬指の第一関節をある事故で失っていたから。 潰れたあの一部は、あの病院のどこかで標本にされているのだろうか。 どこかに捨てられたのだろうか。 小川さんの小説は、より多くを語らない、抑えられている、省かれていることに心惹かれます。 読み進めては、思いを巡らし、この先の展開をあれこれ考えてしまう。
3投稿日: 2020.02.01
powered by ブクログ僕にとっては、この本は純文学の最高峰です。 文章によって描かれる芸術。 『愛』とはなにかを文章にしたらこうなるのではないでしょうか。 もちろん、誰が読んでも『最高』かと言われれば、もちろんそれは違うでしょう。 だって、どんな美術作品でも「素晴らしい」と思う人もいれば「全く意味が分からない」と思う人もいるのは当然です。 僕もそれはそれで良いと思います。 芸術家も万人受けする芸術作品を創ろうとは思っていないでしょうし、そんなことを狙って作品を創る人は、『芸術家』とは呼ばれてもいないでしょうから。 この文章が刺さるか、刺さらないかは、読む人それぞれによって違うと思います。 そして若いときにはまったく分からなかったものが、年を経たことによって分かるようになることもありますし、恋愛をして、辛い失恋をしたからこそ分かるというものもあるかもしれません。 本書は『薬指の標本』『六角形の小部屋』の2篇が登載された中編小説集。いずれの物語も約100ページの物語なのですぐに読み切ってしまうことができます。 短い物語ですが、読後の僕の心には、非常に大きなものが残りました。 第一遍の『薬指の標本』の主人公の「私」は21歳の若い女性。 相手の男性・弟子丸氏は標本技術士・・・・・・という職業と言ってしまってよいのかよく分かりませんが、あらゆるものを標本にすることができる人です。 「私」と弟子丸氏はたった二人でキノコや小鳥の骨や楽譜に織り込まれた音楽そのものなど、あらゆる物を標本にする仕事をしています。 弟子丸氏は標本を作り、「私」は事務仕事をしています。 ある時「私」は弟子丸氏から素敵な靴をプレゼントされ、弟子丸氏から「いつも僕といるときはこの靴を履いて欲しい」とお願いされるのです。 この小説はあくまでも「私」の視点から描かれ、弟子丸氏の心の内はまったく分かりません。弟子丸氏は「私」のことを愛してくれているのか。 それとも弟子丸氏にとって「私」はただの『標本』にしか過ぎないのか・・・。 古びて今はその機能をまったく有していない大浴場で行われる、勤務後に二人でひっそりと行う逢瀬は、エロティックともミステリアスとも言える、不思議な行為が行われます。 「私」はそんな弟子丸氏に途方もなく惹かれていくのです。 小川洋子さんが紡ぎ出す文章には、『愛』や『恋』という直接的な表現はほとんど出てきません。しかし、行間からあふれ出す「私」の心情は読者の心にこれでもかというくらい激しく打ちつけてきます。 弟子丸氏が決して他人を中に入れなかった標本室を「私」がノックするというラストシーンは、読む人によって千差万別の解釈があると思います。 このラストシーンには非常に感動しました。 若い「私」にとっての『愛』とは、心も体も、そしてその精神ですら、愛した相手に物理的に取り込まれてしまうということが『愛』だったのではないでしょうか。 そこには「良い・悪い」はありませんし、「他人からどう思われる」とか「世間体がどう」とか「将来はどうなるの」とか、そういう世俗的なものは全て超越してしまって、「私」は純粋に『愛』だけに身を捧げてしまうのです。 そしてもう一つの物語『六角形の小部屋』 こちらの作品も、不思議な雰囲気でした。 大学病院で事務仕事をしている主人公の「私」が出会うのはある建物に設置された『六角形の小部屋』、その中では人は自分の言いたいことを一人で言うことができます。 その『六角形の小部屋』には多くの人が訪れ、誰もがその中に一人で入り、短ければ数分、長い人なら30分以上、その中で独白します。 誰もその中でどんなことを話すのかは知りませんし、誰もその内容を聞いていません。 「私」は、その中で何を話すのでしょうか。 今の「私」は婚約までしていた医師の男性と別れたばかりです。 しかも、「私」が一方的に相手を振ってしまったのです。 そのことについてわだかまりを持っている「私」はその『六角形の小部屋』の中である秘密を話すことになります・・・。 今、僕は世俗にまみれて暮らしていますし、それなりの年齢に達したので『恋』だの『愛』だのに全身全霊をかけることができるかと言えば、ちょっと難しいかなとも思っています。 しかし、ではそれを全て捨てて、世俗だけに集中してしまえばよいかと言えば、それはそれでまた寂しいとも感じています。 こういった小川洋子さんの描く美しい『愛』を描いた小説を読むことで、自分の出来なかった、あるいは、自分の心の奥底では求めているであろう『愛』の形、理想の形である『愛する』ということを、こういった文章を自分の心の中に染み込ませることによって、ある意味においてはそれを実現させているということも言えるのです。 僕にとって、このような経験を与えてくれる作家さんは多くはいません。 そのような作家さんに出会えたことは僕には奇跡のような体験です。 そして、この本も僕の心の一番深いところにある書棚の中にそっとしまっておきたい本の一冊になったのです。
39投稿日: 2019.10.24
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
不思議な仕事を持つ男に惹かれていく女性の話、二話。 一話の「薬指の標本」の男は、お客さんから頼まれた標本を製作し、それを倉庫に保管するのを生業とする。 主人公は受付として雇われる。 じわじわと男の世界に絡めとられていく。 ちょっと怖くもエロティック。 ペローの童話「青ひげ」を思い出す。 二話は、謎の六角形の小部屋を展示する男である。彼は母親と小部屋と共に旅をしている。 その小部屋に入った人たちは、中でしゃべりたいことを好きなだけしゃべる。 一人の時に好きな事を喋ればいいようなものであるが、案外こういう場はいいかもと思った。 私的なことを、だれも聞かないけど、ちょっと社会性を持った場所でしゃべる。 キリスト教では、懺悔という場がある。牧師さんに話を聞いてもらうので、ちょっと違うが、牧師さんは他言しないという前提がある。そして、その罪はしゃべったことで許されるとされている。 六角の小部屋は何も言わず懺悔を聞いてくれる牧師さんそのものなのかもしれない。
0投稿日: 2019.10.14
powered by ブクログ不気味な世界観の2作。 文章が美しく、読んでいて心地よい時間が流れました。小川洋子さんの作品、だいすき。
3投稿日: 2019.09.08
powered by ブクログなんというか不気味、というかなんというか、そして最後にどうなるかわからないから、さらに強くなるというか…!
0投稿日: 2019.07.18
powered by ブクログ2作品。薬指の標本の方は静かで暗くて不気味な雰囲気の中引き返せない恋愛をしていく。六角形の小部屋の方は声に出す事で何かが変わっていくって感じかな。言いたいことがいまいち掴めなかった。
2投稿日: 2019.06.24
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
博士の愛した数式しか読んだことがなかったのでびっくりした。 あるとないが倒錯する世界がすごい 素敵な標本になって愛でてもらえるといいねぇ
0投稿日: 2019.05.08
powered by ブクログ小川洋子さんの唯一無二の世界が心地よくて癖になりそうな2編の幻想中編小説集。今回も現実にはあり得ない2つの職業が描かれていますが、何となく実は本当にあるのではと思わせる雰囲気を感じるのですね。『薬指の標本』標本室は人々の願いを叶える善意の施設ではあるのですが、ヒロインは生きながらにして弟子丸氏の標本にされてしまうのでしょうか?さり気ないサイコホラーとも読めますね。『六角形の小部屋』私の町にも何時か「語り小部屋」が来るのでしょうか?でもある日突然に消えてしまったら語り小部屋ロスで相当に悩み苦しむでしょうね。
1投稿日: 2019.02.02
powered by ブクログどくどくしているけれども、きれいな文章。「薬指の標本」も素敵だったけれど、「六角形の小部屋」がより印象的だった。
0投稿日: 2018.12.28
powered by ブクログ表現が美しい。ドールハウスを覗いているかのようだった。官能的で繊細な、ふたりの世界。美しすぎる中に時々姿を見せる不穏な空気。細かい描写の全てが二人の関係を示唆している気がして、噛み締めるように読みました。
0投稿日: 2018.11.23
powered by ブクログ世にも奇妙な物語。ビビリの私からすると、夜に読むとちょっと怖くなります。今までに読んだことのないタイプの、恋愛のお話。
0投稿日: 2018.10.08
powered by ブクログ大人のファンタジーといった感想。 どうなるんだろう、と、淡々と物語が進むのとは対照的に先が気になるお話。二つの作品が収録されていたけれど、どちらもそう感じた。作者の作品が皆そうなのかもしれないが、とても良い組み合わせだと思った。 最終的に、ああなって終わりそう、という予想はつきながらも、実際にその予想通り終わってしまうのが寂しくなる、不思議な感覚に陥った。
1投稿日: 2018.08.08
powered by ブクログヒンヤリと静かに妖しい空気を漂わせ不思議な世界が繊細な文章にて綴られてゆく。標本をつくるという謎が多い仕事。僅かに怖さを感じながらも好奇心で引き寄せられてゆく。しかしそこには体温や物の温度を感じない。主人公の女性、名前が明かされていない。"君"、"わたし"という会話だけで体を許した関係が成り立ってゆく不自然さ。"靴"、"地下室"、"突然いなくなった以前の事務員"…色んな物が消えてゆく。感情や存在そのものがなくなってしまうんじゃないかと感じる。何もなかったかのように。妖しく幻想的に…
0投稿日: 2018.05.03
powered by ブクログ六角形の小部屋での問わず語りは、懺悔のようで自己正当のようで。すがりつく先さえもおのれ自身であるならば、物事の全ては偶然や運命が影響する前に自己完結しているのかしら。不思議な感覚。またしても小川洋子の深い森に迷い込んだ。もちろん気分は良い。
0投稿日: 2018.02.17
powered by ブクログ標本室で働いている主人公と、経営者であり標本技術士でもある弟子丸氏との話。 前に働いていたサイダー工場で薬指の先の肉片を失った。 自分の欠けた身体の一部を意識しながら、人々が持ち込む思い出の品や記憶を次々と弟子丸氏に標本にしてもらう。 弟子丸氏とは風呂場でデートを繰り返すようになり貰った靴が足を浸食しはじめていることに主人公は気づいてしまう。 私はとうとう自分の薬指を標本にしてもらうことに。 逃げろーーーーって言いたかった。
1投稿日: 2018.02.12
powered by ブクログ何度でも読み返したい。 最初の男女の微妙な設定と距離感が心地よく、 雨がしとしと降る薄曇りの昼間のような、 落ち着いた、少しウェットな空気を感じる。 後半の展開は、初読では面食らったが(初の小川洋子作品だった)、 繰り返し読むとまた色あいが変わる。 ハロプロのつんく♂氏の曲はよく「スルメ曲」といわれるが(かめばかむほど味が出る、の意)、これも「スルメ本」であるかもしれない。
0投稿日: 2018.02.07
powered by ブクログ小川さんの優しさが満ち溢れている物語。他の作家が書いたらただの世にも奇妙な物語になるんだけど、小川さんが書いているからふんわりした優しい物語になっているんだと感じた。
0投稿日: 2018.01.30
powered by ブクログあっと驚く展開もなく、物語は終始淡々と進む。 感情移入をしてしまうような登場人物がいるわけでもないのに、一人ひとりをくっきりと思い描ける(ような気がする)のは、この作者の手腕なのかな、と思う。 少し不気味で、不思議で、ちょっとだけ、かなしい。
0投稿日: 2018.01.08
powered by ブクログ一番好きなお話です。何度読んでも、「薬指の標本」の世界がとても好きです。不穏で甘くて、息苦しくて綺麗。「六角形の小部屋」もそうなのですが、求めていたらいつか辿り着けるのではないだろうかと、電車の車窓から外を眺めながら思います。うっすらと狂気と痛みを感じながら、この世界の余韻にいつまでも浸っていたいです。映画もまた観たいです。
1投稿日: 2017.11.04
powered by ブクログなんか少し気分が悪くなるようなお話でした。 なんだろう、この変な感じは? 『人質の朗読会』はとても面白かったので読んでみたけど、今回は残念でした。
0投稿日: 2017.10.25
powered by ブクログ前回いつ読んだか思い出せないが二度目の読了 綺麗で物寂しい、秋の夜長にぴったりなお話でした 違う作品も読んでみたい
0投稿日: 2017.10.07
powered by ブクログこの作品から作者の著書を読む様になった本。短編でありながら妙な感じの独特な雰囲気に飲まれ強烈な印象をいつまでも自分の中に残した作品でした。ホラーよりの冷たいファンタジーな感じ。
1投稿日: 2017.10.04
powered by ブクログ『薬指の標本』も『六角形の部屋』も、読後に謎を残す後味のよい作品だった。答えを与えない宙ぶらりんの作品はざらついた不快に似た物を残すけど同時にインパクトも強い。『六角形の部屋』は特に、滑ってパエリヤをひっくり返した元恋人の姿を見て心境が変化した主人公を描写していたが、まさにこういう「言葉にできない」複雑な感覚を捉えて描いた手腕に平伏。
1投稿日: 2017.09.24
powered by ブクログ知人から勧められて読みました。 独特な狂気の中に中毒性の甘い蜜があって、だんだんと侵食されていくのだけれど、そこには緻密に繊細に象られた美しさがある。 逃げられないし逃げたくもない。埋もれ続けていたい。 そんな2つの物語でした。
3投稿日: 2017.09.17
powered by ブクログ標本室がどんな所なのか、想像しながら読んだ。奇妙な空間と登場人物に、怪しげな雰囲気が漂う。登場人物の過去と、その後の生き方がとても気になる。
0投稿日: 2017.01.23
powered by ブクログ薬指の標本:男に憎しみを抱かせ、女の受容欲求に絶望させる筆力に脱帽。 六角家の小部屋:自分と向き合う厳しさ。胸に秘める困難さ。
1投稿日: 2017.01.11
powered by ブクログ2編収録。喩えるなら、仄暗くなってきた梅雨の午後、かな。少しぐらい不思議な事が起きても何故か受け入れてしまいそうな。
0投稿日: 2017.01.03
powered by ブクログいや、わたし小川洋子すきなんだなって思いました。独特の世界観に惹きこまれる感じ。薄暗いような、朝焼けの眩しさのような。ニジュウマル。なんと伝えたらいいかわからないけど、一般的なしあわせのイメージとは少し違うしあわせのカタチを読んだ感じ。
1投稿日: 2016.09.02
powered by ブクログ静かな音が聞こえてくるようだった。内容が、というより雰囲気が印象的で、癖になる。冬にまた読みたくなりそう。
0投稿日: 2016.08.21
powered by ブクログ読んでると心許なくなる。 この先どうなるんだろう、という想像が続いていく。 自分の目の前に、標本室やカタリコベヤが現れたら、どうなるだろう。
0投稿日: 2016.08.17
powered by ブクログふと思い立って再読、いいっすね、なかなか。 死とフェティシズムと性が微妙に交錯してまさにこの作家だけの世界が堪能できます。 地下の標本室には何が(誰が)時を止めた形で保存されているのか、向こうの世界に入りそうで入らない微妙な止まり方もよろしいかと思われ。
0投稿日: 2016.07.18
powered by ブクログ再読,短編集2編 足を侵食してくるようなぴったりとした靴に包まれる幸せとは何だろう?自分と他者との境界のあやふやさが,恐ろしくもあり夢見るような心地よさを伴っている不思議な感覚がある.最後,地下室の先に何があったのか,今も分からない.
1投稿日: 2016.06.04
powered by ブクログ図書館で借りて表題作のみ読んだ。 耽美的で幻想的。物語を静寂が支配する感じは、標本室に関する事柄以外を一切排除した語りから生まれるものだと思われる。例えば、主人公は前職の飲料水工場では仲間とおしゃべりしたりしていた。しかしその後、標本室勤務となってからは私的な部分の話はほとんど出てこない。住んでいる部屋や食事といった、生活感のある描写が排除されている。これが、主人公が標本技師にのめり込み、支配され、それ以外の事柄を全て削ぎ落とされてゆく(と同時に自らの意思でそちらへ進んでいく)過程の表れであり、標本技師からもらった靴以外を一切履かない点にもそれは表れている。 この削ぎ落とされていくという状態は、薬指の欠損ともリンクする。主人公は薬指に始まり、色々なものを削ぎ落としていった上、ついに全てを無にして標本技師の懐に飛び込むこととなる。これは愛なのか、私には愛というよりも、欠損したもの、削ぎ落とされて今は跡形も無くなったものへの執着の裏返しであるように感じられた。 唯一、他に行き場のない標本室という閉塞された場所に外からの新鮮な風が吹き込んだのは、靴みがきのおじいさんの訪れだった。主人公は初めて能動的に標本室から出て、おじいさんの元へと向かうが、それは標本室に取り込まれることへの意思を固める結果となった。 主人公には、はじめから無くした薬指を埋めるものはこの標本室と標本技師の元にしか無いことが分かっていたのだろう。
1投稿日: 2016.06.03
powered by ブクログひどく静かに描かれているが、これは痛々しいくらいの危うい恋の話だ。指先を失ったショックは大きかっただろうが、標本室の他の客と違って主人公が薬指を標本にしてもらいたいと思ったのはその心の傷からではない。先の欠けた薬指に自分だけの唯一性を見出し、永遠に彼のものになりたいという盲目的な恋心からである。指を標本にするって、痛いだろうに。後々後悔するだろうに。でも彼女は構わないのである。完全に恋する乙女だよ。彼しか見えてないよ。でもこの恋で傷ついても、標本室を訪れる人々と同じように、然るべき時が来たら心の傷とケリをつけ、成長していくのだろう。きっと人はそうやって痛々しくも成長していくものなのだ。彼女の盲目さが痛々しくも気持ちよかった。
1投稿日: 2016.05.19
powered by ブクログまあまあ。期待していたほどではなかった。雰囲気は相変わらず好きなんだけど、もともとこういう感じのストーリーに興味がないのもあるかも
0投稿日: 2016.05.05
powered by ブクログすごくすごくよかった! 表題作の『薬指の標本』と『六角形の小部屋』の二作品が収められています。 どちらもすごく品もあり毒もある不思議な世界観です。 読みやすく、静かに穏やかに物語は進みます。 『博士の愛した数式』でもそうだったのですが 試験管やフラスコのような 子どもの好奇心をくすぐる理科的要素と 主人公の文学的な感性が 融合して物語の美しさを彩っています。 この作品は映像化もされているようなので、 いつか観てみたいなあ。
0投稿日: 2016.04.12
powered by ブクログ【貴方ならなにを標本にしますか】 彼女は無邪気に微笑んだ。 たった一文でさえきちんと正しく標本に収められていく。儚くて脆くて心持たない不完全な標本は、未来になにを残すのだろうか。
0投稿日: 2016.03.30
powered by ブクログ小川洋子さんの、明暗白黒表裏一体の文章は凄いと思う。内容はあまり好みではなかったけど、読んでいて楽しい。
0投稿日: 2016.03.18
powered by ブクログいったいどこにいて どこに向かうのか わからないままお話が終わりに近づく わかろうとしちゃいけない感覚には、委ねてみるしかない 不思議な世界。何だかありそうで やはりありそうにもないそんな世界の片隅。
1投稿日: 2016.03.10
powered by ブクログこの本は短編小説が2篇収録されています。 一応恋愛小説として紹介されておりますが、 どちらも見方によってはホラーともファンタジーとも取れそうです。 私は歪んだ恋愛小説と受け取りました。 全体的に美しい言葉からくっきりとした映像が浮かぶのだけど、 それでもどこか霧のかかったような現実感の薄い感覚に 包まれています。 何かに絡め取れているのだけど、そこから出られない・・・。 抜け出さなくてはいけないとどこかで思っているのだけど、 絡め取られたままでいたい。 そうしてるうちにどんどん何かが消滅していく・・・。 怪しく気味悪く密やかで夢のような美しい小説です。 20代の若い女性を主人公にしていますが、 大人の女性の小説ですね。
0投稿日: 2016.02.26
powered by ブクログ静かで官能的ながら、絡めとられるような怖さのある表題作と、同じくあるものごとに魅せられて、分かちがたく吸い寄せられていく主人公のお話、2篇。 いずれも、知らず知らずのうちに自分を失っていく、美しいおとぎ話のような怖さがあり、読み終わったときに登場人物のその後が気になりつつも、自分がその小説世界から抜け出せたことにほっとする。映像化したら素敵だろうな、と思ったところ、すでに映像化されていて、しかもフランス映画というのはものすごくしっくりくる。観てみたい。
1投稿日: 2016.02.21
powered by ブクログこの本も小川さんらしい雰囲気だった。静かに話は進むけど、少し、毒があるというか。 文章がやさしくて好き。
0投稿日: 2016.02.16
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
美しいには美しいんだけど、私にはすごく怖い本でした。 思い出すだけでゾクゾクと恐怖が背中を這い回ります。ホラー小説とかは大の苦手なので。 「薬指の標本」というタイトルですが、私のイメージはむしろ「美しい黒い靴を履いた主人公の、全身(薬指以外)のホルマリン漬け」です。私はちゃんと理解して読めてないのかな……? でももう一度読む気にはなれません。
0投稿日: 2016.02.10
powered by ブクログダメだと、恐らくはわかっていて。警告もあって。そこにたどり着いてはいけない、という世界に、だけどもう、居て。悲観されるべきではない、欠落と引き換えにしか触れることのできないぬくもりを知ること。 小川洋子さんの小説世界が持つ静謐な空気、やはりとても良いです。
1投稿日: 2016.02.06
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
小川洋子さんの作品で一番読みたかった作品。長らく見つからなかったのが、先日近所の本屋に並んでいたのでいそいそと購入。 取り急ぎ、表題作「薬指の標本」について。 静かで閉鎖感のある話だった。少女の火傷の標本のくだりから、なんとなく【私】が選ぶ結末は見えていたけど、【私】は弟子丸氏の視線に捕まったときから標本になる運命だったのかもしれない。 読み進めるうちに少しずつ息苦しくなって、【私】の「これでいいの」っていう意志も一緒に、少しずつにじみ出てくるような気がした。
0投稿日: 2016.01.20
powered by ブクログこの作家さんの文章から滲み出る空気というか雰囲気がとても好き。 多くの時間が積み重なった静かな洋館の書庫や倉庫のような、小さな町にある古い図書館や博物館の誰も足を踏み入れない奥の隅っこのような空気感。少しわくわくする。 今作はその静かで落ち着いた空気感もありつつ、冷静さを失うような激しい感情も抱く主人公たちの2つの短編。 依頼者が持ち寄った思い出の品を標本にする標本室で働くことになった“わたし”と、カタリコベヤを持って旅するミドリさんたちと出会いもがく、痛みを持った“わたし”のお話。
3投稿日: 2016.01.09
powered by ブクログどうしようもなく人を嫌いになったり好きになったりする事がある。心の襞の奥を上手く描き出す作家さんだなぁと思った。
1投稿日: 2016.01.02
powered by ブクログどのカテゴリなのか分類に困る。面白いのは間違いないが、惹き込まれるというより憑りつかれると言った方が合ってる気がする。ほんと不思議な一冊でした。 あらすじ(背表紙より) 楽譜に書かれた音、愛鳥の骨、火傷の傷跡…。人々が思い出の品々を持ち込む「標本室」で働いているわたしは、ある日標本技術士に素敵な靴をプレゼントされた。「毎日その靴をはいてほしい。とにかくずっとだ。いいね」靴はあまりにも足にぴったりで、そしてわたしは…。奇妙な、そしてあまりにもひそやかなふたりの愛。恋愛の痛みと恍惚を透明感漂う文章で描いた珠玉の二篇。
0投稿日: 2015.12.06
