
総合評価
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powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
文章が美しい。戦前という時代設定も哀愁漂う雰囲気で良き。やっぱこの人の作品は不倫モノ多いな。 表題作の『戻り川心中』、女の立場から見ると主人公にめちゃめちゃ腹立って終わった。心中してもいいくらい想ってくれてる女性が二人もいたのに結局全部自分の歌に意味を持たせたかったためにやってたことって何やねんそれ〜〜!サイコパスめ!でも女ってそういう危うげな人に惹かれちゃうんだよね。 個人的には『桔梗の宿』と『桐の柩』が好きでした。
0投稿日: 2025.09.22
powered by ブクログ文章が流麗。ミステリとしての良さだけでなく文学的な良さが味わえ、他とはひと味違う。「花」「時代が古め」「恋愛」といった要素が各短編で共通しており、話自体は繋がっていないものの、一冊の本としてのまとまりもある。 ミステリの特徴としては、「動機」の部分に重きが置かれているようで、事件を起こした理由が最後にきてひっくり返される場合が多い。一見して不可解だが、理由を説明されると一気に視界が開かれ、それにより物語全体の印象も変わってくる。そんな瞬間がたびたびあって心地よかった。事件と動機の因果がそもそも逆転しているというこの特徴は、リアリティラインを下げる一因になりそうなものなのに、本短編集ではそのような「嘘くささ」「おためごかし」感が無く、登場人物の設定をヤクザにしていたり、時代を古めにすることで、難なくそれらハードルを乗り越えている。フィクションとして、どのような組立を行うか、精密に考え抜かれて作られているようで、作者へ身を委ねることに安心感のようなものを覚えた。この読後感はミステリとしては珍しい。
5投稿日: 2025.06.30
powered by ブクログ5つの短編集。ジャンルは推理小説となっているが、男女の恋愛のもつれ+ミステリ要素があるという世界観でした。5つの物語の中でも表題作である「戻り川心中」が最も印象的で、こうゆうのを趣深いと表現するんだろうなと感じました。歌人の心中の話ですが、後世に残る作品というのは、歌の技巧によって評価されるのではなく、実際の出来事を含めた評価として後世に遺る作品に昇華するのだろうと思いました。
2投稿日: 2025.01.21
powered by ブクログ藤の香 大正末頃 連続殺人事件 桔梗の宿 昭和三年 桔梗掴んでいた遺体 桐の柩 昭和十二年 俺がなぜ殺しをしなければならなかったか 白蓮の寺 大正末から昭和初期 幼少期のかすかな記憶 母が男を殺している場面を見たはず 戻り川心中 大正時代 二度の心中未遂で二人の女を死に追いやり、自害した歌人・苑田岳葉
0投稿日: 2024.12.27
powered by ブクログ「一作目が面白いし短いから読んでみて。読んで面白かったと思ったら全部読んでみるのもあり」と上手い言葉で勧められてまんまと全部読んだ。 流麗な文章。 ほんとうにその一言に尽きる。
0投稿日: 2024.12.03
powered by ブクログ花にまつわるミステリーが収録された短編集で、どれも男女の関係や人間の情や業が深く関わったホワイダニットやどんでん返しで意表を突かれ、また登場する花が事件の重要な鍵となる物語の儚くもどこか美しい世界観に惹かれた。
1投稿日: 2024.08.19
powered by ブクログこれだよ、小説はこうでなきゃ… 稚拙な文章、あっさい人間描写にはうんざりだ。 連城三紀彦が日本に生まれてくれて本当によかった。
0投稿日: 2024.06.15
powered by ブクログ【ミステリーレビュー500冊目】自らの命よりも、美しく花を咲かせることの尊さとは… #戻り川心中 ■はじめに レビュー500冊目は、連城三紀彦先生の『戻り川心中』です。ミステリー史上、最も美しいとされている一冊で、どの作品も味わい深く文学的。人間が隠し持っている欲や業、そして愛情を描いた短編集です。 時は大正・昭和前期、日本独特の文化や風習が作品全体から漂ってくる。各作品ごとに花や植物が違和感なく小道具になっていて、耽美な雰囲気をよりかもし出してくれます。しかし、いつの時代も男と女の物語は美しくも哀しいですね… 謎解きとしても綺麗な論理性でまとめてくれるし、文芸作品としても質が高い。もしミステリー作家になりたいのならお手本になる一冊で、必ず読んでおくべき作品ですね。 ■各短編のレビュー ●藤の香 色街に住む女と呉服屋の主人の出来事、街で発生した殺人事件に隣に住む代書屋が関係しているらしいが… いつの時代も花街には無情さを感じます、いかに人間というのは弱い生き物なんだろう。物語は淡々と語られますが、命の描写があまりにも儚く、まるで夢をみているかのよう。事件の背景に感じた情け深さが耐え難い。美しいラストが必見の作品。 ●桔梗の宿【おすすめ】 川辺で男の死体が発見される、手には桔梗が握られていた。亡くなった男は、ある娼家にいたことがわかり、刑事たちは女性たちに聞き取りを始める。そこの幼い少女が語るには… この物語では誰が一番悪いのか、それは少女を売りつけて未来を摘んでしまった外道たち。この時代、きっと同じように不幸を抱えた子供たちがいっぱいいたと思うと耐えられない。そして彼女の覚悟があまりにも幼稚すぎて、ただ切ない… ●桐の柩【超おすすめ】 極道の世界で、兄貴に拾ってもらった男の物語。日々、舎弟として手足になるも、兄貴からある女を抱いて来いと言われるのだった。どうやらその女と兄貴には、暗い繋がりがあるようなのだが。 人と人の距離感が素晴らしい!これ映画化してほしい!これぞ色恋沙汰の傑作、謎解きの真相もハッとさせられました。 主人公、兄貴、女、ひとりひとりの情念と行動が罪深すぎるだろ、これ… 業にまみれた醜さと可憐さ、さらに生きることに対する誠実さを感じた一作。 ●白蓮の寺 主人公の男は、幼年期の記憶が忘れられずにいた。それは母が血に染まった手で人を殺害している場面であったが… 彼の幼い頃の記憶の真相は。 長い長い幼年期の語りが幻想的で美しい。しかし想像した以上に深い事情で主人公がただ可哀想。後半の展開は見事で、墓場まで秘密にした覚悟が強烈な作品。 ●戻り川心中【超おすすめ】 かつて天才歌人だった苑田岳葉、彼は二度の心中で二人の女性を葬ってしまった。さらにその時の想いを歌に残して自殺をしてしまうのだ。どんな背景があったのか… これも現代の映像技術で映画にしてほしい作品ですね。イケメン俳優と和美人でキャスティングをお願いしたい。 しかしどんなにその人を愛していたとしても、この死生観は理解できない。ただ欲望としてはわからなくもないの。こういった男性が、何故か女性には人気だったりするんですよね。高次元で惹かれ合う、みたいな感じでしょうか。 道づれになった女性たちが憐れすぎるよ。命よりも大切なものはないはずなのに、それよりも美しく花を咲かせることを求めている… 情報化社会の合理性が求められる時代、この狂った恋愛物語を現代人たちはどう思うでしょう。 ■さいごに 我々は何のために生きているんでしょうか? 多くの人は、日常は忙しく哲学的なことを考えている暇はない。ただ何か壁にぶつかった時、ふとこの疑問を思い出し、おそらくは何も結論が出ずに考えるのをやめてしまう。 本作の登場人物たちは、全員何のために生きるのか明確なんです。自らの命に代えても守りたいほど強い意志を持っている。それゆえ潔く美しいのですが、悲しくもありますよね。 これからの人生、誰しもゆっくりと死に向かってゆく。いつか絶望を感じた時、きっとまたこの本を読めば、なにか感じることがあるんだろうなと思いました。
96投稿日: 2024.05.23
powered by ブクログちょっと胸焼けしてしまった。 一編だけ読む分には楽しいんだけど、並べて読むと疲れる。 全部加害者側に同情的に書かれているから 殺人の言い訳をあの手この手でされているような気分になりました。 加害者の生い立ちによる減刑と似た不条理を感じる。 動機が直接的な恨みとかじゃないから余計に… 一編ずつ読めばエモくて良いミステリーだと思えたんじゃないかと思います。
0投稿日: 2024.04.28
powered by ブクログ1983年の作品です。 1997年に発売された「本格ミステリ・ベスト100」のベスト10です。 本格ミステリかどうかは判断に迷いますが、どの話もミステリではあります。 どれも、壮絶で哀しい物語ばかりでした。 特に、最後の「戻り川心中」は、どんでん返しがあり、物語に引き込まれました。
0投稿日: 2024.03.25
powered by ブクログどの短編も静かで流麗な語り口が印象的で、推理小説だけど美しい純文学を読んでる気持ちになった。「桔梗の宿」が全体を通して一番好きかも。読者のミスリードも素晴らしかったし、犯人の動機も切なくてたまらなかった。ほかのお気に入りは「桐の棺」と「白蓮の寺」。「桐の棺」は主人公とヤクザの男の関係が良かった……。「白蓮の寺」のどうにも理解し難い夢(この夢がまた不気味かつ美しい雰囲気で良い……)を紐解いていく話の展開が好きだった!
0投稿日: 2024.03.22
powered by ブクログものすごいトリックが!と言うわけではないです。どちらかといえば、動機の方に驚きを持っていったような感じです とても綺麗で品の良いミステリーでありながら純文学を読んだような気持ちでした
9投稿日: 2024.03.21
powered by ブクログどのお話もただ美しい純愛としてだけ了解できるものにはなっておらず、濃淡の違いはあれど底の方にエゴの奔流が流れている。いくつかの事実の断片を手がかりに事件の真相を解き明かすにつれ、そのどす黒い流れが垣間見える仕掛けになっている。そして、偽善であろうと自己満足であろうと情は情であり、純粋なエゴイズムであるがゆえに美しく見えることもある。 個々のエピソードについて話すなら、2つ目の「桔梗の宿」が1番よかった。この話も広義には恋愛をテーマにした短編ではあるが、それらは自由恋愛ではなく、他にすべもなくただ生存本能として選びとらざるをえない恋愛だ。他の恋愛小説のように華々しくなく、重苦しく切実なものだ。花が、そこがどんな荒れた土地であっても自分では咲く場所を選ぶことができずただ種の落とされた地に根を張り芽を出すことしかできないように、花町という土地に、しいてはその時代の日本に生まれついてしまったがゆえの美しさなのだ。愛は美しいが、この物語を美しいと感じてしまう読み手の私のうちにもエゴイズムがある。荒れ野の花はそこが荒れ野であるが故に際立ち人の目には美しく見えるが、初めからそんなところに咲くべきではない。
1投稿日: 2023.07.21
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
面白かった。米澤穂信が薦めていたのと評判が良かったので読んでみた。 「藤の香」 代筆屋という伏線。故郷への文と目の前の少女の行く末を考えて、さらに己の寿命まで考えると成敗したくなるのもわかるな。お縫の心情を推し量ろうとするまなざしが良かった。 「桔梗の宿」 二階の窓から花を散らすという仕草になんともいじさらしを感じてしまう。言葉にして直接伝えられない感情を感じる。福村も人形を操ることで何かを伝えていたとしたらそこが二人の共通点になるのかな。 「桐の柩」 主人公がなんか百合の間に挟まる男というか、二人の愛の渦中にいるというか、面白い立ち位置。 主人公のありようがあまりにも希薄なのが良い。 桐の棺というダイナミックな小道具、大道具?の使い方が良い。画面映えしそう。 「白蓮の寺」 花を埋めるという動作について考えたことも無かったので、そんな場面を見たら忘れられないし怖さも覚えるだろうなと思った。 前半の夢の部分はどうにも退屈だった。他人の夢ほどどうでもいいというがほんとそれ。映像化したら美しいだろうが。 なんとも奇妙な出来事を聞いたり覚えていたりで、じゃあ真実は?と探求していくのが面白かった。 母親が目の当たりにした春のあぜ道で女が突然死んだのは、母親の面影に誰か(女の夫か知りあい)を感じたからでは、という考察を見たが、なるほどと思った。それなら、母親も自分の子供が宗田に似てくるかも、似ていると感じるのもわかる。 「戻り川心中」 丹念に過去の場所を訪れて振り返るのが現場百篇って感じで面白かった。また、苑田の在り方が、とんでもすぎて西尾維新を思い出した。己の才のために人生を賭ける。そのまんますぎてすごい。すごいから常人ではないんだろうけど。それに付き合わされての心中はむごいな。トリックのために人を殺す麻耶雄嵩にも通ずるな。 全体的に花をモチーフにしてるが、説明てきではなくさりげなく小道具として、背景や形、匂い、色として登場しているので品があって面白かった。文体も読みやすい。大正時代も感じられて面白かった。
1投稿日: 2023.05.19
powered by ブクログ東西ミステリ第12位。人間の"想い"や"痴情"を物語のベースに据えた佳作です。あっと驚くようなトリックと言うよりも、あっと驚く動機、真実に重きが置かれています。 この時代(大正〜昭和初期)の暗い世相を背景に"心中"や"自殺"が描かれます。今の自由な時代からすると縁遠い価値観ですが、不自由な時代の人の想いが情緒たっぷりに描かれます。 本のタイトルの戻り川心中は少し独りよがりな気がしたけど、全部良いです。500ページ位の小説を読んでいる気分になりました。 ☆×3.8
1投稿日: 2023.05.12
powered by ブクログ桐の柩がとても良かった。それはそれとして繊細かつ大胆な登場人物たちを見て、連城三紀彦に女性向けシチュエーションCDのシナリオを書いてほしいと思った。
0投稿日: 2023.04.03
powered by ブクログ美しい大人な文章や描写なのもあって高く評価される本だとは思うんだけど、全体的に暗い。名作と言われるのも頷けるんだけど、私にはあまり合わなかったです。
0投稿日: 2023.03.07
powered by ブクログ「痴情のもつれ」って感じの恋愛&ミステリーの短編集だった。 いや、ミステリーというよりサスペンス?人間関係ドラマ?のような… 全体的に静かで暗いけど、どの話も男女ともにめちゃくちゃ情熱的だと思った。愛と憎しみの二つは違うようで、案外ふとしたことで入れ替わってしまったりするのかも。
1投稿日: 2023.02.22
powered by ブクログ花葬シリーズのうちの短編5篇。大正から昭和初期の退廃的、破滅的な世界観を持ち、推理小説と恋愛小説を見事に融合させた不朽の名作。まずは「戻り川心中」。2度の心中未遂事件で2人の女性を死なせ、その情死行を歌に遺して自害した天才歌人、苑田岳葉。その死の理由が明らかになる。そう来たかあ!太宰治の事件もそうだけど頭の中では単純化して思い込んでしまうからね。これは盲点。主役は苑田ではない。道連れにされた女たちの悲哀なのだ。しかし恋愛小説としては「藤の香」が好きだ。色街で起きる連続殺人。死体は顔を潰され身元がわからない。隣家の代書屋が疑われて…という「藤の香」。どれもトリックがしっかりした推理小説なのだ。 これらの小説では主役は花である。華やかに咲き儚く散る花を犯人や被害者と重ねて描く。そして人の命よりも大切なものに焦点が当てられる。命より大切なもの…こういう感覚が好きですね。
1投稿日: 2023.01.28
powered by ブクログ各作品、花が共通項の、時代は大正から昭和初期の、連作短編集。 最近、友人にいただいて、古いものだけど、“凄絶な滅びの美学”と、当時の帯が残っていた。凄まじく、恐ろしいという美学なのです。 各作品、ミステリの構成ですが、犯人やトリックを追うものではありません。彼らが、何故その罪を背負う事になったのか、その動機を消し去る為に身を滅ぼしていく犯罪者への哀悼の物語。 「戻り川心中」 最近、坂口安吾の太宰治情死考を読んでいたので、あゝ、連城さんもそうなのか、太宰治の心中を情死とは思えていないのだろうと。 主人公の歌人岳葉は、二度の心中事件を引き起こし、その事件を題材とした傑作歌集を完成させた後、自害する。彼が遍歴した三人の女性達。彼女達への愛情も自堕落な生活も、全てが作品を完成させるトリックではなかったのかと思いを馳せる。旅館の古びた部屋の花菖蒲。その咲いた花の数から真相が浮かんでくる。 「藤の香」 家族の為、色街で働く女性達。文盲の彼女達の代筆屋。代筆屋は、その実情を知り、彼女達の重荷を背負い、一人罪を負う。 「桔梗の宿」 幼い娼婦の淡い恋心が引き起こす、殺人事件。八百屋お七の筋書きをたどる。 「桐の柩」 犯した罪から、好きな女を抱けなくなった男。自分の手下を女の元へ通わせる。男は、女の香を確かめながら手下を懐く。逆縁橋の上で少しづつ解かれる秘密。 「白蓮の寺」 田舎寺の嫡子であった少年の交錯する幼児期の記憶。母親は、最大の秘密を守る為に、その記憶をも操作しようとしていた。母親は、最期まで秘密を守り通して逝く。
47投稿日: 2022.10.11
powered by ブクログ匂い立つ流麗な文章。その時代に生きていなくても、空気感が伝わってくる。連城三紀彦の文章はすごいなあと思う。どの作品にしっとりとした翳をまとった女たちが現れる。本のタイトルとなった戻り川心中の真相は恐ろしい企み、の一言としか。
1投稿日: 2022.07.18
powered by ブクログ最高傑作 女性の美しさ、恋の美しさに満ち溢れていた。文章も美しく、全く飽きなかった。特に桔梗の宿を美しく思う。
0投稿日: 2022.06.30
powered by ブクログ最高傑作 女性の美しさ、恋の美しさに満ち溢れていた。文章も美しく、全く飽きなかった。特に桔梗の宿を美しく思う。
0投稿日: 2022.06.10
powered by ブクログ美しい文章に引き込まれ、推理することも忘れ淡々と読んでしまいました。 ちゃんとストーリーはミステリーなのですが、ミステリーを読んでいないかのような感覚に陥りました。(自分でも何を言ってるのかよくわかりません笑) 恋と花をモチーフにした短編が5つ収録されていますが、どれも本当に面白い! トリックよりも動機に重きを置いているのが好みです。 なかでも「桔梗の宿」が好きです。
1投稿日: 2021.12.07
powered by ブクログ以前読んだ『夜よ鼠たちのために』という短編があまりにも素晴らしく、是非他の作品も読んでみたいと思っていた。 大正から昭和にかけて、まだ女性がモノのように売られたり買われたり、それが当たり前だった時代のお話。 モノのような扱いを受けたって、人間なのだから感情はある。体が女になれば、まだ子どもといえる年齢でも、気持ちも女になっていく。 今のように、男性も女性も同等の権利を持つ(または持つことが当たり前とする)社会しか知らない人から見たら、こんな世界はきっとおぞましいおとぎ話みたいに思えるのかもしれない。 花にまつわる・・・という話ではない、でも物語の中で情景の一部である花たちは、そのどれもが哀しい美しさを纏い、わたしたちの胸を苦しくさせる。 ミステリーと呼ぶにはあまりにも文学的過ぎる、泉鏡花を彷彿とさせるような短編集。 それが故に、普通に読むには難しい、または退屈だ、物足りないとさえ思うかもしれない。することをすべて済ませてしまった夜に、お酒でも飲みながらじっくり向き合いたい本だと思う。
1投稿日: 2021.11.08
powered by ブクログ「屍人荘の殺人」に出てきたので読んでみたシリーズ これは・・・すごい!! こんなに美しい文章とミステリーが両立するなんて! でもトリックとかそんなんじゃない、でも立派にミステリー これが花葬シリーズ!!てなった
0投稿日: 2021.10.11
powered by ブクログ舞台は明治から昭和。慣れない文体だったが、綺麗な文章ですっと入ってきた。罪、推理小説でも「花」がテーマになっていて、どこか切なく美しく、儚さが漂っていた。
0投稿日: 2021.10.02
powered by ブクログ5つの短編から構成されている。 どれも花と犯罪が結びついており、花葬シリーズとして有名だそう。本書を読む前に屍人荘の殺人を読み、その一文で「館シリーズといえば綾辻行人、では花葬シリーズといえば?」と聞いた明智に対して主人公は連城三紀彦、と答える。恥ずかしながら連城三紀彦の名すら知らず、さっそく図書館で取り寄せました。 ここ最近サラサラと読書していましたが、この本は何と言っても時間がかかる。そして短編とは思えない重厚感。ずっしりとしています。時代背景が大正前後の物語というのもあるとはいえ、書かれている内容にのめり込もうとすればすれほど、疲労感を覚えました。(マイナスの意味ではなく、しっかりと理解しようと読み進めた結果、1話ごとに眠気が訪れるほど私にはなれない文体と言葉遣いでした) 単なる推理小説というより、詩のような美しい言葉や繊細な情景表現が組み合わされた本だと思います。5話全ての風景が鈍色で、対照的にそれぞれのモチーフの花が色濃く輝いているように感じました。好きな話は藤の香です。
0投稿日: 2021.09.26
powered by ブクログ<花葬シリーズ>と銘打たれた短編集。連城氏の紡ぐ文章の美しさは当然知っていたものの、大正という前時代の日陰を生きる登場人物達の姿と相まって、無常感がより一層際立っている。全編【悲恋】がテーマで、前半三作品は思わず『切ないなぁ…』と口に出してしまった程。型破りなトリックが違和感なく溶け込む舞台設定を作り上げる構成力には思わず感服。トリッキーな表題作が成立し得るのも世界観の積み上げあってこそ。それ故に書き込みが不十分な「白蓮の寺」は奇抜さの方が目に付いてしまった。年明け早々凄い作品を読めて幸先良いスタート。
0投稿日: 2021.01.03
powered by ブクログ知人に強く薦められて読みました。 良くできてるな~とは思いましたが、そこまでです。 短編集ですが、表題となっている最後の作品があまり受け入れられませんでした。
9投稿日: 2020.12.29
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
大正・昭和の男と女を優美な花が彩るミステリー短編集。 どの物語も真実に近づいていくのが心地よく、ただ流れに身を任せて楽しんだ。 短編であるということを忘れるほど濃厚で没入してしまう。匂い立つ花の余韻を噛み締めながら、ずっと浸っていたい美しさ。 粋で情緒のある物語世界を堪能した。
0投稿日: 2020.12.19
powered by ブクログ非情に評価の高いミステリー。恋愛小説か探偵小説かと言われるほど美してくて静寂な雰囲気。しかし、私にはこの静寂感が苦手です(笑)。謎というより真相はそうだったと言う解明部分は面白いところもあるのですが、何よりも苑田岳葉の行動に全く感情移入できなかったです。相性の問題だからしょうがないなあ。
0投稿日: 2020.11.04
powered by ブクログミステリーを楽しむぞ〜ってより、各話の情景描写を味わう1冊だった。 というか、こういう文学的な話は読み慣れてないので、雰囲気を噛みしめるので、手一杯だった⤵︎ ︎。 私的なヒットは、藤の香 次点で桔梗の宿と戻り川心中かな
0投稿日: 2020.10.13
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
「藤の香」★★★★ 「桔梗の宿」★★★ 「桐の柩」★★★ 「白蓮の寺」★★★ 「戻り川心中」★★★
0投稿日: 2020.07.27
powered by ブクログ皆さまが感想を書かれているように、文学作品であり、ミステリーである珍しい作品だと思いました。 文学っぽくはあるけどミステリー色が強いものは多いけど、ここまでバランスがとれているのは、この作品ならでは。 全体的に暗い時代背景のため、本や文字自体も寂しい雰囲気が漂っていて、元気がない時に読むのは、やや危険な気もする。 心が、もっていかれそう。
0投稿日: 2020.07.01
powered by ブクログずっと気になっていた作家の本。 とにかく「美しい」という評価がついていたけど、その通り。 こんなに美しい文体の推理小説は読んだことない。 ミステリーとしても極上。あっと驚く展開で引き込まれる。 読み終わるたびにため息をついてしまう。 一番好きなのは「桔梗の宿」 暴かれる真実のあまりの美しさに、最後だけ何回も読み直してしまった。
1投稿日: 2020.05.22
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
大正から昭和初期の時代設定で雰囲気が良いです。5つ短編集なのに内容が濃くて読み応えがあります。 ミステリーですが、トリックとか犯人が誰なのかというよりもとにかく動機が衝撃的で面白い。 個人的には「白蓮の寺」が一番面白かったです。
0投稿日: 2020.05.21
powered by ブクログ遊興町の裏手で男の死体が見つかった。その手には桔梗の花、何かを知るのは花街には相応しくない大人しい少女…(『桔梗の宿』)、私の記憶の中の、女が男を殺している姿がはっきりと残っている。あれはもしかして、母と父なのだろうか…(『白蓮の寺』)など全五編。 やっと読めた!物悲しくて、美しい短編集。語り口がその当時のものなので慣れが必要だけど、だからこそ昭和の美しい映画のようで雰囲気が素敵。短編なのに一話ずつの世界観の作りが完璧で、謎も作り込まれていて解決も鮮やか。『桐の棺』と『白蓮の寺』が特に好きかな。そして図書館にあった本が単行本第一刷で驚き。
0投稿日: 2020.04.15
powered by ブクログ藤の香 桔梗の宿 桐の柩 白蓮の寺 戻り川心中 初連城作品。 オールタイム・ベストにランクインしている短編というところに興味を持って手に取った。 一編一編は長さもなく、叙情的で美しい文章なのでスルッと読めるかと思いきや、恋愛小説のような読み心地からの謎解きへというどんでん返しや、その余韻で一編読んだ後次に取り掛かるのに時間がかかり、数日かけての読了となった。 口語体のためか読点が多いのが、私にはちょっとした癖のあるように感じられて、それも読むのに時間がかかった理由かもしれない。 どれも謎解き要素はとても論理的なのに、謎が謎じゃないようなどんでん返しの繰り返し。すごかった。 表題作の戻り川心中は、なるほど評価が高いわけだと納得。 苑田岳葉の歌人としての執念のようなものと、その蜘蛛の糸のような執念に掛かってしまった女性たちの物語に圧倒された。 一番ミステリ的だと思ったのは桐の柩かな。 こういう描かれ方じゃなければ、トリックとしてそう特筆すべきところがある感じではないんだけど、文章の流麗さで結末に驚かされた。 こういう推理小説もアリなんだな…
0投稿日: 2020.02.06
powered by ブクログその美しさで名高い本作の文章で綴られる大正~昭和初期の少し暗い時代の空気と人々の情念と悲しさにすっかりはまりこみ、ミステリーであることを忘れて読みました。
0投稿日: 2019.12.14
powered by ブクログ内容(「BOOK」データベースより) 大正歌壇の寵児・苑田岳葉。二度の心中未遂事件で、二人の女を死に迫いやり、その情死行を歌に遺して自害した天才歌人。岳葉が真に愛したのは?女たちを死なせてまで彼が求めたものとは?歌に秘められた男の野望と道連れにされる女の哀れを描く表題作は、日本推理作家協会賞受賞の不朽の名作。耽美と詩情―ミステリ史上に輝く、花にまつわる傑作五編。
0投稿日: 2019.10.29
powered by ブクログ美しい文体で綴られるミステリー。大正から昭和初期の退廃的な独特の空気。廃れ行く遊廓。そんな日常を舞台に小さな事件が起こり、それはなぜかを解き明かす。 代筆屋とお七の話が好み。
2投稿日: 2019.09.17
powered by ブクログ耽美的といわれて、なるほど。 5作品通して、しとしとと降り続く雨のような空気感。 人をあやめるほどの欲も情念も、ひそやかに危うく、悲しげ。 花街、組、文壇といったにぎやかで陽気な世間から一歩離れた世界と、今とは違うこれらの時代。そこに溶け込むような情緒ある文体。そしてこのストーリー。 「戻り川心中」の舟の上での会話が胸を打つ。
0投稿日: 2019.05.11
powered by ブクログ日本推理作家協会賞受賞。色んな所で評判が良いので買ってみた。なるほど。推理小説としては異色というか、詩情があり人の心の描写が細やかで美しい。人が人を殺めねばならぬ理由(動機)がもの悲しくも妖しい。推理小説としてより、文学作品として読みたい一冊。半分は美容院で読んだ(笑)。ちょいねっちり。[private]諫早に持ち帰る2007/1/1[/private]
0投稿日: 2018.11.20
powered by ブクログいやぁ、圧倒的な物語性。ミステリー小説って謎が何なのかが最大のポイントになるから、登場人物たちが無機質になることも多々ある中でこの作品は人物が生の人間として描き切られてる。確かにさらさらっと読み進められるタイプではないけど、読み進めていくうちにどんどん引き込まれていく。表現力が幻影的で瑞々しいと感じる。テーマは情事、恋慕と重苦しいものなのにもかかわらず。 最後の『戻り川心中』はもう傑作としか言いようがないでしょう。謎が明らかになった時のしてやられた感は上質なミステリーのそれであり、且つ歌人としての尋常でない感覚。。。ぜひ、読んでいただきたい。
0投稿日: 2018.10.13
powered by ブクログ物語が反転する構造はシンプルで美しく見事。それによって物語の雰囲気が好きかどうかは別れると思うが、短編集なので好みの一作品が見つかるのではなかろうか。
0投稿日: 2018.06.15
powered by ブクログ連城三紀彦のスゴイ所は、 それぞれの語り手によって、文章が変わるところにあります。 言葉の使い回しや、方言、文中の並びにすら、 それぞれ全く違う作者が書いたかのような錯覚に捉われます。 ミステリーとしても秀逸だし、 花やアイテムの使い方も本当に上手です。 何らかの形で、文章に携わる生業をしている方には、 ぜひ手に取って欲しい作家です。
0投稿日: 2018.03.09
powered by ブクログ男女の情を描いた恋愛小説のような話なのにどれも品が良く、その情念は深くひねくれているのに乾いた印象をうける不思議な短編集。著者の文章の美しさ故なのか。 傑作といわれる表題作『戻り川心中』はなるほどそこに描かれる業の深さに驚かされる。推理小説なので謎解きがあり、それが暴かれた時の衝撃は抜群だ。
0投稿日: 2018.02.07
powered by ブクログ国内ミステリの短編部門では歴代ベストワンと評価されることも多いこの本の表題作。二度も心中をはかった歌人の心の謎を解き明かすというミステリなんですが、謎の解明の凄さというよりも、なんとも和風な美的感覚が前編を覆っていて読んででボワ〜っとなりますね(笑)もちろん、謎と回答も唸らせられますが。
0投稿日: 2018.01.04
powered by ブクログ連城再読シリーズ完結、この作品が一番しっくり来た。 どうもこの作家、小器用なのが災いしているのか、それとも職業柄リクエストに応える(サービス)精神が旺盛なのか、正直内容に厚みを感じない内容が多いと率直に思います。 でも本作のラインが本流だと思う、文体含めて。これを突き詰めれば良かったのに、、、と思いますね、はい。 なおまぁ少し前の世代だから男中心の構成であるのはどうしようもないのかもしれない。だからこういった偏向を気になさるお方は読まない方が良いかも。
0投稿日: 2017.10.28
powered by ブクログ美しい美しいと言われているミステリー。確かにとても美しい。殺人事件の話なのに何故。それは連城さんが編む日本語であったり、情景に現れるこまごまとした物に命が宿っているからだろうと思う。特に眼を引くのが「花」の活かし方。睡蓮だったり菖蒲だったり、何かしら花が印象的に使われている。花の儚さと人間関係、生命の儚さ、やるせなさがうまくシンクロしていて、悲しい話のなかに瞬間的な彩りが作られている。また殺人事件が起こるまでの人間の心の機微、これでもかというほど繊細に書かれている。玻璃のような小説。感銘受けて当然なのだ。
1投稿日: 2017.07.06
powered by ブクログ昔の情緒漂う、寂れた色街や旅籠などが舞台のミステリ短編集。 それぞれ花と謎めいた女性が出てきます。 妖しく隠された「死」の情景が紐解かれるとき。腑に落ちると共に哀しみが押し寄せてきます。 「桔梗の宿」が良かった。 パラパラ、画面が切り替わりすぎて頭に入って来づらい話もあったけど…切ない。
0投稿日: 2017.05.19
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
「藤の香」「桔梗の宿」「桐の柩」「白蓮の寺」「戻り川心中」の5編収録 表題作「戻り川心中」が 第34回日本推理作家協会賞短編部門受賞 、第83回直木賞候補。 また短編集として第9回泉鏡花文学賞候補。 短編『私の叔父さん』の映画(細野辰興監督・高橋克典主演)を観て素敵な物語を書く作家さんだなと思い、オールタイム系ベスト本で常に出てくる『戻り川心中』を読んでみることに 恋愛+ミステリが美しい文章で奏でられる情緒纏綿たる短編集。 「白蓮の寺」「戻り川心中」もよかったけど お気に入りは「桔梗の宿」でした。 切なかったーーーーー( ノД`)シクシク… 米澤穂信さん 『かつて私は連城三紀彦の小説を読み、ミステリであることは小説としての何かを諦めなければならないことを意味しない、と思った。 』 うんうんわかる。
0投稿日: 2016.12.25
powered by ブクログこの作品が多くの人を魅了してきた 理由を思い知らされた。 エンタメ作品ばかり読んでいると、 つい遠ざかりがちな、 日本語表現の美しさ繊細さを 持って描かれる作品で、 貧しく、陰鬱としている時代だが どこか愛おしい日本の情景が描かれる。 ミステリとしても完成度の高い 素晴らしい短編が贅沢に収録されていた。 時には純文学も読みたいなぁ、と ミステリの読後とは思えない 気分になれる一冊。
0投稿日: 2016.12.18
powered by ブクログ現代を舞台にして愛のあまりに人を殺めるというと、どこか下世話なゴシップめいた雰囲気がしてしまう。舞台を過去におくことで、美しい文と花、情念がよく似合う作品集になったような気がする。ずっと読みたかった名作「戻り川心中」に満足。芸術家の身勝手さと女たちの悲しさが身にせまる。
0投稿日: 2016.11.01
powered by ブクログ<花にあなたを偲ばせて―> 初めて連城さんの本を読んだ. なんと美しい文章か. 淡々と,それでいて鋭敏な感性でとらえられた比喩と風景描写. どの話の落ちも驚きに満ちていて,短編一つ一つが印象に残る.
0投稿日: 2016.09.19
powered by ブクログ有栖川先生の「ミステリー国の人々」(6/5朝刊)で取り上げられていた作品を表題とする短編集。 まだ江戸の香りのする色街や地方の美しい情景が丁寧に描かれていて、まるで一服の日本画をみているよう。 でも内実は、しっかりと論理も通ったミステリ。表題作のクライマックスで見られる、その冴えの鋭さもまた美しいです。
0投稿日: 2016.08.12
powered by ブクログまず伝えたいことは、フェミニストの方は読んだらダメです。男性にとって理想的と思われるフィクションな女性が描かれているから。 ※続きは後で記載
0投稿日: 2016.07.06
powered by ブクログ移ろいゆく時間・空間・人の思いが綴じ込められている 日本情緒溢れた、しかし物騒でどこか物哀しい大正〜昭和初期の時代が舞台となります。ミステリとしてはもちろん、文学作品としてもレベルが高く、この2つの分野を互いを殺さず、美しく融合させてしまう著者の手腕に恐れ入りました。 やはり「戻り川心中」がベストでしょう。2度に渡って心中事件を起こした果てに自害した稀代の歌人・苑田岳葉。「情歌」「蘇生」という2つの事件を歌にした作品には、とんでもない秘密が隠されています。 その他、娘の淡い感情に胸が痛くなる「桔梗の宿」や、駆け引きの妙に唸らされた「桐の柩」など、どれも短編にするには勿体無い程よくできています。ミステリという枠を超えて、後世に受け継がれるべき作品です。
0投稿日: 2016.03.10
powered by ブクログ日本の短編集では最高の出来だと思います。なかでも表題作は白眉。これ以上美しくて残酷な動機があるでしょうか。 何が起きたか、どのようにして起きたか、そういう事件自体の枠組みは謎が解けても変わらないけれどその事件の持つ意味合いが真相が明らかになった途端180度転換する。 ホワイダニットの極致を見た思いです。
0投稿日: 2016.03.07
powered by ブクログ文章が綺麗でミステリだというのにびっくりした。格調高くて古い時代を感じさせるのに全然読みにくくない。 トリックを明かしていく過程で驚きよりもやるせなさ、切なさが心に残る。 「桔梗の宿」「白蓮の寺」が特にいい。
1投稿日: 2016.01.25
powered by ブクログ趣を一にする短編5編収載。それぞれ意外性に満ちたミステリーとしても面白かったし、人情ものとしてもそれぞれが魅力的な作品集だった。こういう題材にはやっぱり、大正時代あたりが一番良く似合うんですね。四民平等、文明開化といいながら、まだまだ全然垢抜けていない日本だからこそ、こういった空気感が醸し出せる訳で、時代設定も秀逸だと思います。どれも良くできた作品でしたが、中でもやっぱり表題作の作り込まれ方が素晴らしかったと思います。
0投稿日: 2016.01.13大正~昭和初期の風俗描写のリアルさ。そこで出会うミステリーの見事なこと
大正~昭和初期の日本が日本らしいのどかさと猥雑さを持っていたであろう、その時代の暮らしや街並みが見事に文字で再現されています。ちょっと時代は違いますが、目の前にAlways三丁目の夕日の風景が広がる、もしくは横浜ラーメン博物館のジオラマの中にいるような素晴らしい描写です。そしてその中で起こるミステリー。その謎解きがまた見事。どんでん返しの連続ながら、それでいて全てが収まるところに収まっている腑に落ち感。風景が目にうかぶような文学表現とミステリーとしての完成度の高さが両立した素晴らしい作品です。
3投稿日: 2015.12.14
powered by ブクログ大正や昭和を舞台にした、花にまつわる短編ミステリー集。全編にわたり、物悲しい雰囲気が漂う中、ミステリーとしても面白かった。
0投稿日: 2015.12.02
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
2015/11/16 1983年とかの本。 たまにはと思って。 たまにはいいもんだ。 ミステリなんだけど快刀乱麻とかではなくねっとりしっとりした感触。 表現力ないな、私。 桐の柩が一番好きかも。 最後の軽いハッピーエンドが風味がなくてもこれがよかった。 表題作もあくまで歌人のエゴとして終わったのがよかった。 でも現実の裏づけがないと評価されないのも悲しい話。
0投稿日: 2015.11.16
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
明治から昭和にかけて、暗い時代を背景に物哀しいストーリーが展開する。流麗な文章と意外なトリックのギャップが印象に残る。
0投稿日: 2015.11.01
powered by ブクログ密やかに語られる五つの物語。 彼らが間近で接した死には秘密が隠されている。 侘しい時代を生きた彼ら。 それでも燈は灯り、夜の色は彩られて。 五つの物語ではどれも死の側で花が咲いている。 もしかしたら悲しき恋情はそれらに花葬されていたのかもしれない。
0投稿日: 2015.07.20
powered by ブクログ前に読んだ他の作家の短編集がロクでもなかったので、この作品が際立ってしまった。 少し陰がある雰囲気や使う言葉の上手さなど、作家の力量が分かる。凄いミステリーというわけではないが、「ああ、、」と思わせる所が良い。ちょっと追っかけてみたい作家だ。 " 藤の香 " が一番良かったと思う。
0投稿日: 2015.07.07
powered by ブクログ自分の中で、連城ブームがきている。 その中でもこれは面白かった!特に表題作が。 あえて詳細は書かないので、読むべし。 完全版はハルキ文庫になるらしい。 あまり知られていないような気がするから、広めていきたい一冊。
1投稿日: 2015.06.20
powered by ブクログミステリー小説としてのクオリティも高いが、それ以前にジャンルの枠を超えてひとつの読み物として凄く面白い 花をメインテーマに据えた各短篇が繊細で趣のある文章で美しく著されており、それがたまらなく格好良くて心を掴まれてしまう 作品の舞台設定も情趣に充ちていて良い 残りの花葬シリーズも是非読みたい
0投稿日: 2015.06.11
powered by ブクログ花と恋愛を絡めたミステリー短編集。どの話も時代設定が明治から昭和初期ということもあって、しっとりとした描写で文学的ですらありました。 個人的には「桔梗の宿」が好きでした。 まだ年若い娼婦(女郎?)の想いが切なかった。
0投稿日: 2015.06.05
powered by ブクログミステリとして各短編の完成度の高さは言うに及ばず、美しくはかなく綴る筆致が格を引き上げている。個人的には桔梗の宿がベスト。この動機はどこかで模倣されたエピソードを聞いた ことがあるが、実際読むとこうも驚かされるのは連城氏の力量だろう。男と女、業について考えさせられる。まだまだ連城氏の未読作品があり、それを読む事ができる事を幸せに思う。
0投稿日: 2015.06.03
powered by ブクログ大正から昭和初期の時代を背景にした、 花にまつわる5つの短編集です。 藤の香 桔梗の宿 桐の棺 白蓮の寺 戻り川心中 タイトルにもなっている花たちは、 奥ゆかしく、地味な雰囲気ながらも どれも日本人の好みそうな花たちです。 この花がそれぞれのお話の中で、重要な役割を担っています。 遊女の恋とその社会、ヤクザの世界、檀家と寺の因縁、 歌人がおこした二度の心中未遂事件の真相と、 5つの作品に漂う、どす暗い世相感。 横溝正史の金田一シリーズを思い起こす 時代設定とみごとな文章力。 普通なら暗い気持ちのままで終わるところですが、 作者の美しい筆力によって、 主人公の語り口調で始まる物語に引き込まれていきました。 初めて読む作家さんですが、 恋愛小説ともミステリーともとれる短編集は とても印象深い作品でした。
0投稿日: 2015.05.22
powered by ブクログ綺麗な情景描写。 解き明かされていく謎。 読み始めると、どっぷり物語の中に浸かってしまう。 わたしは、報われない恋というのが好きらしい。 遊郭の話、知らずにハマってしまう。 不義の恋というのは嫌いなのだが、現実から離れた世界に浸かるためには必要な設定かも。 何より、不朽の名作とされる表題作の素晴らしさ。 わたしの原点とも言える源氏物語の登場人物をなぞらえたり、好きな要素が多すぎて参った。 心中というものには感情移入できないし、勘違いの境地としか思えないのだけど、この作品だけは別格だ。 夢野久作氏は、心中のことを『恋愛遊びの行き詰まり』と書いてたなぁ、そういえば。
0投稿日: 2015.05.19
powered by ブクログ引くところが見当たらない。 個人的には百蓮寺が一番。 職業が必然的という解説に、なるほど。。。 代筆屋、でもそれだからと予測するその上をいくラスト。 容姿に自信のない警官、に会いたかった八百屋お七。 思い込みがくつがえされる、でも納得してしまう… 情念と湿度の高い短編が並ぶ。 短編集なのに、読み終わり物足りなさが全くない。
0投稿日: 2015.05.14
powered by ブクログ連城を読むのは約1年ぶり。 相変わらずの美文です。こんなにも美しい文章で、やってることはとことんミステリなもんだから、もう堪りませんよね。 私的ベストは「桐の柩」でしょうか。 あっ、と驚く反転はお見事としか言いようがないですし、幕引きもこれしかない、といったところに落ち着きます。 表題作の「戻り川心中」も傑作。 ミステリではお馴染みの題材が、使い方如何によっては、こんなにも美しく儚い物語に昇華されるのか驚きました。 「桔梗の宿」もワンアイデアながら「なぜ桔梗の花弁を落とすのか」というwhyが胸を締め付けます。 2年近く本棚に眠らせていたことが悔やまれる傑作短編集でした。
0投稿日: 2015.05.04
powered by ブクログ花にまつわる短編を5編収録したミステリ短編集。 最近でこそミステリが文学賞で評価を受けることは珍しくなくなりましたが、この作品以上に文学の美しさとミステリを両立させる作品はあるのだろうか、と読み終えて思いました。 各短編独立した短編ですが、共通するテーマがあります。それは各短編が花にまつわる短編であるということだけではありません。そこにあるのは様々な男女関係を詩情で彩った少しレトロさの感じられる浪漫です。 何となくですが、夏目漱石の恋愛小説をミステリで昇華したような印象を持ちました。 印象的な短編は「桔梗の宿」「桐の柩」表題作の「戻り川心中」 「桔梗の宿」は遊興町で起こった殺人事件を捜査する若手刑事の話。最後明らかになる真相と花に秘められた思いの美しさと切なさが忘れがたい余韻となって残ります。 「桐の柩」はやくざの子分となった男が主人公。一筋縄でいかない男女関係の複雑さとそれぞれの姿が味があってかっこよくラストシーンも非常に美しいです。 表題作の「戻り川心中」は天才歌人”苑田岳葉”の自殺に秘められた謎を描く話。 苑田岳葉という歌人の人生の濃さとその非凡さを、短編一編で書き切ってしまうその凄さ、彼を愛した女性の悲哀もあますことなく描き切り、最後の謎が明らかになるとともに分かる、彼が抱えた孤独と虚無… もちろん文章や岳葉が書いたという歌もしっかりと書き込まれていて、小説の中で死んでいるはずの岳葉が、まるで本当の歴史上の人物かのように読み終えたあと思いました。どこを取っても一級品の短編でオールタイムベストに挙げられるのも納得の作品です。 ミステリファンも、文学マニアもぜひぜひ読んでほしい、そして将来まで読み継がれてほしい作品でした。 第34回日本推理作家協会賞短編部門「戻り川心中」
3投稿日: 2015.04.28
powered by ブクログどのお話も味わい深い恋愛小説に見えるが、その実、とても巧妙なミステリーになっている。 特に、表題作「戻り川心中」は傑作です。 いかにも小説家が考えそうな結末なのに、やられてしまいました。 トリックだけでなく、作中の歌がまた素晴らしく、岳葉という歌人は本当にいるのではないかと疑ってしまいました。 他のお話もとてもいいです。 欲を言えば、種明かしの仕方にもう少しインパクトがほしいかな。
1投稿日: 2015.04.27
powered by ブクログ短編が5作。どれもトリックというか、種明かしが秀逸。そして、日本語がとても美しい。 「桔梗の宿」が特に気に入った。
0投稿日: 2015.04.08
powered by ブクログ花をモチーフにした花葬シリーズ5作からなる短編集で、どの作品も優劣つけがたい秀逸な作品ばかりです。 まず「藤の香」ですが、これは、ひとりの男が事件を振り替えり語るように書かれています。舞台は遊郭街?です。暗くて淡い、そして美しい叙述で語られる事件の真相は哀しく、なんとも言えない読後感に浸る作品でした。 次に、「桔梗の宿」です。この作品は以前に違う短編集で一読しておりましたが、今回改めて良作だなと思いました。桔梗を握った男の遺体が発見され、その捜査にあたる刑事が主人公の物語です。この作品も大変美しいです。 その次は「桐の柩」です。ヤクザと遊郭が舞台です。殺しの目的に驚きました。また、男女の愛の切なさも感じました。 そして、「白蓮の寺」です。一人の人物が、幼い頃に見た記憶を思い出すようにして物語が進行していきます。「血」がテーマです。 最後に「戻り川心中」です。表題作だけあり、大変おもしろかったです。天才歌人、苑田岳葉の歌人としての生き方に愕然です。 本当に美しい言葉が、大胆なトリックと緻密な舞台設定を紡ぎ出している作品だと思います。
0投稿日: 2015.03.31
powered by ブクログ全部それぞれに良さがある。もう優劣がつけられない。あとはもう個人の好みでしかないけど、桔梗の宿が一番好きだった。
0投稿日: 2015.03.16
powered by ブクログ綺麗な文章に圧倒されましたね。綺麗なものに圧倒されるというのは、気分のいいものです。 無駄な性描写がないのが、より良し。 全編よかったですね。
0投稿日: 2015.02.15
powered by ブクログ文章が、言葉の運びがとにかく美しい。 「藤の香」の最後の一文なんて、自分には生涯ひねり出せないだろう。
1投稿日: 2015.01.18
powered by ブクログ流れるように美しい文章が「花」をモチーフにした各短編を彩る。格式高い文と語だが、気付くと話の核心に迫っている自分に驚かされる。それだけ読みやすいということだ。 各話も「男女」の情愛を含んでいるが、最後はしっかりとミステリー小説として纏めてくれる。
0投稿日: 2014.10.18
powered by ブクログ流麗な美文で綴られた匂い立つような男女の情愛のドラマと、本格ミステリのトリックが、何の不自然さもなく融合しているばかりか、事件の真相が新たなるドラマを呼び起こす感動。表題作も良かったですが、個人的には「桐の柩」が好きです。
2投稿日: 2014.05.28
powered by ブクログ桔梗の宿が1番好きだった。どうして桔梗の花を窓から落としたのか、その答えはあまりに単純で、純粋でとても切なくなる。 何か推理小説というより日本文学作品を読んでるみたいだった。文章の仄暗いしっとりさも好き。
0投稿日: 2014.05.16
powered by ブクログしっとりしっぽり。 連城三紀彦の中でもさらに情緒溢れる感じ。 私が特に好きだったのは女たちの描写。 男性から見ると女とはかくも美しく、気味悪く、理解不能であるのか…と思える。 男たちはばかで愛おしく、女たちは無知でいじらしく。 そんな懐古と情にまみれた短編集でした。
0投稿日: 2014.03.02
powered by ブクログ友達の父親に薦められて初めて知った連城三紀彦。 ミステリーであり、恋愛小説であるというのが非常にわかる。 ミステリー要素と恋愛要素のどちらも兼ね備えているが、本質は文学だと思う。文の美しさを感じた。 どの短編の作品も、すごく情景が思い浮かび、殺人が起こっていても、なぜか静寂な感じがしていて、なんていうかすごい雰囲気のある本だなと思った。 文学好きな人は好きだと思うけど、ミステリー好きな人は嫌いなんじゃないかと思う。
1投稿日: 2014.01.24
powered by ブクログ切ない女性達との恋や、死と共にミステリーが入っているという変わった?主旨の短編集です。結構重いです。 ちょっと表現がくどいなと感じることもありますが、情景描写が神秘的で好きでした。登場する人物達の中に、明るい人間はいません(苦笑)個人的には桔梗の花が一番好きです。ここに登場する女の子が何とも切なくて可愛いのですが、オチを最後にまとめて言ってしまうのはちょっと冷めてしまいました。。
0投稿日: 2013.11.16日本推理小説の歴史に残る逸品
先日の著者の訃報に接して愕然とした一人です。 連城三紀彦という名前を聞いただけで陶然としてしまう、そんな作家でした。 文学と推理小説の、もっとも洗練されたハイブリッドを成し遂げたのが連城氏です。 だまされたと思って表題作だけでも読んでみてください。 格調高い美文調で語られる大正の詩人の物語を。 二度の心中未遂の果てに自害して早世した詩人の、心の襞を。 彼が狙った、本当のたくらみを。 愛した男に命を預けてしまう、悲しい女の性を。 初読時と再読時では、物語の印象が変わっているでしょう。 読書の愉しさを味わわせてくれる、極上の短編集です。
2投稿日: 2013.10.25
powered by ブクログどうしたらここまで流麗な文章を書けるものか。 一文一文を論理的に結んでいきながら、 ストーリーを暴いていくさまは、 まさに花の散るごとし、無駄なく美しい。 主人公は花。 その花に見あった話を通じて、 見事に花を散らせてみせましょう。 ここに詰め合わされた5編は、 技巧的でありながらも 散ったあとの余韻も深い。
1投稿日: 2013.10.15不朽の名作とはこれだ!!
花に因んだ連作。どれも心を揺さぶられる話ばかり。 肌に泡粒が生じます。凄愴感を含んだ風が心を叩き、吹き抜けていきます。胃に鋭い錐を立てられる場面もあります。 表題作が一番印象的ですが、他も甲乙つけ難い秀作。 ワンコインちょっとで体感できる素晴らしき世界。 読書っていいなあって、心から思えました。
4投稿日: 2013.09.25
powered by ブクログ花の香もかぐわしい、美酒五篇に酩酊。表題作の壮絶な仕掛けには舌を巻くより外にない。他の収録作では、「桐の柩」の転倒が素晴らしい。ミステリ的な発想と詩情が融合した傑作。
0投稿日: 2013.09.05
powered by ブクログ2013.8.21図書館貸出 「藤の香」「桔梗の宿」「桐の柩」「白蓮の寺」「戻り川心中」の5篇。 大正〜昭和初期が舞台の、花にまつわる叙情的なミステリ。 「藤の香」はミステリとして面白かったが、他の4作は動機にやや無理を感じた。 時代背景や文体に支えられているという印象で、個人的にあまり好みではなかった。
0投稿日: 2013.08.19
powered by ブクログ文学作品のような詩情性とミステリーを見事に融合させた美しい短編集です。 意外な結末に向かって入念に組み立てられた物語には一分の隙もありません。非常によくできていると思います。 おススメはやはり【戻り川心中】。創作と現実が入れ替わるというカタルシスは見事です。
0投稿日: 2013.07.15
powered by ブクログ花のモチーフが印象的で、単なるミステリの小道具に留まらず、花を通して事件の裏に潜む真相や情感が浮かび上がる構成に虜になりました。 花が主人公だと言うのも頷けます。
0投稿日: 2013.06.23
powered by ブクログどれもせつなくて、しっとりとして、少し翳がある。 その中でも、桔梗の宿、せつないなぁ。 戻り川心中~表題作なだけあって、読み応えがすごかった。
1投稿日: 2013.05.28
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
時代背景は古いけど、入り込みやすかった。ただ、描写が丁寧なのかちょっと長かったかな。 話の最後に謎が解明される流れなんだけど、いまいち納得がいかないのは時代のせいか、感性の問題か・・・。 連城さんの話の中で、一番にお勧めされていただけに、残念。
0投稿日: 2012.07.30
powered by ブクログ花にまつわる短編5編。 「白蓮の寺」 の真相になんとも悲しくも恐ろしいという思いがした。 そしてラストの「戻り川心中」、この真相はとてもすばらしいなと。 男と女の関係が絡んできて、なかなか難しいところ問題でもあるなぁと。
0投稿日: 2012.06.22
powered by ブクログ大正末期が舞台の男と女が生々しく絡み合う愛憎の物語。この作家はとても美しくて読みやすい文章を書くな。
0投稿日: 2012.04.28
