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決壊(上)
決壊(上)
平野啓一郎/新潮社
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総合評価

54件)
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15
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    やっと読み終わった上巻 ぞわぞわと恐怖の波が押し寄せてくる はじめから 畳み掛けるように一気に話す崇の言葉に ちょっと戸惑いつつ 一気に読み進めてきたけれど 頭が理解するのに時間がかかる文章に 自分の理解力のなさを 感じずにはいられないと共に なんだか違和感を感じた すべてが夢の中のことのように 何気ない家族の出来事は どこにでもある 家族の悩みであって 何も珍しいことではない だからこそかえって 恐怖を感じるような気がする 時に信頼が疑惑に突然かわることがある その瞬間を 自分の目で見たかのような衝撃 崇と佳枝の関係がいったいどんなものなのか? 母と父の関係は? 少年と両親、同級生との関係は? はたしてどうなるのか? このまま下巻に巻き込まれた方がいいのか 少し、気持ちを落ち着かせてから にしようか?

    62
    投稿日: 2025.08.31
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    登場人物の特徴的な部分でもあるが、哲学的な要素と独特な比喩表現が相まって読みづらい部分と、物語として面白いゾクゾクする狂気的な部分が入り混じっていて読み進める速度に山がある…笑 悪魔的な思想の「死」「殺人」において、自分のテリトリーで起きるか、テリトリーの外で起きるかによって考え方が違うという言い分はとても共感できる。 初・平野啓一郎で作家のクセって面白いなぁと俯瞰的に思いながら読む自分もいた。 【あらすじ】 地方都市で妻子と平凡な暮らしを送るサラリーマン沢野良介は、東京に住むエリート公務員の兄・崇と、自分の人生への違和感をネットの匿名日記に残していた。一方、いじめに苦しむ中学生・北崎友哉は、殺人の夢想を孤独に膨らませていた。ある日、良介は忽然と姿を消した。無関係だった二つの人生に、何かが起こっている。

    0
    投稿日: 2025.07.30
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    読了。 2003年、イラク戦争あたり、ITが少しづつ普及してきた時代。新たなツールをもとに、悪魔と名乗るものが、世間からは見出され、アイデンティティを喪失し、寄りかかるものがない人々を借りたて、離脱者としてテロを拡散する。最近の、闇バイトや旧統一教会などとも通ずるものがある。 持つ者と、持たざる者。世間から見放された者。悪魔の囁きにより暴走する。

    0
    投稿日: 2024.08.11
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    一犯罪を取り巻く人々の悲哀がよく書かれている作品。崇を待ち受ける運命はただひたすら暗鬱であるが,それだけに共感をする人も多いのだろう。 ただ各出来事がダイジェスト的にまとめられており,もっとやってくれれば面白いところなのに……という場面が多かった。オチは無難にまとめられているが,そこで問題提起が終わってしまうのはもったいなく思う。 著者の哲学講義は確かに魅力的ではあるが,華麗な修辞による重厚感の演出かもしれず,神学などの学問から注意深く批判する必要がある。

    0
    投稿日: 2024.04.01
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    このレビューはネタバレを含みます。

    感想 内面的に複雑な心情描写が多いので、登場人物の心情を容易に理解するのは難しいな。 兄の崇の話が文学的過ぎて難しい。自分なんかもっと単純に物事を考えて生きてるって思ってしまう。 上巻の最後になってようやく事件。殺人事件ものの小説で誰かが殺されるまでたどり着くのにここまで長かった小説は記憶にない。兄怪しすぎる。 あらすじ 良介は、母の兄弟が亡くなったことを機に家族3人で実家に帰る。兄も久しぶりの帰省となった。母親が兄に昔から不気味な怖さをかんじていたことを聞く。また、父親がずっと伏せっていることから、兄は鬱病ではないかと懸念を持ち、病院に行くことを進める。 北崎友哉は中学生。いじめられて仕返しをしたことで学校で問題になる。好きな女の子がバスケ部の先輩といかがわしいことをしていたことをネット上に晒す。自分がその女の子を助けようとするも拒否され、苛立ちを募らせる。自分のことを虐げるものを殺したいとネット上の日記で吐露し、ある人からそれを実現する方法があるとコンタクトされる。 良介の妻の佳枝は旦那がネット日記で本音を挙げていることを悩んでいた。自分に直接相談して欲しいと思っており、兄の崇に相談していた。良介が大阪に出張に行くにあたって兄と会い、そのことについて話すと思っていた。大阪出張時に良介と連絡が取れなくなる。 京都でバラバラ死体が発見された。人体の部位は全国で見つかり、話題を呼ぶ事件となった。殺されたのは良介であることが判明した。

    8
    投稿日: 2024.03.03
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    とりあえず上巻読了 相変わらず、平野氏、どこを目指してるんだろうな。 知識が溢れるほどあるから、とことん「しゃべり」たいだけなのかな。 娯楽本にはならないぞというプライドみたいなのがあるのかも。 下巻でミステリーの謎解きという手筈なのかな。

    0
    投稿日: 2023.11.27
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    ⚫︎受け取ったメッセージ 平野啓一郎さんの提唱する「分人主義」前期の作品。相手の、全く知らない相手の部分を知る怖さを、ミステリー、サスペンスの形で見せてくれる。 ⚫︎あらすじ(本概要より転載) 地方都市で妻子と平凡な暮らしを送るサラリーマン沢野良介は、東京に住むエリート公務員の兄・崇と、自分の人生への違和感をネットの匿名日記に残していた。一方、いじめに苦しむ中学生・北崎友哉は、殺人の夢想を孤独に膨らませていた。ある日、良介は忽然と姿を消した。無関係だった二つの人生に、何かが起こっている。許されぬ罪を巡り息づまる物語が幕を開く。衝撃の長編小説。 ⚫︎感想 一気に引き込まれる設定。すぐに下巻を読みたくなる。

    3
    投稿日: 2023.11.19
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    オーディブルで聴いたので、小難しいこと言ってるところはなかなか頭に入ってこなかったが、面白かった。地の文の視点がコロコロ変わるので、ちょっと聴きづらいと感じるところはあったが。 早く下巻を聴きたい。

    0
    投稿日: 2023.10.30
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    登場人物がことごとく苦手...だから、なんだか新鮮な感じがする。話は中々進まず、読んでいてもやもやしてたけど、最後の方でようやくエンジンが掛かる音が聞こえた気がした。下巻の展開に期待。物語性や登場人物の影響もあるのだろうけど、言葉選びが個人的にどうにも好きになれないのが少々残念...。私の頭の出来が良ければもっと楽しめる作品なんだろうなと感じた。

    0
    投稿日: 2023.04.15
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     単なるバラバラ殺人を扱ったミステリーにはしたくないというような作者の強い拘りがあって、主人公のエリート、崇に小難しい事を語らせているのだろうが、崇の頭の中の描写とそれ以外のレベルの高低差が大きく、こちらの、先を読み進めたい気持ちと、崇の言わんとする事をキャッチしたい気持ちが噛み合わず、せっかくの面白さが減ってしまったように思った。  赦し、死刑、ネット社会、今にも決壊しそうな人間関係、マスコミのあり方、捜査の仕方など、扱っているテーマはよくあるものだった。となると、やはり崇の存在が、同じようなテーマを扱う小説と一線を画しており、彼の考察は必要となるのだろうか。  最も印象に残り、共感できたのが、現代の人間の幸福に対する姿勢だった。  「幸福とは、絶対に断つことのできない麻薬だ。それに比べれば、快楽などは、せいぜい、その門番程度の意味しかない。人間は、快楽を否定することはできる。しかし、幸福を否定する事は絶対に許されない。このたったひとつの残酷極まりない、凶悪な価値が、この社会の全てを支配しているのだ。どんな人間でも、絶対に幸福を目指さなければならない。幸福を愛する心、それは、現代の最も洗練され、先鋭化したファシズムだ。」  自分(もしくは近しいものを含む自分達)の幸せのために、貪欲に、楽しい、美味しい、心地良いを貪る傾向の強い現代の人々。コロナ禍ではよりそれが悪目立ちする。個人的には、そういった姿を見苦しいと感じる。必要なものだけを大切に作り消費することに回帰する方に向くべき時なのではないかと感じ、最近の傾向に対する違和感が、心の底から湧いてくる。  「人間の生の長さは、生物としての寿命か、それより短いかのどっちかだよ。その2つしかない。死刑は要するに、犯罪者に寿命を許さないっていうことだろうね。殺された人間が、寿命よりも短い生しか生きられなかったことの報いとして。」  死刑に関するこの意見に、納得した。死刑には特に賛成でも反対でもないが、死刑を行う意味とはこういうことなのではないかと思った。  かなりの長編だったが、先が気になって一気に読み進められた。

    7
    投稿日: 2022.08.15
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    圧倒的な迫力でどんどん読み進めた。まとわりつくような情景描写と理屈っぽい語りも、この作家の特徴として慣れてきた。10年前にもインターネットの世界でこんな事があったんだろうか?と思った。誰も幸せにならない、読み進めるほど皆が不幸になっていく重さがあるが、家族を持つ親として、いろいろ考えさせられた。

    0
    投稿日: 2022.05.02
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    「ある男」以来の平野啓一郎san。同一作家sanで3冊以上の読了となり、ひさしぶりに「カテゴリー」を追加しました。 犯行声明付きのバラバラ遺体、沢野良介、エリート公務員の兄、幸福と哀しみ、<悪魔>とは誰か?、<離脱者>とは?、止まらない殺人の連鎖など。 ”赦し”というテーマは好きなのですが、崇やKATSUZO達の語り、思想が私には難しすぎました。。

    1
    投稿日: 2022.04.02
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    大袈裟ではないし、決して被虐な訳でもない。ごく普通のことだと思うのだ。痛みばかりが紡がれる物語、自分たちには関係のない物語。だから読むことが出来る。愉しむことができる。そんな風に括れてしまうことで、成り立っているわけではないんじゃないか。それでは足りない。それでは本当に意味がない。自分のことだから痛い。自分という主観がこの世界に立ち上がったときにどうなってしまうのか。そういうことに興味が湧くのだ。 この物語を普通のことだと括れてしまうのは、果たして異常なことか。 そうではない。自分という人間を物差しにしたところで、この世に起こることの全ては繋がっていると実感が出来るから、普通のことだと思うだけだ。 簡単な感情、分かり易い言葉、手に取りやすい答え。考えやすい思考。どこにでもある手応え。 それだけで良いのか。 自分というものの形を信じて、そのことで生きていけると思いたいのに、真っ先に自分を消失していくように。 そんなに簡単なことが良いのか。 信じているという。思考しているという。悩んでいるという。苦しんでいるという。そして、一生懸命だという。 本当だろうか。 繰り返すように、なぞるように、同じような景色を描いていくように、自分の手にとったものを、見つめることに精一杯すぎて、傍らに確かに感じている空気の存在をないことにする。 そんな世界に見える。 そんな風に見えてしまうから、 世界はどうしたって、普通なのだ。 悪だとか、正義だとか、信念だとか、信義だとか、言葉とか、結果とか、感情だとか、希望だとか、愛だとか。 定義することの価値は分かるけれど、自分はもうそれには馴染めない。 人間らしさを失っているのだろうか。 ひどい人間なのだろうか。 いやちがう。 結局、簡単に言葉に置き換えられないというだけだ。 いまここにいる自分を絶対に失いたくない。失うことなんてできない。 そんなことがきっと、幸せという言葉にもっとも近いことなのかもしれない。 隣り合うのは空虚なのか。 分解し、解体される世界。言葉を繋いでいけば、繋いでいくほど、割り当てられていた言葉は居場所を失って、バラバラへと成り果ててしまう。ボロボロと崩れていくような土台としての約束に、足元がおぼつかなくなる。どこに立っているのか。どうやって立っているのか。一体、どうして立っているのか。生きるということの前提までが不確かさを増して、不鮮明な世界が広がっていく。 そうではなかったのに。そんなはずではなかったのに。手に入れたかったものは、こんなもののはずではなかった。 理解する。停止することが最善なことを。言葉を与えてはならなかったことを。考えることを止めることしか出来ることはないのだ。誤魔化すしかなく、誤魔化されることに無感覚でなければならない。

    0
    投稿日: 2021.04.21
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    独特の平野さんの文章であったが、ところどころ難しい話があり、読むペースが遅くなったり、読みやすくなったりを繰り返しながら読み進めた。 生と死、人からの見られ方、殺人・罪などについてが大方のテーマかな。 ページ数も内容もなかなかヘビーな印象。 下巻も気合を入れて読まないといけない。

    1
    投稿日: 2020.09.06
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    一見問題なさそうな家族の日常に軋む小さなひずみ、危うい家族・不穏な学校生活の爆発前の状況が書かれており、読む人間を不安へと引きずり込むのがうまい。上巻の終わりには一気にそれらが不幸の連鎖へとなだれ込んでいく。 ひどく残虐な事件を描写しているにも関わらず、嫌悪感を持たせないのは、各々の思考の解説を克明にしているからかなと思う。

    0
    投稿日: 2020.09.04
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    最初は読みにくかった。 不必要と思われるぐらいの細かい情景描写が多いし、わかりやすいのか却ってわかりにくくなってるのかわからないような比喩もやたら出てくるし、敢えてなのだろうけど話者もコロコロ変わるし、そうしたことの一々によって「作者」の存在を意識せざるを得ないところが何だか嫌だったけど、しだいに気にならなくなってきた。 おもしろいのかつまらないのか、ここまで読んでもまだよくわからないですが、続きが気になるのは事実。

    0
    投稿日: 2020.03.01
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    平凡な暮らしを送る弟・良介とエリート公務員の兄・崇。無関係だった二つの人生に何かが起こる。許されぬ罪を巡り息詰まる物語が幕を開く。 悪魔は心の隙間に何の違和感を感じることなく入ってくる。客観的な立場の読み手は、悪魔の言動に嫌悪感を抱くが、登場人物たちが悪魔に導かれるのは、人として自然な行動かもしれない。

    0
    投稿日: 2020.01.05
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    平野作品初読。短い叙述でもいちいちうまいなあ、プロだなあ、と感心しつつ読み進めました。 筋は下巻からいよいよ佳境で、読むのが楽しみ。

    0
    投稿日: 2019.09.08
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    沢野家の長男、崇が中心となってはいますが、数多くいる登場人物のそれぞれの心の陰影が細かく描き分けられた群像劇風に仕立てられています。 難解というほどではないが、ほどよく読み応えのある文章で、読んでいて心地よかったです。 神戸連続児童殺傷事件や秋葉原通り魔事件を受けて、そのような犯罪を犯す人物の心理や、罪とは何かという問題にまで踏み込んでいます。 崇のセリフあたりはドストエフスキーを意識しているのかなと感じました。 この崇という人物がまた多面性があって一筋縄ではいかないのですね。主人公になるぐらいだからこういうタイプの人間は結構特殊なんでしょうか?

    0
    投稿日: 2018.12.24
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    さすが京大出身という感じの文体。 難しいところは読み飛ばしたが、 文体は嫌いじゃない。 他の平野啓一郎も読んだが、決壊が一番好き。

    0
    投稿日: 2018.12.15
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    デビュー以来、さまざまな手法で文学の可能性を追求してきた著者が、ミステリふうのストーリー構成によって、「現代社会」と「物語」の関係をテーマにした、長編小説です。 30歳の沢野良介は、妻の佳枝と幼い息子の良太をともなって実家に帰省し、兄の沢野崇と会うことになります。良介は、幼いころから優秀だった兄を尊敬しながらも、同時に複雑な思いをいだいており、そんな心のうちを「すぅのつぶやき」というサイトに書き記していました。ところが、佳枝が偶然そのサイトに気づき、彼の悩みについて崇に相談をもちかけます。その後、サイトに「666」というハンドル・ネームで書き込みがなされるようになり、佳枝はそれが崇の書き込みだと思うようになります。 一方、中学2年生の北崎友哉は、久賀安由実という女子生徒に、ひそかな想いを寄せていました。ところが、安由実が広畑純也という男子生徒と交際し、関係をもったことがうわさになります。友哉のゆがんだ愛は、彼女をネット上でさらし者にし、傷つける方向に突き進んでいきます。ところが、そんな彼の振る舞いが純也に知られることになり、制裁を加えられた友哉は、胸のうちにくすぶる恨みに駆られて、ネット上で知り合った「悪魔」という人物に接触することになります。 崇の衒学的な語りに翻弄されてしまいますが、あるいはこれも今後のストーリー・ラインに絡んでくることになるのでしょうか。そこかしこに、著者が『私とは何か―「個人」から「分人」へ』(講談社現代新書)で語っている思想が認められることもあって、どのようにこれらの道具立てが活用されることになるのか、続きが気になります。

    0
    投稿日: 2018.11.12
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    ハッとさせられる言い回しが多い。 特に印象的だった下り。 「現代では、冗談でもなんでもなく、悪は健康の欠如にすぎなくなっている。古の偉大な宗教家が悪の問題のつもりで扱っていた人間が、実は脳に気質的な障害を抱えた病人だったと知ったり、 生育史に重大な問題を抱えた行為障害者だったと知ったら、愕然とするだろうね。篠原も、鳥取の少年も、悪ではけしてない。ただ、健康でなかったというだけだ」 罪と罰はすでに古くなってしまった。 罪は誰のものでもなくなってしまった。そんな時代に生きている。 神は死んだ。 そしてたぶん、罪も殉死したのだろう。 この作品では、連続殺人犯をとおして、倫理というものの限界を突き詰めていた。 わたしの思う、ひとつの完成形がそこにあった。 倫理も、権利も、けして当たり前のものではない。 時代の流れとともに、『裁かれるべき悪人』は『治療すべき病人』になり、 古来、善悪の問題として捉えられていたものは健康の問題となった。 一歩踏み出してしまったか否か、それだけが分かれ道でいいのだろうか。善性の欠如ではなく、健康の欠如として。 行動が、「健康」か「病気」かを決める。 また、犯罪を犯すことでその病気であると認定される精神疾患すらあるという。 「病気だから罪を犯す」なのか、「罪を犯したから病気」なのかーー。 文章がとてもきれいで、様々な問題提起をしている素晴らしい作品です。

    0
    投稿日: 2018.10.24
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    大きな事件(しかも表紙に書いてある)が起きるのが上巻の最後という。 途中、崇が語る言葉が長かったり回りくどかったりで、かなり読み飛ばした感じ。目が滑るーそして分からなくても今のところまったく困らないー。 登場人物の不器用さとか、他人との距離の取り方とか、かなりリアル。よく分かる。 人間関係、いろいろあるよね…

    0
    投稿日: 2017.03.29
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    はじめて読む作家さん。 この作品は上下巻と大作であるが、上巻では正直言って冗長と感じた。 とにかく知識を披露したくて仕方がないと感じられる。 物語と絡め、時にはこの会話必要なのかと思える程強引に知識を織り込んでくる。 三島を語りキリスト教を語り。あれを語りこれを語り。 もうお腹いっぱいです。 はいはい、わかりました。 平野さんは物知り。知識が豊富。 でも、辟易する。 これがなければ、もっと短く纏められた作品だと思う。 下巻をつづいて読みます。 作品自体の感想は下巻読了後。

    0
    投稿日: 2015.10.14
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    主人公のイメージが平野啓一郎にそのままあてはまるので、そのつもりで読み進めてみる。 実際に主人公の行動や考えには、たぶんに著者の思想も含まれているんだと思われる。 知的で冷静な主人公が、事件に巻き込まれ、壊れていくまで。 人身事故で電車が止まることに慣れすぎているように、他者の深い闇を想像することや、社会のなかでの排除性や他者への攻撃に対する実感まで薄れているのはないかという気がしてくる。

    0
    投稿日: 2015.09.10
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    「三島由紀夫の再来」といわれた平野啓一郎氏の「決壊」読了しました。以前にも読んだんですけど改めて読みたくなって。 肉厚な文体とロジカルな構成、物語としての完成度とどんでん返しのすごさ、すんばらしいです。 三島由紀夫同様に「肉体」に固執し「肉体」を超越しようと試みるも「肉体」に呪縛されている感があります。 京都の旅館で不倫相手との交尾の場面では「なんとかお互いの肉体をはめ込もうと努力する」という表現は白眉だなぁとおもいました。 新潮社の書評まんま引用ですが下記のごとき深みのある書でした。 https://www.shinchosha.co.jp/wadainohon/426007/04_shohyo.html 「「悪」の存在をどのように解釈し、それにどう対処すればよいのかという問いである。問いの中核を理解するには、これを宗教的な言葉に置き換えるとよい。もし神が全能であるとすれば、なぜ、神は、悪がはびこる不完全な世界を創ったのだろうか? 神が創った有意味な世界という像と極端な悪の存在という真理とは、どのように両立できるというのか? これは、神学上の古典的な問いだが、特定の信仰など前提にしなくても、現代的に言い換えることができる。もし普遍的な説得力を有する「善」が存在するとすれば、「人を殺してはならない」という規範に代表されるような普遍的な「善」が存在するとすれば、要するに神の命令に匹敵する普遍的な「善」が存在するとすれば、連続無差別殺人や無差別テロのような極端な悪が、どうして可能なのか? ひどく異常ではないように見える(ほんのわずかしか変わっていないように見える)普通の人が、どうしてこれほどに極端な悪を犯すことができるのだろうか?  どうにも解釈しがたいほどのひどい悪を目の当たりにしたときの、最も直截な神学的解答は、神の全能性を、ひいては神の存在そのものを疑ってしまうことである。同様に、われわれは、普遍的で基底的な善への信頼を放棄すべきなのか? このときには、もはや、善だけではなく、倫理的に罰したり、救済したりする対象としての悪すら存在せず、ただ、「悪」と名づけられたシステムの意図せざる機能障害だけが残ることになる。『決壊』で、〈悪魔〉は、こうした結論を暗示しているが、われわれは、これに抗することができるのか? (おおさわ・まさち 社会学者/京都大学大学院人間・環境学研究科教授) (「波」2008年7月号より)」 作中の「『遺伝』と『環境』が人間を選り分ける『現代社会の幸福のファシズム』を、根底から破壊する」という警告は目をみはるものがあります。 長文の引用になりますが下記についてはよっちん自身のことではないかと思いました。 「誰がどうみても、お前は<幸福>となるべき資格を欠いている。にも拘らずだ!お前は否応なく、その<幸福>の帝国に生きることを余儀なくされている。ー違うか?それはお前自身が、誰よりも一番よく知っているはずだ!お前は、人から愛されない人間だ!(略)その二人からさえ、お前はまったく愛されていない!友情と言えるほどの出来事を経験する機会もなく、特に楽しい何かがあるというわけでもない毎日だ。生まれつきの無能のせいで、思い出というのはお前にとって、いつでもさぞつまらんものだったろう!仕事はまったくうまくいかない。社会的な評価はゼロだ。転職しようなどと考えているようだが、内心、どこに行っても、こんな自分なら使いものにならないんじゃないかと疑っている!何かになりたいと心の底から願い、せっかくの、たった一回の人生なのだから、もっと充実した、自分だけの生き甲斐が欲しいと、身悶えするほど望んでいながら、それが成就しないことは、誰よりも一番よく知っているのだ!そうしてお前は、この<幸福>のファシズムの最下層で、完全な劣等人種として一生を終える」 この一文だけを抜き出すと勘違いが生まれそうですが この小説の主眼は、その紹介文によれば「絶望的な事件を描いて読む者に〈幸福〉と〈哀しみ〉の意味を問う」ことだそうです。 「なんで神が一者か知ってる? 信じる方が一人だからだよ!」 「モイライは――運命の三女神は、高が大工の倅が神の子になることを断じて許さなかった!」 「複数のアイデンティティの中で、支配的なものを善として確認しようとするなら、悪なる他者を外部に発見して、それと対立するというのが、一番確実な方法となるわけですよ」「平和が平和として感じられるためには、平和でない現実こそが不可欠となる。染みをどこにつけるか?」 「いや、俺はつまりお前だ。お前の言った通り、俺はどこにも存在しない非存在だ」 悪を肯定するわけではなく現実を透かし見る彼岸としての悪が描かれています。 向こう岸からでないと見えないものあるわけです。しかしながらよっちんの現状は「<幸福>のファシズムの最下層でいきる完全な劣等人種」であることは間違いないです。 その命題に対してこたえうる答えを人生の中で見出さないといけないと思います。 中二病の極みではございますがね。

    0
    投稿日: 2015.05.02
  • 『決壊』 平野啓一郎 著

    最初は私達も経験するような、平凡な日常の記述から始まる。誰でも経験するような夫婦間や家庭内のスレ違い...。「まあ、そういうこともあるよねぇ」と思って読んでいると、やがてその小さなほつれをきっかけに破滅的な事件へと巻き込まれていく...。小さな穴からダムが決壊するということから本書の題名は来ているのだろうか。 筆者は日々のニュースで耳にする現代的な犯罪(※1)や社会的な問題(※2)をリアルで精緻な筆致で深く掘り下げている。(※1 イジメ、リベンジポルノ(?)、未成年の犯罪、家族の崩壊、ネットで知り合った人間たちがネットで知り合った人を殺す、猟奇的なバラバラ殺人事件、爆弾テロなど ※2 センセーショナルで偏向したマスコミ報道、警察の横暴など) 深くて精緻な記述はドストエフスキーを想起させられ、読み進めるにつれてぐいぐいと引き込まれた。でも、主人公が頭が良くて容姿端麗、女にもてるエリート公務員というイヤな奴なので、あまり感情移入することはなかったが。 リアルで精緻に、且つ深く力強く現代社会を描き切った筆者の力に感嘆させられた。他の作品にも注目していきたい。 但し、他の方の書評にもあったのだが、この小説には「救いがない。」読後感は決して軽くない。 ハッピーエンドを求める人は読まないほうが良いかもしれません。

    0
    投稿日: 2015.03.09
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    『その苦しみを優しい寛大さと喜びもを以て耐えている姿にはね、生まれてくるこの子にとってだけじゃなくて、僕らすべての生を生きられるに値すると感じさせるような慰めがあると僕は思う。』 『この世界に3キロほどの重みを持って、最早、否定出来ないような事実として放り出される前にはね、やっぱり、母親という一個の人間の内部に、最初の場所を許されていた。これは、人間の生が始原に於いて抱えている根源的な条件だよ。』 『今もまだ、「優しい」理由は何だろうか? 別れてからも、いつまでもよく思われていたいという、男のあの見苦しい、単純な願望のせいだろうか?』 『なぜそうしたいんだろう? 俺が今、生きようとしている理由は何だろう? ここから落下するための数秒では足りなくて、更に数十年が必要な理由とは、一体何だろう!』 『…俺はただ、捏造された自殺の苦痛を、新鮮に保ち続けることでしか、生き続けることが出来ない!』 『俺は名声には興味がない。しかし、その考えを突き詰めれば、たった一人から蒙る評価だって、捨てなきゃならないだろう。他方で、名誉はどうか? 名声は量的な評価で、名誉は質的な評価だと言う。しかし、俺にはその違いが分からない。誰に褒められるかに拘ってみせることは、実は軽薄なんじゃないかと思う。』 『人に喜ばれると、実際は当たり前に嬉しいと感じるからね。だけどね、自分という人間が、そういう他人からの承認の束を支えにして存在しているという考えには、救われないんだよ。』 「シャワーじゃ物足りなくてお風呂に入りたいっていうのは、一種の退行的な儀礼なんだと思うよ。合理的に考えれば、ヘンな習慣だから。夜になる度に、こういう狭い場所に全裸で身を屈めて入って、体温くらいの液体に浸るっていうのは。浴槽が母親の子宮の象徴で、お湯が羊水でって考えると、ちょっと分かりやすすぎるかもしれないけど。…」 「眠りが死の象徴っていうのは世界中で共通してるのかもしれないけど、その前に必ず入浴があるっていうのは、そんなに一般的にじゃないよ。日本人は、そういうところで、手が込んでいるだね。母親のお腹に回帰したような余韻に浸って、布団に入るなら、死ぬっていうより、自分がこの世界に出現する前のゼロの状態に戻るみたいな感じがするかもしれない。ーー沙希ちゃんが言うみたいに、リセットっていう感じなのかな、それは。…」 『そうして彼が今、苦しい胸の裡を明かすのが、自分でなく見ず知らずの誰かであるということが、彼女には理解できなかった。それも、浮気をしているだとか、おかしな趣味があるだとかいったことではない。誰よりも家族が支えとなるべき仕事のことで、彼は妻を相談相手として選ばなかったのだった。』 『彼女は、再び自問した。なぜ、自分ではないのだろう? 愛していればこそ、相手に知られなくないというのだろうか? しかし、そうまでして守る愛とは、一体何なのだろう? そんな、こわれものを扱うようにして大事にするのが夫婦の愛なのだろうか?…』 「知性というものが、蛇に似ていると気がついた古代人は偉大だね。そう思わないか? 柔軟で、艶々しくて、掴み所がなく、何でも一呑みで消化して、頭から尻尾へという単純な一本の線にしてしまう。おまけに不気味で、凶暴だ。咬まれれば全身に毒が回る。ーーあなたを留まらせたのは、あなたの蛇だよ。」 「あなたには、殺したい人間がいる。ーー結構。殺すべきだ! あなたがそう思ったという事実こそが、あなたの殺人を全面的に肯定してくれる。」 「殺人は、太古の昔から今日に至るまで、一日として例外なく行われてきたことだ。自然死と同じくらい自然にね。そして、未来永劫にこの事実は変わらない。」 「人間というのは、そういう愚かな存在だ。ーーその愚かさこそを、むしろ人間は、人間性と呼んでいる。」 「ーーところでだ。人間の行為の中で、最も愚かなのは、殺人ということになっている。つまり、殺人こそは、最も人間的な行為というわけだ。ーー分かるね? 簡単な三段論法だ。」 「いいかね? 存在者から存在を奪う! これは月の引力が海をも引っ張り寄せるように、人間を密やかに、しかし、逃れ難く強力に拘束している考えだ。この世界は、表面上、確かな殺人を駆逐するフリをしてきた。尤も、その唯一の現実的な方法は、常に殺人だったがね。」 『テレビは視聴率の前では盲目のブタだ。』 『殺す阿保に見る阿保 同じ阿保なら殺さな損損www』 『わたしは、わたしの生きている世界には、わたしの居場所がないと思っています。反論する人がいるでしょうが、もう聞き飽きました。 人間はひとりとして同じ人はいません。なのに、この世界は一つしかありません。その世界は、一部の人たちにだけ、都合よくできていて、わたしにとってはそうではありませんでした。だからわたしも、離脱者の一人になることにしました。法律からも、道徳からも、完全に離脱します。 わたしは、世界は、人間の数だけ多様であるべきだと思います。みんなが納得できる世界なんて、あるはずがないと思います。それで、わたしはわたしの世界で生きていくことに決めました。 人を殺すのはどうかと思いましたが、それもわたしが、離脱する前にいた世界の勝手なルールにとらわれているからだと考えなおしました。 わたしは、わたしに、とても言葉では言い表せないような残酷なことをしてきた人たちに、これから一人ずつ復讐していきます。その人たちは、わたしのやりかたを責めるかもしれませんが、それはその人たちの考えなので、わたしには関係ありません。』

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    投稿日: 2015.02.21
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    重たい。何もかもが重たい。平野啓一郎の作品は「送葬」と本書の二作しか読んでいない。そして、どちらも重い。登場人物の一つ一つのセリフが重い。さらっと読み流すことができない。本書の中には犯罪被害者とその家族、また犯罪者とその家族が描かれている。少し悩みをかかえたふつうの家庭の、ふつうの男性・父親・サラリーマンが被害にあう。そして、その被害者の兄が犯人と疑われる。被害者の家族の中で、犯罪被害者の会などの取り組みで、なんとか前向きに生きていこうとするものがいる。逆に、精神的に追い込まれ、自ら死を選んでいくものがいる。その違いはいったいなんだろう。マスコミなどに登場するのはふつう前者が多く、後者のようなケースは多くても結局目立たないまま通り過ぎているのかもしれない。私個人的には、犯罪者の家族について描かれたシーンが印象に残っている。犯罪者の親。遠く離れた場所で新たに仕事を始めようとするが、そこに全くの第三者が登場し、それを阻止しようとする。その理不尽さ。どこまで、罪を背負っていかなければいけないのだろう。本書は全編通してネット社会がかかえる闇が関わっている。こういう時代を迎えて、何が変わり、変わらないものは何なんだろう。図書館でやっと借りられたので読みました。あっという間の1週間でした。

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    投稿日: 2015.02.15
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    所々飛ばし読み。いかにも平野さんっぽい哲学的なところを…そこが一番重要な気もするけど。。下巻読んでみて再読するか決めよ。

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    投稿日: 2015.01.28
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    ネット社会の到来以前には感じることはなかったであろう違和感。よく知っているはずの人物が、自分以外の人と接するときに見せる意外な一面。他人の日記を盗み見るのとはまた違った感覚。 我々は身近な人のことをどこまで知っているのか。あるいは本当に知っていると言えるのか。 地の文の視点は目まぐるしく変わり、すべての登場人物が主観を語る。我々は登場人物のことを「よく知っている」ようなつもりになる。 が、「悪魔」を名乗る謎の男の登場により、我々の偏見は打ち砕かれる。「悪魔」って誰?崇?良介?それとも?どちらでもないと言い切れない気持ち悪さ。

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    投稿日: 2014.12.19
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    「決壊(上巻)」 きっかけは、日常にあり。 ある日に見つかるバラバラの遺体が発見された。被害者は沢野良介。平凡な家庭を営む会社員だ。事件当夜、彼は兄・崇と大阪で会っていたはずだった。 と言う文言が表紙に載ってしまっている。おかげで被害者は分かってしまうし、犯人も何と無く兄じゃないかと推測してしまう。 上巻は、事件の背景や刑事の捜査が描かれると思いきや、良介と崇の生活が主に描かれる。良介は家族と仲良く実家に帰り、久々に兄と語る。崇は、海外から帰ってきて公務に職しながら、独身生活を楽しむ。一見、楽しい生活である。 しかし、一見は一見。よく見ると葛藤が見えてくる。弟は、実家に帰る途中に不思議な現象に襲われ、語らう兄にはコンプレックスを抱えていた。一方、兄は人を愛せず、不倫を常習化している。どこか語り口調もヒステリックだ。 インターネットに吐露する良介は、人には吐露出来ず、深みにはまっていくようで、熱くなると宗教臭くなる崇も心のどこかに小さなヒビが入れば、一気に決壊しそうな危うさがある。 更に、父親の鬱病まで、2人は抱えることになるのだ。今後、彼らは決壊せずに居られるのかは疑わしい。尤も良介は既に死んでしまったが。 この物語には、既に心が決壊している少年が登場する。この少年は、悪魔のような男に説き伏せられ、どんどん壊れていく。正直、初めからどこかおかしい為、さほど同情の気が沸かない。サイコパスでは無いのだが、十分に悪質な変態っ振りを見せ付けているのだ。そりゃ、悪魔も目をつけちゃうよなぁと。 因みに、本作は「殺しと赦し」をモチーフにしている。人はなぜ人を殺すのか、人を赦すとはどういうことか、絶対に赦し得ない事が起きた時、人はどんな行動を取るのか。それを著者は追求したかったと言う。 その追求も下巻で一気に進むに違いない。そして、願わくば納得出来る追求結果を見たい。

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    投稿日: 2014.08.20
  • 個人的に重松清「疾走」と並ぶ2大絶望小説

    ひたすらに読んでいて痛々しい。 「決壊」という言葉が暗示する不吉な印象を克明に、徹底的に描き切った問題作。 個人的に、重松清の「疾走」と並び2大絶望小説。 とにかく救いがない。 しかし、救いのない絶望の状態を知ることが、普段の何気ない生活にあたっている光を認識するために必要だったりして、 小説の役割というものを改めて、身に染みて感じられる大作だと思う。 でも、「疾走」「決壊」ともに、元気がないときは読んじゃだめです。劇薬すぎます。

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    投稿日: 2014.07.15
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    文才があるというのは、この人のような人を言うのだろうなと思う。そう感じる本を読むと、本を読むことは好きだが、作家には絶対なれないなと感じさせる。そんな感じの本。 文体が哲学的で癖があるので、合わない人もたくさん居るだろうと思うけれど、私はぐいぐい引き込まれ、あっという間に読めた。

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    投稿日: 2013.11.12
  • 大きな転換までの序章

    「決壊」までへの序曲という感じ。前半は鬱然とした雰囲気でテンポは良くないけれど、後半加速。

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    投稿日: 2013.09.26
  • ゆっくりと時間をかけて築き上げて来たものが、一気に決壊し始める

    主人公は少々鼻持ちならないエリートだが、家族思いで充実した人生を謳歌している。そこには彼の積み重ねてきた歴史があり、多少のトラブルにも臆せず対処してきたという自負がある。 どこにでも転がっていそうな日常。そこから何かが綻びを見せて、一気に崩れ落ちていくまでを描いた上巻。ここまで読んだらもう止められない。

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    投稿日: 2013.09.24
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    すごい小説だった。 リアリティーのある、文章力と表現力。 そして、この物語の主人公(と思われる)沢野崇という人物のキャラクター。 この沢野崇が、なんとも気になる存在で、最初の部分はその正体がわからないまま、少しずつ内面が明らかになりながら、話しが進んでいく。 上巻の中盤あたりから、タイトル通りに平穏な日常が「決壊」した後は怒涛の展開となり、「真犯人は一体誰なのか?」といったミステリー的要素もかなり入ってきて、そこからはもう、先が気になってどうしようもなくなる。 沢野崇も、とても印象的なキャラクターだったのだけれど、もうひとり、北崎友哉という中学生には、心底、恐ろしさを感じさせられた。 自分のことを振り返って考えても、中学生の時分というのは、愚かしいことをあれこれと思いつき、しかも、経験が不足しているために思考の欠陥に気がつくことがないのだけれど、それでも、その愚かさのすべてが表面化することがないのは、思いつきを実行するだけの能力が中学生にはないからだ。 しかし、インターネットは、人の能力を飛躍的に増幅させる。 ネットの世界にアクセスするのに、何の資格も年齢制限もなく、ちょっとした知識だけがあればいいわけで、道徳心が育つ前の子供が、ネットの力を利用した時、ひと昔前では考えられなかったような恐ろしい出来事につながる可能性があるのだと思う。 現実に起こった、9.11テロや神戸の「少年A」の事件から、かなり色濃くインスピレーションを受けているのがわかるけれども、やはり、インパクトとしては、実際に起こった出来事のほうが遥かに大きい。 これほどに緻密に描写された物語でもそうなのだから、つくづく、現実というのは、あらゆるフィクションを凌駕するものだと思う。 結末については、不満が残った。この物語をどう締めくくるのか、ということはとても楽しみにしていたから、この結末は、期待していたよりもずっと安易で、そりゃないだろう、というような感じだった。その点は、とても残念。 「・・やっぱり、ただ年齢が積み重なっていくだけだと、正直あんまり自分が歳取ったことを実感出来んけど、立場が変わるとね。会社に入った時もそうやったけど、親になってみると、また物の見方が変わってくるね。」(p.33) 「死刑か、あるいは戦争か。問題は、ただ一つ。殺人が、自分の身に起こるかどうか、だ。これが、平和というものの欺瞞的な正体だ!平和が平和として感じられるためには、平和でない現実こそが不可欠となる。染みをどこにつけるか?どこか遠くの、自分たちとは何の関係もない場所で殺人が起こるならば、それは素晴らしく理想的だ!WTCが倒壊した日の翌日、それをテレビでイヤというほど目撃したはずの世界中の平和は、焼いて食べればさぞかし美味かろうというくらい、ぷりんぷりんに肥満していたよ。艷やかで、ヨダレが出そうなほどに脂が乗っていて、少々卑猥なピンク色をしてね。殺戮はむしろ歓迎されている。そこにいて身に危険が及ばない限り。人間は相変わらず愚かだ。しかし、だからこそ、今ここにある平和は、人間的な意味で尊い。これが、本音だ。」(p.330)

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    投稿日: 2013.08.21
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    「利己的な欲望の中で、人間は他者と交わりながら生きている。それはどうやったって否定出来ないよ。『自然は人類を苦痛と快楽という、二人の主権者のもとに置いてきた。』ー吐き気のするようなベンサムの宣言だが、これは俺にとって頭痛の種だよ。一人の人間と向かい合うことを考える時にはね、何を言って否定してみても、いつもこれにつきまとわれてしまう。まさかこれが、道徳及び立法の諸原理だとは思わないけれどね。」まだ上巻しか読んでないけど、面白い!

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    投稿日: 2013.08.04
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    引き込まれる感じもあるんだけど、あんまりにもくどくて飛ばしたところもあり・・・。 上巻ラストあたりでやっと大きく物語が動き出す。

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    投稿日: 2013.05.23
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    平野啓一郎の比較的新しい小説。上下巻で1000ページ強ってことで、とにかく長い。現代社会における「違和感」や「気持ち悪さ」をあぶり出す表現力はさすがであり、これぞ現代文学って感じ。この人は本当に頭いいね。

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    投稿日: 2012.11.18
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    勉強好きな人の文章って感じ。わかりやすくはないし読みやすくもない。僕は好き。 なんか細部に目がいってしまって、物語の核というか、著者の「一番主張したいこと」をよく読めてない気がするという反省。現代社会と人間を、その「世界」の脆さという観点から描いてるって感じかねー

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    投稿日: 2012.06.24
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    圧倒的な知識量で描かれる渾身の現代ミステリ。 まだ事件の起きない上巻では家族、友人、恋人に対して抱く微かな「不信感」や、自分以外が他者であるがゆえの「心のズレ」を感じる違和感を巧みに書いている。 人間関係を上辺では体裁良く保っていても、日常的に心の奥底に感じている上記のような空虚感は誰でも抱いた事があるのでは無いだろうか。 序盤のシーンで韓国語教室のCDを義母が流した時に、佳枝が「夫が在日韓国人なのではないか」と不意に疑ってしまう部分から、様々な人間が抱く不信感の連鎖はまるで自分を見ているかのよう。 ただ上巻は地の文が三人称なのだが、二次的な一人称が一つの章の中でコロコロと変わってしまって分かりづらいシーンが多かった。

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    投稿日: 2012.06.15
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    小難しい文章を書くイメージの平野さんだったが、というか過去に読んだ初期2作とは文体が違ったので、読み始めてすぐに過去に読んだ作品よりも読みやすくてこれは楽しめるかもと思い、なんてことない話が続く前半の時点でぐいぐい引き込まれていった。 上巻を半分ほど読んだあたりで、世界が広がっていく感覚というか、長編独特の良さを感じることができ、使われている語彙を楽しみながら丁寧に読み進めた。 人にどこがどう面白いと説明するのが難しいが読んでいて非常に楽しい、下巻にも期待。

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    投稿日: 2012.05.19
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    実際は星など1つたりとも付けたくありません。マイナス5つ星と言ってもいいくらい。 難解も難解、とにもかくにも非常に難解な文章が特徴。と言うよりは“書き手の独りよがり”による読み難い文章と言った方が正確かも知れない。そんな読み進めづらい文章が、序盤からこれでもかと全開で、それが頁を繰る毎に益々酷くなっていく。 表紙だけを観て上下巻をまとめて購入してしまったのですが、正直言って、本好きな人にもそれ以外の人にも決してオススメ出来ません(ムリ!)。作者はインテリを自負していらっしゃるようですが、とてもじゃないけどこの作者が評価される理由が皆目判らない。小ムズかしい文章を羅列すればアタマがいい、とでも思っているのだとしたら… ため息しか出ない。 途中からは完全に斜め読みした挙句、古本屋に持っていくのも面倒になってコンビニのゴミ箱へ放り捨ててきました。金返せ、と言ってみても詮無いので諦めです (;T T)=3

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    投稿日: 2012.05.10
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    このレビューはネタバレを含みます。

    表4のあらすじからサスペンスを期待したのに、事件が起こるのが上巻のラストって遅過ぎだろ。最初の300Pはホントに必要なのかな? 読み終われば感想変わるのかもだけど、ちょっとフラストレーションが溜まった。

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    投稿日: 2012.04.06
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    優秀で世界を冷淡に見つめる兄と平凡な日常を愛する弟。テーマは犯罪といえば結構シンプル…かもしれないが。犯罪はあくまで題材であり、テーマは宗教観や世界観といった領域にまで踏み込んでいる。上巻は、ストーリがようやく進みだしたといった内容。

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    投稿日: 2012.03.08
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    順風満帆と思える生活の中で自殺願望を抱く兄、妻子がいながら満たされず疑念を抱く弟、隠居生活でうつ状態に陥る父、周りから浮いてしまっている中学生、そこに<悪魔>が忍び寄り、決壊が始まる。 *** 一回読んだだけでは理解できていなかった、崇の内省的な苦悶や哲学的な思索の数々が、<悪魔>の登場後に改めて浮かび上がってきて、これからどう結集していくのか楽しみ。 複数の視点からの描写や喩えを含んだ文章の連続に、想像を刺激され続けて読んだ感がある。人の多面性と某国をダブらせたり、言葉による拘束など面白いアイデアがいっぱいあった。

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    投稿日: 2012.02.06
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    比較的面白く読めたが、物語が大きく展開するまで、少々辛抱が必要かもしれない。主人公の人物描写は当然必要なのであろうが、上巻での親友の室田との会話のくだりは食傷気味だ。  とは言え、「重たい」小説が好きな自分としては、かなりの長編にもかかわらず、すんなりと読めた。  重犯罪の果てに生起しうる様々な悲劇を改めて認識させられ、どっぷりと「哲学的」な思考ができた。  作者の平野氏は頭のいい人なんだろうなと思う。文章の一つ一つ、表現の細部にわたるまで計算されている。ただ、自身の才能に酔っているのではと感じる個所も多少あった。  「文学」なんだと思った。

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    投稿日: 2012.02.06
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    まだ面白いゾーンまで達してないっぽいけど十分面白い。平野啓一郎好きだな。一つずつの事象の裏に意味を考え過ぎなとことか。

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    投稿日: 2011.10.08
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    様々な決壊の形があるが、上巻は箍が外れる、堰を切るという段階の前。じわじわと不安感を助長し、ダムの水が溜まるまでを静かに、丁寧に描いていく。 時に丁寧すぎて飽きを招くが、スティーブン・キングのシャイニングのように前半全てを、決壊にいたるまでの経緯に費やすことで後半のスピード感を演出していく。次に繋がるための我慢の前半。

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    投稿日: 2011.08.28
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    いままで平野さんの小説は文体もテーマも重そうと思って、なんとなく避けてしまっていたのだけど、読みやすいかった。他の作品も読みたい。

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    投稿日: 2011.08.22
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    初めて読む作家。 文章に重さがあってよい。 が、とにかく長い。 心情の描写がめちゃくちゃ長い。 会話の中での哲学や政治への小難しい解説や主張もめちゃくちゃ長い。 この辺をちゃんと読んで理解しておかないと、登場人物の行動や心情を考察できない というのならなかなかしんどい。 その辺はそこそこにしか読まなかったけど、 とりあえず下巻が楽しみなくらい面白いので、 まぁいいかなと思います。

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    投稿日: 2011.08.19
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    取り返しのつかない凄惨な現実一点に向かって、人の強い思考をなぞってヒビが走っていく。ヒビは「悪魔」の一打で決壊へ。 「あなたは殺人者である。たとえ世界が、卑劣にも捏造した事実であったとしても、それは結局、不可避の運命だ。それ以外の何でもない。世界はあなたを選んだ。なぜか?あなたに、殺人以外の『幸福』がないことを知っているからだよ。」 相変わらず「プロットの時から文章削ること一切考えてないのでは」と言いたくなる思考のボリューム。著者は中二病なの?と途中うんざりしそうでしたが、それでも下巻まで手にとる気になったのは、「中二病」という言葉で把握した「つもりにしている」現実の一部があることに気付くから。 アイデンティティーの複数性、という考え方は「ドーン」に引き継がれているんですね(「決壊」は「ドーン」より以前の作品)。 「この著者はこういう哲学を持っている」と、明確な印象を持ってその著書をとれる作家、最近(比較的若い作家では)まれな気がしますが、平野さんはそんな一人だと思います。それでいてどの話も同じような雰囲気、というマンネリには陥らないから飽きない。 「頭がいい」かどうかとかよくわからないけれど、読んでいると、言葉を通して著者が「ぶつかってくる速度」がとても速く、また意志をもって敢えて乱暴なぶつかり方をしてきているよう感じる。その度胸に敬服はします。 凄惨な描写をすればいい、ということではなく、えぐい現実を突きつければいいということでもないし、自分哲学を書きなぐればいいということでも勿論なくて・・・ 押し付けがましくないのに、明確な意思を感じる。そのバランス感覚が、嫌味がなくて好きなのです。突きつけている現実は「現代」だけれど、とてもクラシックな感じがする。 下巻に続く。 上巻の最後の時点で、もう、取り返しつかない事態になっていて・・・このあとこなごなに散っていくだけであろう物事を思うと、その後味を回避したい気持ちから、読む意義を自分自身に問いたくなるんだけど・・・ なんで読むのか。 こういうことを書く作家がいるからです。昔からいたけれど、最近あまりいないからです。

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    投稿日: 2011.08.07
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    「決壊」(平野啓一郎)読み終わりました。これまでに読んだ平野さんの小説の中でこの作品が一番震えた。深く病んだ今の世界に生きる人々の『心の闇』と『離脱者』が解き放つ『狂気の発露と伝播』を克明に描ききり、日常生活の中に潜む『何か』への恐怖をあぶり出す傑作だと思います。

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    投稿日: 2011.06.23