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カルロス・ルイス・サフォン, 木村裕美 / 集英社文庫 (9件のレビュー)
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総合評価:
ABAKAHEMP
真実を知ることで自由になれるのか?
母イザベッラの手記を読み、すべての真相を知ったダニエル。 父センペーレは、教会のミサに参列した息子を見て、「この子にも時間が流れはじめたのだ」と悟るシーンが印象的だ。 母親の顔が思いだせなくなった…と叫びながら目を覚ましてから15年。 母の顔を思いだすために生きてきたダニエル。 それもようやく終わりを告げたのだ、と。 「時間というのは、いつもそこに生きる人間の必要性と逆の速度で流れるもの」で、真実を知ることが、必ずしも自由への扉にはならない。 アリシアも、取り組む事件の解明が自由へのバスポートだと信じていた。 しかし最後には、「真実を知らずにいることでしか、自由にはなれない」のだと思い知る。 彼女の師であるレアンドロは「真実? きみもわたしも、そんなものは存在しないと承知しているだろうに。真実は、物知らずの連中が現実と共存しないですむための合意じゃないか」と嘯く。 真実と嘘は紙一重で、聞きたいことや信じたいことの投影に過ぎないことも多い。 真実を知ることは、魂に痛みを感じるものだし、究極的には自分を知ることなのだろう。 15年の歳月をかけて書き継がれた四部作の大団円は、実は最終ページのはるか手前で訪れる。 その後は、線香花火のように、長く余韻をもって綴られる。 「物語には、始まりも終わりもない、入り口のとびらがあるだけ」というように、読者は作者の紡ぐ物語の迷宮に分け入り、道に迷いながらも、最後には作者の力を借りて読者自身が出口を見つける。 物語の余韻がこれだけ長いのも、登場人物たちのその後を描くことで時の呪縛から解放してやりつつ、読者自身にも出口の扉を見つけさせたかったのかも。 物語とは結局のところ、「語り手と聴き手の会話」であって、「読者が読めるのは、ただ自分の魂に書かれたものに届くところまで」なのだから。 「説得力というのは、それを表明する人間の知性に正比例する。同様に、信憑性はそれを受けいれる人間の愚かさに比例する」 「幸福や心の平和は、信じることから知ることへの道程で泡と消えていくものなのだ」 「自分のやってることと言ってることの区別を学ぶのが、自分自身を知りはじめる第一歩なんです」 「まあ、睡眠時間は死んだときにとりもどせるでしょ」 「男の人が学ぶのは、重力の法則からだけ。いつかガツンと物が落ちてくるまで、目なんか醒めやしない」 「希望は人が抱くもの、でも運命は、悪魔が配って歩くものなのです」続きを読む
投稿日:2023.03.03
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marumaruchan
このレビューはネタバレを含みます
楽しみにしていたのに、前の作品の記憶が薄くなってて自分にガッカリした。立て続けに読まないとだめだなと思った。バルガスが死んでしまったのはショックだった。でも文章の美しさは堪能した。バルセロナのどこかに「忘れられた本の墓場」があるのかも…って思って生きていく。 今年の目標まずひとつ。
投稿日:2024.02.13
ute
バルセロナの街で、実際にある場所を調べながら読むのをお勧めします 閉店した店もあるが、写真を見ると更に深いイメージに浸れる 歴史の重さを感じる重厚な石造りの様々な場所に、いつか実際に行こうと決心しま…した 続きを読む
投稿日:2023.12.01
帆掛船
2022/10/7読了 ’20年6月に逝去したサフォンの〈忘れられた本の墓場〉シリーズ完結編。前3作を凌ぐボリュームで引っ張ってくれたが、結局のところ、黒幕のバルスですら、当時のスペイン独裁政権の中で…は、使い捨ての駒だったのか、という虚しさが残った。 それにしても、〈忘れられた本の墓場〉は、脳内でイメージしても、エッシャーの絵じゃないが、あり得ない構造としか思えない。続きを読む
投稿日:2023.09.24
mtsrs
素直に面白い。アリシア・グリスが良い。サスペンス度合いがこれまでの三作品以上に高くて、読みながら裏切り続けられる。 ただ、これまでの登場人物やその関係性をわかっていないと面白さがかなり減ってしまうよう…に思う。あれ、この人ってあの時のあれだっけ?的な思いを抱えながら読んでしまったので「風の影」からメモをとりつつ一気に読み直したい。続きを読む
投稿日:2023.07.16
まるまるまるこ
第4部にして大円団で終わった。 1部から読んでいるが、単独でも面白いし、全体を通しても楽しめた。 センペーラと息子書店、行きたい!
投稿日:2023.02.28
ひーちゃん
第一作『風の影』からシリーズを通して読んできたけど、今回の作品が一番好き!それは、全作読んだ上で今作に触れたがゆえの、オールースター的な演出に対する興奮もあるのかもしれない。しかしそれだけでなく、新…たな主人公のアリシア・グリスを通して、内戦前後の暗い部分を反映した物語をミステリー&ヒューマンドラマとして読み進め、新たな登場人物たちに愛着が湧いてくることによって、どんどんこの世界にのめり込んでいった。 「本を読む者にとって、生まれてはじめてほんとうに心にとどいた本ほど、深い痕跡を残すものはない。はじめて心にうかんだあの映像、忘れた過去においてきたと思っていたあの言葉の余韻は、永遠にぼくらのうちに生き、心の奥深くに『城』を彫りきざむ。」ー『風の影』(上巻)より 『風の影』シリーズは、私にとってずっと心の中に棲みつく物語となった。続きを読む
投稿日:2022.12.21
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