【感想】砂まみれの名将―野村克也の1140日―

加藤弘士 / 新潮社
(33件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
15
10
7
0
0
  • さらなる空白の11ヶ月へ

    「あの3年間の濃さっていうのは、本当に野球したなあって感じ。一番上手くなった3年間だと思う。技術だけでなく、野球を知ったというね」

    シダックス時代を振り返った武田勝の言葉だけど、野村克也も「あの頃が一番楽しかった」と生前に語っていた。
    プロ野球ファンにとってのこの「空白の3年間」を、監督就任直後からアマチュア野球担当の新人記者として追いかけていた著者は、あまり描かれていない知られざる智将の姿を知ってもらおうと取材を進めるが、関係者から貴重な証言を集めているうちに、さらに「空白の11ヶ月」があったことを知る。

    シダックスを率いていた監督時代は、アマチュア指導規則に抵触するタレント活動も平行して行ないながら、裏ではしたたかにプロ球界返り咲きを志向し、単なる「腰かけ」に過ぎなかったのではないかと批判的に見る向きもあった。

    ただ本書を読んで、野村監督は、砂塵舞い上がる関東村のグランドでひたむきに白球を追う、すでにピークを過ぎた多くの社会人プレーヤーを指導して、技術や勝つ方法を注入するというよりも、野球を通じて人生を豊かにする人づくりの魅力に目覚めちゃったのかもしれないな。

    それは、シダックスに別れを告げる送別会で一目も憚らず号泣したこと、沙知代夫人に「オレはアマチュアを愛している。シダックスで良かったんだ」と大喧嘩したこと、練習後のミーティングで選手に語って聞かせたのが、「野村ノート」の技術論ではなく、「人間とは」という心構えや取り組み方に終始していたことなどを合わせて考えていくと、腑に落ちる。

    著者も最後に、裏で沙知代夫人がどのような意図から東奔西走していたか、最後まで大病が秘匿されていたかの真意を知り、点と点が線につながる感覚を覚え、感慨を深くしている。

    「財を遺すは下、仕事を遺すは中、人を遺すを上とす」とは、生前の野村が口癖のように話していた言葉だそうだが、読んでて大事なことに気づかされる言葉が多い。

    「この世界はな、真面目な優等生は一流になれないんだよ。不真面目な優等生こそ一流になるんだ」

    「やんちゃなヤツって素直だから、すぐに言われたことを身につける。吸収するんです。変に自分のこだわりとかないから、伸びしろがすごいんですよ」

    「好きな野球を一生懸命にできないヤツなんて、何をやったってうまくできるわけないよ。本当に必死になって、野球に取り組まないとダメだ」
    続きを読む

    投稿日:2022.06.03

ブクログレビュー

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  • ma777

    ma777

    野村克也の阪神退団から楽天入団までの最も語られていないアマチュア野球シダックス時代のノンフィクション。
    野村克也という題材の面白さから楽しんで読めた。
    ただ、著者の見る角度があまり好みではなく、本としての面白さはまあまあといったところ。
    途中これは今だれが話しているんだっけ?というような構成的な欠陥があり、話がそこまで入ってきませんでした。
    落合博満や清原和博のノンフィクションを描いた鈴木忠平さんの本が大好きなので楽しめるかと思ったのですがその点に関しては残念でした。
    素材は満点。料理人はそこまで。
    そんな印象です。
    続きを読む

    投稿日:2024.03.01

  • hamasa

    hamasa

    知られざる「ノムさん」のシダックス時代の3年間。
    野球を愛し、人を残そうとする1人の尊敬すべき野球人、監督の姿を取材を重ねた作者を通じて垣間見ることができた。

    投稿日:2023.12.20

  • 有井 努 Tsutomu Arii

    有井 努 Tsutomu Arii

    ヤクルト、阪神、楽天などの「プロ野球」の監督
    として知られる野村克也氏。

    阪神の監督を辞任した後、3年間ほど社会人野球
    チーム、シダックスの監督をしていました。

    元プロ野球の監督がアマチュアの監督を務めるな
    んて「都落ち」感がありますが、当の本人は後年
    「あの頃が一番楽しかった」と言っていたらしい
    です。

    アマチュアであるが故に、勝利だけを追い求める
    プロとは違ったチーム作りに面白さを感じたので
    はないでしょうか。

    そして球界再編で誕生した「アマチュア」同然の
    楽天球団を率いることになるのも、必然の流れと
    しか言いようがないです。

    野球人ではない、「指導者」野村克也の新たな一
    面に触れる一冊です。
    続きを読む

    投稿日:2023.10.11

  • ハナハル

    ハナハル

    野村本は色々読んできましたが、
    これは異色。面白かった!
    ノムさんの人間味?いや
    人情味がとても分かる本。
    「野球は野原でやるから、野球なんだよ」
    ちょっと感動ですね。

    投稿日:2023.10.06

  • ウヤウヤ

    ウヤウヤ

    知られざるシダックスの3年間を通して浮かび上がってくるのは、名将として尊敬すべき野村監督の姿、そしてそれ以上に一人の人間として愛すべきノムさんの姿でした。そんな彼が何より大切にしていた「恩」が今も脈々と継承されているのがたまらない。続きを読む

    投稿日:2023.09.20

  • changmainico

    changmainico

    野球に興味はないけれど、、人間力のある指導者だったんだろうなと、読んでわかりました。エッセンスを絞って書かれていて読みやすかった。

    投稿日:2023.09.03

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