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ルトガー・ブレグマン, 野中香方子 / 文春e-book (76件のレビュー)
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総合評価:
ABAKAHEMP
生来の善良さを素直に喜べない複雑さ
読み物としては面白い。 一人ひとりの脳の大きさや賢さで比べると、MacBook Airの性能しかない人類が、MacBook Proのネアンデルタール人を差し置いて生き延びることができたのは、我々の方…にはWi-Fiが付いていたからだという説明など、非常にキャッチーでわかりやすい表現を多用している。 ただ、生来の善良さを擁護するために、何人もの大物学者の著作の粗や汚点を暴きたて反証を試みる様は、どこか法廷で陪審員の心に疑念の目を植え付けようと躍起になってる弁護士に似ていて、その醜悪なやり口に鼻白む思いを感じた。 「正直言って、わたしは当初、ミルグラムの実験のいかさまを暴くつもりだった。数ヶ月も調べれば、彼の遺産を片づけるのに十分な攻撃材料が集められるだろうと思った」。 彼に狙い撃ちされたのは、ミルグラムの他にも、リチャード・ドーキンス、ジャレド・ダイアモンド、フィリップ・ジンバルドなど。 スティーブン・ピンカーは『21世紀の啓蒙』の中で、自らと同じく、世界は過去より良くなっていて、今後もさらに良くなりうると考える楽観論者の同士として紹介していたほどなのに、本書の中で見事に著者の的になっている。 十年後に、どちらの主張が忘れ去られているか、本当に興味深い。 そもそも、アルバムのジャケットのような、ランニングシャツ姿の横顔を写した著者近影を目にした時点から、相性は良くないだろうなという予感はあったのだが...。続きを読む
投稿日:2021.12.05
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りゅうちゃん
『ほとんどの人は、本質的にかなり善良だ』 この本は、この一文に向き合い、世界中の事例から証明しようとする本だ。 上巻では、無人島に残された少年たちは争い、ホッブズの「万人の万人に対する闘争状態」に陥る…ことを小説にした『蠅の王』を覆す『本当の蠅の王』の話から、 ジャレド・ダイアモンドが証明したイースター島の歴史を覆す話、 ミルグラムの電気ショック実験の真実、 キティ(スーザンジェノヴィーズ)の死で有名になった「傍観者効果」の真意、 そして、報道による読者への方向付けの注意喚起までを著している。 導入であり問である『人は本質的に善良だ』に対し、日本で生まれ、26年間生きた僕は、「そう思う。」という感想を持った。 良くも悪くも平和ボケした現代の日本に生まれ育った者は同じ感想を抱くのではないか?と思う。 しかし、なぜ本質的に善良なのか?という問を考えるために読み進める。 各国の事例を所狭しに著している本書は、地名や当事者の名前などでカタカナが多く、ある意味読み応えがある。 注意すべきは、それらの事例や歴史は、誰かの手によって記されており、つまり誰かのバイアスがかかっているということ。 それは多分に漏れず、著者のルトガー・ブレグマン、翻訳者の野中香方子のバイアスもだ。 これは、上巻の最後に触れられているメディアの話にも通ずる。 何を事実とし、何を信じるかを常に注意して読書し続けたい。 最後に思ったのが、この世は反面教師だということ。 善行を証明するために悪行を演じたり、悪行から考える構図になっている。 つまり、悪やマイナスがなければ、善もプラスも証明できない。 戦争があったことで、人権が付与されたことが例。 仮でも両端を捉え、考え、折衷を探るしかないと思った。続きを読む
投稿日:2024.06.09
あじの開き
人がいかに悪意に満ちていて利己的か、という話を覆す本 他者と協力しあうことで生き延びてきた時点でそうなのもしれない。 面白かったのは古来の天才族と模倣族の話で、とりも分かりやすく腑に落ちた。 読ん…でいて擬悪的になったりネガティヴに考える自分をもう少し冷静に見ていかなきゃなと思った。とくにネガティブな情報が蔓延するSNSやメディアからは適度な距離を取るのが大事だと思った。 続きを読む
投稿日:2024.05.22
1876806番目の読書家
人間社会は、人間の根源を悪であるとみなしたがる、ということが如実にでていた。マスコミも、人間の悪が現れるようなことを報道したがる。 本質的な善なのかはわからないが、歴史や報道を真実して受け取るのが最善…ではなさそう。 そして人間の良い面を気持ち重視しても、良いのではないだろうか。続きを読む
投稿日:2024.04.12
rafmon
本著を読んでユヴァルノアハラリが価値観を変えたという位だから、新たな視点が得られるのだろうと期待して読み始めたが、期待通り。乱暴に言うと、人間の「性善説」的な本質を証明しようという試みの本。戦争の歴史…を歩む利己的な存在という価値観を一変させる。 ー 人間は本質的に利己的で攻撃的で、すぐパニックを起こすと言う根強い神話。薄いベニヤのような道徳性ということから、ベニヤ説と呼ばれもするが、真実は逆。災難が降りかかった時、爆弾が落ちてきたり、船が沈みそうになったりしたときに、人は最高の自分になる。 『蝿の王』という小説があり、私も読んだ。しかしあれはフィクションであり、無人島で人間は憎しみ合い傷つけ合う事はない。実際に、アタ島に漂流した青年たちは、互いに助け合って生き延びた。アタ島の漂流の話はインターネットで検索すれば、当事者の顔写真つきで閲覧する事もできる。これを知っただけでも、本書を読んで良かった。 画面操作による実験で、人間とチンパンジー、オランウータンを比較した。空間認識、計算、因果性認識を調べたが、チンパンジーやオランウータンと2歳の人間の子供ではテスト結果が変わらない。しかし、社会的学習では、人間の子供が楽勝だった。つまり、人間とは、超社会的な学習生物であり、学び、結びつき、遊ぶように生まれついた。人間だけが赤面するのは、本質的に社会的な感情表現。他人の考えを気にかけていることを示し、信頼をはぐくみ協力を可能にする。また、目を見る行為だが、人間の目には白い部分がある。他者の視線の動きを追える。更に面白かったのは、ネアンデルタール人とホモサピエンスの対決の話だが、「天才族vs模倣族」の例え話で理解ができるというもの。 …しかし、オキシトシンの影響は、グループ内に限られる。これが人間の負の歴史を生む。下巻は、この負の歴史の真相に挑む。続きを読む
投稿日:2024.02.28
tktk0720
めちゃくちゃおもしろい。 今まで信じていた理論って何だったんだろう。 人間不信というかいろいろなものに不信になってしまう。 派生していろいろな本を読みたいが、巻末の注記では文献を探すのがちょっと難しい…な。 今最も読み続けたい本であり、著者です。続きを読む
投稿日:2024.02.05
しお
面白かったー!スタンフォード監獄実験に疑義が出されてるのはなんとなーく聞いてたけど、他にも聞いたことある「人間の本性、ってさ…」な「科学的」論拠をそれぞれ当時のデータ等再び見直して、実験としてどうなの…か、解釈はそれで正しいか、前提として性悪説を論証したかったんじゃないか…などを見ていく。文明崩壊も暴力の人類史も読んだことがあったので、データの扱い方の検証で「えっあれはなんだったの!?」になることも。 ただ、この本で検証されたもとの話はすっと無防備に信じて納得したのに、この本については「これを信じて本当に大丈夫かな…」の疑念が湧く。まさに文中で指摘されてる通り、「現実的」と我々が見做すのは性悪説の方なんだよな、を地でいく状態。たまたま偶然飛行機の事故が直近にあって、まさに現実が(少なくともあの件に関しては)冒頭の惑星Aの方だったのを知ってるのにね。続きを読む
投稿日:2024.01.21
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