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竹田青嗣 / NHK出版 (8件のレビュー)
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最高の哲学理論
深層心理学のオタクで哲学の本はめったに読まないのだが、この本は名著である。 深層心理学を知るものならばこの本がいかに優れているかはただちに了解されるだろう。 存在、認識、言語の謎を解き明か…し、背理法のレトリックを見抜き、相対主義者の矛盾を解き明かしている。 ユング好きなら客観が意識のうちに生じた意識内の分節に過ぎないことはご存知だろう。フッサール現象学の本質もここにある。 またノエマ、ノエシスという分かりにくいタームを恐らくは世界一分かりやすく解説してあり、誰にでもすっきりと理路明瞭に理解でき、この本を読めば中学生相手にでもこれをある程度、説明できるようになる。分かりやすい図があって誰にでも理解できる。因果関係を逆にして意識に還元、対象の確信(ノエマ)の構成条件を暴くというのがフッサール現象学。ノエシスを体験流としてノエマとノエシスの関係(時間性)を示してもいる。 ユングとの違いでいえばユングは唯心論的だが、竹田哲学では認識の対象とはならない原存在が想定される。この想定は理論的に妥当であるといわざるえない。 ニーチェによる本体論の解体による主体ー客体ではない新しいパラダイムとそのパラダイムによって可能となったフッサールによる普遍認識の哲学的方法論が示され、なぜ現象学が必要なのかが理路明瞭に示される。 現代の批判思想に過ぎないポストモダンは認識論の誤謬に起因しており、フッサールは認識論の謎を克服しているために、ポストモダン問題を克服できるというわけだ。 ゴルギアステーゼを起点にスピノザVSヒューム→カント→ヘーゲル→ニーチェ、フッサールと示してゆく。 言語の謎もキルケゴールの固定指示や誰かだったかの固有名にふれつつ、それらを克服し企投的意味→一般意味の図式ですっきり解き明かしている。 またデリダやフーコーの問題点を理路明瞭に指摘。 とりわけフーコーの問題点について、深層心理学オタクのぼくとほぼまったく同じ結論になっていたので興味深いというか、当然にその結論になっちゃいますよね、としかいえない。 さらに臨床心理学を現象学により止揚。 人文領域における質的研究と量的研究の問題を扱いこれも克服。自然科学と人文領域を分ける必要性を示しており、まったく同感としかいえない。 デュルケームの馬鹿げた論理実証主義やウェーバーの優れた洞察を紹介し社会学のあるべき姿を描く。 さらに本書では明示されていないが、極めてラカン的な欲望への洞察が社会論ではベースとなる。 ルソーの一般意志と社会契約をベースに論じノージック的アナーキーのロック的個人所有の論理を論駁。 ロールズの問題もあきらかとしそれらの克服を示す。 ドゥルーズのアンチオイディプスにもふれている。 深層心理学好きならば当たり前のことだがしたがって本書は神経症優位の論理となる。 近代主体をたてる理論といってよい。 ラカンでいえばポスト鑑別診断を認めつつも、鑑別診断の必要性を徹底的に訴えているようなところがあるかもしれない。 ヘーゲルの主奴論や普遍財産、一般福祉なども分かりやすい。 いずれにせよ、一般意志の表現として具体的な法があることを指摘しており、しかも一般意志と法とでは存在論的カテゴリーが異なるという風に読める節がある。ともかく一般意志は法によって完全には表現されないという。 そして社会とは個々の人生における矛盾や苦悩といった理想の欠如によって欲望されて意識可能となるという。 お分かりだろう、ここのところは完全にラカンのフリュストラシオン、すなわち欲望(存在論的差異)の議論と一致する。 法(言葉)における理想の欠如が社会的主体=近代主体を可能とするということを示している。 少なくとも僕はラカンの理論は、法への理不尽や義憤が欲望を形成し、それが分離や去勢に相当すると理解しているので僕の理解するところのラカンと竹田理論には重要な部分での親和性がみとめられる。 この他にも道徳や正義も論じており、ハイデガーの不安や良心についても分かりやすい。 また時間についても述べられている。 ただし時間についての解説は竹田著の新哲学入門のが分かりやすい。 まだまだ面白かった記憶に残ってるトピックがあるがきりがないのでこの辺にしておく。 ともかくあまりにも凄い本過ぎて、その魅力をこのレビューでは1%すら表現できない。竹田は歴史的哲学者だと思う。 一ついえるのは、一人でも多くの人に読んでほしいということ。 読めばいかにこの本が凄いか分かる。続きを読む
投稿日:2024.04.18
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オフロスキ
わかりやすいが、かなり荒っぽい議論を進めている。 たとえば、存在の普遍性を間主観性だというのは私も同意。 ただ、内容は「新しい哲学の教科書」のほうが整理されていて分かりやすいと思う。
投稿日:2021.12.30
キじばと。。
哲学を「普遍認識」の方法であるという著者の考えが示されるとともに、そうした課題を喪失している現代哲学の諸潮流を批判している本です。 著者は現代における哲学の混迷が、「認識の謎」についての正しい理解が…欠けている点に求めています。そして、ニーチェとフッサールの二人によってこの謎が解明されたと主張するとともに、彼らの仕事の意義についての理解を欠いているために、あいかわらず相対主義と独断論の両極に引き裂かれているポストモダン思想や言語分析哲学、新しい形而上学などの批判をおこなっています。 著者のフッサール解釈は、アカデミズムにおけるフッサール研究になじんでいる読者には不満を感じるところがあるでしょうが、『現象学入門』(1989年、NHKブックス)などの著作を通じて「竹田現象学」に触れている読者にはおなじみのものだと思われます。現代哲学の相対主義に対する批判も、これまでの著作でおこなわれてきた主張と同様のものですが、とりわけ「普遍認識」の重要性を強調しているところに本書の特色があると見ることができるかもしれません。 他方、本書の最後でとりあげられる社会哲学・倫理学・実践論にかんしては、主著となるべき『欲望論』の第三巻で本格的に論じられることになるであろう内容の展望が示されています。続きを読む
投稿日:2021.01.21
izumowol
ニーチェとフッサールを足場にこれまで哲学が成し遂げて きたこと、これから哲学が何をしなければならないかを まとめ上げた野心的著述。その言説の是非はともかく、 竹田青嗣の著作は実にわかりやすく、私の中に…素直にストン と落ちてくる。氏の本を読むと、「哲学」とはいかにわかり にくく言い換えられるかという競争ではないかと思って しまうほどだ。まぁ、単に著者と私の波長が合っていると いうことなのかも知れないが。マルクス・ガブリエルを 読んだ時に感じた「何かが違う」感じも上手くまとめられて おり、これからもその著作を追い掛けていこうと思わせて くれる良い1冊であった。続きを読む
投稿日:2020.08.06
GINNOJI
いままで読んできた哲学を論旨とする書籍の中で最高級。 フッサールとニーチェのことだけ軽くしっておけば、哲学を学ぼうとする誰にでも有用な本です。 「認識の謎」「存在の謎」「言語の謎」の3つに整理し、 …・哲学の力 ・哲学の功績 ・いま哲学は何を考えるべきか を明確に記載して、哲学全体をとらえようとする本がありがちな哲学者を並列して解説を加えていくスタイルとは一線を画します。 序盤からして「宗教は物語、哲学は言語ゲーム」という惹きが魅力的。 哲学について学ぼうとしなくてもよいので、そして流し読みでも良いので、教養として当著を読んでみてほしいです。 当たり前と当たり前の矛盾について、深く考察する良い機会になります。続きを読む
投稿日:2020.06.29
takeshishimizu
うーん、なんかすごいことが書かれているんだろうなあ、と思いつつ、半分以上理解できないまま読み終えた。竹田先生の弟子だという苫野一徳さんがツイッターで紹介していたので手にとってみた。そもそも、哲学の本は…どうしてそういうことを考えることになったのか、それが分からないので、なんかしっくりいかないでいた。それが、100分で名著でカントをとりあげていて、西研さんが、そのそもそもの理由を話されていたので、なんとなく納得した。ガリレオとかニュートンとかの話。本書の中でも、本質観取とか自由の相互承認とかが大事なことはわかった。もともとこれは、先に苫野さんの本で読んでいたからだ。で、とにかくフッサールとニーチェをしっかり読まないといけないということはわかった。読まないと思うけど。それで、竹田先生はどうしてこうも、フーコーとか他の思想家のことをけちょんけちょん?に言えるのか。まあ、その辺がおもしろいと言えばおもしろいのだが。世の中に対する具体的な話になってくると、ぐんと分かりそうになるんだけどなあ。ネットでお話を聴ける機会がありそうなので、まあ聴いてみたい。うーん、でも相互承認できないことがいろいろあって、世の中大変なのではないのかなあ、と思ったりしてしまう。頭の中はモヤモヤなのだ。続きを読む
投稿日:2020.06.07
伊藤 薫
ありがちな昔の哲学者の紹介だけでなく、哲学に新たな視点を付け加えるという意気込みはよく伝わってくる本でした。 でも、結局のところ「本質観取」と「熟考」、「普遍認識」と「熟議を通じたコンセンサス」に違…いはあるの?という身も蓋もない読後感を持っております。私の読解力の問題かもしれませんが。続きを読む
投稿日:2020.05.20
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