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佐藤 智施, 大倉 幸祐 / 日経BP (1件のレビュー)
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すいびょう
【本書の詳細】 ①経験と欲求が変化している 生活者がモノやサービスを欲しいと思う原動力は、デジタル化によって、生活者の内部ではなく、「生活者を取り巻く状況」に変化した。 今までは、スーパーでの生活必需…品の買い物や街頭での嗜好品の買い物など、生活者がモノを購入する時は、自身が「何を欲しているか」をベースに判断を下していた。 しかし、デジタル化の進展とSNSの台頭により、購入する際の判断基準が「個人の欲望」から「所属するネットワークの欲望」に変化しつつある。 変化の理由としては、SNSなどの情報シェアサービスにより、他人(ネットワークの一員)の経験が自分の経験の一部になったことが挙げられるだろう。SNSなどの多元的なネットワークにおける口コミや流行りが、個人の興味や経験に影響を与えるようになった。生活者がアクセスできる物や情報が膨大になったため、経験の主体が、生活者個人から生活者のネットワークにまで拡張したのだ。 ネットワークが拡張することにより、個人の経験も変化した。モノを買ったことをSNSにアップしたり、料理過程をインスタで配信したりと、商品生活において経験する対象が、製品そのものでもコンテンツそのものでもなく、ものと情報が結びついた「環境」にまで拡大するようになったのだ。 それと呼応するように、商品選びの際、生活者が自分にふさわしい商品を意識的に選択することから、サブスクリプションモデルにおけるレコメンドに基づく自動選択といった、「感覚的な選択」が増えるようになった。たくさんのモノの中から主体的に商品を選択するのは骨が折れる作業だ。ならば口コミ評価上位のトレンド商品やAIが選ぶレコメンド商品など、「良さそうな雰囲気」を判断材料にしたほうが時間と労力の節約になる。 そうして、自らの購入欲求の範囲が、自分一人から所属するネットワーク全体にまで拡大することとなった。同時に、ユーザーを消費者ではなく「生活者」として捉え、商品単体の売買だけでなく、一日の生活サイクルの中で何を欲しているかを動的に捉えるようになった。 今やユーザーの欲望は「生活者・物・情報のつながり」によって規定される。これを「生活者モード」という。 ②生活者モードにフォーカスした新たなマーケティング 生活者モードの中では、物自体の機能よりも、モノに付随するサービスや、ユーザーが物の新しい利用体験を作り出すことが価値だとみなされるようになる。 となると、従来のモノ提供ビジネスの「勝てるポジション、勝てる商品」という考え方は古い。コト提供ビジネスで設定すべき問いは、 ①いかに生活者へ価値を提供するか ②いかに収益を上げるか ③いかに継続的に自らを革新し続けるか の3つだ。 4pのようなモノ提供ビジネスで使われてきた戦略をアップデートし、生活者の「状況」にフォーカスを当てたマーケティングを「デジタルロケーションマーケティング」と呼ぶ。 デジタルロケーションマーケティングとは、生活者を取り巻く状況の中でも、「時空間」に着目したマーケティング手法である。時空間に着目するとは、いつ(平日か休日か?季節は春か夏か?月初か月末か?)、どこで(丸の内?新宿?秋葉原?)、どんな気分か(充実?リラックス?イライラ?)を見極めることである。こうした時空間の分析によって、いつどのように生活者に広告を打ちだすかを見極めることができる。 そして、マーケティング手段も今までの広告とは変わってくる。従来はテレビCMのように、不特定多数の人間に、同じ時間に、画一的なマーケティングをするのが一般的であった。今後は、個人に合わせたネット広告や、場所と時間に合わせてネットワーク制御されたデジタルサイネージなど、メディアを時空間で再編できるものに変わっていくだろう。 【感想】 読むのは「生活者モード」について紹介している前半部分だけでいい。後半のマーケティングの部分については、「時代がモノ提供ビジネスからコト提供ビジネスに変わったため、ビジネス戦略も時空間にフォーカスを当てたほうがよい」ぐらいのスタンスで捉えればよい。続きを読む
投稿日:2020.12.04
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