東條英機 「独裁者」を演じた男

一ノ瀬俊也 / 文春新書
(10件のレビュー)

総合評価:

平均 3.7
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  • 独裁者たりえなかった男

    メモ魔で、敵と見なせば影で策謀をめぐらせる陰険な印象があったが、意外に大衆性があり水戸黄門的な庶民ぽさもあった。
    直情型で、部下を始終怒鳴りつけているイメージも、実はお人好しで騙されやすく、部下の一部から御しやすいと見られていた。
    能力は人並みで度量も狭くカリスマ性も乏しい男がなぜ戦時のリーダーに上り詰めたのか、読みながら常に付きまとった疑問だが、当時の国民の東條評を読むと、今となっては窺い知れない一面があるのだとわかる。
    考えてみれば、なぜいまの首相が日本のトップになったのか説明してみろと言われても答えに窮する。
    つまりそういうことで、本人の実力というより、日本特有の組織内権力闘争に勝ち残り、たまたましかるべきポジションにいたから、ということなのだろう。

    もう一つの疑問、誰が開戦を決定したのかというのも、従来は東條が主導して対英米戦に日本を引きずり込んだというのが通説だったが、実は東條も何が何でもと強硬に主張したのではなく、「天皇が白紙に戻せといえば戻したし、仮に海軍が戦争はできないと明言すれば、話はそれまでで戦争はなかったろう」。
    要は戦争を回避する決断の口実を、陸軍以外が引き受けてくれるなら喜んでそうしたというのだ。
    だが、「天皇は対米英戦絶対不可とまでは発言しなかったし、海軍はある段階から戦争はできると言い出した」ため、全会一致の開戦決断となったわけだ。
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    投稿日:2020.11.08

ブクログレビュー

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  • bookkeeper0

    bookkeeper0

    東條でなければ違った結果になっていたのか?
    恐らくそうではなく、他の人でも開戦に至ったのではないかと思われる。日本全体がそういう方向性であったからだ。
    その後の経過は、違ったものになった可能性はあるが、いずれにしても国民が選んだ部分は大きく、東條一人に責任を負わせる事は出来ない。続きを読む

    投稿日:2021.08.03

  • わっさん

    わっさん

    このレビューはネタバレを含みます

    ●→引用、他は感想

    ●鈴木貞一は敗戦後「開戦は国内政治だった」と述べた。これは当たっているところがある。まず陸軍の日中戦争早期終結という政治情勢があった。陸軍の強硬姿勢が主として国民の不満の爆発を警戒してのものだったことを思えば、それは国内政治の問題である。この問題はやがて、対米戦備を口実に予算や物資を獲得してきた海軍の利害や面子、つまり政治問題を浮き上がらせた。対米開戦は、短期的には両者の抱える問題をもっともすみやかに解決しうる手段だった。そこへハル・ノートが到来し、全会一致で開戦決断に至ったのである。
    ●東條が各所で「水戸黄門」的視察を行ったのは、自己を「国民の給養」につき「真剣に検討する」総力戦の「総帥」」に任じていたからではなかったか。もっとも、東條の国民に対するアプローチや航空軍備に関する啓蒙の積極性は、彼の個人的な創意や芝居っ気の発露というよりは、第一次世界大戦後の陸軍が行ってきた国民啓蒙政策の結果とみなすべきである。「総帥」東條の生き方、考え方は、日露戦争後から1930年代にかけてのデモクラシー思想や、第一次世界大戦の総力戦思想の影響を色濃く受けていた。(略)東條をはじめとする戦争指導者層の「総力戦」の認識において最重要視されていたのは、航空戦力と国民の「精神力」の両方であった。後者の象徴たる竹槍のみでは対米戦争は不可能である。航空戦の「総帥」たらんとして結果的に失敗し、敵の空襲で国を焦土と化させた東條を批判するのは簡単だが、彼のやり方を戦時下の国民がどうみていたのか、という視点があっても良いはずである。その国民の少なくとも一部の間には、唯一の軍事指導者とみなす意識があった。東條への批判も、よく読めば航空戦・総力戦の指導者として適格か否かをめぐって繰り広げられていたのである。だが完膚なきまでの敗戦、国民生活の崩壊とともに「総帥」としての東條は忘れ去られた。東條自身は、古い―それこそ同時代人の重光葵からみても古い、大東亜共栄圏の思想に殉じて死んだ。後に残ったのは、国民に竹槍での無謀な戦を強いた愚かな指導者としての記憶だった。

    『未完のファシズム 「持たざる国」日本の運命』(片山杜秀著、新潮社)参照。

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    投稿日:2021.02.07

  • eisaku0330

    eisaku0330

    2020/12/13東條英機
    1.戦略なきオペレーション
    東條英機に大局から構想する器はなかった。
    それは本来は永田軍務局長がその役割を担う
    暗殺されて全てが狂ってしまった。
    戦略なきオペレーション屋のみの悲劇
    2.反知性
    東條英機はインテリ層に受けないので大衆層の受けを狙った。
    その点では反知性と言える現代の安倍・菅総理に似ている。
    3.政治家不信
    (1)近衛文麿公は軽挙妄動、面倒になると逃げる
    蒋介石問題、大政翼賛会、三国同盟、南部仏印進駐 
    近衛内閣総辞職は敵前逃亡!
    (2)蒋介石を相手にせず
    日中戦争が間違いとしても今さら後戻りはできない
    中国撤兵はありえない
    9月6日御前会議を無効ー責任を辞職
    4.43年資源の制約 軍事か、生産か?
    米国の戦意は低いと言う根拠なき願望
    すべからくこの調子である
    科学的根拠のなさ知性の無視は確実にレベルを引き下げる
    政治家は反対意見をも包摂して大きな結論にまとめる
    これが器と言うもの
    東條英機にはそれが全くない
    東條の戦争は、最高の政治ではなく、官吏の事務
    結局は国民の不幸
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    投稿日:2020.12.28

  • kratter

    kratter

    詳細に東條英機の生い立ち・軍人人生・首相就任から敗戦、東京裁判までの経緯を追うことが出来る一冊。参考文献の数から相当調査もしている事が窺える一冊。

    難点を上げると著者なりの独自解釈や切り口が足りない印象を受けました。

    これだけインターネットで情報が溢れていると、"事実"には簡単にアクセスできるのでその羅列で400ページ近くを占められると食傷してしまう人もいるかもしれません(東條は、石原莞爾のように壮大なビジョンを掲げるタイプではなく、出世に恐々としたサラリーマン的軍人というイメージは割と定説になっている気がします)。

    Wikipediaの内容を暑くした印象も否めないので、著者なりの独自解釈や価値観の提示があると良いと思いました。
    続きを読む

    投稿日:2020.12.20

  • gescomnyc

    gescomnyc

    英機、かわいそうやで。
    軍部もかわいそうや。
    結局、アホなジャップが自滅しただけの戦争だったんじゃないでしょうか。
    裕仁は大した奴やで。という思いを強くした一冊。

    投稿日:2020.11.15

  • 夜食・中七七三/特殊物書き稼業

    夜食・中七七三/特殊物書き稼業

    辻さんの「ガダルカナル」に書いてあることを参考文献にもってくるのは、どーかと思うんだけどw
    それに、鈴木貞一氏の「朝日号」は富嶽の勘違いではなく、キ-77の勘違いでは?
    朝日新聞がからんでいる長距離飛行機なので、この機体のことを言っていると思う。
    富嶽なんて知っているわけがないw
    ロシア戦争の戦訓で火力軽視が生まれたとする説は寡聞にして知らないが、どこからその結論をもってきたのだろうか。

    一ノ瀬先生の本は好きだけども、この本はかなり荒い感じがした。ザラツキを多く感じたし、そもそも東條英機の再評価は手垢のついてしまった内容ではないかと思った。
    一般啓蒙レベルではそうでもないのかなぁ~
    続きを読む

    投稿日:2020.10.10

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