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一ノ瀬俊也 / 文春新書 (12件のレビュー)
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総合評価:
ABAKAHEMP
独裁者たりえなかった男
メモ魔で、敵と見なせば影で策謀をめぐらせる陰険な印象があったが、意外に大衆性があり水戸黄門的な庶民ぽさもあった。 直情型で、部下を始終怒鳴りつけているイメージも、実はお人好しで騙されやすく、部下の一…部から御しやすいと見られていた。 能力は人並みで度量も狭くカリスマ性も乏しい男がなぜ戦時のリーダーに上り詰めたのか、読みながら常に付きまとった疑問だが、当時の国民の東條評を読むと、今となっては窺い知れない一面があるのだとわかる。 考えてみれば、なぜいまの首相が日本のトップになったのか説明してみろと言われても答えに窮する。 つまりそういうことで、本人の実力というより、日本特有の組織内権力闘争に勝ち残り、たまたましかるべきポジションにいたから、ということなのだろう。 もう一つの疑問、誰が開戦を決定したのかというのも、従来は東條が主導して対英米戦に日本を引きずり込んだというのが通説だったが、実は東條も何が何でもと強硬に主張したのではなく、「天皇が白紙に戻せといえば戻したし、仮に海軍が戦争はできないと明言すれば、話はそれまでで戦争はなかったろう」。 要は戦争を回避する決断の口実を、陸軍以外が引き受けてくれるなら喜んでそうしたというのだ。 だが、「天皇は対米英戦絶対不可とまでは発言しなかったし、海軍はある段階から戦争はできると言い出した」ため、全会一致の開戦決断となったわけだ。続きを読む
投稿日:2020.11.08
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minusion
A級戦犯だということで、好戦的で残虐な人だと勝手に想像してしまっていたけれど、印象が変わった。 総理大臣になるくらいなので、勉強熱心で人の話を聞く姿勢ももっていることにおどろいた。 太平洋戦争に至った…経緯に関しても、陸軍と海軍の両軍が本音で話ができないせいであり、決して東条英機が好んで進んだわけではなかった。 また総理大臣の決定でも、現場の指揮権はなく詳細にコントロールできるわけでないことも知った。 結局は誰か1人が原因ではなく、空気感によるものが大きいのだと改めて理解できた。続きを読む
投稿日:2023.06.13
みきひできの戦史図書室
既存の研究や同時代の人々の回想手記だけでなく、最新の研究にまで当たっている。これまで一面的に見られがちであった「東條英機」を前述の資料を活用して再考察している。内容的には至極穏当なものとなっているが、…一人の人間としての「東條英機」の限界という面を再確認出来る。人物評伝としてはバランスの取れた良書だと個人的には思う。続きを読む
投稿日:2023.01.09
horinagaumezo
「人情宰相」という日本的な「総帥」像の演出に腐心した「総力戦指導者」としての東條英機の評伝。 東條を軸に太平洋戦争開戦の過程を瞥見し、組織の利益追求や責任のなすりつけあいに終始していたことを再認識した…。また、やはり東條は、指導者として「小人」の評価は免れないと感じた。続きを読む
投稿日:2022.10.31
bookkeeper0
東條でなければ違った結果になっていたのか? 恐らくそうではなく、他の人でも開戦に至ったのではないかと思われる。日本全体がそういう方向性であったからだ。 その後の経過は、違ったものになった可能性はあるが…、いずれにしても国民が選んだ部分は大きく、東條一人に責任を負わせる事は出来ない。続きを読む
投稿日:2021.08.03
わっさん
このレビューはネタバレを含みます
●→引用、他は感想 ●鈴木貞一は敗戦後「開戦は国内政治だった」と述べた。これは当たっているところがある。まず陸軍の日中戦争早期終結という政治情勢があった。陸軍の強硬姿勢が主として国民の不満の爆発を警戒してのものだったことを思えば、それは国内政治の問題である。この問題はやがて、対米戦備を口実に予算や物資を獲得してきた海軍の利害や面子、つまり政治問題を浮き上がらせた。対米開戦は、短期的には両者の抱える問題をもっともすみやかに解決しうる手段だった。そこへハル・ノートが到来し、全会一致で開戦決断に至ったのである。 ●東條が各所で「水戸黄門」的視察を行ったのは、自己を「国民の給養」につき「真剣に検討する」総力戦の「総帥」」に任じていたからではなかったか。もっとも、東條の国民に対するアプローチや航空軍備に関する啓蒙の積極性は、彼の個人的な創意や芝居っ気の発露というよりは、第一次世界大戦後の陸軍が行ってきた国民啓蒙政策の結果とみなすべきである。「総帥」東條の生き方、考え方は、日露戦争後から1930年代にかけてのデモクラシー思想や、第一次世界大戦の総力戦思想の影響を色濃く受けていた。(略)東條をはじめとする戦争指導者層の「総力戦」の認識において最重要視されていたのは、航空戦力と国民の「精神力」の両方であった。後者の象徴たる竹槍のみでは対米戦争は不可能である。航空戦の「総帥」たらんとして結果的に失敗し、敵の空襲で国を焦土と化させた東條を批判するのは簡単だが、彼のやり方を戦時下の国民がどうみていたのか、という視点があっても良いはずである。その国民の少なくとも一部の間には、唯一の軍事指導者とみなす意識があった。東條への批判も、よく読めば航空戦・総力戦の指導者として適格か否かをめぐって繰り広げられていたのである。だが完膚なきまでの敗戦、国民生活の崩壊とともに「総帥」としての東條は忘れ去られた。東條自身は、古い―それこそ同時代人の重光葵からみても古い、大東亜共栄圏の思想に殉じて死んだ。後に残ったのは、国民に竹槍での無謀な戦を強いた愚かな指導者としての記憶だった。 『未完のファシズム 「持たざる国」日本の運命』(片山杜秀著、新潮社)参照。
投稿日:2021.02.07
eisaku0330
2020/12/13東條英機 1.戦略なきオペレーション 東條英機に大局から構想する器はなかった。 それは本来は永田軍務局長がその役割を担う 暗殺されて全てが狂ってしまった。 戦略なきオペレーション屋…のみの悲劇 2.反知性 東條英機はインテリ層に受けないので大衆層の受けを狙った。 その点では反知性と言える現代の安倍・菅総理に似ている。 3.政治家不信 (1)近衛文麿公は軽挙妄動、面倒になると逃げる 蒋介石問題、大政翼賛会、三国同盟、南部仏印進駐 近衛内閣総辞職は敵前逃亡! (2)蒋介石を相手にせず 日中戦争が間違いとしても今さら後戻りはできない 中国撤兵はありえない 9月6日御前会議を無効ー責任を辞職 4.43年資源の制約 軍事か、生産か? 米国の戦意は低いと言う根拠なき願望 すべからくこの調子である 科学的根拠のなさ知性の無視は確実にレベルを引き下げる 政治家は反対意見をも包摂して大きな結論にまとめる これが器と言うもの 東條英機にはそれが全くない 東條の戦争は、最高の政治ではなく、官吏の事務 結局は国民の不幸続きを読む
投稿日:2020.12.28
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