【感想】トーキング・トゥ・ストレンジャーズ~「よく知らない人」について私たちが知っておくべきこと~

M・グラッドウェル, 濱野大道 / 光文社
(17件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
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  • 「あなたのよく知らない他者はけっして単純ではない」

    見知らぬ他人同士の関係で生まれるすべてのトラブルは、次の3つの過ちに帰因している。
    すなわち、人は透明で会えば本性を見抜けるという幻想と、社会を構成する上で人はデフォルトで信用しあうという性質、そして相手の行動の文脈を理解せず、単純な存在だという思い込みだ。
    サンドラ・ブランドの悲劇的な死は、個人的な出会いの失敗でもなければ、単なる警官による黒人差別という構図ですらなく、共同体全体の失敗だった。
    ブロック・ターナーによる犯罪も、飲酒の問題を無視し、男性の加害性の問題に矮小化すれば、同じ失敗は繰り返されると説く。
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    投稿日:2020.11.05

ブクログレビュー

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  • rafmon

    rafmon

    自己と他者の間にある絶対的な壁をどう乗り越えるかというのが、この作品の主題。

    人は相手を信用するよう初期設定されているというトゥルースデフォルト理論。人の感情は、表情に如実に現れるという透明性の嘘を暴く誤謬。飲酒によって目の前の経験が見えなくなる近視理論。行動と場所が密接に関連しているという結びつき理論。小難しい理論を並べたが、この本にはそれらのモデルとなるエピソードがそれぞれ挿まれるので、その話により理解できる。

    しかし本著が最もこだわった黒人女性のケース。この話からの学びは何だろう。サンドラ・ブランドは、車を運転中に方向指示器の合図を出さなかったとして警官に止められた。警官は車から出るように命じたが、彼女はそれを拒み、警官の対応はエスカレートする。

    黒人への偏見?挙動に対しての過剰反応?素直に車から出れば良い、と先ずは思う。彼女は身体や精神の問題を抱えながらも、生活を何とか立て直そうとしていたところ。新しい街に引っ越し、新しい仕事を始めるところだった。逮捕された彼女は取り乱して泣き続け、3日後に自殺した。

    アメリカの世論は彼女に対して同情的だ。確かに、警察はやり過ぎた。しかし、彼女が問題を抱えていたなんて、だから警官の指示に従わなくて良いなんて事があるだろうか。そして、自殺されても、そこまで感情移入してのケアはできない。それぞれの巡り合わせの悪さだ、と思うが。

    どんな理論を並べようと、私はあなたにはなれない。世論は、人ごと。同情も、人ごとだ。その人の精神や肉体の保有者ではないのだから、他者を知るなんて事は、部分的にしか出来ない。
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    投稿日:2024.03.23

  • Limei

    Limei

    すごく重く深い本でした。
    アメリカで白人警察官が黒人女性を路上で逮捕するという2015年に起きた事件を元に、数々の実在の犯罪や事件を取り上げて検証していきます。
    スパイやテロ犯罪など日本で普通に生きている私とかけ離れたことも多く、悲惨な事例もあり読み進めるのがつらかったりしましたが、それを取り上げることで最初にあげた事件の真実を考えることにつながるという納得の展開でした。

    「私たちの予想どおりに相手が行動しないこと」と思い込みから生まれる誤解や悲劇。
    日常生活にもあることだと思います。
    「見ず知らずの相手とコミュニケーションを取ることのむずかしさ」
    最近社会での他者への批判や誹謗中傷がひどくなっているようにみえますが、やはり原因はこのような、自分は正しい、相手がこうしないのはおかしいと思い込んでしまうことなのではないかなと感じました。

    「私たちは、見ず知らずの相手の心の内を読み解く能力に限界があることを受け容れなくてはいけない。」

    「われわれに必要なのは抑制と謙虚さだ。」
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    投稿日:2024.02.29

  • 英語ワクワク

    英語ワクワク

    エピソードはどれも興味深い。ただ登場人物の数が多くて一部消化不良に。「訳者あとがき」が、簡潔に内容を振り返ってくれていて助かった。

    アメリカのシットコム『フレンズ』をわかりやすいコミュニケーションの事例として取り上げ、実際、我々の生活で接する人たちの表情のわかりやすさとはかけ離れていると説く。非常に説得力のある説明だと思う。
    日常生活において、相手の気持ちが読めない、なんて冷たい態度なんだろう?と思うことは多々ある。そんなとき、この本を思い出すだろう。

    原書のタイトル:Talking to Strangers: What We Should Know About the People We Don’t Know by Malcolm Gladwell

    読み終えて一言。履歴書に写真を求める日本のやり方ってどうなの?写真の「イメージ」は細工できるのですよ。
    ちなみに、日本以外で、履歴書に写真を求められたことはありません。
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    投稿日:2022.09.13

  • チョコボ先輩

    チョコボ先輩

    日本ではノンフィクション版の村上春樹と言われるベストセラー作家のマルコムグラッドウェル。
    多くの事例をもとに、なぜ人は他人を誤解したり、決めつけてしまったりなど、正しく理解できないのかを明快でわかりやすいストーリーテリングで示してくれた本。
    サンドラ・ブランドに起きた一つの悲劇を簡単な見方をするのではなく、多くの事例から他人に対する理解の難しさ複雑さをパズルが組み合わさっていくように、その深い洞察から示唆してくれるのは読んでいて非常に気持ち良いものであった。
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    投稿日:2022.08.05

  • bookkeeper0

    bookkeeper0

    人はなぜ他人のことを正しく理解できないのか、採用面談でも相手のことを正しく理解できないとこが多い。人は必ずしも自分が想定したリアクションをしないということが原因なのだろうが、ではどうすればいいのか。会わずにデータだけから判断すれば良いのかもしれないが、相手の客観的データは入手困難な場合が多いしやはり難しい。謙虚に見かけでは分からないことを肝に命じるしかない。続きを読む

    投稿日:2021.06.10

  • k-masahiro9

    k-masahiro9

    このレビューはネタバレを含みます

    「相手が自分を知るよりも、自分のほうが相手のことをよりくわしく知っている」「自分にはより優れた洞察力があり、相手の本質を見抜くことができる(相手にそのような洞察力はない)」-このような確信によってわたしたちは、もっと相手の話を聞くべきときに自分から話をしようとする。さらに、「自分は誤解されている」「不当に判断されている」という確信について他者が話すとき、わたしたちはなかなか忍耐強く対応することができない。(p.61)

     私たち人間は、冷静沈着な科学者のように振る舞うわけではない。結論に達するまで、真実や偽りに関する証拠をゆっくり集めていくのではない。正反対だ。私たちはまず信じることから始める。説明がつかなくなるほど疑いや不安が高まるとやっと、私たちは信じることをやめる。(p.90)

     人間に備わった嘘発見器は、私たちが望むようには機能しないし、そもそも機能するはずがない。それが、レバインが導きだした単純な真実だ。映画の世界では、海千山千の刑事たちが犯人に向き合い、相手の嘘をいとも簡単に見破ってしまう。しかし現実世界では、疑いを打ち消すために必要な量の証拠を積み上げるためには時間がかかる。(p.104)

    「いちばん驚いたのは、何かを怖がる”恐怖”だと西洋社会で一般的に考えられる表情が、トロブリアンド諸島ではむしろ”脅迫”に近いものとして認識されたことです」とクリベッリは説明した。それがどんな表情かを私に示すために、彼は大きく眼を見開き、いわゆる「息を呑む表情」を作ってみせた。ムンクの有名な絵画『叫び』に描かれた人物のような表情だ。(p.190)

     見ず知らずの相手にたいしておかしやすい最初のふたつの過ち――デフォルトでの信用と透明性の幻想――によって、私たちは他人を個人として理解できなくなってしまう。それらの過ちにくわえ、見ず知らずの相手との問題をさらなる危機的状況へと駆り立てるもうひとつの過ちがある。私たちは、見ず知らずの相手の行動についての文脈の大切さを理解しようとしない。(p.333)

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    投稿日:2021.04.19

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